XaiJu
田原摩耶
田原摩耶

fanbox


『また会いましょう』後日談※前編【↑500/9,900文字/レイプ/性奴隷/言いなり/軽リョナ】

前日譚【https://www.fanbox.cc/@t589423/posts/1961027】  勇者が――あいつが死んだ。  その腹に突き刺さった大剣の持ち主は分かりきっていた。  前衛の勇者とナイトがいなくなった今、パーティーは壊滅状態だ。そんな現状、早々に抜けると思っていたシーフもメイジも未だ俺の元に残っていた。 『俺は、勇者でもない。あいつの代わりになれないが、この旅をここで止めるつもりはない』  抜けたければ抜ければいい。  勇者の死体を弔ったあと、俺はシーフとメイジに告げた。二人は俺を見下ろしたまま、「ま、お前ならそういうと思った」なんて笑うのだ。 『ガキ一人じゃ馬車の乗り換えすらも分からないだろう、一人旅ができるようになるまで付き添ってやるよ』  シーフは言う。メイジもシーフの言葉に『そうだな』と頷くだけだった。  正直、歯がゆかった。イロアスがいなくなったと分かったその夜、一人で生きていくつもりだったはずなのに二人の言葉に安堵してしまっている自分がいることに。そして同情されてる自分に。  いくらなんでもこの三人だけでは魔王討伐など無謀だ。とにかく体だけでもパーティーを成り立たせるために代わりの前衛を探した方がいい。それがシーフの提案だった。俺はそれを飲み込むことしかできなかった。  二人ならともかくだ、俺は勇者の代わりにもナイトの代わりにもなれない。なりたいと願ったところで、己の実力も弁えているつもりだ。  だから、必死になっていた。あいつの死を悲しむ暇なんてないくらい、少しでも足手まといにならないように剣技だけではなく防衛術を学ぼうとした。夜は人が多そうな飲み屋へ訪れ、暇そうな冒険者を探す。が、そこらへんの飲んだくれではなく腕の立つ実力者でなければならない。  そして、魔王討伐に協力してくれる者となれば早々お目にかかることはできなかった。  気ばかりが焦る。焦ったところでなにもならないと分かっていても、こうしている間に敵が力を蓄えていると思うと気が気ではなかった。 「なに? 腕の立つ野郎探してる? 金はあるのか? それなら隣の国の地下闘技場に行けばいい。金欲しさに喜んで殺しでもなんでもする連中が山ほどいるぞ」 「そうか、……ありがとう」  人殺しが好きなやつを仲間に招き入れたいわけではなかった。それでも、地下闘技場の情報を得られただけでも大きい。  俺はバーの店主にチップを渡し、そのまま店を出た。  ――ナイトは今頃どこでなにをしているのか。  あいつならば一人でもやっていけるだろう。あの男のことだ、騎士団に戻っているとは思えない。  それでもこうして姿を消した今、ナイトとよく似た背格好の男を見ると後を追いかけてしまうのだ。  ナイトのことを憎むことができればまだよかった。  どうしてこんな馬鹿なことをと何度も思った。それでも、考えれば考えるほど怒りと自分のせいだというメイジの言葉が蘇るのだ。  ……今は忘れよう。過去を振り返ってる暇などない。  そう自分を無理矢理納得させることでなんとか形を保てていた。  一度宿屋へと戻り、俺はシーフとメイジを呼び付けた。 「地下闘技場なあ。ま、その手の場所なら確かに腕っぷし自慢の連中はいるだろうが大抵が死刑囚ばっかだ。そんなやつらを招き入れるのか?」 「……もし、問題を起こそうとするなら騎士団へと付き返せばいい」 「そうだな。それに、ただの壁役が欲しいなら俺が言うこと聞くようにしてやる」  あまりにも平然とメイジが続けるものだから思わず「おい」とやつを睨めば、メイジは薄く浮かべた笑みを崩さないままこちらを見る。 「なんだ。スレイヴちゃんは鼻からそのつもりじゃなかったのか? 欲しいのは能力だ、不穏分子は早々に取り除いた方が後々便利だろう?」 