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田原摩耶
田原摩耶

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尾張元の夏休み④end【↑100/7,600文字/尾張総受け/オールキャラドタバタギャグ】

 神社裏の林の中を携帯片手に進むこと数分。 「こ、こんなに静かでしたっけ……」 「わかんねえ……。けどなんかここまで静かだと気持ち悪いな」  俺と岡部の声だけが木霊する。  神社の周りにはまだ人もいたはずなのになんでこんなに静かなんだ。二人分の足音だけがするのが余計気味悪くて、俺達はなるべく会話を途切れさせないように進んでいた。  そんな中、いきなり隣を歩いていた岡部が「ヒッ!」と悲鳴を上げる。思わず「岡部?!」と振り返れば、近くの気に手をついた岡部がそこにいた。 「あ、す……すみません、足引っかかっただけでした……」 「だ、大丈夫か……?怪我はないか?」 「大丈夫です、すみません……」  よほど恥ずかしかったらしい。カーッと顔を赤くした岡部は怪我がないことをアピールするように手足を振ってみせた。ならよかったが、やはり岡部も大分怖がってるようだ。  すげえ悲鳴らしい悲鳴だったな、ということには触れないでやることにした。 「にしても、五十嵐たちも先行ってそう離れてないはずだよな?こんなに静かなことってあるか?」 「岩片君たちのことといい、大人しい部長といい……何もないといいんですけど、正直いい予感しないですね」 「だな」と同意しかけたときだった。  先程まで俺たちの足音と声しか聞こえないその空間に不意に遠くから聞こえてくる。  うめき声にも似た、啜り泣くようなそのか細い声……聞き間違いか?と思わず足を止め、辺りに耳を向ける。 「お、尾張君……?どうかしましたか?」  いきなり立ち止まった俺に驚いたらしい、怯えながら聞いてくる岡部。 「い、今なんか……聞こえなかったか?」 「え……?き、聞こえたって何が……」 「なんか、女の泣き声みたいな……」 『う……うぅ……』  声が、と言い掛けたとき。  今度はハッキリと聞こえた。全身に冷たいものが走り、汗が滲む。やべえ、なんか手が震えてきた。 「い、今……聞こえたよな?!」  ちょっと低いが、あれは確かに人間の声だ。  そう、岡部に同意を求めようと振り向いたときだ。目を見開いた岡部がこの世の終わりみたいな顔をしてこちらを見ていた。あまりの顔色の悪さにこっちまで驚そうになる。 「お、岡部……?どうした?」 「お、尾張君……う、後ろ……」 「……後ろ?」  そう、ぷるぷると震える指先で岡部が示す先へと視線を向けたときだった。  すぐ背後、鼻先がぶつかるほどの至近距離にその血塗れの男はいた。全身から血の気が引いていく。  驚きと恐怖のあまりに声すらも出なかった。  そして、 「ご、ご、ごめんなさーーい!!!」 「岡部?!って、おい、どこへ……岡部……っ!!」  携帯放り投げる勢いで脱兎の如く逃げ出す岡部。  咄嗟に声をかけるが、気づけばもう岡部の姿は見えなくなっていていた。あいつこんなに足早かったのか、なんて感心してる場合ではない。俺も逃げねえと……。  そう思った矢先、背後の血塗れの男はくつくつと笑い出す。そして、聞き覚えのあるその声に思わず動きを止めた。 「……おやおや、脅かしすぎたようですね」 「っ、お、お前……能義か?!」 「ええ、そしてこれは被るだけで血まみれになれる特殊メイクマスクです」  言うなり能義はべりっとその顔を剥ぎ出すのだ。そして下から現れたのは見慣れたあのいやらしさしかない笑顔。 「いや普通に怖えから。