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田原摩耶
田原摩耶

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天国地獄人狼『豪華客船七日間の旅』第十一話※

『ゆうき君、十勝君。次は俺に投票して』  今日のゲームが終わり、その夜。  通話開始直後、爆弾発言をする阿佐美に俺はつい先刻まで考えていたことも何もかも吹き飛びそうになった。  投票、というのは言わずもがな処刑対象に阿佐美を選ぶということだ。身内切り、なんて言葉が脳裏を過る。 「な、何言って……本気?」 『うん。確実に明日処刑されるのは俺だよ。もし投票先のことを疑われたらゆうき君たちまで疑われてしまうだろうし……』 『うーん、でも詩織がいなくなるのはかなり痛いぞ……』 『……裕斗君は埋毒者だった。そうなると、後気をつけるのは狐だけだ』  狐。未だに姿形を見せない存在だ。  役割上、目立つことなく村人に擬態する存在だというのは理解したが……ここまで来ると誰も彼もが怪しく思えてしまう。 『灘君、八木先輩と栫井はともかく……会長、五味先輩、仁科先輩、安久、志木村先輩……少なくともこの中に村人ではない人がいるはずだ』 『確実にいるのは狐。……それと、背徳者か。……狐吊るせば背徳者は勝手に道連れされるんだよなー?じゃ、やっぱ狐探すのが有利だな』 「狐探し……」  ただでさえ骨が折れそうなのに、阿佐美がいなくなる可能性を考えたらぞっとしない。  ……それに、阿佐美はいいのだろうか。阿賀松にどんな扱いされるかもわからないのに。いくらゲームと言えど、やはり躊躇せざる得ない。  これからのことを考えると嫌でも気が沈んだ。……阿佐美は平気なのか、そういうのは割り切ってるやつだとわかってても俺には無理だ。  そう、この先のことを憂いていたときだ。 『なあなあ、佑樹と詩織は誰だと思う?まー証拠とかそんなん抜きで、勘で!』  スピーカーから聞こえてくるのは場違いなまでに明るい十勝の声だった。勘、現時点直感で怪しいという人か。 「お……俺は……わからないよ……」 『ええ?本当か?あるだろなんかこいつ怪しいな〜狐っぽいな〜ってやつとか!』 「う、うーん……まあ、いる……のかな……?正直、誰とか関係なく皆怪しく感じるんだけど……」 『あ、わかる!俺もそれ!なんかお前狐だろ!って感じの人たちばっか残ってんもんな〜』  楽しげな十勝の声に、こんな会話他の人たちに聞かれてたら怒られそうだなとヒヤヒヤする。  うんうんと一人納得したらしい十勝は『なあ、詩織は?』と阿佐美に話を振った。 『現段階ではなんとも……けど、強いて挙げるなら……志木村先輩と芳川会長は注意したいな』 『あ〜あそこな、あの二人喋るだけでこえーもんな!』  確かに……。敵に回したくないタイプではある。 『じゃあ、今夜はどちらかを噛むか?』 『いや……今夜は仁科先輩かな』 「え」と、ついアホみたいな声が漏れてしまう。  やはりそういう話になるのかと思いきや、まさかの阿佐美の選択に驚かずにはいられなかった。 『確かに志木村先輩と芳川会長は怪しいけど……あの二人は勝手に狐を見つけ出してくれそうだから、この先人数少なくなるまで残しておきたいんだ。それに……二人とも仕切りたがり屋だから遅かれ早かれ疑心暗鬼になった村人たちに投票で吊られるだろうし』 「だから……仁科先輩……?」 『確定白の二人はいつでも殺せる。それなら、できる限り疑い先を減らして投票を分散させない方がいいだろうし。……これでもし仁科先輩が狐だったら、一気に勝ちに近付くかもしれない。……って俺は思ったんだけど、どうかな?』  確定白残しでグレーを潰していく。