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田原摩耶
田原摩耶

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【総集編版】強制泥酔尾張in政岡お誕生日会四次会※【↑500/12,800文字/政岡×尾張泥酔/キス/ケツ舐め/誘い受け】

 ――学生寮、昼下りの自室前廊下。 「明日、政岡の誕生日?」 「そーだよ、何かしてあげなよ」 「そーだそーだ、絶対当日アンタになにかしてもらえるって期待してそわそわしてて目も当てられないんだからね」  同じ声、同じ顔でこちらを見上げてくる生徒会会長補佐結愛、乃愛。俺にはどっちがどっちだか未だ見分けが付かないが、この際置いておこう。  問題はその内容だ。  ――政岡の誕生日。  いきなりやってきてピンポン連打したと思えば、そんなことをわざわざ言いに来た双子にド肝を抜かれていた。  人は誰しも生まれた日があるのは分かっていたが、意識したことなどなかった。そもそもあいつだって俺には一言も言ってこなかったのだ。 「というかそれ、俺に言っていいのか?」  政岡的には知られたくないやつじゃないのか?と尋ねれば、結愛と乃愛は「いーよ」と声を揃えた。 「だってこのまま恋愛イベントもなにもなかったときの方が可哀想じゃん」 「ちょ、ちょっと結愛! そこまでは言い過ぎだって!」 「いいでしょ別に、どうせとっくにこいつにもバレてんだからさ」 「ねー、尾張元」と表面だけ可愛い笑顔を浮かべて擦り寄ってくるのが兄の結愛の方ということか。 「まあ、この会話は一応聞いてないことにしといてやるよ」と乃愛にフォロー入れれば、「当たり前だろ」と吠えられる。なんなんだこの双子は。 「ってなわけだから、僕たちはちゃんと伝えたからね! 精々ビッチらしくその下品な体でうちの会長癒やしてあげてね」 「そーそー、そうすれば機嫌良くなって僕たちもハッピーだから」 「……お前らな、それが人に物を頼む態度かよ」 「違うの?」 「違うの?」 「秘密。こっから先は有料だ」 「性格悪〜!」  お前らが言うな、とツッコミを入れつつ俺は双子の補佐と別れることとなった。  嵐のようにやってきて、嵐のように去っていく二人を見送った俺は一度部屋へと引っ込む。  部屋の奥、ソファーに寝っ転がりながら岩片は「長かったな」と顔だけこちらを向けた。そんな体勢でよく眼鏡が落ちないな、と思いつつ俺は「色々あってな」とだけ返す。 「色々?」 「双子の会長補佐がきてたんだよ。ほら、前にお前の真似してたやつら」 「へー、なんの用で?」 「大したことじゃねえよ。言いたいことだけ言って帰っていきやがった」  言ってから、何故自分でも誤魔化してしまったのかが分からずに戸惑った。  暫くこちらをじっと見つめてきた岩片に冷や汗が滲む。けれど、岩片の視線はすぐに外された。 「ふーん。ま、別にいいけどハジメ、喉乾いたからついでにジュース取って」  どういう脈絡だ。 「お前、休みの日だからってあまりだらけすぎるなよ。……ほら、これでいいのか?」  仕方ないので冷蔵庫から取り出した炭酸ジュースのボトルを渡せば「おー」と起き上がり、それを受け取る。  ――それにしても、政岡の誕生日か。  明日だって言ってたな。  なんて考えていると、伸ばしたままの手を岩片に引っ張られて驚く。  強い力で引っ張られ、「うおっ!」とバランスを崩しそうになったところでなんとかソファーの背もたれを掴み、耐えた。 「っ……お前、危ないだろ」 「ハジメ、お前なんか隠してないか?」  人の言葉も無視して、静かに尋ねてくる岩片に内心ぎくりとしそうになるのを耐えた。  そして「隠してない」と答えれば、分厚いレンズ越しからでも分かるほどじっと岩片がこちらを見てくるのだ。 「なんだよ」 「じゃ、言ってないことは?」 