「ノクシャスさん、今日はありがとうございました」 「ありがとうございましたって、ここでお別れするつもりかよ」 夜、ノクシャスと食堂で食事を終えたあと。 食事前で改めてお礼を言えば、ノクシャスはそう笑うのだ。そういうつもりではなかったが、どうやら気が早すぎたようだ。 なんだか恥ずかしくなり、「い、いえ」と慌てて首を横に振ればノクシャスは「ま、いいけどよ」とそっぽ向く。それからそのままどすどすと先を歩いていくのだ。どうやら部屋まで送ってくれるらしい。 ノクシャスと一線を越えてから、なんだかどういう風に接していたか自分でもわからなくなっていた。 ――そして社員寮、自室前。 わざわざ、ノクシャスに送ってもらった俺は今度こそノクシャスにお礼を言おうと振り返る。明日からはまた俺もノクシャスも仕事があるのだ。そう、目の前のノクシャスを見上げる。 「ノクシャスさん、送ってくれてありがとうございます」 「……おー」 「……? ノクシャスさん?」 「……」 気の抜けた返事が返ってきたが、それでも帰ろうとしないノクシャスに少し胸の奥がざわつく。もしかしてまだなにか用事があったのだろうか、とノクシャスさん、ともう一度呼ぼうとした矢先だった。ノクシャスの手が伸びてきて、手の甲を撫でられる。 「……っ、……ぁ、あの」 「なあ良平」 「は、はいっ!」 「……部屋にあがっていいか?」 顔が近付き、耳元で強請るように囁かれれば呼吸が止まりそうになった。 硬く、大きな指が俺の指に絡む。そのまま覆うように掌を握りしめられれば、直接皮膚越しに流れ込んでくる熱に溶けそうになるのだ。 つまり、これはその、そういう誘いということなのだろうか。 恐る恐る再び視線を持ち上げれば、「なあ」と開いた唇から尖った牙が覗く。今までだったら気付かなかったかもしれない、それでも俺はノクシャスのスイッチが入った時を知ってる。 そしてこの目は、あのときと同じだ。 「……ッ、」 なんで、どこでスイッチが入ったのか。ずっとそんなことを考えてたのかなんて俺には分からなかったが、それでもごり、と臍の辺りに押し付けられる硬いそれを感じれば否応なしにこちらまでその熱に宛てられてしまうというもので。 「……っ、は、はい……」 どうぞ、とお腹に押し付けられるそれをそっと撫で返し、そのまま俺はノクシャスに身体を寄せた。 ◆ ◆ ◆ 大概、俺もここに来て毒されているという自覚はあった。こんなこと兄に知られたらどんな顔をされるのか分かったものではないとも。 「……っ、ん、う……ッ!」 扉を開くなり、そのまま玄関先でノクシャスに抱き締められ、唇を塞がれる。 噛み付くように執拗に角度を変えながら深く喉の奥まで舌を絡め取られれば、あっという間に酸素が薄くなって呼吸が上がった。 「……っ、の、くしゃす、さ……ッ」 「ハッ、お前、まじでどこで覚えてきたんだ? そんな真似……ッ」 「……? そんな真似……?」 「自覚ねえのかよ、余計質悪ィな」 べろりと頬を舐められ、軽く唇を吸われる。もの寂しくなり、唇を追うように舌を伸ばせばそのままノクシャスに再び深くキスをされるのだ。 「……っ、ん、んぅ……っ!」 腰を抱き寄せられ、密着した身体。ごり、と当たる性器に視線を向け、俺は再びそこに手を伸ばした。 窮屈そうにテント張ったパンツを緩め、そのまま下着を下ろせば勢いよく溢れ出したそれに少しだけびっくりする。相変わらず目に毒なほど立派な性器だ、グロテスクさすらある。