【↑100】巳亦の番になることを受け入れたハピエン√の巳亦×伊波SSS【4,900文字】
Added 2020-01-24 10:13:58 +0000 UTCちゃんと人を好きになったり、彼女だとかそういう感じになった子もいないし、同世代色恋に浮かれる同級生たちの中、俺はそれを遠巻きに眺めてはやっぱ男友達と騒いだりたまに男女グループで遊ぶくらいで満足してた俺は周りから言わせると『ガキ臭い』らしい。 そんな俺が、彼女だとか恋愛だとか全部ふっ飛ばして番……?ができるなんて誰が予測できたのだろうか。 「曜、おはよう。今日は冷えるな。体調はどうだ?」 「巳亦、おはよ。……寒いのは巳亦がそんな格好してるからじゃないのか?」 「勘弁してくれ、寝苦しいのはあまり好きじゃないんだ」 そう、だらしなく乱れた着物の前を閉めてやれば、巳亦は擽ったそうに笑いながら俺の額に唇を押し当てる。キスされた、と思ったときには遅い。 「……曜、着付けてくれよ」 「俺、自分のもちゃんと着れないのに巳亦の着替えさせれるわけないだろ。……あと、絶対巳亦の方が慣れてるじゃん」 「ああ、わかってる。けど、ヘタなりに頑張ってる曜も見てみたい」 「……巳亦ってそういうとこあるよな」 言いながら、仕方ないので取り敢えず腰紐をちょうちょ結びで結んでやる。そのちょうちょ結びすら斜めってるが、巳亦はご満悦らしい。 「曜は着付けの才能があるな」なんて嫌味なのか善意なのか俺としては全く嬉しくない褒め言葉を頂戴する。 巳亦が俺の部屋で寝泊まりするようになったのはいつからだろうか。最初は猛反対だった黒羽さんだったが、巳亦と俺の関係を伝えると『伊波様がそれでいいと仰るなら』と唇の色が変わるほど苦しげに了承したのだ。 その代わり、俺が親善大使の役目を果たすまで子作りは禁止だと黒羽に言われたとき、ようやく巳亦と同じ部屋で眠るという意味を理解したのだ。 あのときのことを思い出すだけで恥ずかしかった。それでも、今こうして寝起き一番に巳亦に会えるのは嬉しい。 「曜、お前の着付けは俺がしてやるよ」 「いい、自分でやる」 「なんでそんなこと言うんだ」 「だ、だって……巳亦がすると、絶対変なことしてくるし……」 「変なこと?」 「う……」 これは、わざとだ。わかってて惚けてる。 「いいから、こういうのは甘えとくもんだ」 「み、また……」 「ほら、いい子だから大人しくしてろ」 おまけにこの子供扱い。するりと伸びてきた手のひらに腰を抱き寄せられ、寝巻き代わりの浴衣を脱がされる。露出する肩に触れる巳亦の手に驚いて振り返ろうとすれば、そのまま項にキスをされた。 「ちょ、……巳亦……」 「……ん?どうした?」 「どうした、じゃなくて……っん」 当たり前のように襟の下へと入ってくる手のひらは平らな胸元を撫でるように弄るのだ。 黒羽さんの手前、こ……子作りとかはしないが、巳亦は二人きりになると油断すればいつもこれだ。人の体を触っては味わって埋めてくる。 「巳亦……駄目だって、朝遅れたら……黒羽さんに怒られるから……っ」 「……うん、だからすぐ済ませるって」 「済ませるって、何を……」 「曜補給」 「な、なんだよそれぇ……」 「……嫌か?」 唸る俺の顔を覗き込んでくる巳亦。不安そうなその目に俺はすこぶる弱かった。……惚れた弱みというか、確かに俺だって巳亦のことは好きだ。だけど、こういうところはちょっと狡いと思う。 俺の気持ちなんて読めるくせに。「少しだけだからな」って口にすれば、巳亦は「ああ」と嬉しそうに笑っては俺に口付けた。 ああ、神様って狡い。 俺だって人の心が読めるようになりたい。 結局、朝ギリギリになって登校することになったのは言うまでもない。 巳亦曰く、神様だから俺の信仰心というか愛情だとかそういったものが巳亦の養分になるらしい。身も蓋もないこというと、それを手っ取り早く補給するにはこうして俺と直接触れ合うのが良いという。他の人の話も聞いたことないのでどこまでが本当なのか知らないが、けど確かに寝食共にするようになってから巳亦は以前よりも生き生きしてるのだ。 塔一階。大広間へと繋がる通路前。 「黒羽さん、おはよう」 「伊波様、おはようございます」 「おはよ、黒羽さん」 「……貴様」 「ちょ、ちょっとちょっとー。