「政岡が誕生日だってよ」 「ふーーん、なんですぐ言わなかった?」 「お前には関係ない話だと思ったからだよ。……ほら、もう良いだろ。離せよ」  そうやんわりと岩片の手首を掴めば、思いの外あっさりとその手は離れた。そしてすっかり興味を失ったかのようにジュースをラッパ飲みするのだ。 「零児の誕生日か。なんでハジメに言って、俺には教えてくんなかったんだろうな?」 「お前が余計なことするからだろ」 「余計なことだって? 仲良くなろうとしただけだろ」  そう笑う岩片。そういうところだろ、とは敢えて言わないでおくことにする。 「じゃ、祝ってやんねえとな」 「え、お前が?」 「当たり前だろ、トモダチだからな」 「……………………」  そう唇の端を持ち上げ、気味の悪い笑みを浮かべてみせる岩片に背筋がぶるりと震えた。  こいつ、何を企んでるんだ。絶対ろくでもないことだけは分かるが。  悪い、政岡。あと結愛、乃愛。なんか俺、余計なことしたかもしれない。  ここには居ない双子にもついでに謝りつつ、俺はニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべる御主人様を見守っていた。  ◇ ◇ ◇  ――そして翌日。  政岡の誕生日当日がやってきてしまう。  昨夜、岩片のやつは遅くまでごそごそとなにかしていたようだが結局何をしていたかは分からない。  政岡とは気の合う友人という関係でもない。そういや俺たちの関係ってなんなんだ、よくわかんねえな。  というわけで悩みに悩んだ結果、以前政岡が好きだって言ってた飲料メーカーのロゴ入りタオルでも買ってやる。正直あいつがなに好きなのかとか他に知らねえから喜ばれるかわからないけど、政岡ならなんでも喜びそうだなという予感はしてた。  ジュース一本だけ渡すのも可哀想だしな、といろいろ言い訳並べつつ、取り敢えず岩片が動き出す前にさっさとこの誕生日イベントを終わらせるかと生徒会室へと向かった。  ◇ ◇ ◇ 「おーい、政岡いるか?」  ――校舎、生徒会室前。  相変わらず汚えし音漏れがうるせえ生徒会室の扉をガンガンと叩けば、思いの外すぐにその扉が開かれる。  そして現れたのは『本日の主役』という襷を肩がけした能義だった。色々言いたいことはあったがキリがないので触れないでおく。 「おや、尾張さんではございませんか。貴方も会長のお祝いに来たのですか?」 「“も”……って、まさかお前もか?」 「そんなわけないでしょう、私は後片付けですよ」 「後片付けってことはもう終わったのか?」 「ええ。ですが今ならまだ食堂で二次会やってるんじゃないですか?」  朝だぞまだ、迷惑すぎる。 「そうか、わかった。教えてくれてありがとな」 「いえ。きっと会長も、貴方が祝ってくださるのだと分かれば泣いて喜びますよ」 「……だといいけどな」  そんな話もほどほどに俺は能義と別れ、政岡たちが二次会をやっているらしい食堂へと向かうことになった。  それにしても朝から元気なやつだ、と思ったが日付が変わってからずっとそのままきている可能性の方が大きそうだな。  出来上がっていなければいいが、そう願う方が無理な話な気もする。  というわけで、俺はそのままの足で学生寮まで戻ってくる。朝というのに登校準備している生徒の少なさにも今更驚かない。  そしてやってきた学生寮、食堂。 「……っ、うわ」  食堂の残状を前に、思わず口に出していた。  ここで抗争かなにかあったのか?と思うほど荒れに荒れた食堂内。食堂の壁に飾られた『れいじくん誕生日おめでとう』と画用紙で作られたような飾りと、床に散らかった色とりどりの紙吹雪がなければ、ここが誰かの誕生日パーティー会場などとは気付かなかったに違いない。  という今現在進行形で俺の脳も理解を拒否してる。  そしてこのパーティーの主役である男の姿も見つけることができた。  食堂の奥の奥、隅っこのテーブル席でやつは伸びていた。