そして、村人同士で疑心暗鬼にさせる。……それが阿佐美の考えだった。  それはある意味賭けのようにも思える。疑心暗鬼になればそれが一番なのだが、一番厄介なのは二人を残した結果団結が深まったときではないだろうか。そんな考えが浮かんだが、現在の状況を考えると確かに阿佐美の作戦が最善なのかもしれない。 『それで、票も操作しやすくなると。さっすが詩織だな』 『十勝君。さっきも言った通り次回は俺に投票頼むよ』 『いやいや流れにもよるじゃん。まだ話し合いでどうなるかわかんねーだろ!……それに、詩織いなくなったらどうすればいいかわかんなくなるし困るんだよな〜』  思わず俺は十勝の言葉にうんうんと頷く。二人には見えてないだろうが、十勝の言う通りだ。二人の意見に頼らせてもらってる身としては二人のどちらが欠けても困るのだ。 『大丈夫だよ。二人なら……きっと。それに、有利なのは俺達だ。けど、俺が死んで迷ったら……取り敢えず八木先輩は吊った方がいいかもしれないね』 「あ……」 『ここから先は一票一票が重くなってくから、十勝君に向けられる票は削った方がいい。俺がいる内は大丈夫だと思いたいけど……』 「わ、かった……」 『おう……』 『……え?なんで二人ともそんなに暗くなってるの……?そ、そんなに深刻に捉えなくていいんだからね……?』 「わ、わかってる……けど……」 『わかるけど、なあ……?』  恐らく通話の向こう側の十勝も俺と同じ顔をしているだろう。いくら本人からの頼みとはいえ、やはり味方を切るのは気持ちのいいものではない。  そのまま重い沈黙が流れ、慌てたように咳払いをした阿佐美は『わかった、じゃあこうしよう』と声をあげた。 『…………今回の通話が最後にならないように俺も尽くすけど、その、もし流れで俺にヘイト集まってたらそのときは遠慮なく切って』 『おう!わかった!そうなんねーよう俺と佑樹でなんとかすっから!』 「……う、うん!……頑張るよ……!」 『い、いや……そこはあまり悪目立ちしない方が好ましいんだけど……』  そう言いかけて、阿佐美は『まあ、いいか』と小さく笑った。異論無しということで、今夜の標的は仁科に決定した。  ……仁科には悪いが、俺たちも負けられないのだ。それでもやはり気持ちいいものではない。  ◆ ◆ ◆  翌日。  昨夜、通話を終えたあとも一人で色々考えていたお陰で寝るのが遅くなってしまった。そのせいだろう、気付けば昼前になっていた。  通りでお腹が減るわけだ。なんだか勿体無いことをした気分になったが、こんな日が一日くらいあっても悪くないのかもしれない。思いながら俺は取り敢えず顔を洗うことにした。  大分この船の乗客も減ってきたからか、当初の賑やかさに比べて船内の広さも相俟って寂しさすら感じる。改めて考えれば贅沢だよな……。  なんて思いながら、俺はとにかく空腹を満たそうとデッキ4へと移動する。  日差が気持ちいい甲板の上、俺はレストランでテイクアウトしたアイスを食べながら海を眺めていた。  それにしても気持ちいい風だ。  会長たちは今日も泳いでいるのだろうか……。そんなことを考えていると、レストランから大きなワゴンを運ぶ従業員を見かける。誰かが食べるのだろうか、と思ったが量からして一人や二人の料理とは思えない。  なんとなく、予感がした。あくまでもこれは俺の推測に過ぎないが、もしかして脱落者たちへの食事なのだろうか、という思考が過ったのだ。  咄嗟に従業員たちの死角へと移動した俺は、そのまま従業員専用エレベーターへと移動するそのワゴンを見送る。俺たちの部屋があるエリア3から上階に行くのではなく、降下するエレベーターにやはりという気持ちが強くなった。  ……やはり、志摩たち脱落者はこの船のどこかにいるのだろうか。