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田原摩耶
田原摩耶

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【総集編版】推しの家でサシ宅飲みすべからず:前編※【↑100/13,900文字/先輩アイドル政岡×尾張前提尾張総受け後日談】

 ※エイプリ企画のアイドル尾張ネタの続編のようなものです。後日談の続きになります。  今日のスケジュールは午前中にグラビアの撮影、そんで雑誌のインタビューとその後番組収録……。  中途半端に時間を空けられるよりも続けて動いた方がましだが、そんなスケジュールのことを言えば先輩――に当たるのだろうか、一応――同業者である政岡は「仕事詰めすぎだろ」と呆れていた。けれどこれでも俺のマネージメントを全て請け負ってる岩片からしてみれば優しいほどだ。  俺は知ってる、やつがよくスケジュール帳と睨み合ってるのを。  そして、本日分の仕事を全て終えたとき。楽屋の扉が開き、岩片が入ってきた。 「よ、ハジメ。お疲れさん。もう今日は帰っていいぞ」 「岩片……お前も帰るのか?」 「ああ、そうだな」 「なら、久しぶりに飯でも食いに行かないか。お前だって最近バタバタしてたろ」  それに、常に一緒に行動しているようで実際二人きりでゆっくりする時間は明らかに減っていた。 「俺奢るし、焼き肉でも食いに行こうぜ」 「珍しいな、お前の方から誘ってくるなんて」 「悪いかよ」 「いや?……お前がそんな風に俺を誘ってくれる日が来るなんてな、待ってみるもんだなと思って」  茶化してるのか岩片はそう目を伏せて笑うのだ。  ……確かに俺も暇ではないが、俺の確実な休みを作るために岩片が各所に連絡を入れたり打ち合わせに参加したりと俺の倍裏で働き回ってるのを知ってる。そのせいでろくにまともな飯を食ってないこともだ。 「ハジメ。お前、明日はみなんだろ。せっかくの休みの日まで俺の顔見てどうすんだよ」 「別にお前の顔が見たいわけじゃ……」 「はいはい。そうだな。ま、そこらへんのファン誘うより俺を誘うのは当たりだがな」 「お前が誘うなって言ったんだろ」 「誘いたいやつがいるのか?」 「そういうわけじゃねーけど……」  ……って、しまった。  すっかり話題を摩り替えられてることに気付いたときにはもう岩片のペースだ。 「せっかく誘ってくれたのに悪いが俺はこの後用がある」 「あ……そうなのか」 「ああ、だからお前はお前の好きなように過ごせよ。あ、けど夜ふかしするなよ。徹夜は以ての外だからな」 「お前は俺の母ちゃんかよ」  岩片は俺の頭を撫でようとしてやめたようだ。その代わり、ぽんと肩を叩く。 「母ちゃんにはなれねえけどタクシーにはなれんぞ。……行きたいところあるなら送ってやる。近場ならな」 「……ん、じゃあ家まで」 「了解。おら、行くぞ」  念の為身バレ防止のマスクと眼鏡を装着し、俺は岩片とともに楽屋を出た。  地下駐車場に停められた岩片の車に乗り、そのまま自宅まで送り届けてもらう。それからそのまま自宅のマンションまで送り届けられるのだ。現場からそう遠くない事務所が管理してるマンション地下駐車場。 「なあ、岩片。明日は休みなのか?」 「なんだ?そんなに俺と過ごしたいのか?」 「同僚のアイドルが言ってたんだよ、プロデューサーを労るのも大事だって」 「労るねえ……」  少しだけ岩片は考えたようだ。 「仕方ねえな。午後なら空いてる」 「本当か?」 「ああ、飯でも食いに行くか」  岩片の方からこんな風に言ってくれるとは思わなくて、「ああ」と頷いた声が裏返ってしまって恥ずかしくなった。 「でも奢りとかお前はそんなこと考えなくていいんだからな。そんなことしなくても理由なくお前からの誘い断んねえよ」 「……別に、そんなつもりじゃねーし」  どうだかな、と岩片は笑う。分厚いレンズではなにも見えなさそうなくせに、俺の心まで見透かされてるようでなんだか落ち着かない。 