畜生道に堕ちる(1)
Added 2021-09-26 15:48:37 +0000 UTC作者のあらすじ:ファンボでリクエスト作品の断片しか上げられなくて無念なのであった。これはTFものになる予定。まだエッチじゃない。 序 各地の大きな戦が一旦終わり、人々が疲弊しきった時代の話だ。 深い山に分け入り修行をする若い僧がいた。厳密に言うと種々異なるのだが、ここでは分かりやすく山伏ということでよいだろう。ともすれば天狗と見紛う修験装束の出で立ちで、その僧──慧鶴は、獣道を歩いていた。背丈は六尺を下らず、目方も二十貫は優に越している偉丈夫である。山で鍛え上げただけではなく、いまだに鋭い険のある眼光と、大きく右頬に残った刀傷が、彼の過去のあやまちを物語っている。錫杖が一歩あるくごとに揺れ、しゃんと小気味良い音を立てた。季節は夏に差し掛かろうというところで、強い日差しが容赦なく慧鶴を灼いた。被っていた笠をずらし、汗を拭う。 「そろそろ青海殿がおっしゃっていた集落が見えてもよい頃のはずだが……」 山伏としての先達である青海が「次の修行場に行く前に立ち寄るが良かろう」と地図に印を付けてくれたのが数日前だった。慧鶴は手頃な岩に腰掛け、もう一度地図を広げる。地図は平面だが、実際には高低差がある。もしかすると、思いがけず谷があるのかもしれないと彼は思った。両足に力を入れて立ち上がろうとしたとき、自分が歩いてきた方角から「おーい、おーい!」と呑気な声が聞こえてくる。慧鶴はもしやと思って振り返ると、遠くから自分と同じ修験装束に身を包んだ大男がやってくるのが見えた。 「慧鶴殿!」 ぶんぶんと両手を振るのは、同門の円慈だった。慧鶴も珍しく笑みをこぼす。それは円慈の人柄によるところが大きい。生まれも育ちも慧鶴とは違ったが、円慈はとにかく大らかかつ素朴な人間だった。人望も厚く、周囲となじめずに孤立しがちだった慧鶴もつい彼には頼み事や相談を持ち掛けていたほどだ。齢は慧鶴よりも少し上で、僧兵だった過去から説法などには詳しかった。彼もまた山伏として恵まれた体格だったが、慧鶴よりも横幅が広く、脂が乗っている。人からの施しをよく受けるからだろう。 「……それでは、円慈殿も青海殿に勧められてこの先の修行場へ?」 彼もまた山伏として各地を巡っている最中だったはずだが、何の縁か目的地が同じらしい。奇遇とはこのことだと二人はそう思った。 「応とも。折角ですから、共に参りましょうぞ」 二人の僧は連れ立って山道を歩き始める。自然と二人はこれまでの旅や修行場での出来事に花を咲かせる。さほど時間も掛からない内に、山の中腹に小さな集落を見つけることができた。集落の者は僧の来訪を喜んだ。山伏達が立ち寄るのにも慣れているらしい。長に簡単に挨拶を済ませると、修行中、空き家の一つを貸し、食事を提供してくれるという手筈になった。丁重に礼を述べ、僧たちは荷を解き、平服姿になる。 「ありがたいことだなあ」 「いや、本当に」 「そういえば慧鶴殿、集落を見てお気付きになられたか」 円慈が大きく伸びをしながら、のんびりと言う。謎かけというほどのことでもないだろう。慧鶴は円慈の言いたいことがはっきりと分かっていた。 「……若人が居りませんでしたね」 「やはり先の戦でしょう。おそらく、生活も苦しいのではないかと思うのです」 「……円慈殿、拙僧も同じ気持ちであります。できれば、早々にお暇いたしましょう」 慧鶴の言葉を聞いて、円慈はぱあっと笑顔になる。 「慧鶴殿は本当にお優しい方です」 「お、おやめください……これもまた修行ですので」 照れ隠しにぷいと慧鶴はそっぽを向く。円慈は「さきほど長に頼まれた手伝いがありますので」と言って笑顔のまま部屋を出ていった。 ※ 人里での山伏の仕事は雑多である。説法をしたり、純粋に力仕事をしたり。時には祈祷をすることもある。山伏たちはそうして逗留している集落や村に溶け込んでいくのが一般的だった。二人も例に漏れず、すぐに集落になじんだ。だが、先の方針もあり、来訪の翌々日には「明日にでも修行場に向かいます」と円慈が長に切り出す。長をはじめ、集落の者は大層悲しい顔をした。 