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田原摩耶
田原摩耶

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ろくでなし吸血鬼と肉便器食料庫ちゃん※【↑100/8,100文字/リューグ×伊波】

「吸血鬼避けって本当に効くんだな」  以前購入していた吸血鬼避けのお守りを部屋に置きっぱなしにしていたのだが、どうやら効果覿面のようだ。リューグ曰く世の中の臭いものをグチャ味噌に混ぜたような匂いがするというそれは、建物の外からも臭うようだ。  窓の外、青褪めたリューグに「それをどこかにやれ」と怒られて渋々部屋の奥へと隠した。それだけで効果が完全に消えるとは思わないが、それでも一先ずは部屋に入ることができたようだ。  何故、俺がリューグを部屋に招き入れることになったのか、おまけに何故窓からなのかと言うのには理由がある。 「おい、コラクソガキ。お前、誰のおかげであの変態獄長から逃げられたと思ってるんだよ。あんなばっちいもん買うなよ」 「た、確かに助かったけど……だってお前変なことするじゃん」 「変なこと? してねーだろ」 「じゃ、じゃあ……この腕はなんだよ」 「イナミが逃げないように捕まえてんの」 「なら尻を撫でるなよ……っ」 「丁度いい位置にあるのが悪いだろ。さっさと観念して大人しくしろ」  うりうりと頬を揉むリューグは待てをされた犬のように舌を出して笑う。……やっぱり、無茶苦茶だこいつ。  地下監獄を脱出し、しばらく平穏な日々が続いていた。刑期を終えたリューグが俺に会いに来るまでは。 「ほ、本当に吸うのか……?」 「そういう約束だろ? お前だってそのつもりで俺を部屋に招き入れたんだからな」  ああ、そうだ。本当は不本意で仕方ないが、こいつに助けられたお陰で獄長の玩具にならずには済んだのだ。地下監獄から脱出した暁には血を飲ませてやる。そんな契約の元、協力してくれたリューグは律儀にそれを守った。そして、そのツケが今回ってきてる。  吸血鬼は本来ならば招かれないとその建物に入れないという。そして、俺はこいつを部屋に招いた。夜、寝るとき以外は常に黒羽が傍に居るからだ。だから、黒羽の監視から逃れるために唯一一人が許されるこの時間に招いたのだが、我ながら早計な気がしてならない。 「だ、だって……ここじゃないと……黒羽さんに気付かれるだろうし」 「正直、布団敷いてある部屋に俺を呼ぶって時点でアンタも相当だけどな」 「っ、これは、ふつーに寝るためで……っ」  お前のためじゃない、と言おうとして、ちゅ、と唇を塞がれる。見た目よりも柔らかい唇。薄く開いたやつの唇から尖った牙の感触を感じ、体が強張った。びっくりして顔を上げれば、すぐ鼻先にはリューグの顔があって。 「……まじでエロガキ」 「お前に、言われたくな……い……っ」  ふ、とやつが笑う。人を小馬鹿にしたような余裕綽々の笑み。けど俺は知ってる、こいつもこいつで全然余裕ないことを。我慢と無縁そうな我儘な男だって。  伸びてきた手に首を抑えられ、大きく開かれた寝間着代わりの着物を大きく剥かれそうになり、あ、と息を飲んだ。首どころか肩、胸元までやつの目下に晒される。咄嗟に着直そうとするが、這わされる手のひらにするりと肩から首のラインを撫でられて体がぴくりと跳ねた。 「っ、待っ、て、リューグ……っ」 「散々待っただろ。それにしても、邪魔くせえ首輪だな。……っと、ここなら見つかんねえか?」  首輪を撫でていた指先は首筋の太い血管を辿り、そして、首の付け根のやや上辺り。丁度制服の襟で隠れそうなそこで止まった。ぐ、と軽く血管を抑えられれば、先程以上に加速する脈に、堪らず悶えた。 「ん……苦し……」 「大丈夫だ、すぐわけわかんかくなるから」 「……っ、それ、大丈夫って言わな……んん……っ」  長身を丸めるようにして、首筋へと顔を埋めたリューグに、体が反応する。