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田原摩耶
田原摩耶

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尾張元の夏休み②【↑100/5,100文字/尾張総受け/オールキャラドタバタギャグ】

「な……なんだかどっと疲れましたね」  「そうだな……」  せっかくの夏祭り、おまけに来たばかりだというのに何故こんなに疲れなければならないのだ。 「あ、丁度あそこに休憩できそうなところあるのでなにか食べ物買って少し休憩しませんか?」 「お、いいなそれ」  岡部の提案に食いついたのは岩片だ。まあ俺としても同意見だ。というかあの写真、大丈夫だろうな、ちゃんと回収して捨てろよ野辺。思いながらも俺たちは屋台を見て回ることになったのだけれども……。 「そこの素敵な出で立ちの尾張さん、私のチョコバナナとフランクフルトはいかがですか?」  とある屋台の近くを通りかかったときのことだった。  聞き覚えのある無駄にいい声に呼び止められ、恐る恐る振り返る。 「こ、この最低レベルの品のない口上とこの声は……」 「フフフ……すみません、貴方が私の前を素通りしようとするのでつい呼び止めてしまいました」  そう、フランクフルトとチョコバナナのハイブリッド屋台の中から声を掛けてくる能義。よく見るとこれまた似合っていないハッピに鉢巻きという夏祭り野郎と化しているではないか。死ぬほど似合っていない。というか呼び止め方を考えろ。それで食い付かれると思ったのも心外でしかない。 「奇遇だな。有人、お前もバイトか?」 「まあそんなところですよ。ああ、あなた方が来ると知っていれば仕事放り出して貴方達と一緒に行きたいところだったんですが……」 「それにしてもお前法被が死ぬほど似合わねえな」 「こういった男臭いのは私ではなく彩乃と会長担当分野ですからね。似合ずとも問題ないのです。言わば私は祭りの華のようなものですからね」  にこにこと笑いながらも平然と言ってのける能義。実際、中身はともかく面だけはいいのが余計なんというかこう悔しいというか。こいつに二物与える必要あったか?とたまになんとなく理不尽な気持ちになる。  認めるのも癪なので「突っ込まねえからな」と言い返せば、能義はやっぱりにこにこと笑いながら「いいんですよ、それは私の役目ですから」なんて言ってのけるのだ。最低である。 「それにしても、会長どこへ行ってるんでしょうか。先程から姿が見えないんですよね、何か知りませんか?」 「ああ、あいつなら迷子になってたぞ」 「なるほど……薄々そんな予感はしてたのですがやはりそういうことでしたか。全く、私と店番交代する約束でしたのに。まあいいでしょう。またうちの会長見掛けたらここへ引っ張ってきてもらっていいですか?」 「それはいいんだけど……お前らまさか皆バイトしてんのか?」  五条はさておき、能義がこうして屋台を任されてるということ自体がなんだか違和感がある。  疑問に思い、尋ねれてみれば能義は「まさか、バイトなんてもんじゃありませんよ」と肩を竦めた。 「元はと言えばあの馬鹿会長が町内会のおじ様方を怒らせたことが原因で無理やり手伝わされてるようなものです。バックレても良かったんですが、こうして貴方達と出会えそうな気がして今日一日手伝ってやってるんですよ。言わば慈善活動ですね。……どうです?惚れ直しましたか?」 「その最後の一言がなければな」  どうせそんなことだろうと思ったが、本当になにをやってるのだろうか。逆に祭りを台無しにされる可能性を考えなかったのだろうか。……まあ、呼び込み方に問題があること以外は能義はわりと真面目に店番やってるようだが……。 「因みに、会計と書記ならそう遠くないところに屋台構えてるはずですよ」 「……あの二人の屋台……」 「なんか、いい予感がしないんですが」 「……奇遇だな、岡部」  というか神楽に食べ物関連の屋台をさせてないだろうか、それが何よりも心配になる。  そして能義がただにこにこ笑ってるのも怖えし……。 「あ、そうです。ところで皆さん、小腹が減ってきてはないですか?今ならおまけしてチョコバナナとフランクフルト抱き合わせダブルフェラセットご用意しますよ」 「だからお前の下ネタのレベルが最低すぎるんだよ……!!」 