その森に入ってから、キノは柄にもなく狼狽えていた。 道すがら突如として現れた鬱蒼とした森を進んでいくと、突如エルメスが動きを止めたのだ。キノは不思議に思いエルメスに話しかけるが返事は無い。キノは怪訝な表情を浮かべながらエルメスから降りると宥めるようにエルメスに話しかけながら相棒の様子を窺った。そしてすぐに異状を認めることになった。 エルメスはその彼方此方に錆が浮かび、つい先ほどまでの姿が嘘のように朽ち果ててしまっていた。まるで長らく文明から遠ざかり放置されていたかのように。 相棒を喪失するという突然の出来事に狼狽えるキノだったが、時を同じくして背後より忍び寄る複数の足音は聞き洩らさなかった。 キノは持ち前の体躯を生かし、素早く身構えるために腰の武器を手に取った。 その時キノの脳が異常を感知した。 指先に触れた重い鉄の感覚に、 身体が感じた事の無い不思議な抵抗を示した。 それでもキノは身体を行動に移した。 正体不明の抵抗を押しやりカノンを引き上げると、 今度はまた違った違和感がキノを襲った。 引き揚げられたそれは扱いなれたカノンではなく、 赤茶けグズグズになった只の鉄屑だったのだ。 立て続けに襲い掛かる正体不明の違和感。 キノは状況を整理しようと頭をフル回転で巡らせた。 そこで初めて最初の違和感に気が付いた。 銃の扱い方がわからない。 いや、銃とは何か? 何故自分はここに居る? 今何をしようとしていた? 自分は一体何者なのか? 頭の中から記憶が剥落するように、 先刻までの事が次々に思い出せなくなっていく。 キノは押し寄せる正体不明の恐怖に動搖を隠せなくなっていた。 キノが震える手を見つめていると、 目の前から誰何するような声が聞こえた。 その声に反応しキノが顔を上げると、 そこには数人の屈強な男たちが立っていた。 その男たちを見るなり、キノはばつが悪いように目を逸らした。 男たちの出で立ちは、キノが知るどこの国のそれともかけ離れていたのだ。 赤銅色に灼けた肌、 それを彩る全身の刺青、 その身を帯びる原始的なアクセサリーや武器といった装備品、 そして何よりキノが意識したのは、剥き出しになった男性性器だった。 全て異質な存在である男たちであったが、 キノはそれが何故異質であるのかも分からなくなってきていた。 キノは意識が朦朧としてきていた。宛ら夢と現の区別がつかなくなるように。溜まらずふらついたキノを気遣ってか、男たちの中の一人がキノを支えようと手を伸ばしてきた。 キノは僅かに残った本能を発動させ、男に摑まれたその手を払いのけた。するとキノの袖口がまるで水を吸った紙切れのようにするりと引き千切られた。 キノは慌てて己の身体を見やった。すると纏っていた衣類が端々からぼろぼろと朽ち果てて崩れ落ち始めていた。 キノは新たな異常に耐えかねたのか、その場に倒れ込んでしまった。 キノが目を開けると、そこは森の中の小さな村だった。 簡素な木材だけで誂えられた小屋の中に隙間から朝陽が差し込む。 キノは一糸まとわぬままの姿で夫と横たわっていた。 何も変わらないいつもの優しい風景。 何をするんだったか。 キノは暫し想いを巡らせ、己の仕事を思い出した。 朝餉の支度、我が子の乳やり、村の共同作業、やる事はいくらでもある。部族の女は仕事が尽きない。 キノは夫を床から起こすと、てきぱきと朝餉の支度に取り掛かった。 キノの忙しい日常が、今日も始まるのだ。 昼下がり、己の乳が滴るのを感じたキノは、外で日差しを浴びながら我が子に遅いお昼を与えていた。 忙しく乳を飲む我が子に慈しみの眼差しを注いでいると、日差しを遮り話しかける者が居た。 具合はどうか? そう優しい声で語り掛けてきたのは村の長老だった。 