XaiJu
葉一
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ダークノア・肉便器編Ⅱ(2)

 ※  今日も疲れた体を引きずって、警察官舎に帰ってきた。  同室同期の磯貝は、今日は夜勤だと聞いた。部屋はもぬけの殻である。ベランダに洗濯した柔道着が干してあり、左胸に大きく磯貝と墨書されていた。もう日は暮れているので、取り込み忘れたのだろう。俺は手を伸ばして洗濯物を回収してやる。冷蔵庫には作り置きのコロッケやらサラダやらが盛り付けられた皿が入っていた。付箋に「お疲れ様!」と丸っこい字で書いてある。磯貝は柔道黒帯で、高校時代の戦績も良く、機動隊に配置されている。大柄で、気さくな熊みたいな奴だった。窮屈そうに台所で料理をする彼を想像し、少し笑った。  確かに磯貝がいないことを確認し終え、俺は制服を脱いで全裸になって立ったまま自慰に耽り始める。俺がダークノアの戦闘員に犯されてから、一週間が経っていた。冗談みたいな話だが、俺は朝昼晩、毎日3度は自慰をしなければ気が済まない肉体になっていた。あまり自慢できることではないが、元来、性欲は強い方だったと思う。それでもこの頻度は異常である。人目を忍んで、トイレやパトカーの中などで性処理をするのにも、もう慣れてきた。しかし、やはりこうして全裸になり、ひたすら自慰に集中して快楽を貪ることには敵わない。  あの日を境に、俺は、変態にされてしまった。  一日の勤務で蒸れた自分の匂いに、剣道で鍛え上げた肉体に、警察官という一介の公僕から木崎充という一匹の雄に戻った自分に、俺は興奮させられていた。肩幅に足を開いて、無心で、両手を使って俺はチンコを擦り上げる。じっとりと全身に汗が浮かんできて、吐息が荒くなり、俺は絶頂を迎える。 「ああっ!イクッ♡」  チンコが心臓のように脈打ち、脚ががくがくと震える。確実に果てたという実感があったがしかし、俺のチンコからは透明な先走りがとろとろと流れただけに過ぎなかった。欲求不満を表すように、俺のチンコは萎えないまま、臍へ亀頭が付かんばかり屹立したままである。  こんな風に、どんなに工夫しても自慰でイケない頻度が増えていった。俺はムキになって、諦めきれずにチンコを擦り続ける。その度に快感は得られるものの、達しないのでもどかしい気持ちが募るばかりだった。自分ではなく、磯貝の肉体をイメージしてみる。それで抜けたこともあったが、今日はダメなようだった。体力の続く限り粘ってみたが、40分を超えたところで諦め、床に寝転がった。  ──イキたい、イキたい、イキてぇ……  気が触れたかのように、そのことしか考えられない。何度か躊躇ったあと、身体を起こし、制服から例のメモを取り出した。携帯電話の番号をプッシュして、相手の受話を待つ。5コール目で「もしもし?」と男の声で応答があった。入江だった。俺は、自分がどうしたいのかも言えないまま、黙っていた。 「あっ、お巡りさんだろ?そろそろ連絡来るんじゃねえかって思ってたよ。今日一日おれ休みだからさ、待ってるぜ」  軽佻で、軟派な調子で入江は言った。俺が何かを言う前に、ぷつりと電話は切られてしまう。勝手な男だと思った。    ※    俺はジャージに着替え、ジョギングという体裁を取ってその住所へ向かった。実際のところ、入江が住む安アパートには既に何度か足を運んでいる。所在を確かめ、警察官としての務めを果たす──そう言い訳をしながら。結局、俺は先日の出来事も、こうしてダークノアと称される危険な組織の構成員と未だに接触があることを誰にも伝えていなかった。一つには、自分のような若く、力の強いことだけが取り柄の男が、簡単に組み敷かれて無様に犯されたということを打ち明けられなかった。そして、その体験がどうしようもなく快楽と結びついていること。頭では理解しているが、肉欲がもう抑え切れない。警察の内部資料で見たとおりだった。既に洗脳が始まっている。それを自覚していても、抗うことはできない。  じっとりと身体が熱いのは、ジョギングのせいだけではない。期待で、ズボンの柔らかなポリエステル地をチンコが押し上げている。チャイムを鳴らすと、今時の住居とは思えないブザー音が響いた。壁が薄いのだろう、玄関へと近付く足音がどん、どん、どんと聞こえる。ドアが乱暴に開くと、寝間着と思しきスウェットの上下に身を包んだ入江が出迎えた。にやり、と彼は笑うとすぐに俺を部屋の中に招き入れる。部屋の中は男の一人暮らしを絵に描いたような乱雑な有様だった──食器が雑然と重ねられた台所、微妙に分類されて申し訳程度にまとめられているゴミ、捨てるのか捨てないのかわからない雑誌類がうず高く重なり合い、ところどころ崩れている。1間のリビングは、ベッドでかなり圧迫されている。新しく買ったもののようで、部屋のサイズに合っていない。