前髪が皮膚に触れるだけでこそばゆくて、皮膚に浮かぶその血管をれろりと舐められればその舌の熱さに、濡れた感触に、これからやってくるであろう痛みに全身の神経が更に研ぎ澄まされていくのがわかった。 「ぅ、あ……っ」 「おい、まだ噛んでねーだろ。震えすぎ」 「ま、紛らわしいから……早くしろよ……」 「はいはい、急かすねえ」  こいつ、遊んでやがる。お前だってさっきからヨダレ垂らしてるだろ、と言い返したかったが、髪を掻き上げるように撫でられ、思わず反応してしまう。剥き出しになった首筋に軽くキスをされ、息が乱れた。 「……ん……っ」反対側の首を支えられ、大きく開いた口。そこから白く鋭い牙が覗いた瞬間だ、首に突き刺さる鋭い痛みに俺は、思わずリューグにしがみついていた。やつの肩を噛んで、声を殺す。まだ皮膚の浅い位置に突き刺さったままの牙。そこからドクドクと溢れ出す血を直接啜られる。 「ん、ぅ、んん……ッ!」  逃げそうになる体を掴まえられ、そのままリューグは更に深く牙を埋めてくる。先程以上に溢れ出す血に、やつは躊躇なく舌で、唇で吸出し、舐め取るのだ。 「っぅ、ふ、ぁ……ッ!」  初めてではないが、それでも、やはり慣れるようなものではない。本当に全身の血を抜かれるのではないかという恐怖にどんどん脈は加速する。  熱い、怖い、けど、それに混ざって奥から顔を出すのは気持ちいいという奇妙な感情。 「ぅ、……んん……っ」  四肢から力が抜け落ちそうになる。眠気にも似た微睡みに、その場に落ちそうになる体をリューグに抱き上げられ、傷口から溢れ出す血液を更に吸い出される。浅くなる呼吸。次第に薄れる痛み、恐らく、血を抜かれすぎて感覚が麻痺してきたのだろう。ぴくぴくと震える体に、ぼんやりしてきた頭に、流石にやばいと思って俺はリューグの肩を掴む。 「まっ、りゅ、……リューグっ、吸い……っす、ぎ……ッ」  これ以上は、まずい。本能でそう悟った俺だが、がっちりと俺の首に噛み付いたこの男はちょっとやそっとじゃ離れる気配がない。それどころか、 「っ、ぅ、あ……っ、く……っ」 「やべ、まじ止まんねえわ……っ」 「……っふ……ぅ……ッ」  ようやく口を開いたと思えばそれだ。再び音を立て首筋にしゃぶりつくリューグはそこの血が勢いなくなったのを見て、そのまま別の箇所、頸動脈付近に牙を埋めるのだ。  舐められ、噛まれ、吸い出される。辺りに広がる濃厚な血の匂いに、頭がクラクラしてくる。最早、自分の力で立っていられなかった。何度も体を抱き寄せられ、熱く抱擁でもするかのように搾取される。逃げる気力もない。  全身が寒いのに熱いという奇妙なことになり始めた頃、本格的に体が動かなくなる。抵抗もできなくなり、リューグにもたれかかる事しかできなくなる俺に流石にリューグは唇を離した。 「……イナミ?」 「っ……お、わった……?」  絞り出すように尋ねれば、俺の血で赤く染まったその唇はニヒルに歪んだ。 「……まだ」  これ以上吸血されたら、本当に、やばい。  そう思うが、動けない。真正面、近付くリューグの鼻先に震えたとき、当たり前のように重ねられる唇に一瞬、思考停止する。そして、次の瞬間には広がる鉄の味。 「っ、ん、ぅ……っこれ、ちが……んん……っ」  唇を揉むように嬲られ、舌を咥えさせられる。ちゅ、ちゅ、とわざと音を立てるように吸われれば、吸血のときとは違う、別の熱がじんわりと下腹部に広がっていくのだ。 「ぁ、ふ……」  口の中いっぱいに絡まる舌。先っぽを噛まれれば、先程よりも血の味が濃くなり、うっとりと目を細めたリューグに舌をしゃぶられ、唾液ごとを血を吸われるのだ。痛みなのか快感なのかすらもわからない、ただ強烈な刺激になけなしの理性までも呑まれそうになり、俺はただその舌を受け入れることしかできなかった。 「ん、ぅ……っふ……んん……」  気持ちいい、なんて認めたくない。