だとしたらほっとする。一応食事は貰えてるのだろう。まだ決まったわけではないし希望的観測でしかないが、そう思うしかできない状況だ。  俺は溶けかけの残りのアイスを口にし、そして船内へと戻る。  十九時までまだ時間がある。これからどうやってすごそうか。  そう思いながら俺はいつの日かに貰ったパンフレットを取り出し、船内設備を再確認した。  どこも一人で楽しむには難易度が高い……。  でもだとしたら誰に声を掛けようか。  阿佐美?会長?……きっと優しい二人のことだ、付き合ってくれるだろう。けど、連日付き合ってもらってるのにまたお前かと思われるのも怖い。  どうしよう、と考えていたときだ。 「……なにボケっとしてんだよ」 「っ、うわっ!!」  いきなり背後から肩を掴まれ飛び上がりそうになる俺。咄嗟に振り返れば、そこには「うるせえな」と耳を抑える栫井がいた。 「か、栫井……なんでここに……」 「なんでって……なんでもいいだろ、別に」 「そ、そうだけど……」 「……飯」 「え?」 「食いに来たんだよ……そしたら、邪魔なところにお前が突っ立ってた」 「あ、ご、ごめん……っ」  考えながらパンフレット見てるうちにレストランへと続く通路のど真ん中で立ち止まってしまっていたようだ。  慌てて謝れば、栫井はふん、と鼻を鳴らす。そして、俺の手からパンフレットを取り上げるのだ。 「あ……っ」 「お前、迷子?」 「ち、違うよ……どこ行こうかなって考えていただけで……」 「……へえ?一人でか?」 「う……」  栫井だって一人じゃないか、と言い掛けて、口を閉じる。こればかりは認めざる得ない。というか言い返しても虚しくなるだけだ。 「栫井も……?一人なの……?」 「……俺は、さっき起きたばっかだし」 「あ、俺も……」 「……ふうん、夜ふかしか?」 「ちょっと、考え事して……そしたら余計寝れなくなって……」 「考え事、な」  なんだ、その目は。眠たそうに細められた視線がじろじろとこちらを見下ろす。というか、近い。 「か、栫井……?」 「それって、人狼のことか?」  指摘され、ギクリとした。  というか、こんなところで堂々とゲームのことを聞かれるとは思ってなくて、別に禁止されてるわけではないのでおかしなことではないのだろうが、あまりにも不意打ちすぎたのだ。 「……お前、分かりやすすぎだろ」 「で、でも……そんな話……」 「別にビビる必要ねえだろ。俺、白確定なんだから。お前だって村人なんだろ」  あ、と思った。同時に、しまった、とも。何を考えてるのかわからない二つの目はじっと俺を見据えるのだ。 「お前が狼か狐ならともかく」 「な、……に言ってんだよ……俺は、村人だって……」 「ああ、そう言ってたもんな。自分で」  そう、栫井は続ける。そして、暫く俺たちの間に沈黙が流れた。そして、やがて興味を無くしたように栫井は俺から視線を外すのだ。 「……まあいいや、行くぞ」 「……へ?」 「飯、腹減った」 「え、お、俺も……?」  突拍子のない栫井の誘いに、俺は言葉に詰まる。  というか、この流れでか。 「飯、食ったのか?」 「アイスだけなら……」 「ガキかよ……。どうせ暇だろ、来い」  暇じゃない、と言いたいが、実際暇だった。それに、こうやって栫井の方から誘ってくれるのは……少しは打ち解けてくれたのだろうかと思えて嫌な気はしない。誘い方が強引すぎるのはともかくだ。「うん」と頷けば、栫井は一瞬だけ俺を見て、さっさとレストランへと歩き出す。  とはいえ、俺も栫井も食べる方ではないので食事に時間はなかった。特に盛り上がることなく二人でテイクアウトしたパンを甲板のテラス席に座って食べる。なんだか変な時間だ、と思ったが思ったよりも悪くない時間だった。  