私が絵を描くときにどんなことを考えて七転八倒しているのか、備忘録も兼ねてブログにしてみます。
○○をどう描くかという技術的な話ではなく、その前段階である心や設計の話がメインです。
最後に意外な展開が……!?(伏線)
まずは完成図をご確認ください。
コンプエースの表紙用に描いたイリヤさんですね。
なんとなく不思議(鏡)の国のアリスっぽい衣装と、背景に散りばめられた時計っぽい要素。
連載中のお話はクッッソ激烈にハードで重い感じですが、雑誌の表紙にその雰囲気を持って行くのはあまりよろしくない気がしたので、こんな感じになりました。
ではここに行き着くまでにどんな変遷があったのでしょう。
いきなり一番大事な部分です。
よく聞くけど、テーマとモチーフって何だろう。
ぶっちゃけ私もよく分かってませんが、とりあえず下記のような感じでふんわり定義。
テーマ: 作者が伝えたい事、思い
モチーフ: それをどういう形で表現するか
まずはテーマを見つけるのに七転八倒のうちの五転くらいを使います。
うんうん唸ります。
数日アイディアが出ず、ふて寝を繰り返すこともあります。
アウトプットが何もないため、非常に辛い時期です。
そんな苦悩を乗り越え、テーマは以下のように決まりました。
「時間を遡り因果の不思議に触れる少女、というロマン」
当時のプリヤの内容がそんな感じでしたので、それを一枚の絵に落とし込もうと。
というのも、毎回雑誌表紙は漫画の内容ガン無視のグラビア感覚で描いていたので、たまにはちゃんと中身を反映しようぜということで……。
テーマは絵を描く上でのモチベーションともセットです。
なくても描けるは描けるのですが、伝えたいものがないまま長時間作業するのは苦行でしかなく、「なんでこの絵を描かなきゃならんのだ……」となって筆が止まること間違いなし!
「今」「自分が」「これを描く理由」を見つけることが、最低限必要です。
それは自分だけが分かっていればよく、どんなささいなものでも構いません。
たまたま今回は大仰なテーマになってしまいましたが、
「おっぱいがおっきいことは素晴らしい」
「脇ってえろいよね」
「このキャラのここすき……」
みたいなものでまったく構いません。
私も普段はそんなんです。
テーマが無いまま描かざるを得ないこともたまにあります。
たいへんつらい。
テーマが決まったので、次はそれをどう表現するか、です。
時間旅行を表したい……となると、やはりわかりやすいモチーフとしては「時計」です。
ドラえもんのタイムマシンで通る空間にも時計盤がいっぱい浮いてますよね。
あんな感じで時計盤をいっぱい描けば、なんとなく時間がテーマなことは伝わるでしょう。
わかりやすさは大事。むっちゃ大事。
……が、今回はあまりありきたりな表現はしたくない雰囲気。
というわけでまず思いついたのが、以下のようなアイディア。
「時計をただ並べるのではなく、奥に行くに従って時計の形が古くなっていく」
一番手前はデジタルな文字盤、それがアナログ時計になり、砂時計になり、日時計になり、最終的には大地と太陽そのものに至る、みたいな。
テーマ的には合ってそうです。
ですが描いてみるとまーーーつまんねぇの!
別に私は時計の歴史を表現したいわけじゃない。
それにこれはただの背景要素でしかなく、主役はあくまでイリヤ。
うーん、それじゃイリヤの方から決めていきましょうか。
「あっ、なんかアリス衣装のイリヤ描きたくなってきたナリ!」
はい、イリヤの方のモチーフは決まりました。
背景に比べてキャラの方がてきとう過ぎる気がしますが、普通はこんなもんです。
さてアリス衣装っぽいのを着せることに決まったので、絵全体の方向性がなんとなく見えてきました。
青いロングスカートをひるがえし、過去の世界へ降りていく不思議な旅。
アリスの雰囲気に合わせて、背景は柱時計をメインに据えると良さそうです。
1個だけでは空間が埋まらないので、いっぱい並べる方向で考えてみましょう。
過去へ落ちていくイメージで、とりあえずランダムに並べてみましたが……なんかイマイチですね。
いくつかアイディアを出してみます。
(1)ビルのように乱立する様々な柱時計
(2)廃棄され、穴(過去)に落ちていく柱時計の群れ
(3)奥は新品、手前のものほど風化していく柱時計
(4)下(過去)へと伸びる柱時計の螺旋階段
すっげぇ悩みましたが、いろいろラフを切った結果、(4)が良さそうでした。
結局メインはキャラの方であり、背景はキャラの隙間で見える程度のもの。
螺旋階段という法則性のある形状の方が背景として収まりが良かったのです。
一番頭を悩ます部分は終わりました。
あとはもう絵的に映えるよう、いい感じに配置して、描いていくだけです。
柱時計の螺旋階段ですが、さすがにこれを手書きするのは無謀が過ぎるので、素直に3Dで制作(それでもめっちゃ手間でしたが)
絵の情報量を足したかったので、周りには他の時計を散りばめることに。
最初に出した「奥に行くほど時計の形が古くなる」というアイディアの残骸となりました。
本当だったら柱時計の方も手前のものほど風化していったり、一個一個形が違ってるほうが情報量が増えるのですが……勘弁してくれ手間すぎる!
