【総集編版】齋藤が中学時代に壱畝と初体験していたら※【17,500文字/壱畝×齋藤/やや無知シチュ/無理矢理/強制和姦】
Added 2021-10-16 12:52:59 +0000 UTC「ッ、はぁ、ぁ……ッ」 「ゆう君」 「ん、む……ッ」 「口、開いて」 拒まないでくれ。そうハルちゃんの声には懇願の色が滲んでいた。 僕にはまだ、なんでこんなことをされているのかわからずにいた。ハルちゃんがうちで遊ぼうって言うので初めてハルちゃんの部屋に行って、それで、大きなマンションの一室まるまるハルちゃんの自室だというその部屋に感動するのも束の間。広く、僕たち以外に誰も居ない居間でハルちゃんにキスされた。 それまで他愛ない話をしていた。 学校の話、クラスメイトの話、それから――僕の話。ハルちゃんが聞きたいというから浅い人生の中から振り絞って自分のことを話そうとするけどハルちゃんに話せれるほどの内容もなくて、どうしようと一人焦っていたのだ。 それが、どうしてこんなことになってるのか。 「っ、は、るちゃ……ッ、……ん、ん……」 待って、と胸を押し返そうとするがその手首ごと掴まれる。成長期というものは残酷で、同い年なのに悲しくなるほど僕とハルちゃんには既に差があった。すっぽりと大きな掌で手首を掴まれ、そのまま軽く引っ張られ、抱き締められる。 唇を啄むように柔らかく吸われ、舐められ、重ねられる。 ――キス、されているのだ。今。僕は。 ほんの数分、それでも僕にとってはとても長い間のように感じられた。 「っ、ゆう君……」 「ハルちゃん……ど、うしたの……?」 恐怖や嫌悪がないわけではない、それ以上にいつものハルちゃんと違う。そんな鬼気迫る雰囲気に身が竦んだのだ。ハルちゃんはなにもいわず、そのまま僕の頬を撫でる。片方の頬に軽くキスされ、息を飲んだ。 ハルちゃんの唇も震えていた――そんな気がしたのだ。 「ゆう君は、俺と友達だよな?」 「え? ……そ、れは……」 急にそんなことを聞かれ、顔が熱くなる。ハルちゃんは僕みたいなやつをそばに置いてくれて、優しくしてくれる。僕を友達だと言ってくれるけど、僕は未だにハルちゃんのことを友達だと公言することに躊躇っていた。相応しくないような気がしたのだ。 けれど、僕が口籠ってるとハルちゃんの目の色が変わる。 「ゆう君」と促すように首を撫でられ、その指にびっくりして僕は飛びのこうとするができなかった。鎖骨の凹凸を指でなぞられ、驚いてとっさに僕は口を開ける。 「っ、と、友達……だよ……っ! 友達……だから、その……そこ……っ」 そこを触らないで、と首を横に振り、ハルちゃんの手から逃れようと身を捻る。それでもハルちゃんの拘束は解けない。それどころか、「そうか」とほっとしたように笑ったハルちゃんは再び僕の顎を掴んで口を重ねてくる。 ちゅ、ぷちゅ、と音を立てて、何度も何度も唇がふやけてしまいそうなほど優しく、ねっとりとキスをされる。緊張と動揺のあまり呼吸がままならず、酸素が薄くなっていく。はふはふと必死に肩で呼吸を繰り返してると、なんだか頭の奥がぼうっと熱くなってくるのだ。 下半身、股の間がじんじんと熱くなっていき、意図せず腰が震えてしまう。 「っ、ハルちゃん……も……」 「ゆう君、これは友達の証だよ」 「……っ、友達の……?」 「そうそう。親愛のキス、映画とかでもあるだろ――だから、今度はゆう君からキスしてよ」 桃と白が混ざったようなそんな靄が脳全体に発生し、まるで白昼夢でも見てるかのような気分になってくるのだ。 広いハルちゃんの部屋の中。 お手伝いさんも今はいないし、ご両親も今夜は帰ってこない。だから、他の誰かに気遣う必要なんてないとハルちゃんは言っていた。 それでも、ハルちゃんはここで過ごしてる。朝ご飯も食べたりしてるかもしれない、他の友達も呼んだりして、過ごしてるのだ。そう思うと、堪らなく自分がしてはいけないことをしてるような気分になるのだ。明確な理由もわからない。それでも、どくどくと脈打つ鼓動がやけに大きく響く。汗が滲んだ。 「ゆう君」と促すように回された腕に背中を撫でられる。また、びりっと痺れるようなあの変な感覚だ。爪先からハルちゃんに触れられた箇所が疼く。 「……っ、は、恥ずかしいよ……僕、したことないし……」 「今俺としただろ。だから、同じように今度はゆう君がするだけだって」 「……っ、ん、ぅう……ハルちゃん、目……」 「開けてるし見てる。ゆう君が真っ赤になって恥ずかしがってるの見たいし」 「……っ、ハルちゃん……」 早く、と顔を寄せられる。ハルちゃんの言うとおりだ、さっきあんなにたくさんキスされたのに、それでもまだ恥ずかしい。 じっと見詰めてくるハルちゃんの視線に耐えきれず、僕はぎゅっと目を瞑ってハルちゃんの唇に自分の唇を押し付けた。ぶつかった、という方が適切なのかもしれない。 「こ……こう、かな……?」 そして、そう恐る恐るハルちゃんを見上げたときだった。