それから流れで栫井に付き合わされることになった。  そして、現在。 「まっ、待って、栫井……ッん……っ」  なんで、なんでこんなことになってるのか。  最初は図書館に行くかという話をしていた。俺はどこでもいいと言ったのだが、その言葉が気に入らなかったのか。そのまま路線変更、栫井の部屋へと連れて行かれたのも束の間、気付けばベッドに押し倒されていた。もう俺には栫井の考えていることはわからない。 「だ、駄目だって……栫井……っ」 「……お前が悪いんだろ」 「えっ、お、俺……?!」  そんな誘うような真似も一切何もしてないのだが、あんまりな言いがかりに驚愕する俺に栫井は舌打ちしながら着ていたシャツを脱がしてくる。 「ちょっ、待……っ」 「……お前が、あんな水着履いてくるから」 「って、それ、昨日じゃ……っ、待っ、か、栫井……ッ!」  確かに昨日様子おかしいなとは思ったが、まさか今日まで引き摺ってるなんて誰が思うだろうか。というか、そもそもあんな格好でそんなに興奮できるものなのか。俺には栫井がわからない。 「栫井……っん、ぅ……っ」  唇を指で揉むように開かされ、舐められる。ここ数日ずっと緊張していたせいか、伸びてきた手に太腿を撫でられるだけで体が否応なしに反応してしまいそうになった。 「だめだ」とその手を剥がそうとするが、閉じた腿の間、差し込まれる指が徐々に付け根へと上がるだけで心臓がどうにかなりそうになるのだ。 「っ、だ、め……だって……時間が……」 「六時間もありゃ余裕だろ」 「ろ……っ?!」 「……お前だって、どうせ溜まってんだろ」 「余計なゲームのせいで寝れないくらいだしな」と笑う栫井に顔がじわじわと熱くなる。確かに、こんな綺麗な船、高そうな部屋で自慰をしようという気にすらならなかったけどもだ。 「ゃ、だ、めだって……っ栫井……」  股間付近を指で撫でられただけで反応してしまいそうになるのが恥ずかしかった。耳も、下腹部も、じわりじわりと熱くなる。唇を吸われ、舐められれば、流されそうになってしまうのだ。 「んぅ……っ、う……ッ」  閉じようとしていた唇を割って入ってくる舌に歯列をなぞられ、舌を咥えさせられる。舌同士を擦り合わされれば、それだけで頭の奥がじんと甘く痺れてしまうのだ。  六時間……時間潰すためだとはいえ、こんな暇潰しは不純だ。けど、珍しく優しい栫井だし……。でも、人としてどうだこれは……。考えるが、クチュクチュと響く水音に思考を掻き乱され、舌の先っぽを吸われれば頭の中は真っ白になる。 「っ、ん、ふ……っ」  ベッドメイキングされたばかりのシーツの上、膨らみ始めたそこを手のひらで撫でられ体が震える。触ってほしい、といけない思考が芽生えるが、それを察知したかのように栫井は手を離すのだ。そして、深く舌を挿入させてくる。  根本から絡め取られ、執拗に舌を扱かれ、吸い出されたそこを唇で噛まれれば「ん゛、ぅ゛」と籠もった声が漏れた。キスだけで全身の熱は一気に上がり、気付けば抵抗するために栫井を掴んでいた手は縋り付くようなものになってしまうのだ。スラックスの下が痛い。先程触れられてから一切触られてない股間が限界まで勃起し、下着の中がどうなってるかなんて考えたくもなかった。  そして、テント張ったそれを一瞥した栫井は俺から舌を抜くのだ。ぽっかりと開いた口の中、物寂しさに思わず「ぁ……」と声が漏れたとき、栫井は笑った。 「セックス、したくねえんだろ」 「……っ、へ……」 「じゃあ、こっちは使わないでやるよ」  トントン、と指先で臍の下の辺りを叩かれ、それを理解した瞬間顔が赤くなった。嫌な予感的中、咄嗟にシーツを掴んで栫井から逃げようとするが、遅かった。 「その代わり」と、伸びてきた手に、大きく剝かれた胸元を揉みしだかれるのだ。 