つか、んでそんなもん……」 「それはもちろん尾張さんたちを脅かすためにですよ。しかしまあ、まさかここまでいい反応示してくれるなんて私も蚊に刺されながら待っていた甲斐がありました」 「……岡部飛んでいったぞ」 「大丈夫ですよ。あっちには馬喰さんが待機してたはずなので」 『ヒイイィィ!!!』 「ほら」と、笑う能義。なにがほら、なのか。寧ろすげー声に不安になるんだが。 「つか、ってことはなんだ。お前ら最初からグルだったのか……?!」 「お前ら……とは?確かにさっき馬喰さんにも特殊メイクしましたけど」 「だ、だって……岩片たちがまだ戻ってこないの……」 「そうなんですか?おかしいですね」 「どっかで道草食ってるってことか?」 「さあ、どうでしょう」  こいつ、何かを隠してやがる。  間違いなくこの作戦自体岩片の差金のような気がしてならねえが、能義は口を割るつもりはないらしい。  それどころか、「まあそんなことはどうでもいいではありませんか」なんて言いながら徐に人の肩を抱いてくるのだ。 「せっかくこうして二人きりになれたんです。……そのような格好で私の劣情を刺激してきたんですからちゃんと、その責任は果たしていただきましょうか」  おまけにこの男、話のそらし方が力技すぎる。  肩のラインをなぞるように撫でられ、全身がぞわりと泡立った。咄嗟にその手を払い除けようとするが、この男、細いくせに力は馬鹿みたいに強い。 「っ、な、何言ってんだ……っておい!どこ触って……」 「いやはや素敵ですよね、浴衣。こんなにセックスに最適な格好ありませんよ」 「色んな人たちに怒られろお前……!」  つか言ってることが最低だ!  浴衣越し、下半身を撫でられ「おい」と睨めば、能義は「失礼します」なんて言いながら襟下を捲ってきやがる。 「っ待て、能義……」 「まさかノーパン……なわけありませんでしたか、些か残念ですが……ゆっくりと一枚一枚貴方の衣類をこの手で剥いでいくのもまた一興」 「っこ、のやろ……っ」 「憧れていたんですよ、浴衣のあの子と夏祭りで神社セックス。……夏のロマンでしょう?」  正直嫌いではないが、あの子のポジションが俺なのはおかしくないか。いや、おかしい。絶対おかしい。  好き放題やりたい放題なこの色男の手から離れようとその胸を押し退けようとしたときだった。 「……お前っ、いい加減に……」 「有人テメェこの野郎!!何してやがる!!」  ガサガサガサッ!と草むらが揺れたと思えばぬっと飛び出してきた人影とそのクソうるさい声に驚きそうになる。  ……この喧しい声は、間違いない。 「……おや、遅かったですね」  そう、相変わらず人の下半身を抱いたままゆっくりと顔を上げる能義の視線の先には、懐中時計を手にした赤髪、もとい政岡零児がいるではないか。 「政岡……?!」 「盛ってんじゃねーよこの下半身野郎!今すぐ尾張から離れろ……ッ!!クソッ、尾張怖かっただろ……?もう大丈夫だからな」 「よく言いますよ、思いの外尾張さんの悶える姿が可愛くてもう少し様子見て助けに入ろうかとタイミングを伺っていたくせに」 「ギクッ!!」 「しかも図星ですか」 「……政岡」 「ち、ちげえ!誤解だ誤解!遅れたのはあのクソモジャ野郎のせいで……っていい加減離れろ!」  誤魔化すように能義から引き剥がしてくれる政岡。  何はともあれ助かった……いや助かったのか? 「つまりだな……お、尾張!ここにいたら危険だ!お前は罠にハメられてるぞ!」  ガシッと肩を掴んでくる政岡の気迫に気圧されそうになりながらも、「罠?」と恐る恐る聞き返す。まあ、大体想像つくが。 「ああ、そうだ……あの男は、あの男はなあ……くそっ、こうしちゃいられねえ、逃げるぞ!」  最後まで言わないのかよ、という俺のツッコミは言葉にならなかった。