「じゃ、おやすみ。……夜食は胃に優しいもんにしろよ」 「わかったから、じゃあな。そっちこそ飲みすぎて寝坊すんなよ」 「ハジメじゃあるまいしそんな真似するかよ」 「おい……」  こんにゃろ、と言い返す前に岩片はそのまま車を発信させる。  ……それにしても、岩片と休みの日に食事か。仕事抜きで二人で食事なんてどれくらいぶりだろうか、もしかしたら初めてじゃないか?  そんなことを考えながら、俺はもうすでに明日は何を食べるかということばかり考えていた。  ◆ ◆ ◆  家に帰ってテレビを点ける。  丁度先日収録したバラエティが放送されているようだった。自分の姿を画面越しに見るのはやはり慣れない。なんとなく気まずなってチャンネルを変えれば、今度はようやく先週から上映が始まった主演映画のCMが流れていた。……俺はテレビを切った。  そういえば政岡が映画観に行ったって言ってたな。なんて、メッセージのやり取りの途中だったことを思い出し、俺はプライベート用の携帯を取り出した。  プライベート用の携帯の連絡先を知ってる人間はあまり業界人にはいない、殆ど地元の友達だったり家族だったり、モデルしてた頃、まだ仕事用の携帯を持ってなかったときに連絡先を交換した連中と、芸能入ってからだと岩片と政岡くらいだろう。  岩片には芸能関係のやつらは仕事用の携帯の連絡先までで止めろと言われたのだけれど、つい、というかずっと憧れていた政岡と連絡先を交換することとなったとき俺はつい出来心で交換してしまったのだ。政岡には何も言ってないし、岩片にも秘密にしてる。……そもそも岩片は政岡と連絡取ってると知ったら怒るだろうし、けどあいつは熱心な俺のファンでもあるのだ。  親密になりすぎるのも、特定のファンを贔屓するのもよくないと重々承知してるが相手は男だし、まあ、……大丈夫だろう。そんなことを考えていたのは俺の甘さだ。  携帯を開けば案の定絶賛放送中のバラエティについての感想メッセージがつらつらと送られてきていた。というかこんなに感想かけるほどの見せ場があった記憶すらないが、政岡のなにかに触れたのだろう。取り敢えずありがとうのスタンプを送っておく。すぐに既読がついた。はええ。  政岡とやりとりしながら風呂が湧くのを待つ。  何度かやり取りしてると政岡から『今暇なのか?』とメッセージが続けて送られてきた。 『電話かけていいか』  電話で何話すんだよ、と思いながらも俺はいいよと送り返せばすぐに掛かってきた。すぐかよ。早いな。慌てて通話を繋げれば端末越しに『よぉ』と聞き慣れた声が聞こえてきた。 「どうしたんだよ、急に通話なんて。……今外か?」 『あぁ、丁度打ち合わせが終わったところ。……いや、お前が返信早いの珍しいから空いてんのかと思ってだな、その……声が聞きたくて』  やはり、今だにこの男が俺のファンだということが信じられない。というか、そのセリフだとなんだか誤解与えてしまいそうになるが大丈夫なのだろうか。内心ぎくりとしつつも、「満足したか?」と笑えば電話の向こうで何やらうめき声が聞こえた。 『満足した。……お前の声、すげえ癒やされるわやっぱ』 「……お、おい、あのな……お前今ひとりだろうな?」 『ああ、今外に出た。……なあ、今日休みなのか?家?』 「家だけど……」 『……今から会えないか?』 「え?」 『いや、無理だったらいい。つか、明日仕事は……』 「休みだけど、お前は?」 『……休み、にする』 「いや、なんだよそれ」 『決めた、明日は俺の休みだ。今決まった』  無茶苦茶だ、こいつ。まあ政岡が破天荒なやつだと散々他の同僚たちからも言われたので知ってたが。 『……なあ、会えないか?』  急にしおらしくなったと思えば、おずおずと聞いてくる。あの政岡がだ、以前の俺なら考えられなかったのだろう。ろくな噂もない、悪名高いグループのそのリーダーだ。  でも、そんな政岡がこんなに言ってくるのだと思うとなんだ?……放っておけないってか。  まあ、岩片には言われたがまだ夜は始まったばかりだ。 