子供の腕ほどあるこの性器を挿入されたときの記憶が蘇り、どうしても股間が熱くなるのだ。 「……っ、ん、ノクシャスさん、ずっとこれ、我慢してたんですか?」 「……うるせえ、言うな」 「だから食堂でも居心地悪そうだったんですね」 そう、恐る恐る性器に触れる。ビキビキと筋張ったそれは見てわかるほど限界が近い。反りたった性器、その裏筋に指を這わせれば、ノクシャスが舌打ちをした。 「っ、おい」 「っわ、また大きく……」 なった、と驚いたときだった。性器を弄っていた手をノクシャスに掴まれ、止められる。 余程不快だったのかともしれない、咄嗟に謝ろうとしたときだった。そのまま腕を掴まれ、キスをされる。 「……っ、ん、うう……ッ!」 ぢゅ、ぢゅる、と口の中の唾液ごと舌を絡み取られ、喉奥まで太く長い舌先で掻き回される。 先程よりも荒々しいキスに驚いて、あっという間にノクシャスに主導権を丸ごと奪われる。 上顎から喉の奥まで舐められれば下腹部の力が抜け落ちそうになり、酸欠でノクシャスの胸にもたれかかったとき、ノクシャスは俺から口を離すのだ。そして、苛ついたように俺の腰を掴む。 「くそ……っ、あんまイライラさせんじゃねえよ、良平……ッ!」 「っ、ご、めんなさ……っ、ん……ッ!」 「ああそうだよ、飯食ってるときもなあ、ずぅーっとテメェのナカ犯してやりたくて飯の味わかんなくなってたんだよ」 「……っ、ぁ、ノクシャスさ……ッ!」 「お前のここに」と尻を鷲掴みにされ、太い指が谷間に食い込む。布越しの感触に息を飲むのも束の間、固まる俺にノクシャスは長く息を吐いた。 そして。 「良平、せっかくだ。……テメェに選ばせてやるよ。口とケツの穴、どっちがいい?」 「好きな方選べよ」尻の谷間に食い込む指が割れ目を広げ、すりすりと肛門を撫でる。同時に、お腹に押し付けられる性器に視線が反らせなかった。無意識の内に呼吸は浅くなっていた。口の中にじんわりと唾液が滲む。 明日も朝から仕事はある、ノクシャスのものを挿入したら翌日に響くということは俺も頭で理解できていた。 「……良平、答えろよ」 そして分かっててこの男はわざとそんなことを聞いてくるのだ。 なんて悪い人だ、と思ったが元々ノクシャスはヴィランだった。 ごりごりと臍の窪みを押されれば、その重みにこの太く硬い性器で内側から激しく突き上げられたときの衝撃が蘇り、ずんと下腹部が重くなるのだ。 そんな俺を分かってて、「おい良平」とニヤニヤ笑いながらノクシャスは覗き込んでくるのだ。 「……ッ、お、お尻に……お願いします……っ」 ノクシャスをこの部屋に上げた時点でこうなることはわかっていたのだから、今更恥ずかしがるのも遠慮するのもおかしな話だ。 それでもやはり恥ずかしいものは恥ずかしいもので、顔から火が吹き出そうになる俺にノクシャスは「本当にテメェは……」と呆れたように、そしてより愉しそうに笑うのだった。 ◆ ◆ ◆ 「ぅ゛……っ、ひ、……ッ!」 「良平ァ、テメェ自分から言っておいて逃げてんじゃねえよ」 「に、逃げ、てないれ……っす、ぅ゛……ッ」 ノクシャスに身体を掴まれたまま、下着の中に入ってきた指は無遠慮に肛門にねじ込まれる。 柔らかくなるまで執拗に太く硬い複数の指に掻き回されて、一人手に立つことなど出来ない。潤滑油代わりのジェルは熱に溶け、ノクシャスが指を動かす度に下腹部から濡れた音が腹の中でぐちゃぐちゃと煩く響いた。 「っ、は、ぁ゛ッ、ん、お、おれ……も、大丈夫……」 「大丈夫じゃねえだろ。