何かを感じたらしい、焦れたように舌打ちした政岡は俺の手を取る。熱い手のひらにぎゅっと手を握り締められ、思わず息を飲んだ。 「えっ、お、おい!政岡……!」 「会長、独り占めはずるいですよ」 「うるせえ、テメェみたいな青姦野郎に言われたかねーんだよ!!」  確かに能義といるとろくなことはないのは確かだ。  けれど、このまま政岡についていってもいいものなのか。内心戸惑うが、当のコイツはお構いなしだ。 「行くぞ」そう、耳元で囁かれたと思えばそのまま走り出す政岡の腕力に引っ張られる。  なんだ、なんだこの展開は。せめて転ばないように気をつけながら、とにかくこの腕力馬鹿もとい政岡の後ろから着いていくことにした。  それから暫く。 「ま、政岡っ、待て、待てってッ!こ、これ……走れねえから……」  下駄で山道を走るのには限界がある。これならまだ裸足で走った方がましだと思えるほど足が、主に指の間がクソ痛い。つかコイツどんだけ行くつもりだ、そう政岡に声を掛ければ、ようやく気付いたらしい。 「わ、悪い……!」  そう、慌てて立ち止まった政岡はようやく手を離してくれた。まじで撒くのに夢中だったのかよ。握られた手がめっちゃ熱いし、ただでさえ項垂れるほどの暑さの中走り回ったせいで全身汗だ。浴衣だから通気性はいいのが救いだった。 「だ、大丈夫か……?その、足……」 「ちょっとヒリヒリするけどまあ、普通にしてりゃ問題なさそうだな。……というかそこじゃないだろ、なんだったんだよ、今の」 「つかお前がいるってことは、岩片もいるのか?」気になって尋ねてみれば、政岡は露骨にむっとする。 「あ……アイツのことは、いいだろ……」 「いや、よくねえだろ……そもそもなんでお前ここにいるんだよ」 「なんでって……そ、それは……」 「……岩片、あいつからなにか吹き込まれたんだよな?」  言えよ、と詰め寄れば、「むぐ」と政岡は口を紡ぐ。都合が悪いのか、何を隠してるつもりなのか。おい、政岡。ちゃんと目を見ろ、とその顔を覗き込めば、ようやくやつは俺を見た。 「政岡、岩片はどこにいるんだよ」 「……言いたくねえ」 「は?何言って……」  んだ、と言いかけたとき。不意に伸びてきた手に背中を抱き締められそうになる。咄嗟のことに反応が遅れ、抱き竦められそうになる直前で「おいっ」とその胸を突っぱねた。 「な……なに盛ってんだよ……ッ!」 「岩片岩片って、今アイツのことはどうだっていいだろ」 「……っ、わかった、わかったから、あいつのことは聞かねえから離れろって……っ!」  ただでさえクソ暑い中、この高体温男に抱き締められてみろ、絵面どころの騒ぎではない。つか、なんで抱き締められるんだよこの流れで、ムードとかそういう……違う、そもそも抱き締めるな! 「政岡……っいい加減にしろよ、これ以上は俺も怒るからな」 「だ、だって、お前の浴衣……すげー色っぽいし、その、なんかいつもとちげーのドキドキするし……」 「そりゃ、ドーモ」  開き直りかよ、つーか俺のせいか。いくら褒められたとしてもこんな実力行使しての褒めは勘弁してほしい。つーか、俺もなんでちょっとドキッとしたんだ。  だめだ、こいつを甘やかすな。猪突猛進なこの男にはこうして何度も痛い目を見せられてきたはずだ。 「い、いいか……?……しても」  少しでも隙きを見せればこれだ。  何を、なんて言わなくても空気で、肌で、その熱で察してしまい息を飲む。そして、慌ててその思考を振り払った。 「い、いや、駄目に決まってんだろ……っ!つーか、お前……暑さで頭おかしくなったのかよ……!政岡、お前能義と同じこと言ってるからな……」 「ア?!アイツと一緒にすんじゃねえ!