机の上にはそこらのコンビニで掻き集めてきたような酒の缶やグラスが転がり、既にパーティーはお開きの後だったようだ。  酔い潰れている政岡以外に人の姿はなかった。 「……はあ」  どうなってんだ、この学校は。と、ここへ転校してから何度目かの溜息を吐く。  それから俺は転がってる空き缶を回収し、ゴミ箱に放り込みながら政岡に歩み寄った。 「政岡、おい。起きろ。……政岡」  そしてその肩を掴み、耳元で何度か声をかけたときだった。いきなり政岡の目はぱちりと開き、そして政岡は飛び起きる。 「っ、お、おわ……尾張?! な、なんでここに……っ」 「能義から聞いたんだよ。ここに居るだろうって。……お前、せめて部屋まで連れて行ってもらっとけよ」 「こんなところで寝てたら体痛めるぞ」そう、目を白黒させていた政岡に続ければ、ようやく俺が夢ではないと気付いたようだ。びっくりしたように背筋を伸ばした政岡は「尾張?!」とまた驚いていた。 「ああ、そうだよ」 「う、やべ、俺変な顔してなかったか……っ?! 寝ゲロしてねえよな?!」 「してねえから安心しろ」  というか飲むなよ。  暫くあたふたしていた政岡だったが、ようやく状況を飲み込めたらしい。急に落ち着きを取り戻す政岡になんだこいつはと思いつつ、俺は適当な椅子に座る。 「お、尾張……」 「取り敢えず、……ほら、誕生日なんだろ?」  そう政岡の目の前の酒缶たちを避け、俺は包装されたプレゼントをぽいと置いた。  瞬間、落ち着きを取り戻していたと思ってた政岡の顔面が固まる。 「え、」 「お前の好きそうなもん分かんなかったから、俺が勝手に好きそうで選んだんだけど」 「おわ、おわっ、尾張、もしかしてこれって……ッ?!」 「プレゼント以外になにがあるんだ?」 「おめでとう、政岡」と口にしたときだ。  いきなり政岡は無言で両手で顔を覆う。 「お、おい、どうした?」 「………………………………生まれてよかった」 「そこまでか?」  こいつの好意は知っていたが、まさかここまでとは思っていなくて逆にこちらまで照れくさくなってきた。 「あんま期待すんなよ。……いらなかったら適当に捨ててくれても……」 「いらねえわけねえだろ! 尾張からのプレゼントがよお!!」 「うお、お前の情緒どうなってんだよ……っ!」 「う゛う〜〜……っ! う、尾張……ッ、今日誕生日でよかった……」  今日誕生日だからプレゼント用意してきたんだよ、と野暮な突っ込みはさておき。キレたと思ったら今度はしくしくと男泣きし出す政岡を一旦落ち着かせる。 「う、うう……っ」 「政岡、落ち着いたか?」 「お゛わ゛り゛と出会えでよがっだ」  これはまだ暫くかかりそうだな、と思った矢先だった。 「ねえねえ尾張元、気が利かないねえ。こういうときはキスで泣き止ませるって相場が決まってるのにさあ」 「本当だよね、よくそんなんで学園一の色男名乗ってるよね」 「名乗ってねえよ……って、お前ら、いつからそこに」  当たり前のようにぬるりとテーブルの下から現れた生徒会長補佐の双子に、思わず逆ノリ突っ込みみたいになってしまった。 「せっかくの誕生日なんだからキスの一つや二つくらい会長にしてくれたっていいんじゃない〜?」 「ね〜っ、もったいぶるような価値あると思ってんのかな」 「嫌な言い方をするな。……ったく、ほら、政岡もお前呑み過ぎるからそんなになるんだぞ。俺より先輩なんだから、しっかりしろ」 「う、ふぐえ……」  政岡の泣き顔が汚いことはさておきだ。 「キース!キース!」と野次を飛ばしてくる双子たちを追い払いつつ、政岡の涙をナプキンでがしがしと拭いてやる。ちょっと悪化したが、まあいいや。 「まあまあまあ! せっかく尾張君も来たことだしゆっくりしていきなよ」 「そうそう、せっかくの会長の誕生日なんだし」  言いながら俺の座っていた椅子を挟むように立ち、ステレオで囁いてくるのだ。