【触手装備村人シリーズ】 https://t589423.fanbox.cc/tags/%E8%A7%A6%E6%89%8B%E8%A3%85%E5%82%99%E6%9D%91%E4%BA%BA 最悪だ、と何度目かの悪態を口の中で吐き捨てた。 朝方。宿屋を出て活気づいた街中を移動している道中、先を歩くパーティーの後ろを少し離れて着いていく。 肌が汗ばんでいるのは頭上から降り注ぐ日差しのせいだけではない。 防具の下、上半身をに張り付くインナー。その裏側に無数に生えた襞のように細かな突起物が先ほどから皮膚の上を撫で、這い回る。まるで一部のみを別の生き物に舐め回されているような不快感がずっと絡み付いては拭うことすらもできない。これが不快以外の何者であるか。 幸い、装備したインナーからははみ出すことは無い。しかし、胸や臍、脇腹や背筋と至る所を常に触れられている状態で散漫するなと言う方が酷だ。 なぜこんな変態装備を身に付けなければならないのか。 素知らぬ顔して先を歩いている四人――その後尾、ローブを羽織ったそいつはこちらの視線に気付いたようだ。ゆっくりとした動作で立ち止まり、そして隣までやってくる。 「何ちんたら歩いてる?」 お前のせいだろうが、と喉元まで出かかった文句をなんとか堪えてた。けれど、やつの手に背中を撫でられた瞬間、防具の下で一斉に細かい触手たちがぞわぞわと暴れ出し、思わず体が強張る。 その触手の暴動は背面部から前方へと一気に押し寄せ、同時に乳首に絡みついていた触手が硬さを増したのが分かった。先程まではちゃぷちゃぷと皮膚を這い、柔らかく包んでいただけだった触手たちは性急な仕草で乳首を刺激する。思わず前のめりになりそうなところを、「支えが必要か?」と隣の魔導士の男――メイジに囁きかけられ睨みつけた。 「必要……ない……っ!」 「そうか。強がるのは結構だが、この調子じゃ日が暮れるぞ」 「……ッ、分かってる!」 コリコリとインナーの下で乳首を捏ねられ、声が震えそうになるのを誤魔化そうとしたのが裏出に出た。思ってたよりも大きな声が出てしまい、先を歩いていた他のパーティーのやつらがこちらを振り返る。 「どうした、何かあったのか?」 いの一番に声をかけてきたのはイロアスだった。 こいつには異変を悟られたく無い。その一心で「悪い、なんでもない」と誤魔化す。 こいつは変なところで敏い、気をつけなければ。 「……スレイヴ殿、宿を出てから顔色が優れないな。もう一日ここで休んでもいいのではないか?」 「大丈夫だ。……大したことは、ない」 「なんだ、疲れてんのか? 抱き抱えてやろうか」 続いて、ナイトとシーフが声をかけてきた。 揶揄するシーフに腹が立って睨みつければ、「冗談だろ」とあいつは手を挙げる。 「全く、シーフは……」と呆れたように呟き、イロアスは改めてこちらを見つめてきた。 「スレイヴ、無理はするなよ。……お前に倒れられた方が響く」 勇者様の一言は重くのし掛かる。 分かっている。こんなところでちんたらしてる場合ではないのだ。この世界のどこにでもこいつの助けを求めている人間はいる。 こんなくだらないことで足止めをさせるわけにはいかない。臍の窪み、背筋の凹凸をたっぷりと舐め、時折吸盤のように変形してちゅうちゅうと皮膚に吸い付いて来る触手からの攻撃を必死に堪えながら「分かってる」とだけ答えた。今度は声は震えなかったはずだ。緊張と愛撫で尖り切った乳首をぢゅぷ、と吸い上げられるのを必死に平常心で耐えながら、再び歩き出すイロアスたちにただほっとする。 メイジは相変わらずニヤニヤと笑っていた。 そして。 「……っ!」 どさくさに紛れて、臀部に触れて来る手に目を見張る。メイジは微笑みを崩さないまま、「辛くなったら言え」と衣類越しに尻の割れ目をなぞった。 この男、と思いっきり振り払おうとすれば、メイジはそれをひょいと躱して何事もなかったかのようにイロアスたちに着いていくのだ。 ――クソ、あの変態魔導士が……! 今朝、出発前に宿屋の部屋へと訪れてきたメイジのことを思い出すだけでもはらわたが煮え繰り返りそうになる。 ◆ ◆ ◆ きっかけは昨夜、普段身につけていた装備の破損だった。 ほぼ布切れと化してしまった俺のため、イロアスが新しい装備を用意する、と言っていた。別にお下がりでも急拵えのものでもいいと言ったのだが、あいつは昔から頑固だった。 