「……わかった、どこに行けばいい?」 『いや、俺がお前の家に行くわ。どこ?』 「え、あー……でも、遠いかもだし」 『我儘言ってんのは俺だ。……ぁ、いや、その決して下心があるとかあわよくばお前の部屋が見たいとかプライベート覗きたいとかそんなんじゃないからな!なるべくお前に負担かけたくないってかその……』 「わ、わかった、わかったから。……今から言うな」  ……悪い、岩片。けど断れるわけ無いだろ、こんないじらしいやつを。  心の底で謝罪しつつ、俺は政岡に住所を告げた。部屋に上げるのは男だ、友達関係と思えば……うん、いけるいける。それに政岡も馬鹿ではない、ちゃんとスキャンダル対策はしてくれるはずだろう。  通話を終え、気付けば風呂は湧き上がっていた。  ……あいつが来るまで時間がある、風呂に入っておくか。  お酒あったかな、政岡結構飲んだよなあいつ。……買い足しておけばよかったな。なんて思いつつ、取り敢えず覚める前に風呂に入ることにした。  そして数十分後。 「悪い、押し掛け……て……」  現れた政岡はそのまま現場から直行してきたらしい。ここまで走ってきたのか息切れしていたあいつは俺を見るなり固まった。 「いや、いい。……それよりも疲れただろ。上がれよ」 「おわ、尾張……お前、風呂入ってたのか?」 「あ?ああ、お前も入るか?俺の後でいいなら……」 「ごッ」  ……ご? 「ぉ、お前……お前が、そういうなら……」 「そうだな。あまり遅くなりそうなら泊まっていってもいいし……この前はお前んちお邪魔したしな」 「……っ、ぉ……おう……」  なんだか先程から様子がおかしい。いや前々からおかしいところはあるが、それでも赤くなったまま目を合わせようとしない政岡に俺ははっとする。……そうか、こいつ俺のファンなのか。男が相手となると距離感の取り方が難しいが、あまり馴れ馴れしくしない方がファンのためなのか? 「……ほら、入れよ」  女の子相手にはあまり勘違いさせるような真似はするなと岩片に口すっぱく言われていたが、難しい。というか政岡が俺に勘違いって、それこそ想像できないが。取り敢えず俺は政岡を部屋に上げることにした。のだが。 「政岡、湯加減どうだ?」 『だ、大丈夫だ……』 「着替え、俺のサイズで入るか?……一応オーバーサイズのやつ用意したけど、一晩だけ我慢してくれよな」 『お、お前の服?!』 「あ、もしかして嫌だった?」 『い、いい嫌なわけあるか!寧ろ……っ、いや、ありがとう……助かる』  浴室と脱衣室を隔てる一枚扉の向こう、政岡の声が反響する。  学生の頃は気軽に友達を部屋へ上げて泊めたり、それこそ泊まったりをしていた。けれど芸能界入りしてからは初めてかもしれない、こうして誰かを部屋に上げること自体。だから俺は浮かれていた。  急ごしらえで用意した酒をキンキンに温度下げた冷蔵庫で冷やしていたが間に合ったようだ。政岡が風呂に入っている間にツマミになりそうなものを軽く用意する。  そんなこんなしてる内に浴室の方から扉が開く音がした。……思ったより長風呂だったな。お陰で準備はできたが。  リビングの扉が開き、政岡が現れた。 「お……っ」 「お、尾張……風呂、さんきゅ」  政岡が俺の服を着ている。すげえ、こいつなら似合うだろうとこっそり俺のお気に入りの私服渡しておいたのだが、見事に着こなしてくれてる政岡に内心俺は喜んでいた。つーか、よく考えなくてもすげえことだな。政岡が俺の部屋にいて、俺の服着てくれてるって。写真撮りたい、撮りたいけど、記録に残したら岩片にバレたときが怖いんだよな。ぐっと堪える。 「サイズ丁度良さそうでよかった。そうだ、お前の好きそうなお酒用意してるから。あと、ちょっとだけだけど酒も……足りなかったらデリバリー呼ぶからな」 「お、尾張……」 「ほら、座れよ」  なんだか緊張してるのかたじろぐ政岡の背中を押してソファーまで連れて行く。そしてテーブルに置いたツマミと、俺は冷え切ったドリンクを運んだきた。政岡はというと複雑そうだ。 