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対魔忍アスナ 第8話 裏切り

 第8話、書きあがりました。

 登場人物はアスナとユウキとリズで、シーンはなし。

 今回からアスナ編開始です。

 次回をお楽しみに!! 


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ユウキが失踪して二ヶ月。

 公には動けなくなったものの上層部の説得に成功し、アスナやキリトなどのユウキの知り合いたちは任務を免除されて、情報を集めて着実にユウキに近づいていた。

 そしてついに、キリトがユウキの姿を見つけ出した。


「キリト君!! ユウキが見つかったってホント!?」


 キリトの部屋にアスナが急いでやってきた。

 服は対魔忍スーツのままなので、おそらく任務帰りに直行してきたのだろう。

 

「見つかったって言うよりかは映っていた……だけどな。これを見てくれ」


 キリトがノートパソコンをアスナの方へ向け、動画を再生させる。


「ふむ、交渉は決裂というところかな」


 動画の中ではオベイロンがオーク相手に交渉しているところだった。

 その部屋は小さく、中には長机を挟んでオベイロンとオークが対面でソファに座り、オークの背後に2人、そして机の両端の傍に2人、オークの護衛が銃を構えて立っていた。


「へへっ、もう後に引けないんでな」


 明らかにその場は交渉をするという穏便な状況ではなくかなり切迫しており、何かの理由で交渉は決裂したようだ。


「ご主人様」


 と、オベイロンの背後にいた、顔には狐のお面をつけ、腰には剣を引っ提げてぴっちりとした真っ黒なライダースーツを着た背丈的に少女と分かる女性がオベイロンに声をかけた。


「ああ。……やれ」

「「——へ……?」」


 オベイロンの命令とともに少女が抜刀し、机の両端のオークの首がゴロリと床に転がる。


「コイツ……!?」


 刹那の間の仲間の死に動揺し、護衛の動きがわずかに遅れる。

 そのわずかな隙に少女は俊敏な動きでオークの左側にいた護衛に近づき首を刎ね、引き金を引く寸前だった反対側の護衛の心臓に素早く刺突を繰り出して心臓を一突き。


「う、嘘……だろ……」


 目を見開くオークの後ろで少女は剣を横に一閃。

 オークは首のない身体で机の方へ倒れこんだのだった。

 そして、ここで映像は途切れる。


「あの剣筋はユウキだと思うんだけど、どう思う?」

「私も……そう思う。でも、どうしてユウキが……」

「……もしかしたら洗脳されているのかもしれない」

「洗脳!? いつそんな……」

「いつかは分からない。だけどユウキが消える直近の任務の報告書を見たら、ある一つの任務だけ期間が遅れているんだ。しかもそこはアルヴヘイムの研究施設」

「じゃあ、そこでっ!」

「多分だが……。アスナ、この日以降でユウキの様子はおかしくなかったか?」


 報告書の日付を見て、アスナは思い出す。

 

「そういえば……。この日の数日後にユウキとALOをやる約束してたんだけど来なかったんだ。ユウキの部屋にも行ったけど何もないの一点張りで……。体調不良で任務も休んだのに病院に行かないで部屋にずっと籠りっぱなしで」

「多分その時……ユウキの中で洗脳が進行していたんだ。裏の世界の洗脳は性欲に直接作用するような洗脳方法が主だしな。だから……その……道具もあっただろ?」

「……うん」


 ユウキとは親友と言えるほどの仲で、何度もお互いの部屋で泊ったこともあり、部屋に何が置いてあるかは二人とも把握していた。

 だが、ユウキの部屋に何か痕跡がないか調べに行ったとき、ベッドにはアダルトグッズがいくつか転がっており、ユウキがそんな道具を隠し持っていることをアスナは知らなかった。

 

「ひとまずアルヴヘイムにいることは分かった」

「そうだね。あとはどうやってユウキを連れて帰るかだけど……」


 ユウキは動画で見た通りオベイロンの護衛をしていたし、オベイロンは自ら交渉の場に出てくるタイプのようだ。

 取引現場を押さえれば、その場にユウキがいることは確定している。

 あとはその情報をどこから手に入れるかなのだが……。


「実はリズが取引現場の情報を手に入れてきたんだ」


 キリトが二枚のメモをアスナに手渡す。

 