「まあ馴れ合うための仲間が欲しいなら止めやしないがな」本当にこの男の言葉が腹立たしい。俺の思考もすべて見透かしたような言動に思わず口を噤む。 「……とにかく、いつまでここに留まっても無駄だ。明日隣町に移動する」 「はーい」 「了解」  そう無理矢理話を中断させ、そのまま自分の部屋へと戻ろうとしたときだ。 「まあ、待てよ」とシーフに腕を掴まれる。 「……っ、なんだよ、もう話は終わった」 「新しい仲間も大切だけど、今いる仲間と親睦深めるのも大切だと思わないのか?」 「なあ、勇者代行様」なんて笑うシーフに全身の血液がかっと熱くなる。怒りだ。ふざけるな、とその手を振り払ってやりたかったが、にやにやと笑う二人の視線の前、言わんとしてることに気付き吐き気を覚えた。  イロアスやナイトがいた頃は、勇者御一行ということでどこでも優遇されることは多かった。それはあくまでもこの世界で唯一、魔王に対抗することができる力を秘めると言われる伝説の勇者として見出されたイロアスがいたからだ。イロアスがいるだけで各地の街ではそれを有り難がり、宿屋を貸してくれたりタダ飯を食わせてくれたりもした。  けれど、今はあいつはいない。俺にはシーフとメイジをずっと養えるほどの所持金はなければ、宿代も飯代もシーフたちが払っている状況だ。  俺が独り立ちできるまで傍にいる。表向きそういったものの、俺達はあくまでもただの仕事仲間みたいなものだ。無償のものなんてなにもない。  そこに絆なんてものも。 「スレイヴちゃんは仲間思いで賢いからな」 「……っ、……」  メイジに腰を抱かれ、思わずその手を掴む。 「……っ、人前では、やめろ……そういのは……」  持たざるものは俺だ。身の丈に合わない仲間を欲しているのも俺だ。その代償なのだ。  シーフとメイジは目を見合わせて笑う。「それじゃあ俺の部屋行くか」と逆サイドに立つシーフに項を撫でられ、これから行われるであろう行為を想像し、気分は地の底へと堕ちていく。  ◆ ◆ ◆  イロアスが死んだ夜、あいつらは俺を一人にしてくれた。イロアスの死体はメイジが弔い、俺は翌朝何事もなかったように綺麗になった部屋の中をただ見ていた。  まるで最初からあいつが存在していなかったかのように綺麗さっぱり痕跡から消えていたのだ。  そして、それはナイトも同じだ。  勇者が殺されたとなれば大問題だ。しかし、メイジは「どうせ時期にバレる、今言う必要はないだろう」と言った。  勇者のパーティという大義名分を掲げるため、利用し尽くせるものは尽くすと。この世界では人死にが珍しいわけではない、強盗や殺人、魔物に襲われることなどもざらにある。たかが一人殺されたくらい気にするなとあいつは言うのだ。  理解したくなかった。そうじゃないだろう。そう言うべきだったと分かっていた。  けれど、相手はシーフとメイジだ。なにを言ったところで無駄だし、そもそもメイジの言うことは非人道的ではあるが今の俺には必要なものだったのだ。  あの一晩に様々な均等が崩れた去ったのは間違いない。 「っ、ふ、ぅ……ッ」  全ては、死んだイロアスのためだ。  そう、そのためならば、あいつと――村の皆の仇を取るためなのだ。そう頭の中で繰り返しながらシーフの股座に顔を突っ込み、目の前、鼻先に押し付けられる勃起した性器を咥える。  じゅぶ、じゅぶ、と品のない音が響こうが構わずにしゃぶりついた。 「は……っ、流石お前器用貧乏だよな。飲み込み早くていいな、そこらの安娼婦よりもよっぽど上手いぞ」  煙草を咥えながら、シーフは俺の髪をかき上げてはこちらの顔を見てこようとする。それが嫌でさらに喉奥まで咥えれば、天井へと真っ直ぐへ昇っていた紫煙が揺らいだ。  唇と喉全体を惜しみなく使え。自分の口も性器だと思え。そう叩き込まれてきた。一刻も早く、この忌々しい行為を終えたかった。  