「悪い、尾張……せっかく用意してくれたところ悪いが酒は……」 「泊まっていくんだろ?気にしなくていいから」 「でも、前も俺お前に絡んでしまったし……」 「そんなこと気にしてたのか?……それなら俺もだし、お互い様だろ。ほら、飲めよ。せっかく用意したんだ」  な?と、俺は政岡のグラスに酒を注ぐ。 「俺も久しぶりの完休だし、……飲みたいんだよ。一人で飲んでてもつまんねえだろ、付き合えって」 「ぉ゛……ッ!お、お前な……んな、可愛いことを……」 「ほら、飲んだ飲んだ。先輩のために俺頑張って用意したんだからな」 「ぐ」  正直浮かれていた。明日は休みだし、最近体調もよくなって仕事も順調だし。一番の要因は雲の上の人だと思っていた政岡と仲良くなれたことだろう。だから、つい、そう。ついハメを外しすぎたのだ。自重しようとする政岡に一口酒を飲ませ、俺も酒を開ける。それからはもう、いつもの流れだ。一口飲めば大分緊張も解れたのか調子を取り戻す政岡と最近の仕事について話す。映画が最高だったとか、酔いが回って感極まって泣き出す政岡とか、まあいつも通りだ。  そんな政岡を宥めつつ、テレビ番組の音声をBGM代わりにだらだらと話していた。  ああ、これぞ休日前夜。最高だ、とソファーに凭れ、伸びをする。 「……尾張、寝るなよ、なあ、まだ話してねえことあるのに……」 「んぅ……聞いてる、聞いてるから……」 「目瞑ってんじゃねえかよ、おら、先輩が話してるときに寝んじゃねえよ。……酒、あー……足んねえ……」  ソファーが軋む音が響く。そして政岡の足音が聞こえてきた。冷蔵庫に酒を取りに行ったのだろう。俺の役目なのに、起きなきゃ、と思うが思ったよりも頭にまで酒は回ってたらしい。指先すら思うように動かず、戻ってきた政岡が隣に腰を下ろした。 「起きろよ、寝たら寝顔を流出させんぞ」 「馬鹿、んなことしたら……怒られる……」 「あのもじゃもじゃのマネージャーにか?」  こくりと頷き返した。ちゃんと頷けてるかもわからない。けど、それだけはだめだ、と腕で顔を覆えば、手首を掴まれた。そのまま顔から腕を剥がされれば、視界が眩しくなる。 「ま、さおか……?」  どろどろとした意識の中、覆いかぶさるようにのしかかってくる政岡に頭を撫でられる。  そのまま頬を撫でられ、やつは「尾張」とうわ言のように俺を呼ぶのだ。こいつ、酔ってんな。俺も人のこと言えねえけど、目が据わってねえし。 「……そろそろ、寝るか」 「まだ……だめだ、起きろ」 「いや、お前のが限界だろ……っ、おい、政岡……」  頬にキスをされ、驚いた。酔ったらキス魔になるやつはいるが、よりによって政岡そのタイプだったのか。こそばゆいが、バラエティでたまにこういうノリはあったので慣れ、というのは違うがまあ平気だった。 「おい……間違えてんぞ、相手……」  ちゅ、ぢゅ、と頬を舐められ、座れる。つか、長い。いい加減にしろ、とでかい図体を押し返そうとするが酒のせいかびくともしない。それどころか、顎を掴まれ、そのまま唇を舐められた瞬間酔いが抜けそうになる。 「っ、政岡……流石に、これ以上は……ッ、ん、……ぅ……ッ」  やばいだろ。そう思って胸を押し返そうとするが、そのままソファーに押し倒されるのだ。そして、先程までの酒のノリみたいなキスとは違う、唇を割って入ってくる舌にぎょっとした。 「っ、ま、さ……ッ、ん、ぅ……ッ!」 「……柔、すげえ……甘い……っ、ん、……」 「ッ、ぅ……ッん、ぅむ……ッ」  舌が入ってくる。口の中を舐る肉厚なそれにぎょっとして、これ以上は洒落にならないと強めに政岡の肩を叩くが完全に目が据わってやがる。俺の手首を掴んだまま、あいつは執拗に粘膜を舐り更に舌を絡めてくるのだ。 「っ、ん、ぅ……ッぅ、う……ッ!」  いくら酔ってても分かる。これがどんなキスくらいかは。明らかに性行為の一部のそれだ。この酔っぱらい、どこの女と間違えてるのか。  服の上から胸を弄られ、ぎょっとする。 「政岡、待てって、これ以上……っ、は……ッ!」 