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葉一
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(仮)ダークノア・予備素体編12(ルート・装置+邪心+拒否=エンドF)


10


 ──嫌だ。

 そう思った瞬間に、世界がぐずぐずと崩れだした。あっという間に視界は暗闇に呑まれ、バランス感覚を失ったことで嘔吐感がこみ上げる。和道はしゃがもうとするが、肉体は動かない。長いブザー音が耳に響いた。


 目覚めると、先程の柔道場に転がっていた。頭が重い上に、ひどく痛む。和道は顔をしかめて額を押さえた。

「目、覚めちまったか。でもまだ寝てる方が良いぜ」

 仁王立ちしていた『和道』が振り返って言う。不敵に笑うが、身体のところどころにノイズが走っている。

「ああ、時間切れか。つまらねえな……」

 それはどこか、タヌキが変化を見破られるような間抜けなイメージだった。『和道』の像が消え、その場に逞しい高校球児と思しき男が現れる。ダークスウツに身を堕としたその男は、和道を戦慄させた。

「はは、さすがに名乗らなくても分かるようだな。お前の心身にも刻み込まれているのだな、私の名前が」

「ダーク…………さま……?」

 和道が思わず敬称を付けてしまったのは、ダークスウツ着用時に、ダークを自らの主人とするよう本能的に刷り込まれているからである。面識がなくとも、ダークを見ればそれと分かったし、敬愛の念が湧き上がるようになっている。和道はこの男を見て、「支配者」という言葉が最も適切だと思った。それも、自分たちの支配者なのである。抗わなければ、と分かっている。分かっているが自分にはどうしようもないとも分かっている。

「ああ。そうだ。この機械は私の末端と接続されている特別製なのだよ。グリーンの玩具好きにも困ったものだが、こうしてお前のような素体を直接弄ることができると考えれば、まあ、面白い」

「あっ…………ああっ!……」

 ダークが手をかざすと、和道のダークスウツが官能的に皮膚を這いずり回った。チンポを勃起させられるという屈辱的な感覚に歯を喰いしばるが、すぐに人智を超えた快感が全身に押し寄せ、嬌声を上げてしまう。数分待たずして、和道は直立したまま無様に果てた。畳の上に白濁液をたっぷりと放ち、放心したように虚ろな目で天井を見上げている。呼吸は荒く、獣のように激しかった。

「このまま精神を壊し尽くしてしまうのもいいが……お前は、その強い意志を以ってプログラムを止め、私を引きずり出した。その褒美をやらなくてはいけないと思ってな」

 ダークはにやりと悪逆な笑いを浮かべた。和道は思考を停止させて、ただ支配者を見つめる。

「いじらしい、お前のささやかな抵抗に報いよう。いやはや、力が小さい内に我が手中に落ちてくれて助かった」

 右耳に鋭い痛みが走り、和道は正気に戻った。耳の上部に、ひやりと冷たい感覚が走る。黒い金属片が、和道の耳朶の一部を覆っていた。

「はは、お前のダークノアへの抵抗を削ぐための装備、とでも言おうか。そのイヤーカフは現実に持ち帰っていいぞ」

「外れ、ねえ……」

 どういう仕組みになっているのか、右手でイヤーカフをつまんでも外れない。和道はもどかしくなってくる。その内に、また視界がぼやけて来る。柔道場はいつの間にか消え、和道は光の中に立ちすくんでいる。目の前のダークは既に影も形もなかった。

「お前の常識は既に歪められた…………私の手駒になる日を心待ちにするが良い……」

「ち、くしょお…………」

 再び、意識が遠のいた。


 数か月後。

 白浜の計画通り、T高の生徒の大半が予備戦闘員として改造されることになった。まだ予備戦闘員として完成していない者もいるにはいるが、ダークスウツの定着率は教員も含めて100%となっている。和道は、初期に改造され始めた素体であったが、まだ予備戦闘員として完成していない珍しい存在になりつつあった。下駄箱で次々と学ランを脱いでダークスウツ姿に「戻って」いくクラスメートを見て、和道は密かに溜息をつく。