それなのに、リューグの長い舌に絡み取られ、性器を愛撫するみたいに甘く噛まれてシコシコ絡められるとそれだけで脳汁が溢れ出すのだ。受け止めきれずに溢れる唾液が顎から垂れ、リューグは当たり前のようにそれを舐め取った。 「っ、は……ボーッとしてんのが余計ぽやぽやしてんな。血ィ抜かれると気持ちいいだろ?……お前は血の気多いから特に」 「おれ、そんなこと……な、い……っ」 「つうかますますお前の血、甘くなってんね。匂いもすげえ、濃くなってるし」  頭に鼻先を埋め、すん、と鳴らすリューグに顔が熱くなる。自分でも嗅がないのに、というか体勢的に無理だけども、酷く恥ずかしくなった。 「……や、嗅ぐな……っ! ……も、いいだろ……っ」 「ヤダ」  即答だ。「全然足んねえ、つか中途半端なままだと余計渇くんだよなぁ」と、言いながら甘えるように唇を押し付けてくるリューグは戯れに俺の唇を撫でる。滲んだ血を拭い、躊躇なくそれをぺろりと舐めるのだ。 「っ、ぅ、あ……っ」 「けど、これ以上血ィ抜いたらお前が干乾びるからな。……仕方ねえな、これで我慢しておいてやるよ」 「っ、な、に……んむっ」  そして、暗転。  布団に転がされたかと思いきや、覆い被さってくるリューグにキスをされる。それだけでも驚いたのに、片方の手が着物の中へと忍び込んでくるのを見て、心臓が跳ね上がりそうになった。脇腹を撫でるその手のひらはゆっくりと上へとあがってきては平らな胸元を撫でるのだ。指先で胸の突起を撫でられた瞬間、全身の血が一気に熱くなるのがわかった。 「んっ、……んん……っ」  やめろ、と言いたいのに、上顎をねっとりと嬲られれば言葉ごと呑み込まれる。ジタバタする体を押さえ付けられ、粒のような乳首を指の腹で挟んで擦られるだけで酷くムズムズしてくるのだ。  こんな、やらしい触り方。布団の衣ズレ音が余計生々しくて、混ざる吐息、リューグの手を引き剥がそうとするがやはりビクともしない。それどころか、尖り始めるそこをきゅっと摘まれただけで噛まれたときのような刺激が頭の先からつま先まで駆け抜け、跳ねそうになる。 「ぅ、あ、……っ……や、も……っ、りゅ……ぐ……だめ……っ」 「……声まで甘くなってんじゃねえの、エロガキ」 「ち、がぁ……っ、くすぐったくて……っんんぅ……っ!」  奴の下から這い出たいのに、馬乗りになって覆い被さってくるリューグに押さえつけられれば動くことすらできなくて。  こんな行為、吸血に関係ないのに。そう思うのに、薄く笑うリューグに戯れに着物の下を弄られるだけでどうにかなりそうだった。 「も、いいって、これ以上……は……っ」 「出血多量で死んじゃうかもな」 「……っ、いやだ……しにたくないぃ……」 「簡単には死なせねえよ、毎日俺の飯作ってもらわねえと困るからな」  胸元、ぷっくりと腫れたそこを甘く噛まれれば思わず声を漏らしそうになる。本気で噛まれるんじゃないかと怯えたが、リューグはそんな俺をちらりと見ただけでそのまま舌を伸ばすのだ。  赤く濡れた舌先が乳輪をぐるりと這い、そのまま硬く痼った根元から先っぽをつつ、となぞるように舐められればそれだけで熱が噴き出しそうだった。 「それ、って、どういう……っ、んん……っ」  こんなの、大したことないのに。そう思うのに、徐々に追い詰められていく。股の間に熱が集まっていって、言いようのないもどかしさに腰がピクピクと震えた。 「ぁ、待っ、リューグ……っ、やだ……っ」 「嫌じゃねえだろ、勃起させておいて何言ってんだ」 「ち、が……こ、れは……っんぅうっ!」  ツンと主張するそこ、その頭を唇を押し当てられ、その暖かさに息を飲む。やめろ、とリューグの頭を引き剥がすよりも先にその唇に挟まれたまま吸われた瞬間、頭の中は真っ白に弾けた。 「ぁ、や、ぁッ、ひぅ……っ!」 「っ、は……んん、ぅ……こんな小せえのに感じるなんてまじでエロいわ」 「か、んじて、なんか……っんう……っ!」  