後頭部に回されるハルちゃんの手にがっちりと頭を固定される。そして、口を開いたハルちゃんにそのまま深く唇を重ねられた。 「……っ! ふ、……ッ、ぅ……ッ」 ソファーの上。覆い被さってくるハルちゃんを受け止めることができず、そのままずるずると押し倒される。それでも、重ねられる唇は離れない。 舌が入ってきてびっくりしたが、それでも拒むという選択肢は頭になかった。 割り開かれた股の間、膝立ちになったハルちゃんに柔らかく下腹部を膝で押し上げられ、ソファーの座面の上、身動ぐ。 「っ、ん、ぅ……っ、は、るちゃ……」 「キス、気持ちいい? 勃起してるじゃん」 「ぼ……っ?」 「………………え? まさか、知らないの? 勃起だよ、ほら、これ」 言われて、腿の間、熱くなっていたそこを指で突かれてびっくりした。それ以上に、自分の下半身を見て驚く。こんな風に見てわかるほど大きくなったことはなかった。しかも、それをハルちゃんに見られている。 恥ずかしくなって、「見ないで」とハルちゃんの手を掴んで腿をぎゅっと閉じようとするがハルちゃんは許してくれなかった。それどころか、更に大きく開いたままハルちゃんは膝の頭を固定するのだ。 「や……ッ、だめ、だって……そんなところ……汚い……っ」 「汚くないって。……てか、勃起しらないってことはオナニーは?」 「ぉ、なに……って……」 「自慰だよ自慰。……セックスは流石に分かるよな?」 ハルちゃんの口から次々に飛び出す単語に顔がどんどん熱くなっていく。 彼女がいる進んだクラスメイトたちが度々教室の真ん中で大声で話してたのは聞いたことあった。聞き耳をこっそり立てては、その内容の過激さについていけなくなって教室から逃げ出したこともあった。 ハルちゃんは、そんなことしないと思ってたのに。 「や、やめて……やめてよ、ハルちゃん……からかわないで……っ」 「あー……ごめん、もしかして下系苦手だった? はは、だよな、でもゆう君はそういう感じだよな」 「安心した」とハルちゃんが笑う。どういう意味かわからなくて、それ以上に動転してしまう自分が恥ずかしくて、なんだかもう逃げ出したくなった。「離して」とハルちゃんの腕を掴むが「ごめんって」とハルちゃんに更に抱き締められる。捕らわれた腕の中、そのままキスをされそうになり思わず目を瞑った。 「っ、……ん、ぅ……」 恥ずかしいのに、耐えられないのに。こんな風に抱き締められて頭を撫でられると気持ちよくなっていく。いや、違う。安心感。よくわからないけど、ハルちゃんが嬉しそうにしてるのを見てると安心する。 ちゅ、と音を立て唇は離れる。ぼうっとしたままその目を見詰めてると、ハルちゃんは微笑んだ。 その視線が恥ずかしくて、むずむずして、僕はつい目を伏せる。 「ハルちゃん……も、もう僕そろそろ帰らないと……」 「帰る? どうして?」 「だ、だって……」 「今日は泊まっていくって言ってただろ。ゆう君ちにも俺が連絡するって約束だったのに」 「で、でも……」 「……俺のこと嫌いになった?」 「ち、違うよっ!」 自分でも驚くほどの声が出てしまい、恥ずかしくなって慌てて口を抑える。驚いたのはハルちゃんも同じらしい。ごめん、と俯けば、頭を撫でられる。 「……俺に触れられるのは嫌?」 「ち、が……でも、僕、ハルちゃんみたいにできないし……下手くそだし……は、はずかしい……」 「恥ずかしくないよ」 「でも、ハルちゃんだって無理してるんじゃ……」 「無理してるわけないだろ」 「……ッ!」 閉じた腿の間、滑り込んできたハルちゃんの手に内腿を撫でられる。びっくりして起き上がろうとしたとき、開かれたそこに硬いものが押し付けられる。一瞬、それがなんなのかわからなくて思わず僕はハルちゃんを見上げたときだった。体を抱きしめられた。 隙間ないくらいくっつく上半身。赤くなったハルちゃんの耳が髪から覗く。 重なり合った上半身から心臓の音がどくんどくんと聞こえてきた。一瞬自分の心音かと思ったが、違う――ハルちゃんの心臓の音だ。 「ハルちゃん……?」 ハルちゃんの腕の中、すっぽりと収まった体に熱い吐息が吹き掛かる。ごり、と押し付けられる腰。息苦しさよりも何も言わないハルちゃんに不安になって、つい僕はハルちゃんの肩を撫でる。前髪の下、くすぐったそうに細められた目はどこか焦点が定まっていない。 「――ゆう君、逃げないで」 それは懇願だった。 軋むソファーのスプリング。腰へと落ちてきたハルちゃんの手はそのままがっちりと僕の腰を捕まえる。言われなくとも逃げるつもりもなかったし、逃げることもできない。固定された下半身に押し付けられる下腹部に息を飲んだ。 「っ、はる、ちゃ……」 自分が何をされているのか、何をされようとしているのかも乏しい経験からはわからない。それでも、ハルちゃんは僕が逃げたくなるようなことをしようとしてるのだと分かった。 僕は、どうすればいいのかわからなくなる。怖くないわけではない、けれどそれに対応するための引き出しがない。