「かーずちゃん!!」

 七尾が元気に飛びついてくるのを軽くあしらう。和道も、嫌々ながら学ランを脱いで、ダークスウツ姿になった。そうでないと教室に入れてもらえないからだ。

「まだ戦闘員になるの抵抗してるの?」

「お前毎日それだな……そうだよ、してるよ」

「ええ~毎日楽しいのに」

「そりゃ、洗脳された奴らはそうだろうよ。俺は戦闘員なんかにぜってえならねえからな。お前も約束破るし」

「いやあ、おれは和ちゃん以外に手出してないよ。白浜が悪いんだよ」

「言ってろ」

 和道が憮然とした表情でスニーカーを脱ぎ、ベルトに手を掛ける。ズボンを降ろすと、ダークスウツの上に真っ白なジョックストラップ──いわゆるケツワレを履いていることが分かった。股間を強調するフォルムに、ゴム紐が逞しい尻の両サイドを締め付けていた。和道はダークスウツになることには恥や照れが残っているのにも関わらず、こうした下着を曝すことに何の抵抗感もないようだった。それを見て、七尾はにやりと笑う。

「今日ケツワレなの?」

「ああ、『授業で使う』からな。お前もパンツくらい履けよ」

 そう言うや、和道と七尾は連れ立って教室まで歩き始める。和道の右耳には、相変わらず黒いイヤーカフが付けられたままだった。


 教室のドアを開けると、そこには異様な光景が広がっていた。朝練後で汚れたユニフォームを脱ぎ散らかし、裸になっていくクラスメート達。和道には見慣れた光景になっている。彼らは制服を着ようとせず、そのままダークスウツを展開させて普段着のように着こなしていた。

「おはよう~和道~」

 隣席の朔也がにこにこと笑いかけた。彼は律義にユニフォームを畳み、エナメルバッグにしまい込んでいる。汗を吸ったダークスウツが蛍光灯を照り返し、肉体の隆起を浮かび上がらせた。爽やか、快活、そんな言葉が似あうはずだった朔也の身体は既に淫靡に改造されきっている。『朔也が顔を近付けると、和道はそれに応じて口を開き、互いの舌を絡め合った。』くちゅ、と音を立て、和道の唇の端から唾液がしたたり落ちる。『これがこのクラスでの朝の挨拶になったのはいつからだろう。』和道は最早、その行為に違和感を抱くことはない。


 ──異常が正常となっていく中で、和道は少しずつ『正常』を見失っていた。そして、その喪失はダーク本人によって与えられた呪具であるイヤーカフによって封印され、二度と取り戻すことができない。


 それが、優介が導き出したイヤーカフの効果だった。和道は信じていない。『座席に固定されたディルドを挿入しながら授業を受けること』が、常識的な事象であると改変されてなお、信じていない。『集中力を高めるため』という尤もらしい理由が付けられただけだ。腹圧を入れることで、ディルドが前立腺をゴリゴリと圧迫し、無限の快楽を与える。和道はその感覚を貪るように楽しんでいたが、それでも自分は正常だと思っていた。『隣の朔也も獣のように小刻みに腰を振ってオナホにたっぷり射精をしている』わけであるし。『乳首だけでイキ狂うことも』『男同士で乱交することも』『クラスメートの前でオナニーに耽ることも』みんなやっているのだから、おかしなことではない。

「だから俺は」

ごぼっ、と無様な音を立てて、誰のものとも分からない真っ黒なザーメンがアナルからどろりと噴き出た。『クラスメートに輪姦されること』も遊びの一環である。

「おかしくなんか、なってねえ……ダークノア、の、戦闘員なんかに、ならねえ…………」

 いつの間にか夕陽が差し込む時間になっている。熱で痺れた頭の中で、柔道場に行かなくては、と考えていた。いつの間にか真っ黒に染め上げられた柔道着を取り出し、ザーメンの匂いが染み込んだそれを着ようかどうか迷う。どうせ柔道場でも乱交するのだ。最初から着なくても良かろう、と思い始める。また一つ、和道の頭の中で常識が改変され、イヤーカフに取り込まれていく。

「和道ってなんでダーク様に抵抗してるんだ?」

 朔也がきょとんとした顔で聞く。彼は一応ユニフォームを着て部活に行くようだった。

「そりゃ、お前だって最初は抵抗してただろ」

「まあな~。でももうおれ完全に洗脳されたし、終わってみると案外洗脳前と変わんないなって。シコって、寝て、部活して……」

 へへっ、と気楽な笑い声が響いた。和道は足元がぐらりと揺らぐ感覚に、にわかに焦る。


 ──そもそも俺は、何で洗脳されたくなかったんだ?