普段人をゴミ虫かなにかのように見下ろしてくるあの顔とは違う、ニコニコといかにも企んでますというかのような笑顔で。 「尾張君って……お前らそんなキャラじゃないよな?」 「深いことは気にせず、今夜は会長に免じて無礼講だよ!」 「もう朝だろ……って、おい!」 「ほらほら〜」と言いながらどこからともなくウイスキーボトルを取り出す結愛。そしてぎょっとする俺を羽交い締めにする乃愛。  当たり前のように校内で飲酒をするなだとか、こんなときだけチームワークを発揮するなとか色々突っ込もうとした矢先だった。 「待て、せめて水で割るか氷を入れろッ! んぐ!!」  無理矢理顎をこじ開けられ、ボトルごと咥えさせられるのだ。  酒を飲んだことないわけではない、そりゃ付き合いやその場のノリで飲んだことはあったが、勢いよく流し込まれるアルコールに喉と舌が焼けるように熱くなる。  なんとか舌で押し流し、飲まないようにそのまま吐き出した俺は双子を振り払い、「殺す気か!」と堪らず声をあげた。 「わーっ、尾張元が怒った〜!」 「因みに会長はこれを一時間おき、尾張元がこない都度飲んでました」 「死ぬ気か?」 「まあまあ、じゃああまーいお酒で口直し〜」 「もうその手には引っかかんねえからな……っ、くそ、水……って焼酎じゃねえか!」 「あははっ、尾張元は酔うと口悪いねえ」 「いいねいいねえ、普段の取り繕った胡散臭ーい感じより、僕たちはそっちのが好きだな〜」  お前らに好かれてもミリも得はねえよ、と言い掛けてぐっと堪えた。  口に残った酒の匂いが鼻と胃の中まで染み込んでいき、視界の端がじんわりと熱くなる。  俺は自分で、人前でみっともなく醜態晒すような酔い方をすることはないだろうと自負していたが、正直やばい。逃げようと思うが、下半身に力が入らない。  目の周りが焼けるように熱くなる。  急に立ち上がろうとした矢先、ぐら、と体が傾き、政岡に抱き留められた。酒の匂い。つか、熱ぃ。 「……っ、尾張、大丈夫か? 悪い、こいつらが……」 「っ、俺を酔わせたって無駄だぞ、……」  目の前、覗き込んでくる政岡の顔が滲む。 「尾張、俺、尾張が来てくれただけですげー嬉しいんだ。……こんな幸せな誕生日、初めてだ」 「政岡……っ」 「ほら、会長もこういってるよ〜!」 「キス待ってるよ〜!」 「あー……っ、やめろ、そのノリ……っくそ、堂々飲酒してんじゃねえよ……っ」  面倒くせえ、と俺は髪をかき上げ、政岡の腕から離れようとする。けれど、腕を掴んだまま力が入らない。「尾張」と抱き締められ、密着したまま耳元で名前を呼ばれれば、余計酔いが回るような気がした。 「は、……っ、あさっぱら、だぞ、いまは……」 「あ、ああ……」 「誕生日だからって、調子に乗りすぎんなよ……なあ」 「お、お、尾張……っ」 「……」  アルコールがゆっくりと脳へと回っていく。  そんなつもりは毛頭なかったが、あまりにも政岡がなにかをねだるような顔をして見上げてくるので少しだけ、ほんの少しだけからかってやるか。そんな気持ちになったのだ。  そっとその涙の痕が残った頬に唇を寄せる。ちゅ、とリップ音が鳴るように軽く頬を吸えば、政岡は目を見開いた固まるのだ。 「……今日だけだからな」  そう政岡に囁きかけた次の瞬間、俺は政岡に抱き締められ、おもくそキスをされていた。 「……ん、う゛……っ!」  人前だ、キスをするにもせめてやり方を考えろだとか言いたいことはあったが、そもそもキスされてる時点でおかしいという問題はさておきだ。  肉厚な舌が唇をこじ開けようとぬるぬると首の粘膜の表面を這う。  酒臭え唾液とか、熱いだとか、どさくさに紛れて腰を抱くなとか。言いたいことは収まらないが、酒で酩酊しているのかいつもよりも余計ねちっこく唇に吸い付いてくる政岡がとにかくわりと精神的にきた。――あと、外野が。 「っ、ん、は……っ、ぉ、い……っ! んん……っ!」  