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田原摩耶
田原摩耶

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天国地獄人狼『豪華客船七日間の旅』第五話【人狼パート1】

 午後19時、レストラン内。  相変わらず豪奢な内装に比較的ラフな格好の俺たちは浮いている。  長テーブル、俺たちは九人同士で別れて向かい合うように腰を下ろす。卓上には雰囲気づくりのためか人の形をした蝋燭が用意されていて、それを見た志摩は「悪趣味」と呟いていた。  そしてその誕生日席、そこに腰を下ろしていた男は改めて全員が座ってるのを確認すると「ようやくお揃いのようだな」と笑った。 「それじゃあまず最初に流れの説明だけさせてもらうぞ。質問はその都度聞いてやるからまずは黙って俺の話を聞け」  相変わらずの絶対王政のようだ。  しかし、右も左もわからない現状頷くことしかできない。  数名不服そうなものもいるが、意義を申し立てるものはいなかった。  阿賀松は続ける。 「大まかな進行は俺がやるが、基本的には好きにやってもらって構わねえ。けど制限時間は一時間だ。一時間以内に結論を出せ、出なくてもその後処刑する人間を投票してもらうからな。もし票が同率の場合は再投票を行う。二度目の再投票でも同率だった場合は、ランダムで決められる」 「ランダムって……アンタの裁量だろ」 「ランダムの意味が分かんねえ馬鹿がいるみてえだな。……信じれねえなら思い込んでればいい。勝手にしろ。けど気をつけろよ。ゲームマスターは俺だ。俺に逆らえば無条件に敗退、その後は敗北者と同じ扱いをさせてもらうから口には気をつけろよ?」  まるでジョークでも言うかのように笑う阿賀松だが、その言葉は本気なのだろう。  突っ込んだ櫻田は、そこまで言われるとは思っていなかったようだ。嫌悪感を剥き出しにし、それでも逆らわない方が吉だと感じたようだ。「了解」と、拗ねた子供のように答えた。  一連のやり取りを見ていた縁は「流石、抜かりねえな」と笑う。それ以外はくすりともしない。ただ、裕斗はうんうんと頷いていた。 「流れとしては一時間の話し合い、その後手元のタブレットから投票してもらう。そして最も票数を集めた人間は処刑。……そして解散だな。その後の行動だが制限を設けさせてもらう。全員寄り道せず部屋に戻ること。理由は夜行動が存在する特殊役職があるからだ。部屋にいるいなかったで役職特定されるのはつまんねえだろ」 「以上だ。ここまでで質問あるやついるか?」ぐるりと辺りを見渡す阿賀松。そんな中、手が上がる。  芳川会長だ。阿賀松の顔が楽しげに歪んだ。 「おお、どうした優等生眼鏡」 「……処刑された人間はその後どうなる」 「今から負けたときの心配か?感心じゃねえか」  阿賀松の軽口に、わずかに芳川会長の眉根が寄せられる。  ヒヤヒヤしたが、阿賀松はそれ以上突っかからなかった。 「もちろん専用の部屋と飯を用意してる。詳しくは負けてからのお楽しみだ。……まあこれだけは言っといてやる。この船を降りるまで表には出てこれねえってな」  そして、阿賀松の口から出た答えに周りの空気がざわついた。そりゃそうだ。昨日もいっていたが、それではまるで――……。 「随分と穏やかではないな。それは犯行声明のようにも取れるが」  芳川会長も同じことを考えていたらしい。  芳川会長の指摘に、あくまで阿賀松は憮然とした態度で続ける。 「あくまでゲームでその罰ゲームだ。死人と話できたらつまんねえだろ。だから隔離する。……何かおかしいか?」  当たり前のようにそう返すのだ。  蝋燭の火が揺らめく。照らされた阿賀松の笑顔はいつも以上に冷たく思えた。  芳川会長は、何も言わなかった。これ以上突いたところで揚げ足を取られるだけだと判断したのか、ふん、と鼻を鳴らす。それを見て阿賀松は肩を竦めた。  そして、「質問はもうねえみたいだな」といつもと変わらない厭な笑みを浮かべてみせる。 「人狼、それと能力持ちの役職の夜間行動についてはこの話し合い後各部屋のタブレットから行うことができるように設定している。人狼どもは誰を襲撃できるか多数決で決めることができ、占い師や霊媒師、騎士は対象がいればそこから選ぶことができる。制限時間は二十四時までだ。そしてその結果は朝の七時各々タブレットに届くはずだ」 「そしてもし襲撃で死んだやつがいれば……俺がモーニングコールしてやるから楽しみにしてろよ」阿賀松なりのジョークのつもりか、笑う阿賀松に志摩は「最悪」とつぶやけば「そんなに喜ぶな」と阿賀松は厭味ったらしく返す。  