ただ目の前のハルちゃんを見詰めることしかできなかった。 腿を撫でられ、ベルトを緩められる。どうして、と考える暇もなくハルちゃんにスラックスを脱がされていく。脹脛を撫でるように靴下すらも脱ぎ捨てられ、下着一枚になった僕を前にハルちゃんは自分の下腹部に手を伸ばす。同じようにガチャガチャとベルトを緩めるのだ。 「どうして、脱いで……」 「どうしてだと思う?」 「……ッ、わ、わからないよ……」 「本当に?」 呼吸が浅くなる。見てはいけない気がして、僕は目を瞑る。覆い被さってくるハルちゃん。下着越しになにかが触れる。最初は小さな音だった。くちくちと濡れた音を立て、ハルちゃんは手を動かすのだ。ぬるぬるとしたなにかが腿や下着の上からあそこに触れてくる。 「……っ、……ぅ……ッ」 「ゆう君……ッ」 ハルちゃんの声が鼓膜に響くようだった。何をしているのか、恐ろしくて確認することができなかった。けれど体は酷く熱くなり、その水音は次第に粘着性を増していく。 下着の上から触れられる。擦りつけられ、布越しにお尻の穴を指で撫でられた瞬間驚いて思わず目を見開いた。その瞬間、見たことのない顔をしたハルちゃんと目があった。 「っ、ぁ……あ……ッ」 だめだとわかっても、視線が下がってしまう。そして己の下半身、腿に押し付けられてるそれを見て息を飲む。同世代の中でも発育のいいハルちゃんのは大人みたいで、それ以上に見たことないくらい大きくなってるそれは部屋の明るさも相まって余計陰影や濡れた質感がグロテスクだった。背筋が震え、思わず逃げようとしたときだった。下着の裾を性器の先端でめくりあげられる。そのまま尻の谷間まで這うように押し付けられ、恐ろしいほど熱く濡れた性器の感触に息を飲む。 「っ、や、はるちゃ、待って……ッ」 「逃げるなって言ったよな、俺」 腿に食い込むハルちゃんの指。大きく膝を折られ、開かれた下半身。そこを隠すこともなにもかもが間に合わなかった。 「ッ、待……ッぁ、あ……ッ」 待って、と声を上げるのと肉色の性器がお尻の穴に押し当てられるのはほぼ同時だった。ぬるぬると先っぽから滲む体液を塗り込むように、肛門の周りに押し付けられる。下腹部から響く音が酷くなまなましく、それ以上にあまりにも恥ずかしい体勢と状況の異様さに頭の中では警笛が鳴り響く。 これ以上は、駄目だ。その手の知識に疎い僕でもそれはわかった。それでも、止まらない。 ハルちゃんに腰を押し付けられ、指で濡れた入口を更にほぐすように撫でられる。 「っ、は、ぁ……っ、待って、待って、だめ……っこれ、変だよ……ッ」 「……」 「ハルちゃんっ、なんで、黙……――っ」 黙るんだ、と言い終わるよりも先に濡れたそこに押し当てられた性器に息を飲んだ。深く呼吸を繰り返し、ぐ、とハルちゃんの腰が押し当てられる。瞬間、硬く閉じていたそこにほんの少しずつ埋まっていく性器。感触に、息苦しさに、堪らず息を止めた。 「っ、ふ、ぅ゛……ッ」 乾いた内壁に侵入してくる異物の熱に藻掻く。抜いて、という声を上げることもできなかった。僕の手を掴み、ハルちゃんは息を吐く。 「っ、きつ……ゆう君、大丈夫?」 「ッ、ぅ……ッ、ふ……ッ」 ハルちゃんが喋るたびにお腹の中で声が響く。痛い。熱くて涙が止まらない。 ハルちゃんが動く度に体全体引っ張られそうになり、目の前のハルちゃんの腰にしがみつけばそのまま抱き締められる。 「――……なわけ、ないよな」 言い終わるよりも先に、中でまたハルちゃんのが大きくなるのが分かった。どくどく速まる鼓動は時限爆弾のようで、そのうち爆発するのではないか。そんな風に思えるほどの熱と質量に首を横に振る。 「っ、は、るちゃ……くる、し……ッ、も……っ、や、……ッ」 「……もう少し、もう少しだけ……ッ」 「ッ、ひ、う゛……ッ! は、るちゃ……ぅ゛……ッ!」 最初は皆痛いから、なんてハルちゃんは言う。 僕にはわからなかった。なんでこんなことされてるのかも、痛いのに、ハルちゃんだってちっとも気持ち良さそうではないのにそれでも腿を掴んで強引に中を押し入ってくるそれに声が漏れる。 揺さぶられるように角度を探り、ぬめりを伴った分泌液を粘膜に塗り込むように少しずつ、それでも着実に深く入ってくるのだ。 「ぁ……ッ、あ……」 声を我慢することもできなかった。 次第に痛みに慣れてきて、その代わりに腹底から突き上げてくる圧迫感に硬直する。 ハルちゃんの呼吸に合わせて息を吐く。やり場のない手を取られ、握り締められた。指を絡め、ハルちゃんは緩く腰を進めるのだ。 潤滑油代わりの体液も量は増し、最初に比べればハルちゃんも表情も和らいだ。ゆう君、と譫言のように名前を囁かれる。 「っ、は、るちゃ……ッ、ん、ぅ゛……ッ! ぁ、お、なか……へん、これ……ッ」 「……っ、痛くない?」 「わ、かんな……ッ、ぁ、……ッん、ぅ……ッ! ふ、……ッ」 頭の中が色んな色が弾け、溢れ出す。