吐き気を堪え、鼻で呼吸をしながらも性器の裏側、そこにびたりと浮き出た太い血管に舌を這わせる。 「っ、ん、ぅぶ……ッ」 「良かったなスレイヴちゃん、シーフのお墨付き貰えて。こいつが褒めるなんて早々ないぞ」  溢れる唾液をどうすることもできないまま、顎が外れそうになるのを堪えながらもシーフのものを締め付ける。  背後、ベッドの縁に腰を下ろして傍観していたメイジが茶化してくるのを必死に聞き流そうとしていると、微かにベッドが軋んだ。メイジが動いたのだと気付いたときには遅かった。  伸びてきた手に、突き出すような形になっていた下腹部を撫でられる。 「……ッ、ふ、ぅ……ッ!」  やめろ、気が散る。そう背後の男を睨みつけようとするが、頭部を撫でていたシーフの手にそれを邪魔された。 「集中しろ、スレイヴちゃん」 「……ッ」 「相変わらず性格が悪いな、あんたは」 「心外だな。俺ほど優しい男は早々居ないぞ」  いつものメイジの軽口に「ま、そりゃそうだな」もシーフは笑う。頭上で交わされる二人のくだらない会話に腹が立ったが、なによりもこうすることでしか二人を引き止めることができない無力な自分自身が余計腹立たしくて堪らない。  輪郭を撫でるように布越し、撫で回される臀部。こそばゆいが、耐えられないほどではない。メイジを無視して、目の前のシーフのものに唾液を絡めるように舌で塗り込んでいけば、シーフが笑うのを粘膜伝いに感じる。 「……ッ、は……そーそー、上手上手」 「っぅ、ぶ……っん゛……ッ、ふー……ッ」 「やっぱ良いわ、お前。今まではイロアス以外にはやる気なかったくせに、そんなに俺が必要なのかよお前」 「……本当可愛いな」犬がなにかにするように雑に頭を撫でられる。大きく脈打つ性器を咥えたまま、顎の下、首の付け根、耳たぶまでを撫でられればそれだけで背筋がぴんと伸びてしまった。  嬉しいはずがない。こんなことを褒められたところで屈辱でしかない。それでも、こうして媚を売ることしかできないのだ。 「っ、……はー……ッ、やべ、そろそろ出るかも。なあスレイヴ、分かってるよな?」 「ん゛……ッ、ぅ゛、……ッ」 「ちゃんと、飲み干せよ。残りカスまできっちりな……ッ」  咥内いっぱい、口蓋垂を掠めては喉の入口までみっちりと嵌った性器は吐き出したくても吐き出すことができない。  そのまま、髪に指を絡めるように頭を抱き寄せるシーフはそのまま更に喉奥を犯すのだ。 「っ、う゛お゛え゛……ッ! ぐ、う゛……ッ!」  吐きたい、吐きたいのに。  口の中いっぱいのそれを吐き出すこともできず、舌の上、這い擦る肉棒を受け止めることしかできない。  次第に先走りの量は増し、唾液と咥内で絡み合い、ぐちぐちと音を立てながら泡立つ。ストロークの間隔は短くなり、シーフの呼吸も浅くなっていることからそろそろやつの射精が近いことを予感した。しかし、この状況ではまともに受け止めることはできない。  そして、 「っ、出すぞ、スレイヴ……ッ!」 「っ、ふ、ぅ゛……――ッ!!」  喉奥、隙間なく深く突き刺さったその性器の先端から溢れ出す熱を受け止めることすらもできなかった。こじ開けられた喉を通り、腹の底まで落ちていく粘り気のあるその熱に堪らず噎せ返りそうになる。それを堪え、唾液の塊ごと精液を無理矢理流し込んだ俺は、そのまま精液と唾液、先走りでどろどろになった性器に舌を這わせた。射精したお陰で幾分か収まったかと思えば、すぐに硬くなり始めるシーフにただ呆れた。 「……は、偉い偉い。出したばっかのチンポしゃぶられんの最高だわ。しっかり皺の間も舐めるんだぞ〜」 「っ、ふ、……ッ」 「おいメイジ、お前も咥えさせるか? 気持ちいいぞ」 「いや俺は結構。お前の顔を見てたら興奮できない。……それに、どちらかといえば俺は奉仕させるよりも尽くすタイプでな」  言いながら、メイジは腰を持ち上げさせてくる。