そして、阿賀松は手元に置いてあった銀製の砂時計を手に取り、それを引っくり返した。 「たらたら説明するよりも実際にやってみた方が早えだろ。それじゃあ、これより一時間。……好きにしろ」  ◇ ◇ ◇  阿賀松の言葉により唐突に始まったゲーム。 「好きにしろって言ってもなぁ……なんだよ、この蝋燭」 「雰囲気作りでしょ、味わい深いねえ」  火の熱により頭が溶けていく蝋人形を見てオゲーっと顔を顰める十勝の横、縁は足を組み直す。 「おい……無駄な話をしてる場合ではないだろう。制限時間は一時間。今は手掛かりが何もない状況だ。……この場合は一人ずつ怪しいと思う人間を言っていくのが早いんじゃないか?」  そして、やはりというべきか。まとめ役を買って出たのは芳川会長だった。  単刀直入過ぎる気もするが、時間は有限だ。会長の考えは俺も同意だ。  けれど、 「ちょっと……怪しいって言われてもまだ何もわからない状態よ、それこそ危険じゃない?」  なんとなく落ち着かない様子の連理は、艷やかな黒髪を指先でくるくると弄びながら指摘する。  そして、意外なところから声が上がった。 「……そうですね、怪しい人よりも確実に白を特定した方がいいんじゃないですか?」  壱畝遥香だ。  ニコニコと人良さそうな笑みを浮かべながら、誘導好きのあの男は「この中で自分の役職言える人います?」と周りに目を向ける。  そんな壱畝に、反論するのは十勝だ。 「おい、そんなこと言ったら速攻狼に食われるんじゃねーの?危険すぎだろ」 「そうか?でも騎士がいれば……もしその人が狙われたとしても確実に守ってもらえるよな」 「ああ、なるほど……」  ……そして丸め込まれていた。  確かに、この男が仕切ってるこの状況はかなり気分が悪いが、それでも壱畝の言うことはわかる。  けれどそれはあくまでも高リスクな真似だ。  ……人狼である俺からしてみれば、この流れは悪くないのだろうが。 「それで?誰かいないんですか?確実に白って言える人。ああ、因みに俺は白ですね」 「白とか黒じゃなくて、役職で言いなよ」  志摩の指摘に、一瞬壱畝は動きを止めた。そして、変わらない笑顔を浮かべる。 「共有者。だから、もう一人の共有者の栫井君も白」 「そうだろ、栫井君」そう、同調求めるように栫井に目を向ける壱畝遥香に、名前を呼ばれた栫井は鬱陶しそうに顔をしかめた。 「……おい」 「なんで怒ってんの?こういうことは早めに言っておいて損はないだろ。ってわけで、俺と栫井君は白確定ということで」 「ねえ、そこのワカメ。本当にそうなの?違うなら違うって言った方がいいなよ」 「誰がワカメだよ。……そうだよ、そいつは共有者。これで満足か?」  半ば苛ついたように口にする栫井に、壱畝は「そういうこと」と志摩に笑いかけた。  志摩の顔に露骨に不快感が現れる。けれど、あの栫井が嘘を吐いてるように思えなかった。だって、もし壱畝が嘘吐いてるといしたら、栫井含め本物の共有者が現れ最低でも二人の人間が壱畝を嘘つきだと指摘することができるからだ。  なら、本当に栫井と壱畝は共有者ということか。 「えーと……その、本当に他にいないのかしら?共有者の人」  問いかける連理。  けれど、全員何も答えない。 「いないみたいね」と、連理は肩を竦めた。 「そりゃあそうでしょう。……というわけで、あとは他の皆さんでどうぞ」  いちいち鼻につくところは変わらない。けれど誰も言い返すことができないのだ。実際、この現状ならば栫井と壱畝は白確定ということになる。 「一先ず異論はないようだな」 「なあいちいち一人ずつ聞いて回んの面倒だしさぁ、我こそは村人だ!ってやつ名乗っていこうぜ」  芳川の言葉を遮ってそう声を上げたのは裕斗だった。  椅子の上、退屈そうに蝋人形を弄って遊んでいた裕斗は閃いたように手を上げ、そして屈託のない笑顔を浮かべてみせる。 「ちゃちゃっと挙手すりゃはえーじゃん?役職、村人の人数は四人だったろ?四人いたらそれが村人確定。こっちのが手っ取り早くね?」 「おい、何勝手に……」 「ほらせーの、村人の人手ぇ上げてー!」  狼狽える芳川会長を無視して、志摩裕斗は大きく手を上げた。それにつられ、芳川会長も手を上げる。俺も、少しだけ迷って手を上げた。  そして、静寂。俺たちはそれぞれ辺りを見渡し、そして絶句する。  四人、そう役職としての村人の人数は全部で四人だ。  けれど、今現時点で挙手している人間は……。 「えっ……」 「お、おい……待て待て、おかしいだろ」 「はははっ!こりゃ傑作だな!ひーふーみ……っ、八人!二倍じゃねえか!大漁大漁!」  青褪める仁科と五味、そして楽しそうに腹を抱えて笑う志摩裕斗。  