痛い、苦しい、熱い、それから――自分でもわからない色。臍の裏側の辺りを中から擦られるだけで腰が震える。苦しいのに、ハルちゃんに優しく声をかけられるとお腹の奥が締め付けられるのだ。 痛みのあまり脂汗でぐっしょり濡れた額をかきあげられ、見つめられる。恥ずかしいのに、ハルちゃんが悲しそうな顔をしてるので目を逸らすことができなかった。 ハルちゃんは、ハルちゃんは気持ちよくないのか。そう、恐る恐る痺れる指先でハルちゃんの頬に触れる。 「っ、は、るちゃ……っ、痛いの……?」 そう、声を振り絞る。頬を撫でた一瞬、ハルちゃんの目が僅かに揺れた。そしてすぐ、ハルちゃんは僕の手を握り締めるのだ。 「……っはる、ちゃ……ッ」 不安になってもう一度名前を呼ぼうとしたときだった。ハルちゃんに腰を掴まれる。そして、一気に深く抽挿された瞬間その声は悲鳴に変わる。 「っ、ぁ゛……ッ、あ゛……ぁ、待っ、ぅ゛……ッ!」 なんで、どうして。なにか怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。 息苦しさに耐えきれず、藻掻く。根本まで勢いよく貫かれ腰を打ち付けられた瞬間、目の前が真っ白になる。文字通り何も考えられることができなかった。 ハルちゃんを抱き締め返したかったのに手を伸ばすこともできなかった。 「っ、ぁ゛、あ……ッ! あッ、ぅ゛ひッ! ぅ゛、はる、ちゃ……ッ、ぅ、あ゛……ッ!」 「……ッ、……」 「ぁ゛……ッ、ふ、ぅ……っ!」 苦しくて、お腹がぱんぱんに膨れ上がったみたいに気持ち悪くて、滲む涙で視界が歪む。 何度も何度も執拗に奥まで穿られ、ハルちゃんの体を受け止めるのが精一杯だった。 痛みと苦痛のあまりに目の前が赤くなり、結合部は焼け爛れるように熱く疼く。 「っ、はる、ちゃ……ッ、ぁ゛ッ、ハルちゃ……ッ」 「……っ、ゆう君」 掠れたハルちゃんの声が腹の中で響く。熱くて、なにも考えられなくて。辛うじて伸ばした手ごと握り締められる。そのまま手を重ねたまま、ハルちゃんは抽挿を速めるのだ。 内部の裂傷から血が滲んでるのか、辺りに血の匂いを感じて怖くなる。それでも、必死にハルちゃんの腕にしがみついて堪えたとき、脈が一層大きく響く。 一瞬、何が起こってるのかわからなかった。 先程まで腰を打ち付けてきていたハルちゃんの動きが止まり、根本まで隙間なく性器を嵌められた矢先。どくんと大きく脈打つ性器、その先端部から溢れ出す熱に驚いて、ぶるりと腰が震えた。 「あ゛ッ、あ……ッ!」 逃げようとする俺の腰を捉えたまま、奥へとたっぷり放出されるその感覚に頭が真っ白になる。 受け止めることしかできなかった。 瞬間、引き抜かれた性器とともに開いた肛門からどぷりと血液混じりの白濁が溢れ出す。 「っ、ぁ……ッ」 息を吐くことしかできなかった。 浅く呼吸を繰り返すハルちゃんの前、僕は開かれた脚を閉じることもできないままぼんやりと自分の体に目を向けていた。そして、ハルちゃんの下腹部に。先程まで僕の中に入っていた濡れた肉色のそれは、また大きくなってる。 僕の下半身を見つめていたハルちゃんがこちらを向く。目が合い、その瞬間急にハルちゃんが怖く見えてしまうのだ。 「は、るちゃ……」 「……っ、やっぱ、無理だわ……」 どういう意味だろうか。そう思いながらも体を起こそうとしたとき、再び腿を掴まれる。そして、先程まで散々ハルちゃんに穿られていたそこに性器を押し当てられるのだ。 まだやるのか、と背筋に汗が滲む。せめてもう少し休ませてくれと首を横に振るが、ハルちゃんは「ごめん」とだけ呟くのだ。 そして、体液で濡れそぼったそこに躊躇なく性器を挿入された。 先程よりも滑りがよくなった性器に、裂傷で熱く腫れ上がった内壁を摩擦される。悲鳴のような声が漏れ、僕はハルちゃんの腕を掴んだ。 「ッ、あ、ひ」 「ゆう君……っ、俺たち、友達だよな」 「待っ、ぅ゛……ッ!」 「……っ、ゆう君」 「わ、わかんない……っ、も、ぼ、く……っ」 お腹の中に残った残滓を性器で思いっきり掻き混ぜられる。その都度濡れた音が体内で響き、頭の中が真っ白になった。 熱くて、痛くて、苦しいのに――。 何も考えられなくなって、ひたすらハルちゃんにしがみついた。揺さぶられる腰に何度も腰を打ち付けられる度に声が漏れ、溢れる体液が腿から流れ落ちるのを感じながら僕はただ必死になってハルちゃんを受け入れる。 辛かったが、それでもハルちゃんに何度目かのキスをされればそのときだけは痛みも苦痛も和らいだ。だから、何度もハルちゃんにキスをねだった。しがみついて、唇が離れないように必死にその首の後ろに手を回して、上半身をくっつけて、耐えようとした。 腹の中でハルちゃんがまた大きくなる。ハルちゃんが気持ちいいなら、それでよかった。 「っ、ハルちゃ……っ、ん、ぅ……ッ」 「っは、……ッ、ゆう君……俺……ッ、」 上手も下手もわからない、稚拙な行為だったと思う。