「じゃあチョコバナナシングルフェラホワイトミルク盛り頼むわ」 「毎度あり!!シングルお掃除フェラ一本!!」  岩片お前頼むのかよ!というか返しも最低すぎるわ! 「野辺と寒椿は早くこの屋台を取り締まってくれ…………!!」  切にそう願うばかりだ。  ◆ ◆ ◆ 「案外美味えな」 「よく食えるな、それ見るだけであいつの顔ちらついて嫌なんだけど」 「ハジメは繊細だからな~~」 「お前に比べたらな」  というか繊細とかそういう次元じゃない気がするんだが。  休憩するつもりが余計疲れている始末だ。 「それにしてもこの調子で行くと残りの奴らもどこかしらいるってことなんだろ?……見つかったら面倒臭えな」 「そうですね、このまま何もないといいんですけど……」 「あぁ~~!!元君だ~~!!」 「……岡部、お前フラグ建てるの上手いな」 「お、俺のせいですか?!」  遠くから聞こえてくる間延びした声が徐々に迫ってくる。そして、ドン、と背後から衝撃。「ぐえっ」と口から潰れたカエルのような声が漏れ、何事かと振り返れば案の定といったところか。そこには明るい頭の喋り方同様ゆるそうな男がすりすりと俺の背中にくっついてるではないか。 「元君何その浴衣、すっげーエロくていいじゃん~!!ね、一緒に写真撮ろーよ、イエーイ!」  そう、距離なしのチャラ男もとい神楽の構える携帯にぎょっとする。 「エロいって……あ、待て、勝手に撮るな……っ!」 「ん~~元君のいい匂いする~~!乳首見えそうだしえっちだなぁ元君は、こんな格好して人前に出てくるなんてさぁ」 「どこ触って……っ、ぉ、おい、やめろってば……!」 「そりゃ夏祭りといえば浴衣プ……いててててっ!!」  するりと入ってる手に直接胸筋揉まれそうになりぎょっとした矢先だった。神楽の携帯ごとその腕を捻り上げた岩片はにこーっと嫌な笑みを浮かべる。 「そんで?そこの頭ゆるゆるくん、お前はどこで店番やってんだ?」 「く……っ!またお前かよ……!!元君のいるところどこでも湧くなんてもしかしてストーカーなの〜?逮捕されろ!」 「へえ、よくその口で言えたもんだな……」 「お、おいお前らここで騒ぐなって……」  なんとか岩片のお陰で神楽を剥がしてもらえたものの、二人の間にはバチバチと見えない火花が散っているように見える。……そうだ、こいつらの相性最悪だった。 「……っと、そうだ。神楽、お前一人か?」  このままでは喧嘩になりかねない。こうなったらさり気なく話を反らすか。そう神楽の肩を掴み、やんわりと岩片から自分へと視線を向けさせれば、先程までグルルル、と牙を剝いていた神楽は「元くーん!」と打って変わって目をキラキラさせる。そして、がばっと腕にしがみついてくるのではないか。でかい抱っこ人形の誕生だ。 「んーとね、さっきまで書記いたんだけど……知らな〜い!店も人の後輩に任せてふらーっとどっか行っちゃった!……………………まあいいでしょあんなやつのことは。それよりほら、あそこにさぁ、美味しい美味しいカキ氷屋さんがあるんだよ~~!」 「変なもの入れてないだろうな、どうやらお前はすぐ異物混入するらしいからな」 「んだとこのもじゃ〜!!そういうのはさぁ、あれだぞ……えーっと……そうだ、営業妨害なんだからね!出るとこ出るぞ〜!!」 「お、難しい言葉知ってんだな。褒めてやろうか」 「顎の下撫でるなクソモジャっ!!お前に褒められても嬉しくねーんだよ!!」  なんて、岩片と神楽が取っ組み合い始めたとき。 「……おい、何騒いでんだ」  右手に綿菓子、左手に焼き鳥が突っ込まれた紙コップ。そして頭には今人気のヒーローのお面。いかにも祭満喫してますという風体のそのガタイのいい長身もとい生徒会書記・五十嵐彩乃は騒ぎの中心となっていた俺たちを見るなりその切れ長の目をすっと細めてみせた。 「げ、書記……」 「騒がしいのがいると思ったらお前らか。……何しに来た?」 「夏の一晩の思い出作りにきてんだよ。な、ハジメ」  さり気なく肩を抱くな、そして俺に同意を求めるな。その言い方はやっぱり紛らわしいぞ岩片。さてはわざとだな?  五十嵐に矛先向いたおかげでひとまずこれ以上大事にならずに済んだと一息吐く暇もなかった。岩片から逃げ出した神楽はそのまた「オイコラ書記〜っ!」と五十嵐に突っかかっていく。 