そのせいで更に胡座を掻くシーフの股間に頭を突っ込む形になってしまい、腰を落とそうとするがそのまま腿の付け根の間、服の裾の下で下腹部を撫でるように持ち上げられるのだ。 「スレイヴちゃん、そのままシーフのやつの奉仕でもしていろ」  背後でメイジは笑う。その長い指に下穿ごと脱がされ、反応しそうになるのを堪えた。  別に初めてではない。そう言い聞かせ、目の前の性器に舌を這わせ、精液を舐め取る。言われた通りに尿道口に残った精液も吸い出し、シーフの視線を向けられながそれを飲み干した。 「あのスレイヴがここまでしてくれるとはな」 「……ッ、も……いいだろ……」 「まだだ」  そう答えたのはメイジだ。剥き出しになった肛門に這わされる指は、躊躇なく体内へと挿入される。 「ッ、め、いじ……ッ」 「まだだろ、スレイヴちゃん。ほらみろ、そこの男はまだ満足できてないらしいぞ」 「お前が喜ばせすぎるからだ」とメイジに後頭部を抑えつけられる。シーフの性器が頬に押し付けられ、その硬さと熱、そしてその匂いに頭の奥が熱くなるようだった。  何故また勃っているのか、なんて考えても仕方ない。こいつらが一度や二度で満足できるような男ではないと俺は知っていた。 「今度はちゃんと濡らしておけ。痛い思いをしたくないならな」 「なんだ、挿れさせてくれんのか?」 「せっかくだ、ある物は使った方がいい。……スレイヴちゃんもこういってるからな」 「そうだろ、スレイヴちゃん」ぐぷ、と音を立て体内に空気が入ってきた。  散々犯され、柔らかくなった括約筋を指で広げられ、そのまま指で前立腺を撫でられ堪らずシーフの腿を掴む。 「……っ、勝手に……しろ……っ」 「そうじゃないだろ、もう忘れたのか?」 「…………ッ」  心臓から全身へと、巡る血液はマグマのように熱く滾った。ぐちぐちと音を立て臍の裏側を柔らかく押し潰され、擦られれるだけでじんじんと甘く腰が震える。気付けば既に腹にくっつきそうになるほど性器は勃起していた。  まるで子供をあやすようなメイジの声に、俺は奥歯を噛む。そして、シーフの性器に指を絡めた。 「……ッ、俺の体、好きに使ってくれ」  掌の中、シーフの性器が一層硬くなっていく。シーフは笑っていた。メイジも後ろで笑ってるのだろう。屈辱だった。それでも、今の俺には手段など選んでる暇はなかったのだ。  自ら体を開いて同性相手に媚を売る俺の姿を見たら、あいつはどう思うのだろうか。そんなこと、考えたところでより一層自分の首を締めることになるとわかっていたが、それでも思わずにはいられなかった。  相手があいつだったから、イロアスだったから俺はずっと耐えられた。けれど、今俺が相手にしているのはあいつじゃない。  あいつはもういないのだ。 「ッ、は、ぁ……ッ、ぐ、ひ……ッ!」 「あー……っ、まじでお前の穴、最高だな……ッ、男も悪くねえわ」  寝台の上。仰向けに転がされては覆いかぶさってくるシーフに膝裏を掴まれ、開かされたその肛門に深く挿入された。  抽挿の都度、限界まで腫れ上がった性器に肉襞全体を嬲られ、犯される。  声など出したくもなかった。これ以上喜ばせたくもない。そう思って声を抑えようとしても、ストロークで亀頭の凹凸で前立腺舐られればその思考すら霧散してしまうのだ。 「っ、ぁ、く……ッ、ひ……ッ!」 「いい声出すようになってきたな、……お前、ずっとそうやってしてろよ。そっちの方が可愛いぞ」 「う、るさい……ッ、だ、ま……ッ、れ……ッ」 「なんだぁ? 人が褒めてやってんだろうが」 「っ、う……ぐ……ッ!!」  腿を掴まれ、腰を打ち付けられる。情けない声を出したくなくて、奥歯を噛み締めて声を殺した。  性的なものとは程遠いものを頭の中思い浮かべて落ち着かせようと思うのに、それもすぐ抽挿に邪魔をされる。  集中しろ、と言わんばかりに腰を打ち付けられ、唇を重ねられた。こんな行為に慣れたくなどなかった。目的のための手段だと割り切る他ない。