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田原摩耶
田原摩耶

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【↑100】政岡を飼いならす尾張SSS【3,000文字/政岡×尾張】

「おや尾張さん、貴方が生徒会室に来るなんて珍しいですね」 「まあな、ちょっと用事があって」 「用事ですか?」 「政岡いるか?あいつに用があるんだよ」  生徒会室前。  単刀直入に告げれば、扉の前の能義は少し考えたように顎に触れる。そして、ええ、と微笑んだ。 「会長なら居ますよ。……ただ」 「ただ?」 「尾張さんには会いたくないと」  ……やはり、そういうことか。  政岡が明らかに俺を避けていることは分かっていた。だからこそわざわざこんなゴミ溜め……いや、生徒会室まで来たのだから。 「なあ能義、そこ入ってもいいか」 「ふふ、いいんですか?」 「あいつが俺に会いたくなくてもこっちには用があるからな」 「それもそうだ」 「なら構いませんよ」とあっさりと扉を開く能義。……話が早いやつで助かる。  ありがとな、と能義の脇を抜けて生徒会室へと入ろうとしたとき、「この礼はいつでも受け付けてますよ」と囁かれたが無視する。  相変わらず散らかり放題の生徒会室。  その奥、ソファーの上に布団に包まったでけえ塊を見付けた。爆音のBGMで俺の足音にも気付いてないようだ。掛かっていた曲を止めれば流石に異変に気付いたらしい、ぴくりと反応する塊にそっと近付く。  そして。 「……こんなところに隠れてたのか?」  べりっと布団ごとはぎ取れば、中から現れた政岡は俺の顔を見て凍り付いた。 「お、おわっ、尾張……っなんでここに……!!」 「探したんだよ。アンタの部屋も教室もな。……そしたらここにいるって聞いたからこうしてきたんだ」 「う゛……っ、ぉ、俺……っ、悪い尾張……っ!!」  言いながら、ぴゃっと再び布団を被る政岡。もう一回取り上げようとするがこいつ、こんなときにまで無駄馬鹿力を発揮するな。 「政岡」 「だって、俺……お前に合わせる顔がねえんだ」 「…………」  まあ、そんなことだとは分かっていた。  ことの発端は数日前へと遡る。  まあ早い話、いつもの政岡の悪い癖のようなものだ。  政岡は頭に血が昇りやすい、そんでそうなったときの政岡は俺でも止められないこともある。きっかけは俺が他の上級生に絡まれていたことだった。たまたま通りかかってくれた政岡が止めたはいいが、余程腹がたったらしい。俺がやめろと言っても聞かず、戦意喪失した相手に殴るので止めようとしたとき政岡の拳が頬に当たったのだ。  とはいえ、掠めたくらいだ。赤くなったくらいで腫れもない。けれど、そのときの政岡の反応は傑作なほどで。俺の顔よりもお前がぶん殴ったやつのがひでえ顔になってるってのに、ちょっと擦れた俺の顔を見て青褪め、それから政岡は俺を保健室まで連れて行っては土下座し、そのまま消えた。……そう、消えたのだ。  そしてようやく見つけたと思えば、まさかこんなところで引きこもってるとは。……せめて場所を選べばいいものの。 「政岡」  そう名前を呼べば、びくりと布団の塊は反応する。そして、そろりと布団から頭を出した。……叱られた犬だ。犬がいる。 「っ、お、尾張……怪我は……」 「おい、ちゃんと見ろよ。俺の顔に傷あるように見えるか?」  ふるふると政岡は首を横に振る。 「尾張……あの、俺……悪かった……お前の言うこと、ちゃんと聞けなくて……」 「ああ、それはそうだな。……アンタのキレやすさはどうにかしないとな」 「けど、お前が馬鹿にされんの俺すげえ嫌なんだ……お前は一生懸命頑張ってんのに……」  こういうところだ、こいつのことを心の底から憎めないのは。 「なあ、政岡。……お前にとって俺は、お前に守ってもらわないといけないほど弱く見えるのか?」 「そ、それは……」 「俺がそこらへんのやつに絡まれたくらいでまじで心折れるような人間に見えるのか?」  