ちなみに試行錯誤している最中に左右反転してしまったらしく、文字盤が鏡文字になってます。
やっべ……いやでも鏡の国のアリスモチーフってことでギリいけるか!?
螺旋階段を降りていくイリヤ、という絵ではあるのですが本当にそのような位置関係で描いてしまうとイリヤより背景のほうがメインになってしまいます。
なのでなんとなく方向性だけ合わせて、螺旋階段の配置はイメージ的なものとしました。
それとイリヤの周りがさみしかったので、時計盤のような、星見盤のような謎の目盛りを配置。
集中線と同様の効果があり、自然とキャラに視線が行きます。
ついでにアリスを導く兎的なマスコットをイメージしてルビー、田中、ギルと、文字盤の反対側に目的地であるパンドラをSDキャラで配置。
おっっしゃ完璧だな!
描け。
塗れ。
以上。
今回のブログは上流工程の話であり、技術的な部分は省略。
ぶっちゃけ記事が予想より長くなりすぎて、作画のことまで書いてられねぇんだ。
すまねぇ……。
ざっくり言うと、
・普段より低い彩度
・絵の密度は背景で担保し、キャラの塗りはシンプルに
・色は不穏に、シルエットは軽快に
みたいな感じ。
ぱっと見かわいらしい感じなんだけど、根底には不穏さが滲む、みたいなのをやりたかったのです。
曇り空に虹を合わせたら不思議と神々しさが出てたのしかった。
とりあえず、私の描いた絵の話はここで終了です。
―――そう、「私の描いた絵の話」は、です。
さて、そんでは冒頭で雑に張っておいた伏線を回収しておきましょう。
今まで書いてきたテーマやらモチーフやらの話は、全部ただの前振りです。
じゃあ本題は何なのかと言うと。
これだけでは分からないと思いますので、皆様におかれましてはお手元にある黒星紅白画集blancのP13、あるいはキノの旅XX口絵をご参照ください。
まさか持っていない方はいらっしゃらないかと思いますが、一応、一応、念の為参考までに私が模写したものを載せておきます。
壁に刺さった時計の針の上を軽快に飛んでいくキノ、という絵です。
キノの旅20巻記念ということで、時間や時計をモチーフに描かれた絵とのこと。
もうお分かりですね。
モチーフかぶっとる!!!
しかも「時計」の使い方がシンプルかつ力強くてオシャレ!!!!!
そう、ある意味この絵は私が描いたものの上位互換と言っても良いかもしれません。
口絵と表紙という使用目的の違いがありますし、目指した方向性こそまったく異なるので、そのまま比べられるものではありませんが、だがしかし、同じモチーフでうんうん頭を悩ませたからこそ分かる、黒星さんのアイディアの凄さよ。
「時間」を「時計」で表現するところまでは良い。
誰でも考えつくでしょう。
その時計の要素を分解して針のみを抽出し、壁にぶっ刺してそれを足場にしようとか、どうやったら思いつくんですかね。
針のデザインの違いは、キノが旅してきた国の違いを思い起こさせ、壁に落ちる影は方向がバラバラなことで異なる時間軸を表現し、真っ白な壁は影によりその形をおぼろげに浮かび上がらせています。
壁(世界)と影(時間)で縫い留められた針(国)を軽快に飛び越えていくキノ。
彼女には影がなく、世界から浮きつつもその表情には気負うものはなく足取りは軽い。
こんなシンプル極まる絵から、ここまで読み取れてしまうのです。
要素の全てに意味が込められ、しかしそれを見る人に押し付けない。
勝てねぇ……勝てねぇよこんな神に……。
以上、黒星さんがイラストレーター界においてトップオブトップ、レジェンド、SSR、星5サーヴァントであることの解説ブログでした。
絵の解説記事に見せかけた、単なる黒星神の礼賛記事だったんだ、すまない。
もし需要があれば、こんな感じのなにかの解説ブログを今後も書いてみるかもしれません。
リクエスト等ありましたらコメント欄にどぞ。
球磨
2022-01-07 15:01:39 +0000 UTC