「これ……同時刻で二箇所で取引が開始されるって書いてある。つまり……」

「片方が当たりで片方が外れ、だな」

「二手に分かれるの?」

「ああ、それが確実だろ?」

「……ユウキに勝てるかな」


 取引が行われる日付で動ける人員はキリト、アスナ、クライン、リズベットだ。

 "絶剣"と二つ名がつけられているユウキの実力は2対1で戦っても必勝とは言えず、そんな状況であっても逃げられる可能性がある。


「大丈夫だ。動画を何度も見て思ったんだけど、少しユウキの動きが鈍って見えるんだ。見てくれ」


 キリトが再び戦闘を開始したところから動画を再生し、アスナをそれを目を凝らして見る。


「……あ! ホントだ。少しだけど動きが鈍い」

「洗脳の影響か、それとも洗脳に抗っているからなのか。どっちかは分からない。だけどユウキの実力は確実に下がっている」

「なるほど……」

 

 と、キリトはそんな予想を立てているが、本当はオベイロンとの淫蕩生活の影響で訓練などができず、動きが鈍っているのだ。

 だが、その理由は外れていても、ユウキは確実に弱くなっている。


「これなら勝てそうだね!!」

「ああ!! ユウキをあいつらから取り戻そう!!」

「うん!!」


 それから数日後……。


「リズ、準備はいい?」


 アスナはリズベットとともに取引現場へ赴こうとしていた。

 リズベットはアスナの親友であり、熟練したメイスの使い手でもある。

 首にはリボンを巻き、白のラインが身体の線に沿った形で入っている、紅を基調とした身体全体を覆う対魔忍スーツを着用し、腰にはメイスをぶら下げている。

 また、べビーピンクのふわふわショートヘアが童顔の彼女にマッチしており、非常に可愛らしく見える。


「もちろんよ。キリトとクラインはもう向かっているのよね?」

「そうだよ」

「よーし!! それじゃあ、アスナ。ユウキを取り戻しにいくわよ!!」

「うん!!」


 そして二人は夜を駆け、取引現場へと向かった。

 彼女たちが向かった取引現場は廃工場であり、月明かりに照らされて少し不気味であったが、二人はなんの躊躇もなく敷地内に入り、人の気配を探りながら進んでいく。


「人の声がするわね」


 リズベットがそう言って天井を指さすと、二人は天井を通っているパイプに飛び移り、パイプを使って話声のする方へ向かうと……。


「では、取引成立ということで」

「ええ、これからは貴方の製品を使わせてもらいましょう」


 二人の人物が話していた。

 一方はオベイロンで一方は初老の男性だ。

 彼らの周りには多くの獣人の護衛やオークの護衛が銃を背負っており、男性の傍にはそれらの中で最も屈強なオークが、そしてオベイロンの隣には仮面の剣士少女、すなわちユウキが立っていた。


「見つけたわね」

「リズは護衛達をお願いね。私はユウキを」

「ええ、分かってるわ。私じゃユウキに敵わないもの」


 熟練のメイス使いであるリズベットは実力は高いが、ユウキやアスナと比べると低いと言わざるを得ず、リズベットはユウキではなく護衛達の排除をすることとなった。

 対してアスナはユウキを打ち負かし、捕らえるのが仕事だ。

 あの映像通りの実力なら苦戦はするが、倒すことは可能だと、アスナは確信していた。

 

「それじゃ、行くわよ!!」


 掛け声とともにリズベットがメイスを構えて落下した。

 

「ぐべぇッ!!」


 落下スピードとメイス自身の重さによって、真下にいたオークの肉体が頭からひしゃげる。


「敵襲だ!! 撃て撃て撃てーーー!!」


 ——バララララララッ!!