政岡は何かを言いかけて口をパクつかせる。それから、首をふるふると横に振るのだ。  こいつだって分かってるはずだ、俺の性格くらいは……きっと。 「お前の気持ちは嬉しいよ、けど……俺のせいでお前が誰かと揉めんのは見てて正直気持ちよくはねーんだよな」  シーツに手を伸ばし、そのままするりと政岡から脱がしていく。  怒られた子供のように揺れるその目を覗き込む。俺の言葉を待っているのが分かった。 「なあ政岡、俺の言ってる意味が分かるか?」  トーンを落とす。  ピアスのぶら下がるその耳に触れれば、赤くなったその耳が、肩がびくりと震えた。 「っ、尾張、わ……悪かった……悪かったから……頼むから、嫌いにならないでくれ……っ」  飴と鞭を使いこなす。鞭ばかりでは言うことは聞かない。冷たくしたあとはその倍の甘さを与える。与えすぎてもならない、少量で濃密な甘い蜜を。  どれもこれも岩片からの受け売りだが、多少役には立つらしい。俺よりもでけーくせに、力もあるくせに、怯えたように背中を丸めて震える政岡の姿を見るとなんとなくあいつの気持ちが分からないでもない。 「馬鹿だな、嫌いになるわけないだろ」  そっと頭を撫で、額と額をぶつける。至近距離、鼻先がぶつかる。真正面、揺れるその目を覗き込めば政岡の喉仏がごくりと上下するのだ。唇が震え、吐息が吹き掛かりそうになる。キスされそうになり、俺は顔を離した。 「……っ、尾張……」 「けど、俺から逃げ出したのも事実だしな。……寂しかったよ、その間」 「尾張、俺……っ、悪かった、怒らないでくれ、頼む……なんでもするから……っ」 「へえ?まじで?」  ああ、と再び迫ってくる唇は躊躇なく繰り返す。性急に背中を撫でられ、キスがしたいというように頬を撫でられた。それでも俺が頷かない限りこいつは唇を重ねることはしないだろう、そういう風に躾けたからだ。 「……じゃあ、お前に頼みたいことあんだけど」  ◆ ◆ ◆  政岡零児を堕とせ、手段は問わない。  それが俺が岩片に命じられたものだった。  あいつが俺に対して一番献身的且つ好意的なのは俺も岩片も知っていた。というか、あれほど分かりやすいやつもなかなか居ないはずだ。  手段は問わないと言われたものの、どうやっても選ぶ手段は限られるもので。 「っ、ふ、ぅ……」 「尾張っ、尾張……かわいい、すげえ……好きだ、あったけえ、可愛い」  ああ、何故こんなことしなければならないのか。  まるで犬さながら唇を舐められ、舌を根本までしゃぶられる。キスなんて可愛らしいものではない。  挿入だけはやめてくれ、そう言えば政岡は律儀に守る。……守るのだが、それでもやはり相当我慢してるのだろう。キスの最中も勃起した性器を腰ごと押し付けられる。セックスではないと言い聞かせても、政岡の触れ方はなにもかもが性的なものを帯びてきて、場数踏んでるだけはある。馬鹿だ馬鹿だと思ってた相手に気付けば射精させられていたこともあった。 「っ、好きだ……尾張……」 「……っ、……」 「……尾張……っ、」  俺からこいつに好きということはない、それでも満足げに一人で勝手に発情して人の体を使って自慰をするのだ。  岩片に知られたらどんな言葉を投げられるだろうか、考えたくもない。  こいつもこいつだ、こんなことで満足できるのが俺には理解できない。  もはや情けにも近いのかもしれない。あまりにも好きだ好きだと煩い政岡に情けで舌を絡め返せば、その何十倍で返され、結局飲まれてしまう。  他人にここまで求められることがあっただろうか。……だからこそ、余計なのかもしれない。  たまに恐ろしくなる。飼い慣らしてるつもりが、気付けば自分の首に首輪を嵌められてる気がしてならないのだ。  だから最後の堤防だった。この関係を壊さないための防波堤。 「……っ、政岡……――ッ」  この状況に嵌ってるのはどっちだろうな。


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