戦慄く唇を噛み締め、シーフにしがみついてただひたすら朝になるのを待った。  ◆ ◆ ◆  翌朝、体の疲労も抜けきれないまま宿屋を後にすることなる。  隣町は然程遠くはないが、それでも気分は最悪だ。体調管理はメイジに任せてある。俺がぶっ倒れない程度には調整してるらしいが、あまり恩恵を感じたことはない。要は気の問題なのだろう。  隣町までの移動は馬車を借りた。箱型の四人乗り馬車の中が異様に広く感じるのは気のせいではないはずだ。  そして次に馬車が止まったとき、町並みはがらりと顔を変えていた。  賑わいというよりも喧騒に近い。バーやパブが多いその町は夜になるにつれまた賑わっていくそうだ。人間が多い分、治安はそれほどよくはないという。  さっさと遊びに行きたいといった様子のシーフに促され、適当な宿屋で部屋だけ借りておく。  それからそのまま現地で解散することになったが、 「アンタもシーフと一緒に遊びに行かないのか」 「スレイヴちゃんは早速闘技場を探しに行くのか」  質問を質問で返すな、と喉まで出かけたが言葉を飲む。いちいちつまらないことで噛み付く気力もなかった。「ああ」とだけ応えておく。 「一人が心許ないなら俺も付いて行こうか」 「俺一人で十分だ」 「一人でまともに荒くれ相手にきちんと交渉できるのか? スレイヴちゃんが」 「……」  黙って睨めば、メイジは楽しそうに笑った。この男はなにも変わらない、人を掻き回して遊んでは楽しんでいるのだ。 「できる」 「いま答えるまでに間があったような気がするが俺の勘違いか?」 「ああそうだな」  これで話は終わりだ、とメイジの視線から逃れようと歩き出した矢先だった。伸びてきた手に腕を掴まれる。 「人の善意には大人しく甘えるものだぞ」 「……ッ、」 「別に何もしない。俺は着いていくだけだ。そんなに交渉したいのならすればいい」 「ガキ一人だけじゃ足元見られる、舐められて骨までしゃぶり尽くされて捨てられるのがオチだからな」なんなのだ、この男は。  腹が立ったが、言い返す言葉もなかった。それ以上にメイジの言葉に納得してしまいそうになるのが嫌だった。俺一人ではなにもできない、そうメイジは言ってるのだ。  そんなこと、分かっていた。 「……勝手にしろ」  そう口にすれば、メイジは俺から手を離した。「それじゃあ詳しそうな人間を当たるぞ」と何事もなかったように促すのだ。  それからメイジとともにまずは地下闘技場の場所を探すことになったが、案外すぐに見つかることとなる。  地下闘技場は夜になって開放される。中に入るにはまず入場料を払うことになっていて、中では賭けをする者やただ人が死ぬところを見たいという悪趣味かつ金を持て余した連中が主な客層らしい。  そして生死不問の闘技場に参加する人間は大抵が借金を抱え首が回らなくなった者や、死刑囚などが大半だ。でなければ、ただ人を斬り殺したいというイカれた人間くらいだ。  ――地下闘技場、受付場。  ここで参加希望者も客も受付をするらしい。試合開始まではまだ結構な時間があるが、参加者受付希望者はちらほらといた。  腕っぷしに自信がある者、自分の死を覚悟する者――ひと目見るだけで分かる。 「どうだ、スレイヴちゃんの御眼鏡に適う人間はいるか?」 「……いない」 「受付締切まで時間はまだある。もう少し様子見ていくか」  最初からそのつもりだ。ああ、とだけ頷き返した。  日が落ちていくにつれ、身なりのいい人間もちらほらと増えてくる。勤務帰りの兵士の姿も増えてきた。罪人だろうか、兵士たちに強引に引きずられて参加者専用の通路へ引きずり込まれる男もいた。  それから暫く、締切時間がやってきた。受付の壁にかかった巨大な掲示板にトーナメント表が張り出される。客たちはやれ誰が勝つか誰の死に様が見たいなどと野次を飛ばし、笑い合う。  胸糞の悪い空間だ。来客用の椅子から腰を持ち上げる。