……テメェは生身なんだからな、……ボスに顔向けできねえような真似できっかよ」 ノクシャスなりに気遣ってくれてるのだろうが、俺からしてみればもう既に結構限界だった。 前立腺を揉まれ、転がされ、臍の裏側を指の腹で抑えられるとあっという間に下腹部に熱は集まるのだ。 その熱は全身へと回っていき、過敏になった神経はノクシャスの指一本一本の動きを追う。 「……っ、ぁ、ありが、と……ッ、ぉ、ございます……ッ、ん……ッ」 「ありがとうって、お前な……」 「っ、はーッ、ぁ……ッ、ひ、ぅ……ッ!」 「……」 傷にならないように隙間ないくらい中を潤滑油塗り込んで慣らしてくれてるのだ。そう分かっていたし、だからこそ我慢しなければならないとわかってても弱点を触られれば誰しも反応してしまうわけで。 念入りに中を溶かされたところを指で指で掻き回されれば、「ぉ゛」と喉の奥から声が漏れる。 恥ずかしくなって慌てて口を手で抑えようとしたが、ノクシャスがそれを許さなかった。手首を掴まれ、「我慢するなよ」と耳元で低く囁かれるその言葉に背筋が震えた。 そして、 「っ、待っ、ぁ゛……ッ、ひ、ぅ゛……ッ!」 「……っ、は、なんつー声出してんだお前」 「う゛、ん、ゆ、び……っ! っ、の、ノクシャスさ……ッ、ゅ、う゛ッ、ん゛う……ッ!」 先程までの慣らすためのそれではない、的確に俺の性感帯を刺激してくるノクシャスに堪らず俺は目の前のノクシャスの胸にしがみつく。 そんな俺にノクシャスは笑い、そしてそのまま俺を抱きかかえるように更に深く指をねじ込むのだ。 「ん゛ひ……ッ!!」 「軽いなぁ、テメェは……っ、ほら、俺の指二本でもうギチギチじゃねえか」 「もっと慣らさねえとな」と耳元で囁かれる声に背筋がぶるりと震えた。 恐怖ではない、もっと甘く蕩けるようなそれは――。 「待っ、へ、……ッひ、ぅ゛……ッ!!」 「待たねえって言ってんだろうが」 「お゛……―― ッ!!」 更に指を追加され、付け根奥深く咥えせられる指に息が止まりそうになる。体格もさることながら、指一本の太さだって俺のような一般人の指とは訳が違う。 異物を拒もうと締め付ける肉壁を柔らかく押し広げるように沈む指に息を吐き呼吸を整えようとするが、それよりも先にノクシャスの指が曲がり、抱えられたままの腰がびくん!と跳ねた。 「っ、は、ぁ゛……ッ! う゛、ひ、ぅ゛う゛……ッ!」 「お前ん中あっちいな……っ、ぁー……クソ、堪んねえわ、早くハメてえ……っ」 「っ、ぐ、ひ……ッ! ぁ゛ッ、ひ、も゛、ッ、う゛、ぉぐ、ッ、ひ……ッ!」 「お前のここ、早く俺の余裕で入るようにしねえとな……まじで俺のがどうにかなっちまいそうだ」 ぐぢゅぐぢゅと淫猥な音を立てながら中を解していく指の動きは激しさを増す。最初に比べてノクシャスの言葉通り柔らかくなってきたようだ、空気の音が混ざりより一層いやらしい音を立てながら体内を大きく掻き回されるだけで呆気なく絶頂まで追い詰められる。 ビクビクと痙攣を起こし、ノクシャスの腕の中で性器が跳ねる。それでもノクシャスは中を愛撫する指を止めなかった。 「ッ、あ゛、ぁ゛……ッ! ま゛、ッ、い゛ッ、ぐ、も゛、い゛……ッ!!」 「まだ駄目だ、お前に傷は残せねえからなぁ?」 「っ、ぐ、ひ……ッ!!」 舌舐めずりし、いつの間にかに溢れていた涙を舐め取るノクシャス。その逞しい腕に抱きかかえ直され、更に奥を入念に愛撫されれば絶頂を迎えたばかりの頭の中は真っ白に染まっていき、なにも考えられなくなっていた。 