「っ、その声、すげえ……腰に来る。なあ、もっと聞かせてくれよ」  くにくにと指先で衣越しに胸を弄り倒される。ただ摘まれてるのとはわけが違う。絶妙な力加減で的確に弱いところを擽られ、緩急をつけて揉まれればそれだけでぞくぞくと背筋が震え、自然と胸が反るのだ。 「っ、や、めろ……この、馬鹿……ッ!」 「すげ……かわいい、勃起してんじゃん。しゃぶりてぇ……なあ、舐めていい?」 「聞くなっ、ぁ、や……やめろ……ッ!」  べろんと寝巻き代わりのスウェットを捲られ息を呑む。大きく剥き出しになる上半身、政岡は躊躇なく人の胸に顔を埋めるのだ。 「っ、ひ、ぅ……ッ、く、ぅ……!」  犬みたいに覆いかぶさってきては股間を擦り付けられ、乳首を舐められる。なんだ、なんだこれは。わけわかんないくらい体が熱くなり、やめろ、とばしばしあいつの頭を叩くがまるで効果はない。それどころか、飴玉かなにかみたいに舌先で執拗に突起を舐られるだけで恐ろしいほど体が反応してしまうのだ。 「っ、くそ、馬鹿……っ、政岡、やめろ、俺は女じゃねえ……ッ!っ、ひ、ぐ……ッ!」  強い力で薄皮ごと頭を吸われ堪らず自分のものとは思えない情けない声が漏れてしまう。力が抜け落ちそうになったが、それでもあいつは構わず夢中になって空いた俺の胸も揉み扱き、愛撫するのだ。 「……ッぅ、く、ぅ……ッ!」 「っ、可愛い、すげえ、どこもかしこも可愛いんだな。……尾張」 「――……ッ!」  こいつ、俺だとわかってんのか。  そう気付いたときにはなにもかもが遅かった。  酒は飲んでも飲まれるな。特にサシの宅飲みはぜってーやめろと口煩く言ってきた岩片の言葉が頭を過る。が、後悔先に立たず。 「っ、目ぇ覚ませって……っ、この……ッ、ぉ……」  スキャンダルどころの騒ぎじゃねえ。  目を覚ませ、とやつの肩を掴んで引き剥がそうとするがこいつ、酔っ払いのくせに力強え。 「っ、ま、さおか……ッ」 「っ、尾張の匂いがする……すっげえ、いい匂い」 「嗅ぐなっ、ばか、この……ッ!」  首筋に鼻先を埋め、すんすんと嗅ぎ出す政岡に「やめろ」と分厚い胸板を叩くが無視してさらにやつは俺の首筋に舌を這わせる。 「ふ、ぅ」 「っ、ん、ぅ……っ尾張……」  ちゅ、ちゅ、と音を立て舌を這わされる。噛み付く勢いで皮膚をしゃぶられ、片方の手で器用に服を脱がしにかかってくる政岡に凍り付いた。 「っ、ぅ、……っ、や、めろ……っ頼むから……これ以上はまじで、やばいって……ッ」 「……お前、まじ、どこもかしこもすげー良い匂いすんのな……ッ」  人の話を聞け。あと乳首を弄るな。  政岡、と内心キレながらやつを呼ぶが、服の下、上半身に直接這わされる政岡の手に思わず語尾が消え入る。 「っ、ま、て……っ、待てって……」  無骨な指先でそっと撫でるように触れられ、そのまま揉むように先端を潰される。まるで割れ物でも触るかのようなその指使いが余計腰に響く。 「っ、その触り方やめろ……っ」 「……っ可愛い」 「な、にいってんだこの酔っ払い……っ!おい、腰、擦り付けるんな……っ!」  というかなんでお前勃起してんだよ。  あんだけ飲んでたくせに萎えるどころか見てわかるくらい勃起したやつの下半身を押し付けられ、息を呑む。というか人の服借りて勃起してんじゃねえこいつ。相手が先輩だということを忘れてキレそうになるが、後頭部を押さえつけられ唇を塞がれれば逃れられない。 「っ、ふ、……ぅ……ッ」  頭がくらくらするような酒臭えキス。天井を舌で撫でられるだけでじわりと唾液が滲み、脳髄がびりびりと痺れて力が入んねえ。つか、息が酒臭えし……。 「っ、ん、ぅ……ッ、ふ……」  すりすりと腰を擦りつけられながら体中触られるってどんな拷問だろうか。  やべ、また酔いがきた……気持ちよくねえのに触れられるだけで変な気分になってくる。  ぢゅぽ、と舌を引き抜かれ、口を閉じることを忘れているの開いた唇をちゅ、と音を立てて軽く吸われる。そしてやつは蕩けきった顔で俺の唇を舐めるのだ。 