お、俺はただ……」 「ただもクソもねーって、いい加減に離れろって……」  このままだとやばい、何がとは言わないが身を以て色々痛い目見てきた俺にはわかる。人気のない、おまけにこんな暗がりだ。それこそ一夏の過ちなんて冗談じゃないぞ。  とにかく空気を変えよう、そう思って後退りながら逃げたときだった。ずるっと足が滑った。そりゃもう綺麗に、コントかってレベルで。 「うおっ!」 「尾張?!」  急に視界から消えた俺に政岡も動揺したらしい。伸びてきた筋肉質な腕に腰を抱かれ、なんとか転ばずには済んだが……。 「っぶね……おい、大丈夫か?どこか怪我とか……」 「悪い、だ……大丈夫だ……」  バクバクと煩い心音を落ち着かせながらもそう顔を上げたとき、すぐ目の前にある政岡の顔に気付いた。  やべえ、この距離は。  ……キス、できそう。 「野外も悪くねえけどそこの木、デケえ虫いるから気をつけろよ」  そう時が止まったような長い一瞬の中、背後から聞こえてきた緊張感のない声に俺と政岡は凍りついた。  そして振り返ればそこには、懐中電灯を手にした岩片が立っているではないか。 「ッ、な、お、お前……いつから……!!」 「お前らが乳繰り合ってるときから。……おい、どうした?キスしなくていいのか?」 「し……っ、しねえよ……っ」  咄嗟に政岡を押し退ける。おい、なんでちょっと名残惜しそうな顔をしてるんだ、子犬のような目をやめろ。  そんなことよりも、こいつだ。  反射して余計不気味なモジャモジャ瓶底眼鏡野郎もとい岩片に詰め寄った。 「……それより岩片、お前どこに行ってたんだよ。能義のやつも政岡もはぐらかすし」 「逃げていく岡部を捕まえてたんだよ。因みに、岡部もいるからそっちに」 「ぼ、僕は何も見てませんので僕のことは空気と思って続けてください!!」  続けさすな、というかいたのか。  暗闇から聞こえてくるか細い声に顔が余計熱くなる。というか聞かれてたのか、なんつー辱めだこれ。 「……っ、お、まえなぁ……っ」 「本当は能義たちに脅かし役させて、お前と岡部が驚くのを見て五条に撮らせようと思ったんだよ。そしたら脅かし役の誰かさんが勝手に連れて行くからな」 「誰が勝手にだ!お前が助けねえからだろ!」 「堪え性のねえ犬だな」 「うぐ……ッ!この野郎……ッ!!」 「お、おい、ここで揉めるなよ」  せめて明るい場所でやれ。ガルルルと牙を剥く政岡をどうどうと落ち着かせれば、「尾張……」と怒られた犬よろしくしゅんとする。俺が一番怒りたい立場なのに何故慰めなければならないのか。 「……まあ、んなことだろうとは思ったけど。せめて一言くらいは言えよな」 「まあハジメなら俺がやりたいこと勘付くだろって思ってな。……やっぱ流石ハジメ、俺のこと一番わかってるもんな」 「…………人の機嫌取りしようとしてるだろ、お前」 「あ、バレた?」  この野郎……。最早怒る気にすらならない。  けど、こうしてちゃんと再会できただけでもよかった。……そういうことにしておこう。 「とにかく、もう目的終わったんならいいだろ、帰るぞ」  岩片の悪巧みもわかった今、わざわざ祠まで行く必要はないだろう。現地解散だ、こんなの。そう言う俺に、岩片はきょとんとする。そして。 「いやまだ終わってないだろ」 「……え?」 「ここから先はルール通り岡部と二人きりで行ってこいよ。俺らは一足先に神社に戻っとくから」 「えっ、なんでだよ、もういいだろ?」 「ルールはルールだし、お前だけ特別扱いなんてできねえよ」 「フェアに行こうぜ、ハジメ」そう、ニィッと嫌な笑みを浮かべる岩片に血の気が引いていく。  要するにこいつは俺を怖がらせてそれを肴にしたいってわけだ、こんの性悪。 「それじゃ行くぞ、発情猿」 「誰が猿だッ!……つーか発情してねえよ!」 「なら五条に撮らせてる写真見るか?」 