 複数の場所からリズベットに向かってアサルトライフルの弾が向かう。

 リズベットは素早くその場から跳び、一人の護衛の横っ面にメイスを振り放った。


「ブゴォッ!!」

「油断するな!! 相手は対魔忍だ!!」


 司令塔である屈強なオークが命令を出す。

 守るべき初老の男性はその場で縮こまり、ガタガタと身体を震わせていた。

 そしてオベイロンはユウキを伴って、ひっそりとこの場から去っていた。


「やっぱりここから出てきたわね、オベイロン」


 通路から早歩きで逃げていたオベイロン。

 その通路の先に細剣を構えたアスナが立っていた。

 

「き、貴様!! アスナか!! くっ……ユウキ!! 俺を守れ!!」

「はい」


 オベイロンの隣に立っていたユウキがさっとオベイロンの前に立った。

 

「ユウキ……」

「やぁ、久しぶりだねアスナ」


 心配そうにしているアスナに対して、当たり前のように語り掛けるユウキ。


「どうして急に消えちゃったの? 私、ずっと心配してたんだよ」

「あはは、ごめんねアスナ。でも、ボクはもうご主人様の雌奴隷だからね。そっちにはもう戻れないんだ」

「ッ……!! 雌、奴隷って……まさかユウキ……オベイロンと……」

「セックス? したよ。ボクのおまんこの中にご主人様のおちんぽをいっぱい入れてもらったよ」

「そんな……」


 ユウキの衝撃的な言葉の連続にアスナは目を見開き、唖然とする。

 ユウキは本当に洗脳されているのだとまざまざと見せつけられた。

 彼女はあんな卑猥な言葉を言わないし、あんな犯罪者に愛しそうな目を向けない。

 

「とっても気持ちいいんだよ、セックスって。ねぇ……アスナもこっちに来ない? こっちに来てくれたらボク……嬉しいなぁ」


 ニコリと微笑むユウキはアスナの知っているユウキであったが、今の彼女の誘いに乗るわけにはいかない。

 

「それはできないよ、ユウキ……」


 油断なく細剣を構えながら、悲し気にユウキを見るアスナに対し、動揺していたオベイロンが落ち着きを取り戻し、笑みを浮かべながら呟く。

 

「クククッ。どうだ? 私の新たな奴隷、ユウキは? いい具合に私に染まっているだろう?」

「オベイロン。ユウキに何をしたの!?」


 オベイロンを害せないことを知っているアスナは、ユウキが何をされているかを知るために怒鳴るようにオベイロンを問いただした。


「何をした……か。まぁ、簡単に言うと洗脳だよ。ユウキはもはや私の駒であり、雌奴隷でもある。ククッ、知っているか。ユウキは実はアナル……ケツ穴を責めた時の方が反応がいいことを」

「ボクおまんこよりもお尻の方が好きだったんだ。これもご主人様のおかげで分かったことだよ」


 楽しそうにアスナに語り掛けるユウキの姿はアスナにとって、とても痛々しく、オベイロンに対する怒り、そして殺気がアスナの中でどんどん膨らんでいく。

 

「……許さない。ユウキの心を歪めて……純潔まで奪って……。オベイロン!! 貴方は絶対に許さない!! ハァァァァァッ!!!!」


 刺突。

 その神速の突きは"閃光"の名に恥じず、オベイロンは彼女のその動作すら死人することが出来なかった。

 だが、ユウキは別だ。

 怒りに満ちた、力強い突きを剣を振りぬいて素早く弾いた。


「ハ! フッ! クッ!」


 アスナはその一撃を弾かれたことに何も驚きはせず、連続で素早い突きを放ち、ユウキは余裕綽々で弾き、紙一重で避ける。


 ——キンッ……キンッ、カキンッ!! カンッ……キンッ、キンッ!!


(実力が下がってるって言ってもやっぱりユウキは強い!! 少しでも油断すればすぐに勝負がついちゃう……!!)


 幾度となく模擬戦で刃を交えてきたアスナはユウキの絶技を知っている。

 マザーズ・ロザリオだけがユウキの武器ではない。

 才能とその才能におごらず厳しい鍛錬を自身に課し、幾度となく死線を超えて裏付けられた彼女の技能そのものが武器である。

 ただの剣撃すらも並みの相手では防ぐことができなず、繰り出される技は達人の領域に達し、彼女の身体捌きはどんな攻撃も紙一重で避ける。

 