テーブル席からの双子たちの視線に耐え切れず、そろそろしつけえよ、唇がふやふやになるだろ。と政岡の胸をやんわりと押し返そうとすれば、なにを勘違いしたのか薄く開いた唇から舌が入ってくる。 「……っ、ん、ぅ、んん……ッ」 「すきだ、……っ、ぉわり……」 「は……っむ、……ん、ぅ゛……ッ!」  息継ぎする暇もなく、咥内中を躊躇なく踏み荒らしていく舌に蹂躙される。気持ちよくしようとする気もクソもない、あるのは欲望だけの独りよがりなキスだが、絶妙に人の弱いところを舌が滑り、喉の奥まで隈なく犯されるせいで逃れることができない。  そして、最悪なことにこちらまで順調に酒が脳に回ってきているのがわかった。  浅くなる呼吸。溢れそうになるほど滲む唾液を政岡に舐めとられ、やつの腕の中、逃げ場のないまま文字通り貪られる。  誕生日とはいえど、あまりにも長いキスに耐え切れず、身体が痺れてくる。頭もふわふわしてきて、次第に政岡の熱に気持ちよさを抱くようになっていた。  あまりにも執拗なキスの末、政岡はぢゅぷ、と音を立てて長い舌を引き抜いた。そして、その代わりに俺の顔に頬を寄せる。 「お、尾張……っ、好きだ愛してるまじで俺の最推し大天使……っ」 「っ、ん゛、ぶはっ! な、に言ってんだお前……っ!」 「唾液も全部、すげえ甘い……っ、尾張の全身がケーキみてえでやばい、すげえ、ずっとしゃぶっていてえ……っ」  この酔っぱらいが。  べらべらと末恐ろしいことを言いながらそのまま人の頬から首筋までべろりと舌を這わせ、吸い付いてくる政岡にぎょっとする。 「……っ、ま、政岡、おい! なに、やって……っ」 「き、キス……キスだったらいいんだろ? なあ、尾張……っ」  シャツの胸元を大きく開けられ、そのまま曝された首筋に唇を押し付けてくる政岡にぎょっとした。どさくさに紛れて胸を掴む政岡の指を掴みながら、駄目だ、と答えようとすれば政岡にキスをされる。 「なあ、頼む……っ、今日だけだから……っ、なあ、尾張……ッ」 「お前の一生はどんだけあるんだよ……っん……ッ!」  ぢゅぷ、と何度も啄むように唇を吸われながら、懇願してくる政岡に心が揺らぎそうになる。  普段からは考えられない――こともないが、いつも以上に情けねえ顔と声で「尾張」と甘えるように名前を呼ばれるとクるものがある。ああそうだ、きっと俺もこいつに毒されつつあるという自覚はあった。 「こ、こじゃ……っ、駄目だ」  せめて、二人だけになれる場所で。  そうそっと政岡の耳に唇を寄せれば、口にした瞬間政岡に抱きかかえられた。 「ぁ、え、お、おい……っ!」 「せ、せめてなんか言えよ!」という俺のツッコミは虚しく宙へと消えていく。  政岡によって抱えられた俺を見て「ごゆっくり〜」と手を振ってくる双子。こいつらついでにつまみの追加注文してやがる。  止めるやつはここにはいない。  俺はあれよあれよと政岡によって食堂の二階――生徒会役員様々専用通称VIPルームへと連れ込まれたのだ。 「……っ、お、おい、政岡……っ、ん、……っ!」  VIPルームの扉を閉め、二人きりになった矢先奥のソファーに座る前に盛りついてキスしてくる政岡に驚きはしない。しないけれどだ。 「っ、は、ん、……っ、う゛……ッ」  唇をこじ開けられ舌を絡み取られる。引きずり出された舌ごと唾液を塗り込むように扱かれ、じんじんと痺れだす舌の先っぽをちろちろと擽られるだけで粘膜に唾液がじんわりと滲み、それを美味そうに政岡を啜り尽くすのだ。  ああ、もうめちゃくちゃだ。キスだけで勃起などしたくなかったのに、あまりにもしつこく求めてくる政岡の熱量に耐え切れず、充てられている自分がいるのも確かだった。  壁に身体を押し付けられるように抱き締められた瞬間、ごり、とすでにガチガチに勃起していた政岡のブツと性器同士が押し付けられる。その感触に、思わず喉が鳴った。 「……っ、は、ん、……っふ、……ッ」  胸元のボタンを恐る恐る外され、晒されていく首筋。