手を上げている人間は裕斗と芳川会長……仁科、志木村、五味、安久、阿佐美……そして俺。  俺と阿佐美を抜いてもこの中に二人は偽ってる人間がいるというわけだ。 「あーあ嘘吐きばっかで気持ちいいねえ。この中から四人本当のことを言ってるやつを探せってことだろ?」 「会長は本当のこと言ってるとしても……人狼は三人だし、じゃあ残りの一人はなんだよ」 「狂信者の可能性もありますね」  上から縁、櫻田、灘。  挙手していない外野の反応は様々だ。  灘の言葉に狂信者の存在を思い出す。  そうか、狂信者がいるということか。もしかしたらこの中に……。  視線が交差する。本物の村人は自分以外が嘘つきに見えるに違いない。俺は少しでもバレないように、なるべく視線を交わさないようにすることで精一杯だった。  そんな中、膝の上のぬいぐるみを抱き抱えた江古田がおずおずと「……あの……」と今にも消え入りそうな声を上げる。 「……ここまできたら、先に役職持ちを見つけた方が早いんじゃないですか……」 「……時間かかりそうですし……どうせ確定はできないんなら消去法で選択肢潰していくべきだと思いますよ……」そう、相変わらず生気のない表情と声で告げる江古田。  それは、俺にとって天の救いにも等しかった。 「それは俺も賛成。じゃあ今村人として手を挙げなかった人たちはそれぞれ自分の役職がなんなのか言っていこうか」  そして、江古田に賛同したのは意外なことに縁方人だった。  縁自身、村人とは名乗っていなかった。それは下手したら自分で自分の首を締めるような行為ではないか。  そう危惧する俺の横、そんな縁に制止がかかる。 「方人さん、それはやめておいた方がいいんじゃないですか」 「人狼が真っ先に狙うのは役職持ちですよ、いくら騎士がいたとしても守れるのは一晩で一人。これ以上獲物を増やすのは得策ではないと思いますけど」志摩だ。志摩はあくまでいつもと変わらない調子で指摘した。  志摩も、村人だと名乗っていなかった勢の一人だ。  志摩の指摘は最もだが、志摩の言葉が俺には引っ掛かった。あくまで人狼を危険視するつもりなのか、俺が人狼だとわかっていて。他人を欺くための一演技か、どちらにせよ、何考えてるのかわからなくて志摩の言動一つ一つに神経が反応してしまう。 「……でも、黒を絞って処刑すりゃいいんだろ?短期で決着つけるなら方人さんのやり方も合ってると間違ってないと思うけど」  村人だと挙手した仁科は、人数が多い内にグレーの人間を処刑していくのがベターだという。リスクも伴うが、勝ちに行くつもりならその力技も悪くないのかもしれない。……けれどそんなに簡単に上手くいくのかすらわからない現状だ、ギャンブル過ぎる気がしないでもない。  もしかしたら仁科はさっさとこのゲームを終わらせたいのかもしれない、何となくそんな焦りを感じた。 「わざわざ強制しなくてもさ、重要そうな騎士とかは黙っておいて取り敢えず白確定として死んでも無意味なやつとか言っていけばいいんじゃない?ほら、この……何……?《狼憑き》とかなんの意味もなさそうじゃん」 「ほら、狼憑きの人、さっさと挙手」そう、安久が手を上げるジェスチャーをしたときだった。  手が二つ上がった。  そして、俺は息を飲む。  ――手を挙げたのは八木と、十勝だ。 「……あ?」 「お」  お互い顔を見合わせた十勝と八木は驚いたように目を丸くさせ、そして、八木は顔を引き攣らせる。 「おい、お前どういうつもりだ……っ!」  青褪める八木に、俺は胃の奥がきゅっとするのを感じた。  十勝、なにを考えてるんだ。十勝が人狼だと知ってる今、あまりにも危険なことをしてる十勝に俺は冷や汗が滲むのを覚えた。その場にいた全員の目が、八木と十勝に向けられる。  今にも掴みかかりそうな勢いの八木に、十勝は大袈裟に怖がったような仕草をしてみせる。 「ええと……ど、どういうつもりも何も、八木さんこそどうしたんすか?狼憑きは俺っすよ」 「そんなはずがない、俺が狼憑きだ!……こいつが人狼だ、今すぐ処刑しろ!」 「まあまあ、落ち着いて下さいよ。……現段階では僕らはなんとも言えませんからね」 「んだと……っ」  宥める志木村に、八木は更に顔を歪める。ああ、怖い。ただでさえ人相が悪いのに、今にもブチ切れそうな、というよりも既に結構ブチ切れてる八木の気迫に気圧される俺はただ見守ることしかできない。 「おい、占い師!占い師は誰だ!こいつを占え!」 「おいおい八木、占い師は今夜この話し合いが終わったあとしか占えねえって伊織も言ってただろ。だから、今のところ二人はグレーに近い白になる」 「……まあ、どちらにせよ占いの結果は人狼ってなるはずだ。