「お前急にいなくなったと思ったら俺を置いて自分だけ食べ歩きしてんじゃねーよ!」 「あ?お前だってナンパしまわってたくせに何言ってんだ?さっきの女子大生三人組はどうした」 「うっ、それはこわそーな彼氏さんたちが来て……ってそんなことはどうでもいいんだよ!」 「……お前から振ったんだろ。つか、店番」 「あ、俺の後輩置いてるからダイジョーブ」 「最初からそうりゃ良かったな」  ……こいつら、罰として手伝ってんじゃなかったのかよ。巻き込まれた神楽の後輩に同情する。  と、まだ見ぬ後輩に思いを馳せたときだ。また神楽がぴとっとくっついてくる。避けようとしたが失敗した。 「そーだ、ね、ね、元君俺たちお手製のカキ氷食べない?俺奢るよ〜!!」 「……気持ちだけもらっておく」 「ええっ、なんで!おいし〜〜よ!ほっぺたでろんでろんになるよ〜〜!!」  ねえ、ひとくちだけでいいから!と甘えるようにすり寄ってくる神楽。自分の顔がいいと自負してるやつしかできない暴挙だ。恐ろしい男だ、お姉さん方なら母性を擽られたのだろうが残念ながら俺は母性というものを持ち合わせていない。 「うえぇ……元君そんなに俺のこと嫌いなの〜?」 「そういうわけじゃねーけど……」 「やめとけ、そいつ、好みの客いれると意味わかんねー薬盛るやつだからな」  どうしてもだめぇ?と上目で見つめられ、まあ一口なら……とうっかり傾きかけたとき。涼しい顔して爆弾投げてくる五十嵐に俺も周りも凍りついた。  そして、神楽もそれは例外ではない。 「バ……ッ!!人聞き悪いこと言うなっての!あれは可愛い子にサービスしてあげてるシュガーパウダーだっての!」 「……」 「ちょ……おいこら!元君たちの目がどんどん冷たくなっていってるじゃん!お前のせいだ書記!!」 「嘘は言ってないな」 「くうう〜〜!!書記の馬鹿!!アーホ!!」 「そっくりそのまま返してやる」  さっきまでの猫かぶった神楽はどこ行ったのか、敵意剥き出しして威嚇する神楽の首根っこ掴み、自分から引き剥がす五十嵐。流石扱いが慣れている。  と、そんなところにぴぴーっ!と聞き覚えのある警笛が響いた。 「噂の異物混入かき氷屋台はどこだ?!」  来やがった、風紀委員……いや、今は警備員か。  よく見たら水風船に金魚にとめちゃくちゃ遊んできた名残があるぞこいつら。 「げっ!!面倒臭いのも来た……!つーか異物混入じゃねーって!俺のラブだよ、ラブ!!童貞にはわっかんねーかなぁ?!」 「ええい黙れ黙れ!!やはり店主はお前か……!往生際悪いぞ!!炎天下の中神社という聖域でワンナイトラブだと?!言語道断!!不埒は罪だ!唾棄すべき社会悪!あと個人的にお前が気に入らない!よってお前を逮捕する!!」 「いやぁ鴻志もいつもに増して私怨に走ってるねえ、風流風流」  お縄頂戴状態の神楽と止まらない暴走機関車野辺による迅速な逮捕劇を肴にチョコバナナをもむもむと齧る寒椿。こいつらちゃっかり能義のあの公然猥褻屋台に行って賄賂渡された口か。あのとんでも商品名を口にしたのだろうかこの男も。……しそうだな、普通に。 「なんで俺だけ!!不埒の塊みたいな黒モジャがそっちにいるだろ!!」 「彼が不埒だと?笑わせるな!見ろこの純真たる黒い髪!そして知的な眼鏡!身嗜みも行き届いている……お前のような下半身にもだらしない男と正反対ではないか!!」 「お前のそのメガネ曇ってんのか?!」 「まあ日頃の行いだな、頑張れよ。俺からのラブだ、受け取れ」 「やっぱり通報したのお前かよ!!許さないからな!!覚えてろよー!!」 「こら!大人しくしろ!話はショで聞く!」  画してまた不正屋台が潰されることになったのだが……なんだか可哀想な気がしてならないが自業自得だ。  というかショってどこだよ。  逮捕された神楽を見送りつつ、ドサクサに紛れて隠れていた祭り男が一人。そして見逃して貰った男も一人。 「岩片、嫉妬深い男は嫌われるぞ」 「警戒心が強いと言え。芽が出る前に摘むのは常識だろ?」  二人は屋台の片隅で何かを離していたがその声は遠くで聞こえてきた祭囃子で掻き消されてしまった。 【to be continued...】

尾張元の夏休み②【↑100/5,100文字/尾張総受け/オールキャラドタバタギャグ】

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