硬くなった前は触れられない状態でお尻だけでまたイカされそうになるのが辛くて堪らずノクシャスに下腹部を押し付け、腰を擦りつける。その摩擦だけでも俺にとっては快感に等しい。 そんな俺を「発情期の雌猫じゃねえか」と笑いながらもノクシャスは愛撫の手を早めた。二度目の絶頂はすぐにやってきた。今度は射精を伴い、溜まっていた精液が密着したノクシャスの腹と己の腹部にぶちまけられた。声を上げることもできないまま、ノクシャスに抱きかかえられたまま俺はそのままくたりと脱力する。 そんな俺からようやく指を抜いたノクシャスは、力を入れることすらできない俺を抱きかかえたまま部屋の奥へと進んだ。 そして、寝室の扉を足で蹴り開けたノクシャスは俺をベッドの上に寝かせる。人の気配を感知し、明るくなった寝室の中。覆いかぶさってくるノクシャスにキスをされる。それを拒む気などなかった。 「……っ、ん、ぅ……ッノクシャスさん……」 「あんま可愛い声出すんじゃねえ。……まじで歯止め利かなくなる」 「……っ、ぁ……」 そもそも今までにおいて歯止めなんてあったのか。という疑問はさておき、伸びてきたノクシャスの手にそのまま腿を持ち上げられれば中で溶けていたジェルがとろりとあふれる感覚がした。 そして、そこに宛がわれる熱にぶるりと背筋が震える。 「っ、は……ッ」 いつ見ても恐ろしい光景だと思う。こんな太さのものがこれから自分のナカに入るのだと思うとぞっとして、背筋が熱くなって、頭がおかしくなってしまいそうになる。 「挿れるぞ」と覆いかぶさってくるノクシャスに耳元で囁かれ、こくりと頷いた。開かれた股の間、ノクシャスの性器から目を離すことなどできないまま俺はこくりと頷いた。 「ぉ、ねがい、します……」 歯止めがないのは、俺も同じかもしれない。 ノクシャスの逞しい腕に抱き締められれば、足が地から浮く。浮遊感に不安を覚える暇などなかった。 項に吹きかかる熱い吐息。膝の裏ごと抱えられ、浮いた下半身にべちんと限界まで張り詰めた男性器が当たる。最早、跨がらされているような感覚にすら近い。 「チッ、クソ……じれってえな」 「っ、の、くしゃす、さ……――ッ」 そう、苛ついたように舌打ちをしたノクシャスはそのまま肛門に性器を宛てがう。濡れた亀頭がにゅるりと肛門を掠めたとき、ノクシャスはそのまま俺の腰を抱いたまま体重をかけさせてくるのだ。 「ぉ゛……ひ、――ッ!」 ノクシャスの腕に閉じ込められたまま、ゆっくりと、それでも着実に肛門をこじ開けてみちみちと内壁を掻き分け沈んでくる肉茎に嗚咽が漏れる。 内臓を押し上げられるような息苦しさ、恐怖すらも、ノクシャスとの行為でしか得られない感覚に呑まれ、何も考えられなかった。 「っ、ん゛うう……ッ!」 「は……っ、段々馴染んでくるな、お前のナカ、すげえ気持ちいいわ……っ」 「ふ、ぅ゛……ッ! ううう……ッ!」 太い槍で穿かれるような衝撃が襲う。亀頭から溢れる先走りを頼りに、ノクシャスは俺の腰を抱えたまま抽挿を始めた。 最初は本気で死ぬと思っていたが、何度かこの関係を繰り返すごとに俺の体も作り変えられてきたようだ。ぽっこりと腹に浮かぶノクシャスの性器の形は上下運動に合わせてぼこぼこと蠢き、まるで別の生き物のようにすら見えた。 奥へ奥へとゆっくりと広げられ、慣れてくればノクシャスは抽挿のペースを上げる。ずっと我慢していたのだろう、次第にノクシャスの動きは荒々しくなってくるのだ。 「あ゛、ひ……ッ!」 「……っ、すげえ痙攣、抜けねえようにしっかり締めとけよ、良平……ッ」 「は、ひ、ッ、ィ゛、ぐ……ッ! ぁ゛、あッ、お゛ッ、ぉ゛……ッ!」 