結局一晩待たされたあと、翌朝あいつの代わりにメイジのやつがやってきたのだ。 「ほら、新しい装備だ」 「なんでお前が渡すんだよ」 「勇者サマに頼まれて俺が特別にバフかけてやったからだ。そのついでだ、感謝しろよ」 ……とてつもなく嫌な予感がする。 皮袋から取り出したインナーは見たところ変なところは見当たらない。てっきり変態御用達の際どい装備でも渡されると思ったが、見たところ動きやすそうでしっかりとした生地のそれだ。 しかしこの男が何もしないわけがない。 「なんだよバフって」と念押しをするように尋ねるが、メイジは「着りゃ分かる」と相変わらず気色の悪い笑みを浮かべるだけだった。 「……なら、着替えるからさっさと部屋から出ていけ」 「断る。効能がちゃんと発揮されるかこの目で確かめたいのでな」 「……」 「今更裸を恥ずかしがる間柄でもあるまいし、それとも俺に着替えさせろとでも言うつもりか?」 「……っ、なんも言ってないだろ! 余計なことをするな!」 「はいはい、じゃあさっさと着替えろ。あいつらが起きて来るぞ」 なんで俺が駄々を捏ねているように扱われなければならないのか。 釈然としないが、このままではこの男に脱がされ兼ねない。それならばこの男の前だろうが自分の手で着替えた方がマシだ。 一応メイジに背中を向けたまま、着ていた寝間着を寝台へと脱ぎ捨てていく。そして、上裸の状態でインナーを手に取った。匂いを嗅いだり触り心地を確かめ、念の為変な穴が空いてないかも確認した後――俺は頭からそのインナーを被った。 肌触りもサイズも悪くはない。寧ろ皮膚に馴染んでいくような……。 「……あ?」 次の瞬間、皮膚に接触していた部分がもぞりと動き出した。虫か何かでも挟まっていたのかと手を伸ばそうとした瞬間、その違和感は上体に広がった。 「……っ?! な、に……っ?!」 ぢゅぷ、とインナー全体が一匹の魔物のように皮膚に吸い付いてきた。比喩でも何でもなく、本当に。 見えない何かに上体だけを口に含まれ、しゃぶられるような感覚に驚いて慌ててインナーを脱ごうと裾を掴むが、びっちりと皮膚に張り付いたそれはどれだけ引き剥がそうとしても寧ろ皮膚を守ろうと厚みを増す。 なんだこれ、スライムか。 「お、おい、なに、なにかいる……っ! 脱げない……っ!」 「ああ、無理に脱がそうとしない方がいい。刺激を与えられた箇所は主人を守ろうとより活発になるからな」 「は……っ?」 にわか信じられなかった。 この男の仕業か、“これ”は。 性根が捩れ切ったやつだとは思っていたが、ここまでするとは思わなかっただけに理解の方が追いつかない。 固まる俺を前に、メイジは何故だか得意げな笑みを浮かべる。 「大抵の攻撃なら傷一つ与えられないだろう」 「お、おい……っ、ぅ……」 「無限修復――というのは建前で、装備した人間の精気を吸って自ら修復する、という修正をこいつは持っていてる」 説明されている間もうぞうぞと蠢くそれらに気を取られて話が入ってこない。つまり、この男がろくでもない真似をしやがったと言うことは間違いないだろう。 かと言ってこれを受け入れろと言われて分かりましたとなるわけがない。なるべく刺激しないように裾を引っ張ろうとして、腹回りの触手に腹筋を刺激される。痛みはない。指圧に近いその絶妙な力加減に耐えきれず、噛み締めた歯の奥から息が漏れてしまう。 「……っ! ふ、……ッ」 「無駄だ。俺が解除魔法をかけない限りそいつの装備は解けない」 「ふ、ざけんなお前……ッ! っ、こんな、余計なことを……っ」 「随分な物言いじゃないか。仲間思いの健気な魔導士になんだ、その言い草は」 自分で言うやつがあるか、とメイジを睨んだとき。傍にやってきたやつにわざとインナーの上から乳首をつねられる。瞬間、一斉に触手たちが蠢くようにひとつの吸盤へと形を変え、そのままぢう、と乳首を吸い上げるのだ。 「っ、く、ひ……ッ!」 「因みにこれが精気を吸っている状態だ。どうだ? 痛みはないだろ?」 「わ、分かるか、こんな状態で……ッ! くそ、き、もちわるい……んだよ、これ……っとめろ……っ!」 「口の利き方が分かってないみたいだな、スレイヴちゃん。……お前が怪我をする度に治癒のため中断されては面倒だ。足手纏いになりたくないならそれ相応の覚悟は必要なんじゃないか?」 