【総集編版】非合法ラブドラッグ①※【↑100/17,900文字/生徒会×尾張/複数/惚れ薬/尾張総受け/無理矢理】
Added 2019-01-31 14:26:59 +0000 UTC「出来たー!惚れ薬!」 科学室に響く嬉しそうな神楽の声に、暇すぎてうたた寝し掛けていた俺はびくっとなって起きる。 さっきから珍しく真剣な顔でビーカーやらなんやらをガチャガチャしてると思いきや、そんなものを作っていたのか。 「惚れ薬って……お前本当変なものばっか作るよな」 「何言ってんの~元君、男のロマンでしょ」 確かにロマンはあるけども……。そもそも本当に惚れ薬なのか?漫画の世界だけのものだと思ってるだけに、ビーカーの中でグツグツと茹で上がる神楽曰く惚れ薬を見つめ首を傾げる。 「これが惚れ薬……?」 「あっ!元君信じてないでしょ~。全く、じゃあ早速元君に飲んでもらって……」 「それ聞いて飲むやついると思うか?」 「えー?面白そうじゃない~?」 面白そうでんな危ないもん飲めるか。 沸騰し始めるそれは黒と紫が混ざったような……なんというかもう見るからに毒薬ですって感じの禍々しいオーラを放ってる。 けど頭ごなしに否定して怒らせたらこいつまじで無理矢理にでも飲ませてきそうだし……。 俺はむくれる神楽の肩をぽんと叩き、そっと撫でた。 「そんなもの飲まなくても神楽のこと嫌いじゃねえから」 「キュンっ……元きゅん……」 ちょろすぎるのはさておきその呼び方はやめろ。あと口でキュンって言うのもやめろ。 「うーんじゃあどうしよっかな」 「どうしようって、まさか」 「せっかく作ったんだから勿論飲ませなきゃ意味ないじゃん?でも俺はもう心に決めてる人がいるからな~」 後半ウインクしながら何か神楽が言ってくるが聞かなかったことにしよう。 熱視線から逃げるように窓の外を眺めたとき、不意に見覚えのあるやつを見つけた。 あれは……。 「あ、書記だ」 俺の横、ぴょこりと顔を出した神楽は俺同様歩いていた五十嵐を見つけたらしい。瞬間、その顔に凶悪な笑みが浮かぶ。 「そーだ……いいこと思いついた」 俺は知ってる。こんな顔をするやつのいいことなんてろくなものではないと。 ◇ ◇ ◇ 「おい、お前本気かよ」 「だってさー元君も見たくない?あの堅物ですかしてる書記が誰かに好き好き〜ってしてるところっ」 「確かにちょっと見たいかも……」 でも、あの五十嵐が惚れ薬でそんな風になるなんて想像つかない。 だからこそ見たいものなのかもしれないが……。 神楽の思いついたいいこととはこうだ、五十嵐に惚れ薬入りの飲み物を飲ませて反応を見てみようということらしい。 仮にも友人……なのかは知らないが、自分の知り合いを勝手に実験体にする辺りやはりこいつろくでもないな。 惚れ薬を入れたボトルを二本、五十嵐用ともしものときの増量用原液ボトルをしっかり手にして五十嵐がいた校庭へと来たのだがいざとなるとやはり道徳心が痛む。 「やっぱり、流石にこれは……」 「おーーい彩乃ちゃ~~ん!」 「って早っ!」 おまけにボトルも持っていきやがった。 帰る途中だったのだろうか、五十嵐を見つけた瞬間わざとらしい笑顔で飛んでいく神楽。 なんだか嫌な予感がしたので俺もそのあとを追いかけることにした。 「ねーねー彩乃ちゃん喉乾いてない?」 「……なんだいきなり」 「いきなりってことはないじゃん。ほら、さっきそこの自販機で一本当たっちゃってさ、誰かにプレゼントしようとしたら丁度彩乃ちゃん来るじゃん?これって彩乃ちゃんにプレゼントするしかないなーってね~~」 「なんか気持ち悪いぞお前、あと名前で呼ぶのやめろ」 「キモくないし~~も~~!書記のそういうノリ悪いところきらーい!」 