「っ、尾張……っ、尾張……可愛い、夢見てえ……っ、お前が、こんな……ッ」 「っ、い、いい加減に……しろ……政岡……っ」 「……まじ、可愛い。なんでお前そんなに可愛いんだ、いつもかっこいいのに、んな顔……見たことねえ……っ、なぁ、なんだそれ……ずるいだろ……っ」 「わ……ッわけわかんねえこと言っててんじゃ……ッ、ん、ぅ、……おい……っ、や、め……ッろ……」  全然気持ちよくねえ。そう思うのに、指先で揉まれ、引っ掻かれ、軽く引っ張られればそれだけで背筋がびくりと震える。気持ちよくねえ、気持ちよくねえ……。繰り返しながら必死に唇を噛んで声を殺そうとすれば、政岡は当たり前のように唇を重ねてくるのだ。 「っ、ふ、ぅ……ッ、ん……ッ、ぅ……ッ」  やべえ、やべえ、食われる。こんな場所飾りでしかねえと思ってたのに政岡の指で弄られるだけで快感が高まり、むずむずと違和感が生まれるのだ。  つかキスしながら人の顔ガン見してんじゃねえよこいつ、どんだけ俺のことが好きなんだよ。 「っ、は、ん……っ、ぅ……ッ」  なんだこれ。頭がぼーっとしてきてそろそろまじでやばい。なんて思いながらやつの腕に爪を立てたとき。俺から唇を離した政岡はそのまま俺の胸に顔を埋めるのだ。その口が大きく開いたとき、ぞくりと胸が跳ねた。そして慌てて俺は政岡の肩を両腕で掴み、止めた。 「噛むな、駄目だっ、休み明け撮影あるから……っ痕は付けないでくれ……っ」  露出することも少なくない。頼む、と懇願すれば政岡の喉仏がごくりと上下するのを見た。そして。 「……っ、やべ……それ、すげえ興奮する」 「っ、な、に……っ!お、いっ、こら……っ!っ、く、……ぅ……ッ、ふ……ッ!」  胸に唇を押し付けた政岡はそのまま乳輪ごと俺の胸を口に含める。ぬるりとした濡れた咥内の感触に蕩けそうになるのも束の間、べろりと熱い舌で乳首を舐められた瞬間情けない声が噛み締めた歯の奥から漏れるのだ。 「っぅ、く……ッん、ぅう……ッ」  やべえ、頭がくらくらする。食われる。つか、乳首じんじんしてきた……。  抵抗したいのにちゃんと力が入ってんのかもわかんねえし、気持ちいいし、いや、気持ちよくねえ。こんな、男に胸しゃぶられて気持ちいいわけねえだろ。そう思うのに。  ……やべえ勃ってきた。 「っ、は、尾張……これなんだよ」  最悪だ。見つかった。腰を引いて隠そうとしていたそこを撫でられ、布越しの指の感触だけでも熱が増す。 「ちが、み……るな……っ」 「んなの、無理に決まってんだろ」  政岡が上半身を起こすとぎし、とソファーが軋んだ。そして、スラックスを脱がされ、下着越しはっきりと浮き上がった下腹部を見て政岡は笑うのだ。すげえ悪い顔だ。 「っ、や、めろ……」 「我慢すんなよ、苦しいんだろ?……俺が楽にしてやっから」 「っ、楽って、うそ、だろ……っ、おい、待っ……ッ政岡……ッ!」  ずらされた下着の下、ぶるんと勢いよく飛び出す己のブツとそれを憧れの人に見られたというショックで俺は暫しフリーズする。どんな顔しろってんだ。それだけでもパニックになってるというのに、この男はあろうことかベロを出し、そのまま人のものを咥えるのだ。 「な……ッ!や、やめろ、政岡っ!」  嘘だろ、と青褪める。が、政岡は人の声なんて届いてねえみたいにカリに舌を絡めてくるのだ。そのまま溝までも隈なく舌を這わされ、キャンディーかなにかのように先っぽを舌で責められれば全身の毛穴がぶわっと開き汗が噴き出す。 「ま、さ……ぉ、か……ッ!」  ぢゅぷぢゅぷと水音が響く深夜。吐息が近い。なんだ、なんだこれ。相手政岡だってのに全然萎えねえ、つか、すげえ気持ちいい。なんでだ。 「っ、ゃ、……っ、や、めろ……ッ!政岡……ッ!」 「っ、ん……ッ、ハ、クソ可愛い……っ、尾張、尾張、もっと声……聞かせてくれ……っ」 「や、めろ……っ、そこで、喋るな……っ、ぁ、くそ……っぉ……ッ!」  痛いほど血液が集中したそこはあっという間にガチ勃起だ。反り返ったそれから唇を離したと思えばそのまま裏筋の太い血管をなぞるようにれろぉっと舐められ、堪らず悶える。 