それでも僕は、ハルちゃんに抱き締められてキスされるだけで耐えられた。 ガクガクと痙攣する下腹部、僕はハルちゃんに抱き着いた。どくんどくんと大きくなる鼓動。自分の性器の先端から滴り流れる熱を感じながら、僕はハルちゃんにキスをした。 ――ハルちゃんの部屋の中。 お風呂に入る気力もなく動けなくなった僕は、ハルちゃんによってハルちゃんのベッドの上に寝かされていた。片付いた部屋の中。こんな汚れた体でハルちゃんのベッドを汚すのは気が引けた。それでも動く気力もなかった。 気付けばすっかり夜も更けていた。 あれからどれほどハルちゃんと繋がっていたのか。 それが長いのか短いのかもわからなかったが、既に僕の体力はなくなっていた。 「ゆう君だけだよ。――ゆう君だけが、俺のことを受け入れてくれる」 ベッドの傍。仰向けに横たわったまま動けなくなる僕を覗き込むハルちゃん。その手にお腹を撫でられると、つい先程まで咥えさせられていた性器の感覚が蘇り、びくりと下腹部が跳ねた。 ハルちゃんは憑き物が取れたような優しい、けれどどこか寂しそうな顔をしてこちらを見ていたのだ。教室で見せたことのない顔だ。 なんだか不安になり、僕は咄嗟にハルちゃんの手に触れる。体が火照っているからだろうか、ハルちゃんの指先が冷たく感じた。 「そ、んなことない……」 ハルちゃんの視線がこちらを向く。 「皆、ハルちゃんのこと、大好きだよ」 「そう思うのは、ゆう君が優しいからだよ」 手を握られたまま、ハルちゃんはベッドの上へと乗り上がってきた。視界が陰り、そのまま覆いかぶさってくるハルちゃんに体が竦む。 「っ、ふ、……ッ、んん……っ」 キスばかりされ、唇が乾く暇もない。行為中のような絡みつくようなものではなく、唇を重ねるような優しいキスだった。 ちゅ、と音を立て、唇は離れた。 「は、るちゃ……」 「また勃ってきたね」 「ち、が……これは……っぁ、あの……」 股の間、震える性器をハルちゃんに指で弾かれ「んっ」と声が漏れてしまう。そのまま腿を優しく開くように触れられ、まだ熱の取れない肛門を撫でられれば下腹部に力が入った。 「は、ハルちゃん……っ、待って……ん……ッ」 僕の制止も無視して、ハルちゃんはそのまま指を埋め込む。優しく撫でるように中を掻き混ぜられ、震える腰を抱き寄せられるのだ。 「んぅ……ッ」 「嫌?」なんて、耳元で強請るように囁かれ、言葉に詰まる。 ハルちゃんは、狡い。僕がどう答えるかなんてわかってて聞いてくるんだ。 ふるふると首を横に振れば、ハルちゃんの目が細められる。 「ハルちゃんが、いいなら……」 ――いいよ。 なんて続く言葉はハルちゃんに唇ごと塞がれた。 ◆ ◆ ◆ ハルちゃんと僕の関係はいままでと変わらなかった。 放課後になると僕はハルちゃんに手を引かれ、そのままハルちゃんのマンションに連れて行かれる。それから、帰るまでの時間を二人きりでずっと過ごした。 ――いや、いままでと変わらないといえば、やっぱり少し変わったのかもしれない。 「っ、は……ッ、ん゛……ッ」 ハルちゃんの部屋の中、ベッドに腰を掛けたハルちゃんの足元に座り込んでその下腹部に顔を埋める。 以前の僕ならば、きっと人のものを咥えるなんて考えたこともなかっただろう。 それでも、ハルちゃんにされたときのことを思い出しながらも見様見真似でその男性器を唇や舌を使ってぎこちなく愛撫する。 とはいえ、飴玉のように舌の表面で舐めるのが精一杯で技巧もクソもない、それでもハルちゃんは僕の口の中で射精した。 吐き出される精を舌で受け止め、そのまま口の中に溜まっていた唾液ごとごっくんと喉奥へと流し込む。それを見たハルちゃんは目を丸くした。 「ゆう君、今……」 「ん……く……っ、……は、ハルちゃんの、真似……」 とは言ったものの、喉に絡みつく感覚と独特な匂いと味にはやはり慣れそうにない。けほ、と小さく噎せれば、ハルちゃんは心配そうに僕の口元を指で拭ってくれる。 「無理するなよ、そんなことしなくとも」 「ぼ、僕も、ハルちゃんにも気持ちよくなってもらいたい……」 「……っ、ゆう君」 「ま、まだ……下手かもしれないけど……」 それでも、ハルちゃんと『こういう関係』が続くようになってから少しは最初の頃よりは余裕が出てきた、と思いたい。 項垂れる僕にハルちゃんは首を横に振る、そしてそのまま僕の頭を撫でてくれるのだ。 「いや、死ぬほど気持ちいいよ。……すごい興奮する」 「そ、そうかな……」 ハルちゃんにこうして撫でられることが嬉しかった。 ハルちゃんに喜んでもらいたかった。ハルちゃんに少しでも僕の気持ちが伝わってほしかったからだ。 けれど、ハルちゃんはまたあの目をするのだ。寂しそうな、不安そうな目。 「けど、俺以外にこんなこと……」 「し、しないよっ! す、するわけないよ……こんな、こんなこと……」 そもそもそんな相手もいない。僕の友達は相変わらずハルちゃんだけだし、それでもハルちゃんと一緒にいる時間が増えるようになったから寂しさや不安を感じることもなくなった。 