腰が熱い、はだけた着物の下、頭を擡げ初めていたそこをリューグに手のひらで揉まれれば息が詰まりそうになる。 「なら、これはなんだよ」と、そう、目で嫌らしく笑うリューグは大きく口を開き、乳輪ごとぱくりと俺の右胸に噛みつく。熱い口の中、別の生き物みたいに乳首に絡みつく舌に舐めまわされ、息が浅くなる。  こんなの、気持ち悪いだけなのに。それなのに、吸われながら側面から先っぽを舌で撫でられると胸が痛いほど痺れ、腰が勝手に動いてしまうのだ。 「ぁ、や、ぁっ、だめ、リューグ、や、めろ……ぉ……っ! ぁ、やだ、やだっ、くる、きちゃう……っ!」  だめだから、たのむ、やめてくれ。とジタバタするが、この男、やめるどころか人の体を捕まえて更に激しく嬲りだす。息を吐く暇もなかった。ジリジリと競り上がってくる熱に目の奥が熱くなる。ずっと堰き止めていたなにかが溢れ出す。その瞬間、声にはならなかった。  真っ白になった頭の中、甘い痺れに全身が跳ね、息が漏れた。じわりと広がる熱に、リューグにしがみついたまま俺は顔を上げることができなかった。  俺の胸から顔を上げたリューグは人の下腹部を見て笑う。 「ぅ、うう……っおれ、やめろって言った、のに……っ!」 「悪ィな、もっとしてくれって言ってんのかと思ったわ」 「この……っ!」 『伊波様、如何なさいましたか!』  この野郎、と目の前でヘラヘラ笑うこの吸血鬼男の胸を叩いた時だった。扉の外から聞こえてきたその声に、俺も、リューグも思わず静止する。  黒羽だ、なんて地獄耳なのか、俺の声に反応して駆けつけたらしい。 「な、なんでもない……っ! なんでもないから……!」  こんなところを見られたら堪ったものではない、慌てて声を上げれば、黒羽は『そうでしたか』とだけ言い、それ以上立ち入ることはなかったがバクバクと高鳴る心音は収まる気配はない。 「おい馬鹿……お前が変な声出すから……っ」 「っ、お、俺のせいかよ……お前が余計なことばっか……ぁ……っ、んんっ」  言った側から緩んだ帯の下、乱れる襟下にするりと伸びてきた手に腿を撫でられ、息を飲む。こいつ、懲りてねえ。 「……ぅ、あ……や、も、やめろって……っ、黒羽さんが、外に……っ」 「お前がでかい声出さなきゃいいんだって。……それに、腰擦りつけて何言ってんだよ、お前だってここでやめんの嫌だろ?」 「っ、ぃ、や……じゃない……」 「嘘吐け」 「っ、い、や……じゃ、な……ぁ……っんん、ぅ……っ」  閉じた内腿に滑り込む指先は、ゆっくりと付け根へと這い上がってくる。射精後、どこもかしこも過敏になっている今その触り方は余計辛い。 「じゃあやめるか?」  熱を帯びたそこに触れそうで触れないリューグに、酷く喉が乾く。顔が、熱い。目を伏せ、俺は、やつから顔を逸らした。 「……ぃ、や……っ」  声は、今にも消え入りそうなほど小さくなる。声が掠れ、それでもやつの耳にはしっかりと届いたようだ。 「エロガキ」と、弧を描いたやつの唇に、どきりと心臓が跳ねた。 「っ、ち、が……おれ、ちが、そんな……んじゃ……っ」 「今更遅えんだよ、諦めろ。つうか認めろ。そんで喜べ。……俺がこんなに大切に食ってやることなんかねえんだからな」 「な、に……言って……」  それって、と思わずリューグを見上げれば、やつはなにかを考えてるようだ。目があって、やつは俺から視線を外した。 「………………やっぱ今のナシ」 「じ、自分で言って照れるなよ……っ!」 「あーうるせえうるせえ、お前なんか俺専用肉便器食料庫ちゃんで充分だろ!」 「な、この……逆ギレかよ……?!」  ふざけんなこの、とリューグの胸倉掴もうとしたときだった。  ドゴォ!!っとものすごい音がして、辺りに黒い霧が広がる。これは、まさか。デジャヴ、と思うよりも先に、その影は現れた。 「伊波様、今何かあの無礼者の吸血鬼の声が聞こえたのですが……貴様ァアッ! 何をしてる!!」 