「っ、は、ぁ……ッ、や、め……ろって……っ」 「っ、ん、ぅ……ッ」  ぐちぐちとどこかから濡れた音が聞こえると思えばドサクサに紛れて自分の性器を取り出した政岡は人のものをしゃぶりながら扱いてやがった。  嘘だろ、どんだけ変態なんだこの男。血の気が引くどころか頭がおかしくなりそうなほど熱が増し、目が回る。なんでしゃぶって勃起すんだよ、萎えろよ。俺も。 「っ、は、ぁッ、……っ、政岡……っ、やめろ、も、本当……やべえって……っ!」  そう必死に止めようとするのに政岡は俺を離すどころかそのまま根本から竿全体に舌を這わせ、ぢゅう、と吸い付いてくるのだ。そのまま先っぽまで唇で撫でられ、先走りと唾液でどろどろに濡れた亀頭を咥えられればそれだけで正直やばい。 「っ、ぁ、っ、……く、ぅ……ッ!ぅ、ま、さ……おか……ッ!待て、まじ、出る……ッから……ッ!」  口輪で亀頭から竿を締め付けられ、喉で圧迫される。それだけでもかなり喉元まで差し迫っていた快感に呼吸は浅くなり、政岡の自慰する手も激しさを増していた。 「っ、ぁ、あ……ッ、くそ、イク、ッ、政岡……ッ、やめ、……ッ、ぇ、ッ、や、ぁ……ッ!!」   唾液でぬるぬるとした喉全体で愛撫された瞬間だった、俺は呆気なく絶頂を迎えた。  政岡の口の中で射精してしまった。青褪めたときには遅かった。 「わ、るい、……っ政岡、……」  慌てて政岡を吐き出させようとしたときだ。ごくりとその喉が鳴った。そして。 「っ、尾張……っ、尾張……ッ」 「待て、政岡……ッ!」  人で抜くな、という言葉も無視して限界よろしく人の面眺めながら見てわかるくらい真っ赤に充血したグロテスクなご立派なブツを扱く様は恐怖しかない。やめろ、待て、先に吐き出せ。なんで飲んだ。そんなツッコミも追いつかない。そして。 「っ、く……ッ!」  思いっきり下腹部にぶっ掛けられる精液。ぼたぼたと落ちるそれらに俺は暫し反応に遅れていた。  野郎にしゃぶられて、そんでぶっかけられた。それだけでもかなりのカルチャーショックなのに、この男。 「っは、……ぜんっぜん収まんねえ……」  嘘だろ。  いや、そりゃ、天下の遊び人大人気アイドル・政岡様だ。一発ですっきりできるようなタイプではないとはわかっていたが。この展開は。 「っ尾張、……なぁ、いいか?」 「っ、う、嘘だろ」 「撮影に支障出ねえようにするから」  なあ、頼む。と耳元であの低音ボイスで囁かれてみろ。吐息が吹きかかって背筋がゾクゾク震える。目の前にいるのは政岡じゃねえ、ただの酔っ払いだ。そう思うのに、俺の憧れのやつと同じ面と同じ声してるのがなによりも拷問だった。 「……っ、尾張……」  そんな甘えるような声を出すな。  すり、と太腿を撫でられ耳朶に甘くキスをされるだけで俺はなんかもう生きた心地がしなかった。 「〜〜……ッ、…………こ……ッ、これで………………我慢しろよな」  全部、全部酒のせいだ。口を開き、舌を出す。……そうだ、これはお返しだ。借りは返す主義なのだ。俺は。  ……そう、それだけなのだ。 「っ、ぉ、尾張……っ、すげえ、お前の口、すげえ気持ちいい、あったけえ……もうイキそ……っ」 「っ、ん、……っ、ふ……ッ」  口の中がぐちゃぐちゃでうるせえ、つか、こんなのこいつずっとやってたのかよ。カリを咥えるだけで精一杯で、おまけに無駄にでけぇから舌も這わせにくい。絶対気持ちよくねえだろうな、政岡。そう思いながらちらりと見上げれば、欲情し切った目で政岡はこちらを睨むように見下ろしていた。  そしてまた口の中のそれが脈打ち、先程よりも大きくなっていくではないか。 「っは、ぁ……っ、尾張……っ、お前……初めてだよな……っしゃぶんの、まさか……俺以外のやつと……」 「ぁ……あはり、まえ……ら……ッ!」 「っ、まじかよ、俺、尾張の初めて……すげえ夢みたいだ、尾張が、俺のチンポしゃぶってんの」  うるせえ、と言い返す代わりにさっき政岡にされて良かったみたいにカリに舌を這わせる。