けれど、ハルちゃんはそうじゃないのだろうか。 ちらりとハルちゃんを見上げれば、ハルちゃんと目があった。 「……だといいけど。ゆう君、流されやすいから心配なんだよ」 「ハルちゃ……っ、ん、ぅ……」 言い終わるよりも先に伸びてきた手に抱き抱えられる。そのまま抱き締められ、上体に触れる指に胸を撫でられれば息が漏れる。 擽ったたさに身悶える僕に構わず、ハルちゃんはちゅ、と首筋、胸元に唇を寄せるのだ。 「っ、ぁ、はるちゃん……」 「他の奴らにゆう君がこんな子だって知られたらやだな。……俺のゆう君なのに」 「っ、ん……そんなこと……ッ、ないよ、こんなことするのハルちゃんだけだよ……っ」 「本当かな」 薄い胸元に寄せられる唇。乳首に吐息が吹き掛かり、それだけでびくりと反応しそうになる僕を見てハルちゃんは小さく笑う。 それから悪戯する子供みたいな顔をして、そのまま突起に唇を押し付けた。小さく音を立てキスをされ、掠れる前髪とそのこそばゆさに震える。 「ふ……ッ、」 「ゆう君にその気がなくても心配なんだよ。……こんなふうに、俺以外のやつらがゆう君に触れたらって思うと……」 「っ、は、るちゃ……ッ」 口を開いたハルちゃんはそのまま舌を伸ばし、乳首を舐める。それだけでも声が漏れてしまいそうになったのに、逃げそうになる胸を追いかけるように更に顔を寄せられ、突起を唇で挟まれる。 腫れ上がり、つんと尖った先っぽを吸われ、舌で撫でられるだけで頭の中がじんじんと甘く痺れだすのだ。ハルちゃん、と掠れる声でハルちゃんの肩をそっと掴めば、ハルちゃんはそのまま僕の下腹部に手を差し込むのだ。 そして。 「ほら、もう垂れてきた」 股の間、震え、先端から先走りを滴らせる性器を指で軽く跳ねられ息を飲んだ。 「そ、こばっか……や……ッ」 「じゃあどこがいい?」 ……ハルちゃんは優しいけど、意地悪だ。 顔が熱くなる。こればかりはやはり慣れるものではない。 もじもじとハルちゃんの下腹部に目を向ける。さっき出したばかりというのに既に大きくなったそれを見て、ごくりと唾を飲んだ。 そして、恐る恐るハルちゃんのものに触れる。硬く、脈打つそれの熱にほう、と息が漏れる。 「……っ、ハルちゃんのが、いい」 最初は怖かった。それでも何度も体を重ねるようになって心身もある程度慣れ、余裕がでてきたのかもしれない。今ではハルちゃんの性器を見るだけで下腹部、お腹の辺りがぎゅっと切なくなるのだ。 だめかな、と小さく続ければ、ハルちゃんは笑った。引きつったような、思わずこぼれた笑み。 「ッ……本当に、ゆう君は……」 「……ッ、ん、ぅ……あ……ッ」 ハルちゃんに抱き締められ、お尻を開かれる。這わされる指の硬さを感じる暇もなかった。そのままハルちゃんの上に跨がらせられ、割れ目に押し当てられるその熱に息を飲んだとき。 そのまま押し当てられた亀頭は、すっかり柔らかくなった肛門へと挿入される。 あれほど苦しかった圧迫感すらも今は気持ちいい。頭の中、掻き回されるような快感にぶるりと全身が震えた。 ――これだ、ハルちゃんの体温と鼓動が僕と混ざり合う感覚。 「っは、ぅ……ッ」 「ゆう君……ッ」 近付くハルちゃんの顔。至近距離で見詰められ、僕たちはどちらともなく唇を重ねた。呼吸も、体温も、触れた箇所から混ざり合う。 こうして体を重ねてる間だけは不安も寂しさも混ざり合い、ハルちゃんが僕の一部のように感じられたのだ。 ハルちゃんと僕の関係が正しいものではない、というのは薄々分かっていた。 本来ならば両思いの恋人同士がする行為だと、薄ぼんやりとながら理解してる。それでも、僕は拒むことはしなかった。 世間的に僕たちの関係がよくないことだとしても、それでも少なくとも僕とハルちゃんは満たされることができたから。 ハルちゃんが僕のことを求めてくれることが分かったから、僕の存在がハルちゃんの負担になってるなんて以前のように悩むこともなくなった。 少なからず僕たちは幸せだった。 ――幸せだったのだ。 けれど、そんな関係も長くは続かなかった。 すっかり秋から冬へと移り変わり、肌寒くなってきた頃だった。 冬休みも直前、今年のクリスマスや年末年始のことでクラスメイトたちが盛り上がっていた。そして僕も例外ではなかった。 「皆、今月いっぱいで壱畝が転校することになった」 そんな中、朝のホームルームで放った担任教師の言葉に全ての音が遠くなった。 今年のクリスマスの予定をハルちゃんに聞こう。今度は僕の家に呼んで、クリスマスパーティーを開けたらいいな。なんて、そんなことばかりを考えていた。ハルちゃんも、そうだ。何も言わなかった。 僕に何も。 咄嗟にハルちゃんの方を向くが、ハルちゃんはこちらを見てなかった。クラス中の注目を浴びる中、「そういうことだから」とただ気まずそうに笑うのだ。 僕は、このとき初めてかもしれない。他人に対して憤りのようなものを覚えたのは。 ◆ ◆ ◆ 放課後になり、僕はハルちゃんの席へと向かう。 周りに他のクラスメイトたちがいようがいまいが、構わなかった。 今はとにかく、ハルちゃんと二人きりになりたかった。 「……ハルちゃん」 周りのクラスメイトたちは何事かというような顔で僕を見る。そんな中、ハルちゃんだけは僕が何を言おうとしているのかわかったのだろう。何も言わずに「分かってるよ」と頷くのだ。 そして、ハルちゃんは他の友達に断りを入れて席を立つ。 感情の昂りというものは人を無敵にするのかもしれない、あんなに痛かった周りの視線も今では何も感じなかった。 一分一秒でも早く、二人きりになりたかった。 僕たちは人気のない空き教室へと入った。二人きりになれるならどこでもよかった。 そして、ハルちゃんが後ろ手に扉を閉めるのを待たずに、僕はハルちゃんにキスをした。 「っ、ゆう君……っ?」 「……ッ」 いても立ってもいられなかった。ハルちゃんの胸に飛び込み、拙い、ぶつかるような口付けをする。 自分でも子供のような真似をしてると思った。ハルちゃんも呆れてる。無理もない。 それでもハルちゃんのネクタイを掴んで、必死に背伸びをして、しがみつく。ハルちゃんは僕を振り払わなかった。応えるように抱き締められ、今度はハルちゃんの方から舌を絡め取られるのだ。 「っ、ん、ぅ……ッ、は……」 ハルちゃんの顔が歪む。そして、僕の頬を恐る恐る、そっと撫でてくれるのだ。 目尻に溜まった涙を親指で拭い、そしてハルちゃんは「ゆう君」と僕を呼ぶ。 「っ、ゆう君……」 どうして、何も言ってくれなかったのか。 ずっと一緒にいたのに、そのときは他愛ない話をしてたのに。なんで。 言いたいことはたくさんあったのに、ハルちゃんの顔を見ていたら言葉が喉に突っかかって出てこなかった。 無理矢理声を出してしまえば今度こそしゃくり上げてしまいそうで怖かった。それでも、ハルちゃんの方が悲しそうな顔をするから余計心の中がぐちゃぐちゃになってしまうのだ。 「……ゆう君」 「僕、知らなかった……ハルちゃんが転校するって」 先生だって知ってるんだ、ハルちゃんだって知っているはずだ。 どんな気持ちで僕と一緒に過ごして、あんなになんでもないように話していたんだ。そう考えれば考えるほど、ハルちゃんが考えてることがわからなくなっていくのだ。 そんな僕を抱き締めたまま、ハルちゃんは息を吐く。自分を落ち着かせるように、肩を落とすのだ。 「……ゆう君には、言えなかった」 「どうして」 「ゆう君、寂しがるかと思って」 「ハルちゃんだって……ッ」 言い掛けて、初めてハルちゃんに抱かれた日のことを思い出した。あのとき見せた切羽詰まった表情。 ――悲しそうで、縋りつくような目。 「……ハルちゃんは違うの?」 そう尋ねれば、ハルちゃんの目が開かれる。そして、すぐその口元に笑みが浮かんだ。 それは教室で見せるような笑顔ではない、あのときと同じ引きつったような無理矢理作った笑顔だった。 「はは……そうだな。多分、俺の方が……」 そう言いかけて、ハルちゃんは息を飲んだ。呼吸をし、言葉に詰まる。その眉間に深く皺が刻まれた。 ハルちゃんの表情に浮かんだのは苦痛だ。 「ハルちゃ……――」 ハルちゃん、ともう一度名前を呼ぼうとしたとき。 ハルちゃんに強く抱きしめられる。 子供をあやすようなものではない。強く、隙間なく抱き締められた体にハルちゃんの体温と鼓動が混ざりあった。 「……怖かった」 肩口に埋められたハルちゃんの顔。喉奥から絞り出されるその言葉に、僕は息を飲んだ。 「ゆう君に、捨てられるの……怖かった」 それは、初めて聞いたハルちゃんの本音だった。 表情こそは見えなかったが、聞こえてきたその震えた声からハルちゃんの表情は手に取るように分かった。 「っ、ハルちゃん……」 「ゆう君が悲しんでくれなかったらどうしようって……俺のこと、なんとも思ってないって分かってしまうのが嫌だったんだ」 ……僕は、ハルちゃんのことを自分とは正反対に位置する人だと思っていた。 皆から好かれていて、いつも楽しそうで――ずっと羨ましかった。だから、ほんの些細なきっかけからだとしてもハルちゃんと話すようになってからは僕も楽しかった。 それと同時にハルちゃんの足手まといにならないように、ハルちゃんに飽きられないように、負担にならないように、必死にハルちゃんについていこうとしていた。 けれど、そんなことをしなくてもいいのだとハルちゃんは僕を気付かされてくれた。見劣りも劣等感すらも覆い隠してくれるほど、気付けばハルちゃんは僕の支えになっていたのだ。 形は歪であっても、僕と同じようにハルちゃんも僕を必要としてくれる。その気持ちが伝わってきたからだ。 それでも、だとしても僕がハルちゃんのことをなんとも思っていないはずがないのに。そう思うと歯痒くて、悔しかった。 「っ、そんなわけ……ないよ、僕は……」 僕は、と言い掛けてその言葉の先はでなかった。 