隣に座ったままのメイジが「観ていかないのか」と問い掛けてきた。 「こんな悪趣味なもの見てられるか」 「手段は選ぶ余裕があるのか、それは結構だ」  わざとなのか、それともこういう言い方しかできないのか。 「人が死ぬところを見るために金を払うのか」 「強者を見極めるのには手合わせを見るのが手っ取り早い、という話だ」  ゆっくりとした動作でメイジが立ち上がる。  そのまま俺を止めるわけではなく、流し目を向けるのだ。 「しかしまあ、人死が見たくないと言うなら俺だけでも見てこよう。スレイヴちゃんは外で大人しく待っていたらいい」  子供相手に言い聞かせるような口調だった。  こいつのこの言葉は気遣いや優しさではない、挑発だ。挑戦的な目に、反骨精神が湧き上がる。  一人で受付まで歩いていくメイジ、その後ろ姿を追いかけた。隣に並べば、メイジがこちらへと視線を向けた。その口元には小馬鹿にしたような笑み。 「どうした、出入り口の場所もわからないのか」 「……気が変わった」 「へえ?」 「初戦は観ない。……三戦目から観る」 「好きにしたらいい、楽しみ方は人それぞれだ」  メイジは二人分の料金を支払い、そのまま受付に案内された通路へと歩いていく。  石造りの通路には闘技場からの歓声が響き渡り、鼓膜を、皮膚を震わせる。恐らくここが普通の闘技場ならば俺も楽しむことができたのかもしれないが、今からこの場で行われるのは死合いだ。  既に一戦目が始まっているらしい、通路を抜け出せば異様な空間が広がっていた。  通常の闘技場と同様に円形となっている。前列に富裕層が集まり、後列が一般市民が少しでも近くで見ようとすし詰めになっている。俺たちも後列に降り立つが、この離れた席からでも闘技場の全貌を見渡すことはできた。  血飛沫が上がるごとに歓声が沸き、下品な言葉が飛び交う。金属音が響く。剣が弾き飛ばされたのだ。本来ならばここで制限時間内に武器を拾わなければ戦意喪失と見做され敗退するが、寧ろこの闘技場はこれからが本番なのだろう。  気分が悪くなり、俯いた。耳を塞ぎたかったが、隣にいるのはメイジだ。メイジは目をそらすことも耳を塞ぐこともせず、ただ客席に腰を落ち着かせて眺めていた。  意識してはならないとわかっていても、飛び散る血を見るとどうしてもイロアスの最期が蘇るのだ。悲しんでる場合ではない、悲観してる場合ではないと自分を叱咤し、込み上げてくる感情の波を押し込める。  勝敗はすぐに着いたようだ。審判の声が響き渡り、周りはまた一段と盛り上がる。誰一人悲しむ者などここにはいないのだ。  ――やはり、来なければよかった。  そう後悔したときだった、敗者は回収されていく。そして次の挑戦者が現れたとき、先程とは比べにならない異様な盛り上がりを見せた。弱者同士の戦いを見せられるときとは違う、興奮混じりの熱気に圧され顔を上げる。  闘技場の中央に立つその人物を見て息を飲む。 「――な」  なんで、あいつがこんな場所にいるのか。  黒い甲冑に身を包み、自身の身丈ほどの大剣を手にした大柄な男。その正面、兵士数人がかりで運ばれてきたのは檻に閉じ込められた数匹の魔獣だ。成人男性を丸呑みできそうなほどの巨大な口と牙を持ったその獣を前に怯むことなく、ただ佇んでいる。  見間違いでは、ない。あいつは。 「ナイト……ッ」 →続き【https://www.fanbox.cc/@t589423/posts/2887414】

『また会いましょう』後日談※前編【↑500/9,900文字/レイプ/性奴隷/言いなり/軽リョナ】

Comments

それもこれも魔王が仕組んだということを前提にすると、「メイジ…村人を追い詰めるのが本当に好きなんだ…お前に人の心はないんか…(最高)」という感情になります。良い作品に出会えてとても嬉しいです。こういうドキドキする小説が書けるなんてすごいです👏

パイ生地製作委員会


More Creators