「お二方に申し上げておきたいことがあります……」 長が切り出したのは、次の修行場に関する話だった。曰く、洞窟の中に庵があると言う。 「それは珍しいことですね」 だが滅多にないという訳ではない。例えば洞穴をくり抜いて祠とすることなどもままあることだ。 「昔、飢饉のときなどに我々はそこに贄を差し出していたのです…………とは言っても、人がそこで死ぬわけではありません。三日三晩、そこで山の神にお仕えして帰って来るというだけの話でありまして……」 贄として選ばれた男──特に若く、精力のある者が選ばれるらしい。それが洞窟の中の庵に籠り、願掛けをする。そうすれば山の神は願いに応じてその年の豊穣を約束するのだという。 「山伏様たちにはこの『贄』の役割をしてほしいのです。集落は御覧の有様で、満足に修験者様をおもてなしすることも叶いませんでした」 「いや、それは構わないのだが──」 慧鶴は逡巡した。確かに次の修行場で行う荒行は願掛けが含まれている。しかしそれは決して集落の豊穣を祈るものではない。三日三晩というのも初めて聞く話だった。ちらりと円慈の方に目線をやると、彼もまた逡巡している様子だった。 「こうしてご無理を申し上げ、二年前に青海様にも『贄』になってもらったのであります」 「!」 「その年、集落は作物がたくさん取れ、獣も面白いように捕まえることができました。青海様は『拙僧の願掛けによるものではない』とおっしゃりましたが……でもやはり、青海様は三日三晩、洞窟で願掛けをして下さったのだと思います」 長は恭しく頭を下げた。山伏たち二人は顔を見合わせ、言葉はなくとも意志は固まりつつあった──すなわち、『贄』の役割を担おうと。 第一夜 集落のはずれには、さらに山奥へと続く道があった。程なくして急な山道になる。岩肌に根差した大きな欅の木があり、ここからは女人禁制となっていた。慧鶴と円慈は黙々と岩場を上っていく。曇天であったが蒸し暑く、二人はすぐに汗だくになった。 正午前には岩場を抜け、なだらかな丘の上に出た。集落の者に泉が沸いていると言われたので探すと、下草の間に水が染みている場所がある。低木を掻き分けると、確かにそこには、本当に規模が小さいものの、清らかな水が溢れる泉があった。 「やあ、これは僥倖」 円慈は喜びの声を上げ、持参した竹筒に新鮮な湧き水を汲んだ。慧鶴もそれに倣った。 「水垢離……は叶いませんね……」 「まあまあ。それは贅沢というものでしょう」 二人は苦笑すると、手早く装束を脱ぎ、白い褌姿になる。若々しい肉体を外気の中、顕わにすることは山を住処とする彼らには日常であり、全く躊躇がない。身体を清めるため、清水に手拭いを浸し、固く絞って全身の汗や垢を拭っていく。同門同士の気安さもあって、円慈も慧鶴もあまりにも無防備に裸体を晒していた。慧鶴は武人としての過去が垣間見える。いまだ分厚い手足や胸板の筋肉を持て余しているのか、手拭いを度々水に付けては肉体を愛撫するかのように丹念に肌を擦り上げていた。一方、円慈は手で清水をざぶざぶとすくい上げては身体に浴びせかける。一見、慧鶴に比べれば滑らかでもっちりとした肉付きであるが、触れてみれば筋肉の隆々とした膨らみと硬さが感じられる。もちろん、大抵の人はそれを知らない。円慈が殊更隠そうとする過去──僧兵としての暗い歴史とつながっているからだ。最後には二人とも褌を外し、陰部も清めてから、褌や装束を水洗した。曇天であっても、岩場に数刻広げて置けば、仄かにぬくもりを感じるほど衣服は乾ききっていた。その間は二人とも真っ裸で過ごしていたわけだが、さすがに気恥ずかしく、山伏たちは互いにそっぽを向いて座禅をしていた。しかし、彼らの頭の中には互いの魔羅を確認する程度の俗っぽさは残っている。慧鶴の陽物は本人の端正な顔立ちに相応しく、まっすぐで、それなりの太さもある。包皮は平時、半分ほど被っており、勃起すれば全部剥ける。反対に、円慈のものは色黒で太く、陰嚢が大きく、丸々としていた。ずっぽしと皮は被っているが、あまり頓着はなく、どちらかといえば堂々と股間を晒して着替えていた。 どちらからともなく歩き始めると、今度は半刻もせずに修行場の洞窟に辿り着いた。