唇が離れたと思えば、今度はそのまま首筋へと鼻先を埋めてくる政岡に喉仏を舐められ、胸が跳ねる。 「っ、ま、さおか……っ、ん、……ッ」 「尾張、今日すげえ優しくて……俺やばいかも、幸せすぎて、まじで死ぬかもしんねえって」 「それは、流石に大袈裟すぎんだよ……っ、ん」 「大袈裟じゃねえよ。だって、尾張がこんなにエロいし……っ、可愛くて……ッ」  言いながら、政岡が一瞬言葉に詰まったと思いきやどろりと溢れる鼻血にぎょっとする。 「っ、おまえ、鼻血……っ」 「は……やべ、通りで……ッ」 「先に拭けって、お、い……っ」  驚くわけでもなく、雑に手の甲で鼻血を拭った政岡はそんなことどうでもいいと言うかのようにそのまま鎖骨を舐める。シャツの上から勃ちかけていた乳首を撫でられ、息が止まりそうだった。  酒に加わって血の匂いまで混ざり、余計脳が侵されていくみたいだ。 「っ、は、ん、む……ッ」  さっさとヤリたくて堪んねえって顔してるくせに存外丁寧な手付きで脱がされていくシャツ。熱い息が吹きかかり、シャツの下から覗く乳首に息を飲む政岡。それでも直に触れるのには躊躇するようにそのまま胸元へと唇を押し付け、そのまま吸い付く政岡に身じろぐ。  あまりにもじれったくて、もどかしくて、脳の奥がズキズキと痛いほど疼く。あれもそれもこれも、恐らく全部酒のせいだ。  だから、俺は政岡の後頭部に手を回した。 「……っ、ぉわ――ッ、んむ」  そのまま、やつの後頭部、後ろ髪に指を絡めるように自分の胸元へとやつの頭を押し付けされる。拍子に唇が乳首に触れ、息を飲む。 「――……キス、したかったんだろ?」 「っ、ふ、」 「しろよ、好きなだけ」  ――けど、今日だけだからな。  そう政岡に囁きかけた瞬間、胸を掴まれる。引きちぎる勢いでシャツを引き剥がされ、現れた胸に政岡はむしゃぶりつく。  盛りつく犬みたいに乳首を咥えられ、熱い政岡の咥内に包まれた乳頭に全身が熱くなる。 「っ、は、ぁ、……っ、がっつきすぎだろ……っ、ん、ぅ」  男相手など冗談じゃねえけど、どうもこの男に対しては征服欲が擽られる。  勃起したブツを押し付けられながら乳首を唇と舌でたっぷりと味わわれる。それだけで脊髄にぞくぞくと甘いものが走り、息が混ざる。 「っ、政岡、ぁ、……っ、ん、……ッ!」  どさくさに紛れて片方の胸を揉み扱かれ、そこで固く凝っていた乳首を掌で押し潰されるだけで腰が震えた。  布が擦れる音、お互いの呼吸が響く部屋の中、加えて下着の中で濡れた音が聞こえるようだった。  これは、やばいかもしんねえ。 「……っ、ふ、ぅ」  政岡に胸をしゃぶられながら、ぼうっとした頭で俺はこっそりと自分の下半身に手を伸ばす。理性などクソもない。ただムラムラが止まんない、そんな理由で恥も外聞もなく自分の下半身に手を伸ばす。 「は、……んむ、ぅ……ッ」  そう、バレないようにこっそりスラックスを緩めて自分の性器を扱こうとしたときだ。政岡に手を掴まれ、ぎょっとする。顔をあげれば、欲情しきった政岡がこちらを見下ろしていて。 「お、わり……っ」 「っ、ぁ、ちが、これは……っ」 「いいのか? ……っ、なあ、尾張」 「ち、が……っ、お前の、ためじゃね……ッ、んん……っ!」  俺が政岡のために自分から脱いだと勘違いしたのだろう。そのまま身体を抱かれたと思いきや、そのままソファーの上に押し倒され、息を飲む。  覆い被さってくる政岡にそのまま足を掴まれ下着ごとスラックスを脱がされる。 「は……っ、まじか、やべえ尾張まじでエロすぎだろ……ッ!」 「っ、ぁ、ま、さおか……ッ、待て……ッん、ぅ……ッ!」 「っ、気持ちよくしてやるから、たくさん」  だから、お前のためじゃねえって。  そう言うよりも先に、必死に隠そうとしていた肛門の手を呆気なく引き剥がされる。そして、そのまま下半身に顔を埋めてくる政岡に性器にキスをされ、ぴりっとした刺激が脳を犯す。 