どちらかが本当に人狼で、もう片方が狼憑きだとするならな」裕斗の言葉に、八木の表情が凍りつく。  ああ、なるほど、と思った。  十勝はこれを狙っていたのか、もし万が一占われて人狼が出たとしても白だと名乗れる役職を騙ることができればデカイ。 「うわ、まじか……それじゃどっちが本物かって俺から証明することできないわけか」 「……っ、クソ……十勝が黒に決まってんだろッ!下手くそな演技をしやがって……ッ!」  ……それには同意せざるを得ないが。  きっと、八木は本当に狼憑きなのだろう。十勝が人狼だと知ってるからこそ余計八木のもどかしさが伝わるが、周りから見ればまた違って写ってるのかもしれない。 「落ち着け八木。しかしそうなると、この内のどちらかを処刑すれば間違いないということか」  そんな中、ぽつりととんでもないことを言い出す芳川会長に背筋が凍りつく。  至って真面目な顔をして八木と十勝を交互に見やる芳川会長、その目を向けられた八木と十勝はぎょっとした。  そんな爆弾発言を聞き逃すわけがない。五味は、嗜めるように口を開いた。 「おい、それはリスクが高すぎねえか。二分の一の確率だ、万が一本物の狼憑きを処刑した場合……」 「占いがしやすくなるだろうな。おまけにもし違えば人狼を一匹始末できるわけだ」 「……ッ」  迷いのない芳川会長の発言に、あの五味も辟易してるようだ。 「流石サイコパス」と呟く志摩。眼鏡越し、志摩の方を睨んだ芳川会長はただ静かに「口は慎め」と制した。  そして。 「十勝か八木、どちらかを処刑する。異論があるやつはいるか?」  反論しなければ。そう思うが、突破口が見つからない。  下手な擁護は返って怪しまれてしまうだろう。  けど、このままでは……。  シン……と静まり返った店内、手が挙がる。  満身創痍、包帯と絆創膏で覆われたその手の持ち主が誰かすぐにわかった。 「異論ってわけじゃないんだけど……じゃあ、俺から一ついいかな」  緊迫した空気もいともせず、相変わらず爽やかな笑顔を浮かべる縁に芳川は少しだけ不愉快そうに「なんだ」と聞き返す。 「まあ、俺が言いたいのは投票の仕方についてなんだけど。……このまま多数決するとしてさ、人狼陣営四人の票は確実に本物の狼憑きに集まるだろうね。お互いに人狼だってわかってるだろうから」 「……何が言いたい?」 「だから、試してみようよ。人狼を含めてこの場にいる人数は十八人。九人ずつグループを分けて同数になるように投票するんだ。それでもしどちらかに票が傾いた場合、助かった方は確実に黒。それと同様に票数が動いたグループに人狼がいるということ」それなら手っ取り早いだろう、そう縁方人は手を叩いてみせた。  同率の場合は再度多数決が行われる。それでも同率の場合、処刑はランダムで行われると言っていた。  もしそれで十勝が処刑されることになれば、確かに縁の言う通り人狼陣営としては塞がなければならない。  芳川会長は納得したように頷いた。 「なるほど、それは悪くない案だ」 「待てよ、それじゃあ……」 「どちらにせよ誰か一人はこの場から消えることになっている。……諦めろ、八木」 「……冗談だろ……ッ」  取り付く島がないとはこのことなのかもしれない。青褪める八木に、あくまで芳川会長の姿勢は崩れない。  そんな中、「少しいいですか」と口を挟む人物がいた。  ――灘和真だ。 「今の縁先輩の発言は確かに合理的ではありますが、あくまでもそれは《全員が全員ちゃんと票を入れた場合》により可能なものだと思われます」 「そうだけど、それがどうかした?」 「あなた方はまるでこの二人のどちらかが人狼であると決めつけて話を進めていますがもしどちらも白の場合はどうなりますか」 「そしてあなた方自身が人狼ではないという確証もない。……これは誘導に等しい。人狼が村人たちから選択肢を奪い、仲間割れさせようとしてるようにも思えます」傍観に徹していた灘はあくまでもいつもと変わらない。無表情を貼り付けたまま、縁に視線を向ける灘に、縁は組んでいた足を下ろした。 「……だったらなに?君はせっかく纏まりかけた話を全部なかったことにして今までのこの時間を無駄にしようというわけ?」 「自分が言いたいのは一つ。この二人についてはここで結論出さないのが無難だと。……もしどちらかが人狼だった場合、この場で処刑せずとも後に本物の狼が狼憑きを襲撃して殺す可能性は高い。そして、生き残った方が人狼であるということが確定します。村人陣営には《霊能者》という特殊な役職が存在してるはずです。死者の役職を確認できる役職です。……彼がそれを確認すれば、生き残りの黒は確定になるでしょう」  わざわざこの場で処刑せずとも勝手に死ぬし占うだけ無駄だ。