「は、いい声で泣くじゃねえか……ッ、気持ちいいぜお前の声……ッ! もっと聞かせろよ」 「ぉ゛、あ゛……ッ」 ナカにみっちりとハマったノクシャスの性器は少し動くだけでも前立腺ごとあらゆる性感帯をごりごりと押し潰し、荒く攻め立ててくる。血管の凹凸すらはっきりと伝わってくるほど過敏になった内壁を更に拳大の亀頭で押し上げられ、結腸へと繋がる隔たりの部分をばちゅんばちゅん!と力任せに突破ろうと圧迫されれば、それだけで開いた喉からは汚い獣のような声とともに咥内に溜まった唾液がとろりと溢れ出すのだ。 ノクシャスは、口を閉じることもできず突かれるがまま喘ぐ俺の顎を掴み、顔を覗き込んでくる。 「……ッ、は……ッ」 こちらを見つめるその目は、欲情しきった獣そのものだ。顎を掴まれたまま、肉厚な唇に噛み付くように唇を重ねられるのだ。 「ッ、ふ、ぅ゛……ッ! ぢゅ、んむう゛……っ!」 「ん、……ッ、ふ、唾液でグッチャグチャじゃねえかよ、良平……ッ、赤ちゃんかぁ? テメェは……ッ」 「ご、めんなひゃ、ん゛ッ、ふ、ご、ごめんなさ、ぁ゛……ひ、う゛……ッ!!」 ぢゅる、と音を立てて唾液の塊ごと吸われ、口元を犬のようにべろりと舐められる。 自分がどのような顔をしてるのか客観的に理解する脳など今の俺は持ち合わせていない。 下と上両方をノクシャスでいっぱいにされ、わけもわからぬままその腕にしがみつく。 「……っ、良平、暴れんなよ、落っこちんぞ」 「の、くひゃ……す、さ……――ッ! ひっ、う゛う……ッ!!」 「は……っ、くそ、まじで腰止まんねえ……ッ」 「ッ、ぉ゛、お、ぁ……ッ!」 振り落とされそうになりながらも、ぶらぶらと揺れる自分の爪先を見つめながら俺はされるがままノクシャスの性器に支配されていた。 短いストロークで奥を突かれる度に眼球奥で無数の光が点滅し、己の性器からは精液なのかほぼ透明の液体がどろりと溢れて根本から睾丸まで垂れていく。 二度と元の生活に戻れないのではないか。そんな恐怖にも近い快感に身を預けたまま俺は揺さぶられる下半身を見つめ、ひたすらその快感を享受していた。 一度目の射精は体の奥、俺の体の限界まで差し込まれた状態で大量の熱を吐き出された。 どくどくと脈打つ性器から吐き出されるマグマのような精液は喉から出てしまうのではないかと思えるほどの勢いで体内、腹をたっぷりと満たす。膨れ上がる腹の中、たぷたぷの腹目掛けて再びピストンを始めるノクシャスに声すら出なかった。 体を上下する度に自重に耐えきれず溜まった精液が僅かな隙間から溢れ、床を汚す。それを構わず、更に俺を壁に押し付けたままノクシャスは荒々しく腰を動かしたのだ。 「ぁ゛……ッ、ひ……ッ」 「……っ」 「の、く、しゃすさ……――〜〜ッ!!」 次の瞬間、突き当りである括れたそこを押し上げるように亀頭が侵入してくる。体内で精液を掻き混ぜ、どろどろに濡れた亀頭は越えてはいけない部分を突破してノクシャスは性器を一気に根本まで挿入させてきたのだ。 声を上げることもできなかった。びくびくと痙攣を起こす下半身、逃げようと浮かせた腰を筋肉で覆われた硬い腕で抑え込まれ、更にぐちぐちと亀頭で奥の内壁を撫でられる。瞬間、脳髄ごと溶かすような快感にぴんと爪先が伸び、指先が丸まる。 「ぉ゛……ッ、かは……ッ」 「……ッ、フー……ッ、良平ぁ……ッ、テメェから誘ったんだ、……もうちょい付き合えよ」 耳の裏から項まで舐られ、尖った牙が項に食い込む。