「っ、ふ、……っ、ぅ……く……ッ!」 「かわい……っ、かわいい、尾張、ちんぽまでかっこよくて可愛くてまじで、たまんねえな……っ」 「っ、そこで、しゃべんな……っ! ……ぅ、んん……ッ!」  亀頭から竿、裏筋から睾丸まで順番にキスをしていく政岡。足を閉じようとするが、股の間にいる図体だけでけえ男が邪魔でそれを阻害される。  吹きかかる吐息。焦らすような刺激が余計射精浴を煽ってきて、ドクドクと加速する鼓動に耐え切れずソファーの上動くことができない。勃起してるのか、どこからどこまでが自分の性器なのかわからなくなるほど身体が熱い。這わされる肉厚な舌が亀頭から滴る先走りを舐るように丹念に舐め取り、亀頭に吸い付く。 「っ、ん、ひ、ぅ゛……ッ!」 「おわり、……っ、尾張かわいい……っ」 「は、ぁ……っ、クソ……ッ」  勃起が止まらない。これ以上調子に乗られたらまずい、ここで強く拒まなければやべえってわかってんのに、政岡の口が、指が気持ちいい。俺もだいぶまずい、だからこそ怖くなる。  政岡の指が肛門伸びる。そのままぐに、と左右に割り開かれる肛門。そのまま睾丸を柔らかく持ち上げ、ケツの穴へとキスをする政岡にぎょっとするのも束の間、にゅるりと伸びる舌にアナルを突かれ「ひ」と喉が震えた。 「っ、ぁ、……っ、や、そこ、は……ッ!」  逃げようとする下半身を大きく持ち上げられ、そのまま自分のしゃぶりやすいように顔を埋めてくる政岡。薄暗い部屋の中、濡れた音とともにたっぷりと唾液を含んだ舌に肛門のたっぷりと舐め回され、唾液を塗り込むように更に舌をねじ込んでくる政岡。 「っ、ぅ、く……ッ、ぅ、んん……ッ!」  目の前がチカチカと点滅する。視覚的暴力とはこのことだ。まるで美味い飯でも食ってるかのような満たされた顔でケツの穴の奥の奥まで舌を伸ばし、粘膜をしゃぶる政岡に耐え切れず腰がガクガクと震える。  痛いほど勃起した性器から先走りが垂れ、熱くなる。耐え切れず、俺は自分の顔を腕で覆い隠した。 「は、ぁ、……っ、ひ、ぐ……ッ!」 「っ、尾張、かわい……っ、ん、ケーキよりも甘くて、永遠しゃぶってられる……」 「ぃ、言い過ぎだ……っ、ぁ、ッ、くう……ッ!」  にゅぷにゅぷと括約筋が収縮する度に押し流される唾液が溢れ、政岡の舌によって開き始めていたケツが甘く痺れだす。  そこにねじ込まれる指に更に奥まで開かれ、前立腺を撫でられる。びくりと跳ね上がる身体を抑え込まれたまま、射精したいと持ち上がり始めていた睾丸にキスする政岡。   「っ、く、……っ、ぉ゛、や、政岡……ッ」 「はー……っ、尾張、かわい……っ、感じてんのか? 俺で……っ、感じてくれてんのか?」 「っ、ぁ、ひ、う゛……ッ!」  太く、長い指が追加され、更に膨らんだ前立腺を扱かれながら睾丸から根本を舌を舐められる。過敏になった下半身を内側、外側と同時に責め立てられ、まるでなにも考えることはできなかった。声を抑える暇もなかった。俺は政岡にしがみついたまま大きく仰け反る。どくんと大きな鼓動が響き、自分の腹に向かって噴き出す精液を見て政岡は手を緩めるどころか更に愛撫を強めるのだ。 「ぁ゛、や゛ッ、待て……ッ! 待て、ぃ、今は……っ、だめ、だ……ッ! ぁ゛……ッ!」  無言で前立腺をごり、と押し上げられた瞬間、頭の中が真っ白になる。視界の縁が赤く染まっていく。「ぁ゛、あ゛」と漏れ出る声を抑えることができず、更に奥まで前立腺を愛撫させられる。濡れた音が頭の奥まで響くようだった。  萎える暇もなく持ち上がった性器の先端へと熱が競り上がってくる。 「っ、待て、で、でる、から……ッ!」 「は……出せよ、全部、……っ、俺に食わせてくれよ尾張……ッ」 「ぁ、あ゛……ッ!」  そして、カリの凹凸部分を舌で擽られた瞬間、色のついていない液体が勢いよく噴き出すのだ。 「っん、ぅ゛う……ッ!」  瞬間、頭の中で快感が弾けるとともに亀頭から滲む熱。