 揺れる。考えが、常識が、揺らいでいく。単純な恐怖感が和道を襲った。何が正しくて、何が正しくないのか。自分だけが異端という状況に疲弊したこともある。悪寒と汗が止まらない。体調を気遣われながら、和道は一人、七尾のもとに向かう。頭ではなく、身体がその場所を知っていた。

「やっと来たね、和ちゃん」

 人気のない空き教室で、七尾はいつものように彼を待っていた。和道は何度もここに来ていることを、にわかに思い出す。

「七尾、俺は…………」

「15回目かな、ここに来たのは」

「覚えて、ない」

 七尾はくすくす笑った。

「覚えてないように、してるからね。和ちゃんは困ったらここに来るようになってるんだ。自分の常識と今の現実に大きな誤差が生じると、困るだろ?それで、ここに来て、おれがリセットする。帳尻が合うようにして、記憶を少し巻き戻す。でも、帳尻が合うようにするってことは、和ちゃんの常識をもっと歪めるってことでもある」

「……そうか…………俺は、もう、何も分からなくなっているんだな……」

 そうだね、と七尾は応じ、脈絡なく和道の勃起した陰茎を逆手に握り、ゆっくりと扱きだした。和道は反射的に腰を突き出し、恍惚とした表情で身体をのけ反らせた。

「こんな風に、普通は友達同士でオナニー手伝ったりしないし、感じたりもしない。和ちゃんはみんなとおんなじ、変態にされちゃったんだね」

「俺は、俺、は…………」

「さ、どうする?リセットする?それとも、もう諦めて戦闘員になっちゃう?」

 揺らぐ。もうおかしくなっているのは分かったのだから、戦闘員になってしまっても良いではないか。そう思わなくもない。和道の視線はぶれ、中空でぴたりと止まる。

「分からない、俺はもう、分からない…………」

 うわ言のようにそう繰り返す和道に、七尾は業を煮やす。こんなにも和道を長く待つことになるとは思わなかったのだ。あと一押しというところまで来ているのに、彼はこんなにも手強く、しぶとかった。

「和ちゃんは」

 七尾が口を開く。

「本当は最初からダーク様に洗脳されたかったんだよね?」

 びくん、と和道の肉体が大きく揺れる。改造された身体が七尾の言葉に首肯するかのように。

「ひ……あっ、やめ…………そんな、嘘だっ…………」

「ほんとだよ。だってこんなにエッチな身体にされて、喜んでるじゃん」

 和道から表情が抜け落ちていく。屈服される男の顔は、いつ見ても七尾を興奮させた。

「おれや朔也が羨ましかったでしょ?そういえば、自分からダークスウツも着てたし」

「ああ、ああ…………」

 『戦闘員になりたかった』『最初から洗脳されてくて仕方がなかった』。受け入れた瞬間、和道の瞳は闇に沈んだ。だらしのない笑みを浮かべ、身体を七尾に預けていく。抗えない。抗う理由も、最早和道の中に残されていない。


『俺はダークノアの戦闘員になるために生まれてきた』

「俺はダークノアの戦闘員になるために生まれてきました」

 それは祝詞のように、何度も頭の中に響き渡り、何度も和道の口から発せられた。

『ダーク様に身も心も捧げられることが俺の喜びだ』

「ダーク様に身も心も捧げられることが俺の喜びです」

 これまでとは違い、ダークスウツに侵された身体を誇示するように、七尾の前で淫行に耽る。和道はこの上ない悦びの中で、何度も果てた。

『ダーク様に永遠の忠誠を』

「ダーク様に永遠の忠誠を」

 真っ黒な精液が教室の床を汚す。和道の宣誓が終わるとともに、イヤーカフはひとりでに外れ、精液の中で溶けて行った。かくして、和道の常識改変は終わり、これまでの異常が真の日常となったのである。以前のことなど思い出す価値もないとさえ思っている。

「洗脳率200%、改造率100%、性感帯開発ログ:陰茎、乳首、アナル。改造ログ:性欲増大、陰茎肥大、筋肥大、アナル拡張。調教ログ:報告回数320回、改造時間2608時間23分。性癖付与:自慰中毒、性交中毒。予備素体番号T1801225、人間名・柳瀬和道はダーク様の御手により、身も心も戦闘員として生まれ変わりましたことを誇りに思います」

 和道は予備素体として最後の報告を行う。七尾はそれを満足げに見つめていた。


エンドF:和道は常識を改変され、悪の尖兵として生まれ変わってしまった!


Comments

感想ありがとうございます〜! 周りの人がエッチになってる!!というのはさっくりした描写でもエッチさが増して良いのかなと思いました。ぼちぼち次もやっていきたいです〜

葉一

投稿ありがとうございます! 最高です! それしか言えない位エロさの暴力です! 陥落したT高の様子も異常さが際立って良いですねぇ! 次の作品も楽しみにしてます!

思兼


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