「でも、負けない……!! フゥゥウッ!! ハアアァァァッ!!」


 細剣でユウキの一撃を弾くのではなく、上に反らし、空いた胴に突きを放つ。


「クッ……!!」


 その突きを身体を後ろに反りつつ避け、後方に飛んですぐに態勢を整えると、一気に急接近し、回転しながら剣を振りぬく。

 アスナはその一撃を、手を細剣の上部に添えて細剣を盾にして受けてすぐにその場でギュルンッと一回転しつつ、僅かに後退し、勢いの付けた鋭い突きをユウキに放った。

 ユウキは上体を横に反らして避けたが、細剣がわずかにライダースーツを破いた。


「フゥ……やるねアスナ、流石だよ」

「ユウキこそ」


 距離をとった二人。

 余裕そうにわずかに口角を上げて笑みを浮かべているユウキをアスナは注意深く見る。


(ホントに……弱くなってる。少しだけど……確かに)


 剣を振るスピード、パワーなどは変わっていない。

 身体捌きも。

 ただ、体力は明らかに低下していた。

 ユウキは余裕そうに見えるが、呼吸の回数が多く、疲れが見える。

 前のユウキならこれぐらいでは呼吸は変わらなかった。


(持久戦なら勝機はある……!!)


 アスナはそう作戦を決めて、閃光の一撃を放った。






 

 

 それから30分近く、戦闘は続いた。


「ハァ、ハァ……ング……ハァ、ハァ……」

「ふぅ……勝負あったね、ユウキ」


 ユウキの体力がついに尽き、アスナがユウキの剣を弾き飛ばした瞬間、突きが首元で寸止めされて勝負は決まった。

 アスナはまだまだ余裕があり、ユウキも淫蕩生活に浸る前であればまだまだ持っていたが、今の彼女では30分が限界だった。


「勝負はついたみたいね」

「リズ」


 護衛達は全て片付け、勝負がつくのを待っていたのだろう、アスナの背後からリズベットが現れた。

 アスナはユウキから視線をそらさずにリズに声をかける。


「丁度良かった。これからユウキを拘束するから手伝って」


 オベイロンに力はなく、アバターであるためどうすることもできないため無視をする。

 今、重要なのはユウキを連れて帰ることだ。

 

「ええ、いいわよ」


 リズベットがアスナに近づく。

 アスナはリズベットを信用し、信頼しているから背後に警戒なんかしない。

 それは彼女が対魔忍であり、親友だからだ。


「……クス」

 

 アスナの背後でリズベットが薄っすらと笑みを浮かべている。

 ユウキが何をしてもいいようにアスナは意識を集中させていたから、彼女がメイスを振りぬいたことに気づかなかった。

 いや、気づいたときは遅かった。


「——ガッ!!」


 強い衝撃に目を見開き、意識が強制的にシャットダウンさせられる。


「ごめんね、アスナ。ご主人様の命令なの」


 ごめんと言っているにも関わらず、リズベットの目は氷のように冷たく、床に倒れ込んでいるアスナを見つめている。

 

「作戦通りだ。よくやった、リズベット」

「ありがとうございます、ご主人様」


 オベイロンとリズベットが敵対者同士とは思えない会話をする。

 これで分かる通り、これはアスナを捕獲するために作戦だった。

 いつリズベットが洗脳されたかは分からないが、彼女がキリトに情報を渡した時からリズベットはオベイロンの奴隷であり、ユウキの先輩でもあった。


「ありがとうリズ、助かったよ」

「いいわよ。同じご主人様の奴隷だからね」


 アスナに向けた冷たい視線とは違って、リズベットはユウキには優しい視線を向けた。


「さて、お前たち帰るぞ。アスナは……リズベットが担いで来い」


 その命令にリズベットがアスナを肩に担いだ。

 ユウキよりは大きな胸がリズベットの肩に当たる。

 

「ご主人様好みの大きさね」

「いや、私はもっと大きな方が好きだ。丁度肉体改造装置を購入したところだ。試運転がてらアスナに被検体になってもらう。クククッ……」


 機嫌が良さそうに薄く笑ったオベイロンはリズベットとユウキを伴ってこの場を去った。

 帰還しないことを不審に思ったキリト達が廃工場に来ると、大量のオークと獣人の死体だけがあるだけで、アスナとリズベットの姿はもちろん、痕跡までがなかったのであった。

Comments

投稿お疲れ様です とうとう始まってきたアスナ編、洗脳済みの仲間は他にもいたという展開にかなり衝撃を覚えました。できれば、リズの洗脳も見てみたいと思える位に。 監獄戦艦2との平行執筆に体調等々に心配な限りですが、無理のないペースで続けてくださればと思います。次の投稿も楽しみにいています。

ヒゲ


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