それならば死亡後霊能者に見てもらって黒か白かを判別し、残った方の処分を決めればいい。  そう灘はいうつもりなのだろう。灘の言葉には引っかかることがないといえば嘘になるが、恐らくこれは俺が人狼だから引っかかってるのかもしれない。  八木を殺さずに生かしておけ。そういう忠告のようにも聞こえたのだ。 「へえ」と頬杖をつく縁は何を考えてるのかわからない。けれど、その声のトーンが落ちたことに気付いた俺は内心冷や汗が滲む思いだった。  一発触発、ただでさえ普段から仲良くない人間が集まってるだけに場の空気は最悪だった。  けれど、そんな空気すら気にしないやつがいることも確かで。 「その線で行くと処刑するなら芳川会長か方人さんが無難そうだね」  そんなことを言い出す志摩に、数人が反応する。  その中でも最初に反応したのは芳川会長だった。 「……何故そうなる」 「わからないですか?仕切りたがり屋はクロが多いからですよ」 「随分と暴論だな。もしかして個人的な恨みとか入ってる?」 「入ってないといえば嘘になりますね」  縁の指摘に志摩は悪びれもせずに答えた。  そして、そのまま阿佐美に目を向ける。 「まあ俺としては全く発しないやつも黒だと思うんですけどね」 「なにか言いたいことはないの?阿佐美」気味が悪いほどまでにそれは穏やかな声だった。  全員の目が、阿佐美に向けられる。  志摩は、どういうつもりなのだろうか。阿佐美のことを人狼だとわかってて聞いているのか、それとも。 「……考え事、してたんだよ」 「へえ、じゃあその長考した結果を教えてよ。皆の反応を隅々まで黙って監視してたんだ、何も思いつかなかったってことはないだろ?……特待生さん」 「……」  志摩の挑発に、阿佐美は反応しない。ただじっと志摩の方を見ていたが、それも少しの間だ。  阿佐美は少しだけ考えるように視線を泳がせる。 「……俺の考えを言わせてもらうと、今この段階でできるのは精々グレーの人間を減らすことだと思う。方人さんも言っていたけど、同数で割り振るっていうやり方はありかな。……けど俺は投票する役者は……村人でやるのが効率的だと思う」  言葉を選ぶように続ける阿佐美に、俺も、周りも、驚いた。  だってそれは、その中にはもちろん俺も阿佐美も選択肢に入ってるわけだ。  八人の容疑者がいたとして、本人たちの票を含めて票の総数は二人偏りが出ることになる。 「な、に言ってんだよ……それじゃそもそも割れないだろ」 「無理して割る必要はない。誰がどこに入れたのかさえわかれば問題ないんだから」 「待て、でもそれじゃあ二人同数になるやつがいるってことだよな?!」 「方人さんが言うことを信じるなら必ず人狼じゃない人間に票が集まるってことでしたよね?……票は動きますよ、間違いなく」  阿佐美……何を考えてるんだ。  自殺行為に等しい。  その場を撹乱させるのが目的なのか、けれどそれはあまりにも危険すぎる。 「でも、灘もさっき言ってたろ。ちゃんと入れない人間が出てくるって」 「ああ、そうですね。……だからその場合はちゃんと入れていない人間が怪しくなります」 「……それじゃあ……」 「だからこそ、この場合誰が票を動かしたのか特定しやすくなります」  九人の内から特定するよりも、二分の一、三分の一で人狼である可能性のある人物を絞ることができる。  確かにそれは合理的なのかもしれない、もちろん村人陣営からしたらの話だ。  人狼である俺たちにとってそれは俄賛成できるものではなかった。 「他よりも票が多く入る二人のうち一人は、言い出しっぺの俺でいいですよ。それと……もう一人は」  そう、ゆっくりと阿佐美が指さしたその先にいたのは。 「芳川会長、構わないですね」 「理由を聞いてもいいか」 「貴方は村人だというのに方人さんの意見に賛同していたから。村人陣営でありながら危険を侵すような真似をするのは村人とは思えない。……人狼、或いは狂人である可能性が大きい」  芳川会長はあくまでも冷静だった。  思い返してみれば、芳川会長の発言は冷徹なものが多いが……会長が人狼ではないことを俺は知ってる。  そして、阿佐美自身がそれこそ人狼だということも。  自分の身の潔白を証明するために自ら危険な橋を渡るというのか、阿佐美は。  冷や汗が滲む。阿佐美なりの考えがあるのだろうが、それがわからない俺にとってこの空気は耐えられるものではない。  そんな中、バン、と机を叩く音が響く。……櫻田だ。 「待てよ、もし本当に会長が村人だったらどうするつもりなんだよ!」 「なら、櫻田君、会長への一票は君が入れるといいんじゃないかな」 「は?」 