痛みどころか局部に与え続けられる刺激でそれどころではないと言うのに、つらつらと尤もらしい言い分を並べるメイジには怒りしか沸かなかった。 そして、否定することができない弱い己にもだ。 「……っ、……クソ……」 俺が言い返せなくなると、やつは笑った。 「傍から見れば普段と変わらないだろう。お前が妙な真似しなければいいだけの話だ。……これくらいで根を上げてたらこの先どうする?」 「も、いい……黙れ……っ!」 「そうピリピリするな。まるで発情期の猫みたいだな」 「……ッ、……」 クソ野郎、変態魔導士。 何を言ったところでこの男を喜ばせることになることはわかった俺は、喉元まで出かけた罵詈雑言を飲むことしかできなかった。 それが今朝の話だ。 その後他の奴らと合流して宿を出て――現在に至る。 移動する間も装備の下では常に意志を持った触手の突起が上半身を包み込み、やわやわと中途半端に刺激され続けるという最悪のコンディションの中俺は他の奴らに着いていく。 メイジの言う通り、外部からの痛みを伴う攻撃を除けば強引に吸われるようなことはない。 が、だとしてもだ。 「……っ、……」 どうしても胸の先と下半身に意識が行く。 勃起しそうになるのを必死に堪えようとすればするほど、神経がぞわぞわと昂っていくのだ。つまり、悪循環。こんな状況でいざ戦闘となると生きた心地がしない。 クソ……。 おかげで他の奴らの会話にもまともに反応できない。 怪しまれるようなことは避けたい。 「そういやスレイヴ殿の新しい装備、メイジ殿が防御魔法をかけたと聞いたが……貴殿は多才だな。そんなことまで出来るとは」 「強化系の魔法に興味が湧いてな。実験的なものだったんだが……スレイヴちゃん、具合はどうだ?」 ふと、前で談笑していたナイトとメイジがこちらを振り返る。嫌な予感がし、思わず一歩下がる。 何を言ったところで絡まれそうな気配がし、「普通だ」とだけ返せばメイジは口元を緩める。 「普通か。そりゃ結構」 「新しい装備もスレイヴ殿によく似合っているな」 「選んだのは勇者サマだ。俺はそれにちょっとした魔法を付与しただけだ。勇者サマ、スレイヴちゃんに似合う装備を小一時間悩んでいたからな。そんなの、適当でいいってのに」 「……聞こえてるぞ、メイジ」 「そう怒るなよ勇者サマ。荷物持ちでも一応パーティーには変わりないからな。装備の質は面子に関わる、それは俺も同意だ」 「面子も大事だが安全性も必要だ。スレイヴには単独でお遣いを頼むこともある。何かがあった後では遅いからな」 「かと言って、ただ過保護なだけじゃ……っ、おっと、怒んなよイロアス」 「……」 前で四人がなにやら話し込んでる。 周りの喧騒がうるさくてあまり内容は入ってこなかったが、イロアスの顔がやや険しいところからしてまたいつものようにシーフが余計なこと言ったのだろう。 このまま前で勝手に盛り上がってこちらに話題を振ってこないでくれ、という気持ちで無言で着いていってると、不意に立ち止まったメイジが目の前に立ち塞がる。 「な、んだ……っ、う゛……っ!」 いきなり服越しに乳首を抓られ、ぎょっとした。痛みよりも今朝と同様一斉に乳首に集中する触手に驚き、悶える俺を見てメイジは笑った。 「ほら、痛くないだろ?」 「は、なせ……ッ!」 「おっと失敬。摘みやすそうな場所がなかったもんでな」 「見ての通りだ」とそのままこちらを振り返っていた三人の元へと戻っていくメイジ。どうやら俺のインナーの効能について説明してたのだろうが、もっと他にやり方があっただろ。 「おいおい、本当かよ。今スレイヴ声をあげてただろ」 「それはこいつが小心者なだけだ。痛みはないはずだ」 「ま、メイジ様が言うんならそうなんだろうけど――で、どうだったんだ? スレイヴ」 シーフには見えていたのか、ニヤニヤと笑いながらこちらを見てくるシーフを睨む。イロアスとナイトには見られなかったらしいのが不幸中の幸いか。……いや、良いことなんて何もない。 「……ない」 「そりゃよかった」とメイジが笑う。それからすぐに別の話題に移ったようだ、それ以上絡まれることはなかったが胸はまだ触手が吸い付いていた。 こんな状態がいつまで続くのか。これにも慣れる時が来るのか。そんなことをぐるぐると考えてはただ目の前が真っ暗になっていった。 【続く】 二話 https://t589423.fanbox.cc/posts/9502466