黒羽さん俺にだけ対応違わない?」 「なぜ朝から伊波様から貴様の匂いがするんだ」 顔を顰める黒羽の言葉に、内心ぎくりとした。 「黒羽さん、これは……」 「そりゃあ、一緒の布団で寝てたら曜も俺の匂いが移りますって」 「ちょ、み、巳亦!それは言わない約束だって……!」 「一緒の布団で寝るだと……?」 や、やばい! 絶対怒るだろうから言わなかったのに、巳亦のやつ……! みるみるうちに顔色が変わる黒羽に、慌てて俺は巳亦を黙らせようとその口を塞いだ。 ……が、遅かった。 「……伊波様、今の今まで伊波様のためだと慎んでいたがこれ以上は看過できん」 「え、く、黒羽さん……?」 「婚前に同じ布団を共にするだと……?伊波様を前に我慢できるはずがあるまい!」 「ちょ、な、なに言って……黒羽さんだって俺と寝てくれたことあったじゃん!」 「それとこれとは別問題だ、私は伊波様の護衛として寝台を共にさせていただいた。下心しかないその男とは意味合いが違う!」 ああ、始まった。黒羽さんの悪いところだ。俺のことを心配してのことだとわかっててもひやりとした。 「く、黒羽さん、いい加減に……っ」 「そうですよ、黒羽さん。曜には曜の役目がある、俺はそれを踏まえた上で曜といることを選んだんだ。……約束は守る。けど、少しくらい触れるのくらい許してほしいですね」 「下心がない黒羽さんが曜に触れるのと同じくらいはね」なんて、穏やかな顔で続ける巳亦とは対象的に黒羽の顔は益々険しくなっていくばかりで。 「ふ、二人共いい加減に……っ」 してくれ。そう声を上げようとしたときだった。 きゅ、と何者かに制服の裾を掴まれる。 そして。 「ぼ、ぼ、僕も……伊波様と一緒に、眠りたい……です……っ」 どこから話を聞いていたのか、現れたテミッドは「だ、駄目……ですか……?」と目の前で言い争っていた大の男二人におどおどと視線を向けた。 瞬間、黒羽は「ぐ」と口籠る。 きらきらと期待混じりのその目に耐えられなくなったらしい。テミッドのお陰で二人の言い争い――というよりも黒羽さんの怒りを鎮めることに成功したのだった。 ◇ ◇ ◇ 「……全く、それにしても黒羽さんは相変わらずだよな。まあ、それだけ曜のことを心配してるんだろうけど、俺は曜の婿様だってのに」 一日を終え、自室へと戻ってくるなり巳亦は疲れた顔でそのまま長椅子に腰を下ろした。 む、婿様……そういうことになるのか?俺は番だとか妖怪たちの風習には疎いが、その言葉の意味だけはわかる。内心どきりとした。……婿様……巳亦が……。そう一人で照れてると、部屋の入り口の前で固まってた俺を見て「おいで」と巳亦は手を招くのだ。 呼ばれるがまま巳亦の側へと近付けば、伸びてきた腕にそっと抱き締められる。瞬間、淡い匂いが鼻孔に広がった。品のある、優しくて落ち着いた巳亦らしい匂いだ。 「巳亦……ごめんね、黒羽さんには俺からもよく言っておくから」 「……んー、俺としてはその気持ちだけでも十分だよ。……それに、黒羽さんだってわかってるんだよ。本気で思ってるならこうして俺がまたこの部屋の敷居を越えられないようにすることだって可能なんだし」 「じゃあ、どうして」 「……本当にわからない?」 後ろ髪を撫で付けるように頭を撫でられ、心地よさについ目を細めた。少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべ、じっと覗き込んでくる巳亦に俺は考えた。 黒羽さんがああやってわざと巳亦に文句言ってるってこと、だよな。 「黒羽さんはきっと寂しいんだよ、曜が俺を選んだから。……ヤキモチ焼いてるんだ」 「えっ、本当に?」 「……だって、そうだろ。俺も黒羽さんの気持ちはわかるよ、だから譲れないんだけどさ」 確かに、巳亦といる時間が増えた。黒羽も俺の護衛として傍にいてくれるが、黒羽が和光に呼び出されたときとかは巳亦が護衛を買って出てくれることも多くなる。 その分、黒羽も俺のおもりばかりに縛られることなく好きなことができるのではないかと思っていたが、寧ろその逆だったなんて。 寂しいなんて、黒羽は俺には言わなかった。いや、黒羽のあの性格を考えればそれはわかりきったことではないか。 