そのピリッとした痛みすら興奮剤だった。 最早俺にはなにも考えることができず、こくこくと頷くことが精一杯だった。 ドクドクと流れ込んでくる性器の熱を直接粘膜で浴びながら、俺はひたすらノクシャスに犯された。 自分が乱暴にされることに恐怖どころか喜びを感じる人間だとは露ほども思わなかったが、それもどうでもいい。ノクシャスとの性行為に夢中になっている間、身を預けて貪られてる間は酷く気持ちがいいのだ。 ――問題があるとするのならば、その後だろう。 ◆ ◆ ◆ 結局、夜通しノクシャスに抱き潰された俺は翌朝ベッドの上で目を覚ます。それから、ベッドから起き上がろうとして寝返りを打とうとした途端全身が悲鳴を上げた。 「い゛……ッ」 ……痛い。節々の筋肉は勿論、要所要所、恐らく行為に夢中になったノクシャスに噛まれたのだろう。昂ぶると噛み癖があることを知っていたが、今回は項や腕、肩など広範囲を噛まれていたお陰で傷んだ。一人ベッドでひいひい言ってると、寝室の扉が開いた。 「あ、ノクシャスさん……」 そう名前を呼ぼうとして、自分の声が掠れていることに気づく。が、ノクシャスの耳には届いたようだ。 「……あ? 何起きてんだよ」とこちらを見たノクシャスは眉根を寄せる。 「喋んじゃねえ、ほら水」 「んく……ありがとうございます」 「……おう」 そう、ノクシャスから受け取ったボトルに口を着けていると、ベッドの縁にノクシャスは腰を下ろす。そしてばつが悪そうに視線を反らすのだ。 「……体は」 「体? ……ええと、その……筋肉痛が少し、ありますね」 「少しじゃねえだろ、さっきのヒデェ声」 「う……」 「一応、モルグに薬持ってこさせるように声はかけてる」 「え、モルグさんですか?」 「痛み止めだ、痛み止めだけ持ってこさせてすぐに帰す。……んじゃねえと、余計な勘繰りされて面倒だからな」 ノクシャスが俺の部屋に痛み止め持って来いと言ってる時点でモルグは勘付きそうなものだが、俺は敢えて黙っておくことにした。 モルグなりに俺を思ってのことなのだ。そう思うと素直に嬉しい。……反面、少し気恥ずかしいが。 そんな俺の横、ノクシャスは思い出したように長い足を組み直してこちらを振り返る。 「つーわけで、お前今日は一日休んどけよ」 「え、でも……」 「でももクソもねえ。……そもそも、んな状態で仕事できるわけねえだろ」 まあ、確かにそうだが。配属されて間もないのに休んで大丈夫だろうかと思ったが、元々営業部の人たち自体なかなかルーズな人たちばかりが集まっていた。 「……俺も、今日は一緒にいるからよ」 なら大丈夫だろうと一人うんうん頷いていたときだった、不意に膝の上に置いていた手にノクシャスの大きな手が重ねられる。そのままぎゅっと握りしめられ、ぎくりとした。 「の、ノクシャスさ……」 そう名前を呼ぼうとした矢先だった。呼び鈴が鳴り響く。どうやらモルグがやってきたようだ。 「いいな、そこから動くなよ。……じっとしてろ」 「は、はいっ! わかりました……っ!」 「おう、いい返事だな」 そう言って、歯を剥き出しにして笑うノクシャス。その凶悪な笑顔にどうしても昨夜のことを思い出してしまい、かっと顔が熱くなった。 それからモルグを迎えるために寝室を出たノクシャスを見送りながら、ほうっと俺は息を吐いた。 ……どうやら今日一日、長くなりそうだ。 そんなことを思いながら、俺は玄関の方からモルグとノクシャスの揉める声をぼんやりと聞き流していた。 【END】