キノはおかげさまでよくやっているという旨を長老に伝えると、 長老はうんうんと長く白いひげを撫でながら満足げに頷いた。 そして不意に不思議な事をキノに訪ねてきた。 過去は思い出す事は有るか? その問いにキノはきょとんとした眼差しを長老に向けるだけだった。 過去とは何のことだろう? キノが困った顔をしていると、長老は少し哀しそうにキノに不思議な話を語り始めた。 この森は外の人々から「部族の国」と呼ばれた場所。 そしてまたの名を「錆色の国」。 この森に入り込んだ外部の存在は、 滞在した時間に比例して錆び付いてしまう。 金属、衣類、木材、はては人々の記憶や経験まで。 故に危険ば場所とされ、知る人間はまず近付かない。 しかし運悪く踏み入れてしまった人間は全てを失ってしまう。 そして失ったモノを埋めるように現状をありのまま受け入れてしまうというのだ。 村はそんな不運な人々を、村の一員として受け入れているらしい。 其方もまたその一人だ キノは唐突に語られた突飛な話に思わず吹き出してしまった。 そしてすぐに長老に失礼を詫び、落ち着いた表情で語った。 自分はいま愛する夫と我が子、心優しい仲間たち囲まれてとても幸せであるという事。思い出せない過去は必要のない存在。自分は過去より未来に生きるという事。 キノがそう語り終えると、長老は目を閉じて感慨深そうにうむと頷いた。そしてキノと子供の頭を軽く撫でると、ゆっくりとその場を去っていった。 後に残されたキノは自らの思いを口に出して語ったからか、 無性に夫の事が恋しく、そして欲しくなっていた。 夫の愛が欲しい。 そう心で呟くと、キノはその場から立ち上がった。 そして今日の仕事を終えて帰って来る夫を温かく迎えるべく、 愛しのわが家へと足を急いだ。 その夜のキノはいつにも増して、夫への主張が激しかった。 夕餉が終わって我が子を寝かしつけると、 徐に夫の前に座り込みうっとりとした眼で舌なめずりをしながら夜の営みに向けたアピールを始めた。 嘗ては慎ましかったが今は豊かに育った己の乳房を揉みしだく。 するとすぐに先端から乳白色の液体が噴き出した。 液体はキノの両乳房にあしらわれたリングを濡らし、ぽたぽたと淫靡にキノの肢体を彩った。 夫は即座に立ち上がり、据え膳を貪り始めた。 夫の愛を受け、キノは満足そうに倒れ込んだ。そして全身を以て夫を受け入れる。 そんな愛欲の宴の最中、キノの脳裏に不思議な光景が浮かんだ。 それは今とはまるで違う白い肌に重苦しい布地を纏い、 不思議な鉄の塊に跨って世界を駆け巡る自分だった。 その目は遠くを見つめ、どこか不思議な表情をしていた。 すぐに長老の言葉が思い起こされた。 あれが過去のボク? ボクって誰? 不意に押し寄せた名状しがたい不安がキノを包み始めた。 それから逃れようと夫の背中に回した手に、ぎゅっと力を込めた。 それをキノの要求と捉えたのか、夫は一層の力で自分自身をキノの中へと突き進める。そしてキノの奥底に己の猛りを叩き付けた。 熱く灼ける想いが注がれた途端、キノの中で燻り始めていた不安が一気に消し飛ばされた。 いつも以上の絶頂と共に、キノは夫からの慈愛と快楽によって満たされたまま意識が遠のいていった。 不安な過去はもう要らない。 いま必要なのは未来の幸せ。 それをこれから築いていく。 愛する夫と我が子とで。 この時キノは夫との間に第二子を授かり、 より一層の幸せな日常を家族で享受していく事となる。 Twitterで次に描くキャラを抽籤リクエストしたらキノの旅のキノになったので、いつものぼくワールドを展開してみました。 アンケートで「おっぱい増量」をご希望の方が多かったのでそのようにしてあります。母乳はぼくの趣味です。 駄文はホントいつにも増してオマケなので、 軽く読み流してやってください。