「……先に宣言しておくんだ。会長に入れるつもりだけど別の人間に投票すると。そうすれば会長の票が一票減って処刑を免れても人狼扱いはしないでおくよ」  芳川会長の三票から確実に動く票が一票。  そうなると、下手したら処刑されるのは阿佐美になる。 「それじゃあ、自分は死んでもいいみたいな言い方だね」 「……俺は白だよ。もし俺に票が集まるならそれでもいい。あくまでこれは票の動き方を確認するものだしね。……どちらにせよ、犠牲は付きものだから」  逆にここまで危険な橋を渡るとなると、賭けに出るつもりなのだろうか。敢えて自分の身を危険に晒すことで白だと思い込ませ、芳川会長を処刑するつもりか?  「……それで、結局僕たちはどう投票すればいいんですか……」 「そうだね、わかりやすく席で決めようか」  そして、阿佐美が提案したグループがこれだ。  仁科に投票するのは志木村、壱畝。  志木村に投票するのは、五味、連理。  五味に投票するのは、仁科、志摩。  安久に投票するのは裕斗、灘。  裕斗に投票するのは、芳川会長、安久。  芳川会長に投票するのは櫻田、阿佐美、江古田。  阿佐美に投票するのは俺、栫井、縁。  そして俺に投票するのは十勝、八木。  一通り確認した阿佐美は、「これでどうかな」と辺りの反応を伺う。 「この票から動いてたら……嫌でも誰が嘘ついてるのか同じグループの連中はわかるってことか」 「……いい目安にはなると思いますよ。……もちろん、ひねくれものがいなければの話ですけど」  なんとなく不安そうな五味に、阿佐美は静かに続けた。あくまで冷静だ。  そして、今まで黙って静観していた阿賀松が手をた叩いた。乾いた音にびっくりして顔を上げれば、そこには砂時計を手にした阿賀松が笑顔で立っていた。 「どうやら決まったようだな。……ちゃんと制限時間が守れたじゃねえの」 「それじゃ、お待ちかねの投票タイムだ」阿賀松の声はいつも以上に冷たく響く。本当に、本当にこれでいいのか。  ……阿佐美。  視線を送るが、こちらを見た阿佐美は少しだけ柔らかく笑うばかりだ。「大丈夫」そう言うかのように。  ◇ ◇ ◇  手元のタブレットを操作し、処刑する人間に票を入れる。  阿佐美の指示により、俺が投票するのは阿佐美になるわけだが……。恐らく、票が動くはずだ。まず芳川会長に入れるはずの櫻田の一票だ。  これは間違いなく阿佐美に入ることになるだろう。  それならば、と、俺は手元のタブレットを操作し、とある男の名前を選んだ。  村人誰もが二票以上を得ても処刑が決まる。それなら、それ以外の人間に入れて票を分散させ、なんとかランダム処刑に持ち込めないだろうか。そう考えた結果、俺が投票したのは役職不明の青髪の男――縁方人だった。  そして、集計が始まる。その間の時間は短かった。なにやらタブレットを操作した票をまとめた阿賀松は、顔を上げる。 「それじゃあ今夜処刑される、最も票を集めたやつだが……」  バクバクと心臓が弾む。  どうなったのかわからない。俺が誰に票を入れたのかバレたらどうしよう。なんて言おう。そんな言い訳ばかりを考えることしかできなくて。 「……阿佐美詩織」  阿賀松の声に、一瞬周りの空気が凍り付いた。  動じない阿佐美に、阿賀松は笑うように目を細める。 「それと、もう一人。……縁方人。二人とも三票で同率だな」  そう阿賀松が言ったとき、何もなかった壁にプロジェクターが映し出される。  二票得たのは仁科、志木村、裕斗、芳川会長。  一票は五味、そして俺。  そして三票は、阿佐美、縁。  一票は確実に票が動いているチームだ。五味に入れたのは仁科と志摩、俺に入れたのは十勝と八木。  そして恐らく、阿佐美の票が俺が縁に入れたのにそのままになってるのは間違いなく櫻田の票があるからだ。  十勝はともかく、五味の票から動かしたのは志摩だろう。  そして、縁に投票したのは恐らく俺と十勝と志摩だ。 「は、なるほどね。分かりやすいな、君たちは」  ざわつく空気の中、突如票を集めた縁は楽しそうに笑った。  阿佐美は何も言わない。その代わりに、ゲームマスターである阿賀松が前に出た。 「同率の場合のルールは覚えてるか?……再投票だ。ああ、そうだな。3分だけ時間をくれてやる。何か言いたいことがあるなら今のうちに言っておけ」  阿賀松の言葉に、阿佐美は「じゃあ、俺から行くね」と入れ替わるように立った。 「……そうだね、じゃあ、ここまできたら素直に言っておくよ。この場で俺を処刑するのはマイナスになるって。……俺は本当は埋毒者だよ。人狼と相打ちするために黙っていたけど、何人か俺のことを処刑したがってるみたいだから先に行っておくね。