鴨居に釘を打ち付け、そこに掛けられたニッカボッカ等の作業着を見て、仕事道具だけはきちんと手入れされているようであることが分かる。 「部屋ん中じろじろ見やがって……やっぱり本職の警察官は違うなあ」  入江が軽口を叩くと、ズボンの上から硬くなった俺のチンコをぎゅっと握った。 「さ、俺達のことたっぷり見てってくれ……」  俺達、という言葉に引っ掛かりを覚えた瞬間、背後の玄関から男が入ってきた。人懐こい顔をした体格の好い男は、勝手知ったる様子で、入江に問い掛けもせず靴を脱いで部屋に上がった。運動着の下に黒光りするアンダーシャツとスパッツを着込んだ彼は、にっこりと俺に笑いかけた。 「うっす、お巡りさん!肉便器戦闘員1号、人間名は立松って言います!よろしくお願いします!」  この爽やかな好青年も戦闘員なのか、と思って頭がくらくらし始める。そうこうしている間に、目の前で入江と立松が互いに肩を抱き寄せ、舌を絡ませていった。2人の男が当然のようにペッティングをし始めるその様に、俺は唖然とする。──男達は恍惚とした表情で、淫らな音を立てながら、それは本当に気持ち良さそうで。  見せつけられるがまま、俺は食い入るように男達の痴態を見ていた。いつの間にか、男達はダークスウツ姿となり、艶めかしい肉体を触れ合わせている。その濃密なまぐわいに、俺は圧倒された──俺が、求めていたものはこれだ。溺れるような快楽が、あの日交番で犯された続きが、眼前に広がっていた。生唾を飲み込み、俺は猛り狂ったチンコに手を伸ばす。その腕を背後から分厚く、黒い掌が鷲掴みにして止めた。 「気に入ったかな?」  タッパのある巨漢が、俺の背後に立っていた。気配も音も感じなかった。それなりに鍛えている俺の力でも、岩を相手にしているかのようにびくともしない。2人よりも年かさだろうとは思うが、年齢不詳の自由人らしき雰囲気をまとったその男は、やはりダークスウツに身を包んでいた。このアパートの一室は、予想した通りダークノアの巣窟だったのだ。 「私は肉便器戦闘員0号、人間名は柿崎と言う。2号の部屋だけれど、歓迎するよ」  むわぁっと雄臭い匂いが鼻を突く。色眼鏡越しに目が合い、急に頭がぼんやりとしてくる。 「私はダーク様のオリジナルだけれど、1号も2号も私が改造した作品なんだよ。そして君が、次の私の作品だ。彼らと同じように、戦闘員としてじっくり洗脳・改造してやろう、木崎巡査──いや、新たな肉便器戦闘員、3号」  俺は抵抗しようとしたが、できなかった。勃起したチンコをハーフパンツの上からぐりぐりと撫で廻され、快感で膝ががくがくと震えていた。小便を漏らしたかのように精液が漏れ出し、スパッツを汚していく。戦闘員にされてしまうことやごつい男の手でイカされてしまうことへの抵抗感よりも、射精できる喜びの方が俺の中で遥かに上回っていた。へたり込むように座ると、3人の戦闘員が己を隆起させながら、俺をぐるりと取り囲んでいた。そうして俺は、ようやく自分の運命を受け入れる──最早脱することも叶わないほど、悪の組織に精神が絡め捕られていたという事実を。  2号がいつの日かのように、俺の鼻先に勃起したチンコを差し出す。続いて1号も、0号も。快楽に染まりきった笑顔で、3人は俺を見下ろしていた。敗北者として最初の奉仕が始まる。両手と口を使って、肉棒を扱き上げていく。肉便器、という言葉が脳裏にこびり付いて離れない。性処理の道具として扱われる俺は、正しく肉便器そのものであった。木崎充という人間から、肉便器戦闘員3号として、乱交を通じて俺は変えられていく。戦闘員が射精し、真っ黒な精液を掛けられる度に、俺が汚されていくのがはっきりと分かる。しかし俺は、心の奥底では悦んでいた。渇望していた肉欲が、満たされる快楽に身を委ね、それこそ獣のように交尾に耽っていく──。 「逸材だな」  0号がぼそりと呟いた。腸内を埋め尽くしていた巨根がずるりと抜かれ、途端に物足りなさが俺を襲う。体力的には限界に近く、声も出ない有様だったが、もっと気持ち良さを、雄同士の快楽を味わいたかった。「壊れちまったんじゃないすか?」。1号が言葉とは裏腹に、にこにこしながら言って爪先で俺のチンコを弄んだ。俺は焦点の合わない視界の中で、快楽の根源を理解する。戦闘員が着ているダークスウツ、あれを身に着ければ──。 「雄同士の交尾、たまんねえだろ。そろそろ戦闘員になりたくなってきたんじゃねえか?」  2号が粗野な笑みを浮かべて言った。彼らがそうだったように、俺の心は手に取るように分かるのだろう。0号が大笑して応じる。 「はは、次は私の事務所に来なさい。そこで身も心もすっかり戦闘員にしてあげよう──3号」  その呼び掛けに対し、俺のチンコは返事をするように脈動した。


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