「なんか、悪いことしたかな……」 「別に、曜は悪くないよ。……それに遅かれ早かれ、自由の身になることができたときには黒羽さんと別れることになるんだから」 巳亦の言葉に思わず俺は顔を上げた。 やだ、と言う言葉を飲み込んだ。けど、巳亦にはつたわったのだろう。優しく撫でていた巳亦の指先はそっと唇に触れる。そして、少しだけ寂しそうにその目が伏せられた。 「……大丈夫だよ、俺は、ずっと側にいるから」 「巳亦……」 「曜が黒羽さん大好きだってのは知ってるけど、ここまで来ると正直俺も妬きそうだよ」 「っ、ん……巳亦、……っ」 当たり前のように重ねられる唇の柔らかさに思考を甘く塗り潰される。寂しいが、別れはくるものだ。わかっていたけど、やっぱり俺は子供なのかもしれない。 親善大使としての役割を終えたあと、自分がどんなことをしてなにをしてるのか想像つかない。けれど、この男が隣にいることは間違いないだろう。 重ねられる手のひらの熱。それだけは確かに感じた。 「……はあ、危ないな。そのためには約束、ちゃんと守らないといけないからな」 「っ、ん、巳亦……」 「そんな顔するなよ、俺だって生殺しだ」 蛇の子作りは一度行うと数日間は交じり合うのだという話を聞かされたときは驚いた。止まらなくなるというらしい。だから、黒羽は毎日俺に会う。巳亦が約束を破ればすぐに気付かれるのはわかっていた。だから、俺も巳亦も唇を重ねて、触れる程度のスキンシップ以上のことはしない。 ……これも、未来のためだ。恋愛のれの字も知らなかった俺に、まともな幸せも諦めていた俺に、未来の幸せを教えてくれたのは巳亦だった。 「じゃあ、もう少し……」 「ん?」 「……ぎゅってして」 そしたら、我慢する。なんて、子供のわがままだとわかってる。けど巳亦はそんな俺の甘えを笑わずに、ただ「わかった」と抱き締めてくれるのだ。 頭を撫でられながら、名前を呼ばれて、巳亦の体温を全身で感じるこの時間が好きだった。 「……そういや、黒羽さんにもこういうこと頼んだりしたのか?」 「……へっ?」 「だって、一緒に寝たことあるんだろ?……ぎゅってしてって、あの人には……」 「……い、言ってないよっ」 「本当かぁ?俺には嘘通用しないって知ってるだろ?」 「う……そ、その、慰めてもらったりはあったけど……それと、これは全然違うからっ!……というか、黒羽さんはそういう人じゃないから、巳亦みたいな目で俺のことなんか見てないって」 「……どうだろうな」 「…………巳亦?」 「……………………なーんか、面白くないな」 そう、むすっとした巳亦が呟きたときだ。「え?」と顔を上げようとしたとき、視界が反転する。覆い被さるように俺を見下ろす巳亦。そして、その肩越しに見えるのは天井だ。 「……あ、あの、巳亦さん……っ?」 「寂しがり屋で甘えん坊な曜坊にはちょっと痛い目見てもらわないといけないみたいだな。……俺以外に甘えられないように」 「え、や、な、なにを……」 「――反省するまで擽りの刑だな」 なんて、にこりと微笑む巳亦に血の気が引いた。 そして、部屋中に俺の悲鳴が響き渡ることになり、血相変えた黒羽が扉を蹴破って突入してきたのは言うまでもない。 相変わらず黒羽の巳亦に対する印象はよくないが、俺にもわかる。黒羽の優しさが。だからこそ早くこの二人が仲良くなってくれればいいのだがとも思えるが、その日は大分先になりそうだ。 今は巳亦の悪ふざけのせいで巻き添えくらって黒羽にねちねち説教される日々だが、こんな日常も悪くないと思えるのだ。 いつか別れがきて、本当に巳亦とちゃんとした番になれる日まで――ずっと、こんな平穏が続けばいいのに。黒羽に怒られる巳亦を眺めてると、ふとこちらに気付いたらしい、微笑見かけてくる巳亦にドキッとして慌てて俯いた。それからすぐ気付いたらしい黒羽に「貴様聞いてるのか!」と更に説教されてる巳亦を見て俺もつられて笑った。 ……それはきっと大分先になりそうだな。 【おしまい】
Comments
うう…巳亦くんが好きすぎるのですが、このお話かわいくてかわいくて大好きで何度も何度も読んじゃいます…泣 ラブです、末永くお幸せに…南無…
もけ
2021-05-31 06:07:22 +0000 UTC