尿とも精液にもつかないさらさらとした液体が吹き出し、それを避けることせず被った政岡はゆっくりと目を開き、自分の顔を汚す体液に手を伸ばす。そして躊躇なく口にするやつを見て背筋が凍った。 「……しょっぱい」 「馬鹿……っ」  ◆ ◆ ◆  散々な目に遭った。  射精したお陰で酔いも抜けたようだ。冷めた頭、次にやってきたのは多大な後悔だった。  そして、それはこいつも同じようだ。  VIPルームの片隅、膝と頭を抱えた政岡を見て俺はどうしたものかと息を吐いた。 「わ、悪い……尾張、俺、尾張になんてことを……」 「わりといつものことだから気にしなくていいぞ」 「う゛、で、でも……」  まあ、元はと言えば煽った俺にも非はあるしな。……もっと言えばあの双子のせいだが。 「だから、今日だけだからな」 「お、尾張……」  いつまでも視界の済で落ち込まれている方が面倒臭……いや、厄介だ。俺は政岡の肩をぽんと叩いたとき、がばりと顔をあげた政岡に伸ばしかけた腕を掴まれそうになる。  やべ、キスされる。そう直感した矢先だった。  いきなりVIPルームの扉が蹴破られる。そして、 「お待たせしましたー、ケーキ一丁でーす」  まるでラーメン屋のような掛け声ともに現れたウエイター。その聞き覚えのある声に驚く暇もなかった。この食堂にもじゃもじゃ瓶底眼鏡黒まりもなんて珍妙極まりないウエイター見たことない。 「っ、てめえ、黒もじゃ!」 「い、岩片お前――」  なんでここに、と言いかけるよりも先にカートに載せたクローシュを手にした岩片。その下から現れたのはどこぞのバラエティ番組で見たことあるようなパイだった。それを見た瞬間俺はもう展開が読めてしまった。なので、迅速に政岡から離れるのだ。 「な、おい、お前それ」 「ハッピーバースデー、零児。俺からの思い、たっぷり受け取ってくれよな」 「ざけんじゃね゛――ん゛ぶ!!」  速さ、角度、力強さ――どれをとっても芸術点が高い。見事岩片にパイを顔面に叩きつけられる政岡を尻目に、取り敢えず俺は下でのんべんだらりとしていた双子を呼んで政岡を宥めるのを手伝ってもらうことになったのは言うまでもない。  ついでにこれから勃発するであろう喧嘩の後片付けのため、生徒会役員たちも呼ぶ。あとは――もう政岡のことは他のやつらに任せることにして、ややこしくなる前に岩片を回収して食堂を後にするのだ。 「お前な、どうせケーキ用意してやるならもっと渡し方があっただろ」  自室へと帰る途中。  岩片に投げかければ、「そうか?」とやつは小首を傾げる。 「寧ろあいつは貰いすぎだ。だから、俺でバランスを取ってやったんだよ。むしろ感謝すべきじゃないか?」 「貰いすぎたって……」  どういう意味だ、と思わず岩片を見た時。無言で笑うやつに俺はハッとした。 「……っ、待て、お前――」 「塩分取りすぎたあとは糖分がほしくなるしちょうど良かっただろ」 「ッ、……………………」  顔がじわじわと熱くなる。それなのに、脳が冷えていく感覚。  こちらを振り返った岩片はにたりと厭な笑みを浮かべるのだ。 「俺の誕生日、ハジメが何をくれるのか楽しみだな」 「ぁ、あれは……酒が入ってただけでな、岩片……」 「おいどうした? 別になにも言ってないだろ? ……なにそんなに焦ってんだ、ハジメ。悪いことでもしたのか?」  こいつ、この男。  どこからどこまで見られていたのか考えただけで血の気が引いた。  願わくば、岩片の誕生日まで全部今日の記憶だけは消えててくれ。そんなことを思いながら、「してねえよ」と声をあげた。  ――ああいやだ、何が嫌だって、なんで俺がこんな浮気バレた男みたいな罪悪感を覚えてるのかってことにだ。  岩片はそれ以上なにも言わなかったが、その日俺はまるで生きた心地がしなかった。  おしまい

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