……村人にとってはここで俺を処刑してもマイナスにしかならないよ。ここで処刑しても一人道連れにできるし、もし人狼が俺を狙えば人狼を道連れにすることもできる」 「ここで言ったらもう意味ないだろうけどね」そう言う阿佐美。嘘を嘘で塗り固める行為は危険ではあるが、一見して阿佐美の言葉は筋が通ってるように聞こえる。  それは落ち着いた語り口と断言する語気の強さもあるのだろう。俺ですら、騙されそうになる。 「なるほどね、そうきたか」  そう、縁は目を伏せる。何を考えてるのだろうか。  縁の役職は不明だ。けれど村人であることは変わりない。  もしも縁が本物の埋毒者ならば気付くはずだろう。けれど。 「貴様はないのか、命乞いは」 「俺は占い師だよ」 「証明は」 「できないね。だって初日だもん」  それは諦めにも等しい言葉だった。仕方ないじゃんとでも言うかのように笑う縁。  俺が不思議だったのは、本物の埋毒者が名乗り出なかったことだ。あくまでこの場を静観するつもりなのか。  そんな中、縁は続ける。 「けど、これだけは言える。俺に票数が集まったってことは人狼陣営は俺を殺したがってるってことだよ。櫻田君、君は誰に投票した?」 「え、俺は……そこのもさもさ陰キャ野郎に……」 「じゃあ、阿佐美詩織の票から一人動いてることに間違いないよ。そして、票が動いたとすれば齋藤君か栫井君。……けどこの場合は栫井君の白ははるせ君が証明してる」 「そうなると、人狼は君だよ。齋藤君」そうこちらを振り向いた縁はにっこりと笑った。 「っ、え……」  待って、待った。今この人、なんて言った。  視線が集まる。冷や汗がぶわりと溢れ出し、指先が震え出すの必死に握りしめて堪える。 「……俺からは以上。あとは煮るなり焼くなり好きにしなよ」  ざわつく店内に、縁の声だけが静かに響いた。  ――二次投票の結果、多数決により処刑されたのは縁方人だった。  縁は何も言わず、席を立ってレストランを後にする。 「また会おうね」そんな風に手を振って。  ◇ ◇ ◇  縁処刑後。  店内は重苦しい空気に包まれていた。  ゲームだというのに、ここまで静かになるものかと思うくらいだ。  まるで本当に処刑現場でも見せられたかのような、沈黙。  そう感じるのは俺に向けられた無数の目もあるかもしれない。  いち早くこの場から逃げ出したい気持ちだった。 「おい、齋藤佑樹、アンタが人狼なのかよ」  そして、案の定突っかかってくる櫻田に俺は咄嗟に椅子から立ち上がり、逃げる。 「まっ、待ってよ、俺は……確かに縁先輩に投票したけど……ッ」 「あぁ?!」 「だ、だって……怪しかったし……」  そういうことしかできなかった。  納得行かないとでもいうかのような櫻田だったが、それを見兼ねた芳川会長が櫻田の首根っこを掴んで止める。 「票の移動についてはまた明日話し合うとするか。……それに、夜行動でまた新たにわかることもあるだろう」 「……それは……そうっすけど」  腑に落ちない櫻田だが、ちらりと阿賀松を睨む。相変わらずニヤニヤしていた阿賀松は「どうした、お嬢さん」なんて厭味を言うのだ。  ゲームマスターの目の前で問題を起こすのは面倒だと判断したらしい、渋々ではあるが櫻田は俺に向けていた矛先をおろしてくれた。 「……あの、お腹減ったんでもう帰っていいですか……」 「ああ、そうだな。解散しろ。けどこのまま真っ直ぐに部屋に戻れよ。それと、さっきも言ったが夜行動は二十四時までだ。それまでに行動しなければ何もなかったことになるからな」  そんな中、相変わらずマイペースな江古田に阿賀松は思い出したように続ける。  そんな阿賀松の言葉をきっかけに、ぞろぞろと皆が皆動き出した。 「ったく、ヒヤヒヤしたぜ……心臓に悪いんだよなぁ」 「……方人さん大丈夫かな」 「そんなに気にしなくてもあの変態のことだから喜んでるよきっと!」  それぞれ、口々にしながらレストランを後にする。  人が少なくなったレストランの中、こちらに歩いてくる影が一つ。 「齋藤」と名前を呼ばれ、顔を上げればそこには志摩がいて。 「齋藤、大丈夫だよ。……俺に任せて」  そう、肩にぽんと触れた志摩はそれだけを耳打ちし、そのままレストランを後にした。  ◇ ◇ ◇  夜、自室に戻ってきた俺はタブレットから他の人狼二人とグループ通話をすることになったのだが……。 『十勝君、なんであんなこと言ったの』 『いや〜もし占われたときのために予防線張っといた方がいいかなって思って』 『灘君のお陰でなんとか免れたけど、もしあのままだったらかなり危なかったんだからね』 『わ、わかった、悪かったって!で、でもでも、詩織だってかなり危なかったじゃん!』 