「ぅ、あ」 「こっちなら話し合いになんの影響もねえだろ」  そう、恐怖で縮み込んだ突起を指の先で揉まれた瞬間耐え難いものが背筋に走る。悪寒か、それとも別のものか。震える俺に、栫井は楽しそうに笑うのだ。確かに、座ってるときケツが痛くなることはないだろう。でも、それところとは別だろう、という言葉は届かなかった。 「っ、ん、ぅ、ふぅ……ッ!」  乳輪ごと噛み付くように口に含まれ、歯で甘噛みしたそこをおもちゃかなにかのように唇や舌で嬲られ、もう片方の空いた胸も徒に指で扱かれる。逃げようと思うのに栫井に捕まえられた体はろくに動かせなくて、それどころか、弱いところを執拗に責められればもどかしさと熱でどうにかなりそうだった。  最初はただくすぐったいだけだ、我慢しよう。そう諦めていた俺だがその状態が続けばどうなるか。 「っ、か、こぃ、ぃ……も、やめて……っゆるして……っ」  そして無視である。それどころか、唇で挟めたそこを思いっきり吸われ、腰にビリビリと刺激が走った。射精寸前の勃起した性器は腫れ過ぎて痛い、それなのに射精に繋がるほどの刺激をもらえないだけにもどかしい状態が続いていた。イキたい、イキたいのに。持続的な甘い刺激が体がただ疲弊していく、下着の中、先走りでとろとろに濡れた感覚が気持ち悪かった。 「っ、は……っ、はー……ッ……ぅ……」  摘まれた両方の胸の側面を扱くように親指と人差し指で挟められ、執拗に摩擦される。触られすぎて腫れたそこは掠めるだけでも痛いくらいだっただけに、指すような刺激に堪らず前のめりになった。 「ん、……っふ、……ふーッ……」 「はっ、……すげえ腫れてる」 「……っ、や、も……ッ」  勘弁してくれ、と頭を左右に振ったとき、ふ、と乳首に息を吹きかけられ、その感覚だけで思考が飛びそうになった。さっきまでもどかしいだけ、くすぐったいだけだと思っていたのに、それだけではなくなっている。栫井のせいで感覚がおかしくなっていることに気付いたときには遅い。我慢できずに自分で前を触ろうとして、栫井に手を取られる。そして、二つの冷めた目が俺を見下ろすのだ。 「……なんだ、お前イキたいのか?」  栫井に尋ねられ、恥ずかしいことだとわかっててもなり振り構っていられなかった。こくこくと頷けば、栫井は「ふーん」と目を細めた。そして。 「いっ、ひ……ッ!」  引っ張られた両方の胸をシコられる。先程までの撫でるような揉み方とは違う、乱暴でいてそれでも快感を逃さないような執拗な愛撫だった。 「っ、く……ッ、ひィ……!」 「……お前、やっぱ素質あるわ」 「な、にひ、って……ぇ……――ッ!」  それから先は、意識が朦朧としていた。のたうち回りそうになる体を腰に回された足に捉えられ、執拗に両胸を責められる。次第に強くなる快感の波に呑まれ、何も考えられず俺はただシーツに縋り付くのが精一杯で。何度か意識が飛ぶ。乳首がこんなに気持ちいいなんて、知りたくなかった。性器に触れられぬまま迎える絶頂なんて、一生。 「あと四時間半はいけそうだな」なんて、指一本動かす気力のない俺を抱きかかえたまま呟く栫井の言葉は聞き間違いだと思いたかった。  結局、椅子に座っても腰が痛むことはなかったが服が掠めるだけで勃起してしまいそうになるまま十九時になる。  最悪だ。栫井は一人満足げであるが俺からしてみれば最悪の極みだ。これならまだ挿入された方がましだ。生殺し状態みたいなものだ。……いややっぱ、挿入も嫌だな。  思いながら直前まで熱を抑え込んだ俺はせめて胸が痛くならないよう絆創膏で応急処置することになる。 【To Be continues】


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