もうなにが気持ちいいのかわかんねえ、それでも滲む先走りは明らかに先程よりも量を増していた。 「っ、ん、ぅ、……む、ぅ……ッ」 「っ、く……ッ、ぅ、尾張……ッ!そこ、やべぇ……っ」  ここか?と硬く窄めた舌先で尿道を刺激すれば、政岡の呼吸が浅くなる。そして、俺の後頭部を掴み、ぐっとなにかを堪えるように俺の頭を撫でるのだ。  唇だけでは追いつけない竿の部分を軽く指で撫で、そのまま申し訳程度に擦れば面白いくらいに政岡が反応するのだ。ゆっくりと根本からその奥、下着に隠れた睾丸を指で柔らかく揉めば政岡は息を吐く。 「っ、くそ……尾張っ、……そんなとこまで……ッ」 「っ、……っ、ん、ッ、……ぅ、……」 「っ、尾張、出る……ッ!」  イケ、さっさとイケ。そんな念を送りながら俺は指先で玉を撫でながら先端を愛撫した。瞬間、後頭部を撫でていた政岡の手にぐっと頭を押さえつけられた。瞬間、喉奥までずりゅっと口いっぱい捩じ込まれる性器に堪らず噎せそうになったときだった。  やべ、という顔をした政岡は慌てて俺から性器を引き抜き、そして次の瞬間思いっきり人の顔に向かって射精しやがった。  部屋に鳴り響くアラームに目を覚ます。  そうだ、今日は岩片と会うから早めに起きて準備しようと思って昨日アラーム掛けたんだった。  アラームを止め、体を起こした時だ。ベッド、その隣に爆睡する政岡を見つけ凍り付く。  なんでこいつ裸なんだ。ということはさておき、いや待て、俺も裸じゃねえか。  冷たくなる体。咄嗟に辺りを見渡せば脱ぎ散らかされた服を見つけた。  ……待て、待て……待て待て待て。蘇るあれこれ、つか、待て、まじか……。  そんな中、隣の政岡もアラームに起きたらしい。 「……ぁ゛あ゛クソ、頭痛え……」  なんていいながらも起き上がろうとしていた政岡はベッドの上呆然としていた俺を見て飛び起きた。 「って、おわ、尾張、お前なんで服……ッ」  と、そこまでいいかけて自分も裸だということに気付いたらしい。その顔が青褪めた。 「っ、……お、俺、まさか酔ってお前になんかしちまったか?!」  ――まさかこの男、覚えてねえのか。  嫌ってほどクリアに思い出される俺は羨ましくもあったが覚えてなくてほっとする自分もいる。頼む、一生忘れてろ。けどまずはこの状況をどう説明すべきかだ。  言葉に詰まっていたときだった。  気の抜けたインターホンが部屋の中に響いた。  この部屋に来る来訪者なんて限られている。  まさか、と壁掛け時計を確認すれば既に昼だ。まさかもう岩片が来たというのか。 「やべぇ……忘れてた」 「忘れてたって……」 「取り敢えず服着ろ、あと下着も!」  ベッドから降り、携帯を確認すれば一時間ほど前に岩片からの連絡も入っていた。完全に爆睡していた。  何が起きているのかまだ飲み込めていないらしい政岡の方を振り返る。 「今から岩片が――俺のマネージャーが来る」 「嘘だろ」  俺だって嘘だって思いたい。  しかもあいつは俺の部屋の合鍵も持ってるはずだ。居留守して時間稼ぎしようとしたところで後もしているうちにあいつはこの部屋に来るだろう。背筋に冷たいものが走る。 「っ、パンツ、パンツどこだ!」 「まっ、待て尾張それ俺の……」  取り敢えず下半身をどうにかしろ、いや、物置に詰めるべきか。  玄関の方から扉が開く音が聞こえた。やばい。来やがった。こうなったら、とシーツを被せてそのままクローゼットに政岡を詰めようとしたときだ。 「よお、まだ寝てたのか……………………何やってんだハジメ」  ――終わった。  政岡を隠すことに気を取られ、服を着忘れていた上に結局間に合わずに扉からはみ出た政岡。そして、岩片。  かつてないほどの冷たい空気が部屋に走った。

【総集編版】推しの家でサシ宅飲みすべからず:前編※【↑100/13,900文字/先輩アイドル政岡×尾張前提尾張総受け後日談】

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