「そ、そうだよ……俺もし詩織が処刑されたらどうしようかと思って……」 『……確かにそれはごめん。でもあの場ではああすることしかできなかったから……』  しゅん……とタブレットから聞こえてくる阿佐美の声が落ち込んでるのがよくわかった。  村人に徹しろと言ったのは阿佐美自身だ。それなのに、志摩に引き摺り出されたようなものだ。 『取り敢えず首の皮一枚繋がったけど、問題は明日だよ。……票のことも色々突っ込まれるだろうし、それに俺も埋毒者名乗っちゃったから本物に疑われてるはずだ』 「……ど、どうしよう……」 『けど、いくつかわかったこともある。多分、方人さんは本物の占い師だよ。だから、俺が占い師を名乗るよ。そうすれば、あの場で処刑されないために嘘を吐いたっていうこともできる。けどそうなると問題は……』 『霊能者だよなぁ……どちらにせよ明日縁方人の霊能結果出してくるだろ、霊能者が』 『……そうなると処刑される確率が高いのは俺か……ゆうき君だ』 「うーん……」  考えれば考えるほど答えが見えないドツボにハマっていくようだった。 『なんとか霊能者を潰すことができりゃいいんだけどな』 『霊能者に関しては、取り敢えず気をつけておく。……それより、今晩の襲撃相手だけど』 『一番生かしておいて危険なのって会長じゃね?』 「確かに……」  芳川会長はただの村人だと言っていたが……。 『確かに危険だけど……芳川会長の様子からしてどこか自信がある素振りが目立ったし、恐らく会長は役職持ってるよ。それも、自分が狙われても勝ち目があると思ってる。じゃなきゃあんなに表に出てこないはずだ。……恐らくハンターか、本物の埋毒者だね』 『道連れはこえーな』 「今のところ確実なのは、《狼憑き》の八木先輩に、《共有者》の壱畝遥香と栫井……それと、《占い師》の縁先輩……」 『それから、あの場で村人を名乗った会長除いたメンバーは……確か仁科先輩、志木村先輩、五味先輩、安久、裕斗君……だね。そうなると、名乗っていないメンバーは灘君、櫻田君、江古田君、志摩、連理先輩だ』 『自称村人の中の嘘つき一人当てるよりも、何も言ってないやつから選んだ方が確実だよな』 『そういうこと』と阿佐美は頷く。  けど、その五名から絞るとなると。 「志摩は……大丈夫だと思う」 『え、亮太?なんで?』 「ええと……その、説明したら長くなるんだけど……その、志摩は俺のことを人狼だと思ってるんだ」 『まじか。でもあいつ……』 『まあ、そういうことかな。疑ってて、ゆうき君を放置してるってことは狂信者の可能性も考えたけど、狂信者なら俺と十勝君が人狼だっていうことも知ってるはずだ。けど、そんな素振りは見えなかった』 『じゃあまさか本当に佑樹を庇ってるだけってこと?……おかしいだろ』 『……本来のルールならね、けどこれはあくまであっちゃんの卓だからね、なんでもありなんだよ』 『意味わかんねーな、あいつ。自分が負けるかもしんねーってのに』  それには俺も同意だ。  志摩が俺を庇うメリットはない……のか?もしかしたら志摩は人狼側の情報を俺から聞き出そうとしてる……とか?  いろいろ考えれば考えるほど疑いは出てくるが、やはりどれもこれも憶測に過ぎない。 『……じゃあ、亮太以外で狂信者がいるってことか』 『俺の考えでは……個人的に一番怪しいと思ったのは灘君かな。……あのとき方人さんに反論してくれたお陰で十勝君の処刑は免れた。普通、あの流れで止める必要あるのは人狼陣営だけだ』 「っ、な、なるほど……」 『あくまで憶測だから断定はできないけど、一先ず生かしておいていいと思う。それで、処刑するなら……』 「櫻田君、江古田君、貴音先輩……ってこと……?」 『そういうこと』と、タブレットから聞こえてくる阿佐美に声に俺は息を飲む。 『おお……すげえ、見事に親衛隊揃いだな。ビンゴなら大当たりだ』 『そうだね。……それから、櫻田君が狂信者である可能性は最も低い。……けどもし狂信者でありながら会長の味方してるとしたらなおさら……邪魔だからね、襲撃するならここが安牌かな』 『じゃあ櫻田で決定ってことで!俺はいいと思うぜ』 『ゆうき君は?……なにかあるなら全然言ってもらってもいいんだけど』 「いや……俺も異論はないかな」 『……うん、じゃ決定だね』  会話を終え、手元のタブレット襲撃先に櫻田洋介を選ぶ。  人狼の襲撃先も多数決になるようだが、三人とも櫻田を選んだだろうから大丈夫なはずだ。  そして三日目の朝、七時。  櫻田洋介は死亡した。 【二日目 裁判パート終了】


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