「く、く、黒羽さん?! ちょ、また壁壊して……」 「どんだけ地獄耳だよ……っ!!」  間髪入れずに俺の上のリューグに向かって無数のクナイを飛ばす黒羽に、小さな蝙蝠へと姿を変えたリューグは逃げるようにクナイを避ける。 「クソ、あと少しだってのに……まあいいや、イナミ、次はそこの烏ちゃんと自宅待機させとけよ」 「もう次はないだろ! この……」  紫色の蝙蝠はそのまま開いたままの窓から飛んで逃げていく。そこから流れ込む生温い外気。黒羽は「逃すか!!」と窓の外へ何か色々飛ばしていたがそれも少しのことだった。  リューグが居なくなったのを確認した黒羽は窓を閉め、そして、ゆらりと俺の方へ向き直る。  ああ、まずいと思った。布団の上、乱れた着物、噛み跡。言い逃れなどできるはずがない。 「伊波様、これは一体どういうおつもりですか」 「う、そ、それはその……ええと、お礼を……しろって煩くて……」 「…………」 「……ご、ごめんなさい」  怒った黒羽の威圧に勝てるものなどいようものか。思わず布団の上に正座する俺に、黒羽は険しい顔をしたままゆっくりと膝をつく。そして、俺の前に並ぶのだ。 「伊波様……貴方は情に深く義理堅い、そこは美点でもあります。なので、できる限り貴方の意思を尊重したい、その手助けもしたい。その所存でございますが……だからといってこのように体を開こうとするのは如何なものかと」 「はい……」 「部屋に入るなというから何かと思えば、あの男に抱かせるつもりだったのですか」 「ち、違う、本当に血を吸わせるだけだったんだよ」 「以前あのような目に遭っていて尚、吸血だけで済むと思いだったのか」 「そ、それは……」 「やはり、貴方には決定的に危機感が欠如しているようだ」  お、怒ってる。めちゃくちゃ怒ってる。  全身から滲み出るどす黒い怒りがオーラみたいに滲んでる。あくまで俺のことを心配してくれてるからこそ余計頭が上がらない。  確かに、早計だった。けど、黒羽に言ったら絶対反対されるだろうし、リューグはリューグだし、一応命の恩人だったから……なんて言い訳並べたところで遅い。 「ごめんなさい……」 「伊波様、私もできることならこんなことは言いたくありませんが……これは貴方の為です。今夜からこれを着けてください」  目の前、ごとりと置かれるそれは黒い皮のような……なんだこれ?と手にとってみれば、それがあるものに似てることに気づいた。  女物の下着だ。けれど、決定的に違うのはその全面、前、恐らく男性器をすっぽりと覆うような鉛には扉のような仕組みになってるらしい、そこには鍵がついて。まさか、これは。……いや、まさか。いやいやいや。 「待って、黒羽さん、こ、これ……」 「貞操帯をご存知でしょうか」 「て、てーそーたい……?」 「はい。今の貴方には必要なものです。自分がいない間、夜間はこれをつけて眠るようにしてください」  ぴしゃりと、そう真面目な顔でそんなことを言い出す黒羽に血の気が引いた。これ、トイレするときはどうするんだ、あ、ここからおしっこ出るようになってるのか……って待て待て待て、これ尿道に刺せってことか? 「っ、や、待っ、ご、ごめんなさい、黒羽さん……っ」 「全ては貴方の貞操のためです。自分がいないときでも貴方を守ってくれるはずです。我慢してください」 「っ、ぅ、や……っ」 「毎朝自分が向かいに来たときに外しますので、昼間のことはご心配なさらず。……さあ、浴衣の裾を上げてください」  やっぱり怒ってる!  貞操帯を手にした黒羽との攻防戦の結果当たり前だが俺は負けてしまい、その日から暫く貞操帯で管理されるという地獄の夜を過ごすことになったのはまた別の話である。  今度から黒羽に秘密はしないようにしよう……。リューグ絡みは特に。  そう、学んだ夜だった。  おしまい


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