「おまっ、あいつ途中から姿見えねえと思ったら隠れてやがったのかよ!」  ギャーワー言いながらも政岡を引き摺ってさっさと帰る岩片。おい、政岡も暴れろ。岩片を止めろ。  しかし俺の願いは虚しく、再び俺と岡部は神社裏に取り残され、なんとか自力でクリアすることになったのだ。  ◆ ◆ ◆  肝試しは散々だった。神社に戻ってきたときには能義にビビらされて気絶したらしい神楽が雑に介抱されていた。  岩片も岩片で良い絵が撮れて満足したらしい、ただの嫌がらせみたいな肝試しも終わってすぐに解散することになった。  そして、その帰り道。 「あー……なんかドッと疲れた」 「歩き慣れてねえからだろ、下駄」 「絶対それだけのせいじゃない気がするけどな」  あれから、岡部はネットの友達と会うと言ってどこかへ移動した。  生徒会の連中は屋台の片付けをサボってたところを町内会の屈強なおじさんたちに見つかってしばかれていた。そしてとばっちり食らった馬喰も後片付けに引っ張られていた。……頑張れ馬喰、強く生きれ。  そして、俺と岩片は一足先に会場を後にし、すっかり暗くなった学園までの田舎道を歩いて帰ることになっていたのだが……。 「つか、ちゃっかり夏祭り満喫してんな。お前」 「そりゃあな、こんなソース臭えイベント早々お目にかかれねえし」  いつの間に買ったのか、カラフルな水風船をぱしゅんぱしゅんと叩きながら岩片は笑っていた。  祭りは終わったが、夏の夜はまだ続いている。  近くを流れる川から聞こえてくる水の音、鈴虫の声が寂しく辺りに響いていた。  ああ、そうか、こいつ初めてなのか。  確かに前の学園があった都心ではこんな自然滅多にお目にかかることはできない。土臭さも、緑も、何も遮るもののない夜空をこうして見渡すのも何年ぶりだろうか。俺がそう感じるほどだ、箱入り息子の岩片はもっと未知な光景なのかもしれない。そう考えると、なんとなくその笑顔が別のものに見えてしまうのだ。 「今度は、もっとゆっくり見て回れるところ行くか」  だから、こんなこと言ってしまったのかもしれない。  前を向いていた岩片の目線がこちらを向いた。少しだけ、驚いたような顔。けれど間もなくしてその口元にはいつもの得意げな笑みが浮かんだ。 「それって、ハジメ君からのデートのお誘いか?」 「何でもかんでも結び付けんなよ。けど、今日は色々ありすぎて屋台見れなかったろ」 「次、ね」  街頭も少ない。表情がわかりにくいが、なんとなく、岩片がどんな顔をしてるか、どんな気持ちなのかわかった……ような気がした。  含んだようなその言葉が、声が引っかかったが、岩片はいきなりこっちに向き直る。そして、なんだよいきなり、と狼狽える俺に「はい」と水風船を持たせてくるのだ。  わけもわからず受け取る俺。  今にも割れそうな見た目とは裏腹にしっかりとした、そしてひんやりとしたゴムの感触に思わず懐かしさがこみ上げる。 「そうだな、じゃあ今度はデケえ花火が打ち上がるのを間近で見てえな。あ、でも人混みはパス」  いつもと変わらない無茶振りだ、間近で且つ人気のない穴場なんて見つけられるか?と呆れる半面、そのワガママにほっとしている自分がいた。理由はわかっていた。  自分で言ってて次なんてあるのだろうかと思っていた分、やつの方からそう言ってくれたから。……我ながら単純だ、と思わず自嘲する。 「……はいはい、調べとくよ」  そう、俺達は再び歩き出した。  夏の夜はまだ明けそうにない。 【おしまい】

尾張元の夏休み④end【↑100/7,600文字/尾張総受け/オールキャラドタバタギャグ】

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