顔を上げたハルちゃんは憑き物が取れたような優しい目をして僕を見つめるのだ。 「うん、……泣いてくれたな」 「嬉しいよ」と、ハルちゃんは僕の涙を拭う。 微笑むハルちゃんに、僕は余計悲しくなった。素直に喜べない自分がただ嫌で、それと同時に今更本心を伝えてくれるハルちゃんになんで今なんだと地団駄を踏みたくなるのだ。 「……っ、ずるいよ、ハルちゃん……」 こんな風に他人にかき乱されるなんて。 もっと早く知ってたら、僕のとっておきのひと目につかないスポットとか、お気に入りのお菓子とか、そういったものを教えていたのに。 ハルちゃんは今度は何も言わずに僕の唇にキスをする。 ああ、本当に――ずるい。 廊下を通る他の生徒たちの声すらもノイズだった。僕は、言葉を交わす代わりに必死にお互いにしがみつくことで精一杯だったのだ。 ◆ ◆ ◆ それから、年が明ける前にハルちゃんは転校した。 両親の仕事の関係でイギリスに留学すると聞いたときはもう二度と会えなくなるのではないかと思ったが、そんな僕の表情から察したのだろう。 『絶対に帰ってくる』……そう、何度も僕の手を握って繰り返すのだ。 お互いの連絡先も分かってる、やり取りも出来る。だから寂しくない。 そう口ではいうものの、ハルちゃんの方が寂しそうなものだからどうしようもなかった。 ハルちゃんがいなくなったあと、年末年始とバタバタ時間は過ぎていく。 一人でいる時間は増えたが、ハルちゃんとよく一緒にいた人たちとハルちゃんのことについて偶に話したりするようになった。教室で一人になることはなくなったけど、それでもやはりハルちゃんの影を探してしまうのだ。 それから僕は中学を卒業し、そのまま地元の高校へと通うことになる。 ハルちゃんとは毎日のように連絡を取り合った。時差があるので電話したりするのは難しかったが、それでもお互いの都合があったときは電話をかけたりもした。 そして、高校二年の春。 「……はあ」 変なところないかな。 目の前の鏡を覗き込み、身嗜みを確認する。 時間は経ち、あの時よりも身長は伸びた。髪も、急いで前日に美容室に駆け込んだのできっと……きっと大丈夫だろう。 それにしてもあいつもあいつだ。サプライズのつもりだろうが、毎回前日になって報告してくるのだ。 念入りにチェックしたが、見れば見るほど正解が分からなくなって諦める。そして、部屋を出れば執事が声を掛けてくる。 「佑樹様、お車のご用意は本当によろしいのですか?」 「……うん、少し歩いて落ち着きたいんだ」 まだ待ち合わせ時間には早い。少し町を歩きたい気分だった。 こんなこと、どれくらいぶりだろう。自分自身が浮かれていることに気付いた。 それから僕は家を出た。 待ち合わせ場所は以前、僕たちがよく待ち合わせに使っていた駅前。距離はあれど、これからのことを考えているとあっという間に目的地に辿り着くのだ。 駅前はいつも人で賑わっていた。 時計台の前に立ち、深呼吸を繰り返す。 あれから時間も経ってる。もしハルちゃんに気付かれなかったらどうしよう、なんて思いながら今からでも自撮りを送った方が良いのだろうか、と思っていたときだった。 「ゆう君」 足音が、近付いてきた。顔を上げ、息を飲んだ。 あの時の明るい髪色ではなく、真っ黒に染まった髪。そして、変わらない笑顔。 ――間違いない、ハルちゃんだ。 「っ、ハルちゃん、どうして――……」 「そりゃ分かるよ。聞いてた通り大きくなったな」 「でも、変わらない」そう、ハルちゃんは僕の手を握る。 まるで今まで会えなかった時間が嘘のように、昨日ぶりに会ったみたいな感覚になるのだからおかしなものだと思う。 「……ハルちゃんも変わらないね」 「そうかな。結構髪伸びたと思うんだけど?」 「うん、似合ってるよ。大人っぽくなった。……黒髪も似合うね」 そうそっとハルちゃんの髪に触れれば、ハルちゃんは少しだけびっくりした顔をする。それから、「ゆう君は口が上手くなったな」と逆に髪を撫でられるのだ。照れてるのだろう。「ハルちゃんのお陰でね」と笑い返せば、ハルちゃんもつられて笑うのだ。 「……あのね、たくさん話したいことがあったんだ。ハルちゃんがいない間の話」 「俺も、ゆう君への土産話たくさんもってきたんだよ。……けど、それよりも先にさ」 視線が交わる。 答える代わりに、僕は手を広げた。 「おかえり、ハルちゃん」 「……ただいま、ゆう君」 僕はハルちゃんを抱き締めた。 人目なんて気にならなかった。あのときとは逆に、ハルちゃんの方がなんだか照れ臭そうな顔をしてるのがなんだか新鮮で、それと同時に胸の奥から暖かな熱がこみ上げてくるのだ。 暖かな陽気の中、僕たちは再び同じ時間を歩み出した。 END 「俺のこと、待っててくれてありがとう」 「当たり前だよ。……ハルちゃんは寂しがり屋だからね」 「……それゆう君が言う? 泣き虫屋さんのゆう君が」 「は、ハルちゃんだって……今少しうるっとしてるよ」 「そういう揚げ足取りは覚えなくていいからな」