「そうか奇遇だな」 そう言って神楽の横をすり抜けて歩いていく五十嵐。 よかった、なんとか回避したらしい。惚れ薬五十嵐も気になるが、ひとまず人的被害を防げたことにほっとする。 が、神楽も神楽だ。立ち去ろうとする五十嵐の腰にしがみつき全体重掛けて引き止めにかかる。 「ちょちょちょちょ~~!!待って待って!!一口くらいでいいから飲んでよ~~!!」 「……」 「か、神楽……」 お前それじゃあ自分から何か入ってますって言ってるレベルの必死っぷりだぞ……。 そんなわざとらしく泣き真似をしだす神楽に絶対零度の眼差しを向ける五十嵐。そりゃこんな顔にもなるわ。 やがて、諦めたように五十嵐は溜息を吐いた。 そして。 「いい加減にしろ、お前らみたいに暇じゃないんだよ」 「ほら、神楽コイツもそう言ってんだろ。そろそろやめないと本気で怒られるぞ」 そう、う~~っと唸る神楽を断たせようとしたとき。いきなり手を掴まれる。 へ、と顔を上げたら五十嵐と目があった。そして、俺が手にしていたボトルが奪われていたことに気付いた。 「お前からもらうくらいならこいつの飲んだ方がましだな」 なんて言って、人の断りもなく飲み始める五十嵐。 こいつ勝手に、と呆れるがそれよりも先に俺は自分が持っていたものを思い出す。 薄められていない惚れ薬の原液、それをこいつはごくごくと飲み干しやがった。 俺も神楽も凍りつく。そんで、五十嵐はというと空になったボトルを俺の腕に戻してきやがった。 「お前らに構ってる暇ないんだよ。……遊びてえなら有人に頼め。あいつ生徒会室で暇してるから」 そう、一言。濡れた唇を拭い、そう吐き捨てるように残し立ち去る五十嵐。 最後まで相変わらずの五十嵐に、残された俺と神楽は顔を見合わせた。 「なんか……フツー?でもでもっ、全部飲んじゃったよアイツ……」 「だ、大丈夫なんだろうな?」 「わ、わかんない……まさか原液全部飲むとは思わなかったし……」 「おい神楽……っ」 「わかった!わかった!一応解毒剤の方も渡しておくから怒んないで〜!」 そういうわけで、慌てて神楽は科学室へと戻ることになる。 五十嵐はというといつの間にかに姿が見えなくなっていた。 何が起きるかわからない状況だ。 念のため俺は五十嵐を探すことにする。 ◇ ◇ ◇ 学生寮には五十嵐が戻ってきていなかったのでもしかしたらと思い向かった生徒会室だったのだが、どうやら俺の予感が的中したらしい。 生徒会室前廊下。 フラフラと歩いている五十嵐を見つけた。 先程よりもその足取りは重く、なにやら落ち着きがない。キョロキョロと辺りを見渡し……何かを探してるようにすら思える。 まさか薬が効いてる……ということなのか? わからないが、声をかけようかとしたとき、生徒会室の扉が開いて政岡が出てきた。 「おい、彩乃さっきから何キョロキョロしてんだぁ?腹減ってんのか?飯なら付き合うぜ」 「そうじゃない。……ただ」 「あ?どうしたんだお前、なんか変だぞ……って、おい?!」 そう、政岡が言いかけたとき、五十嵐の身体がぐらりと傾いた。咄嗟に俺は五十嵐に駆け寄り、その身体を抱き留めた。 「五十嵐……っ」 「えっ、あ、お、おわおわおわわ尾張?!」 人の名前を噛みまくる政岡はさておき、五十嵐だ。 まさか本当に毒だったんじゃないか、それも遅効性の。 微かに赤いその顔に触れれば、触っただけでも分かるその体温の高さに慄いた。そのとき、ゆっくりと五十嵐の目がこちらを向き、伸ばした俺の手を取る。 「……やっと見つけた」 熱い手のひらに包み込まれる右手にぎょっとするのもつかの間、背中に腕が回されたかと思いきやそのまま抱き締められる。 「な……っ」 「おいっ!おいおいおいおい!彩乃テメェ……尾張になにしてんだ!離れろ!!今すぐ離れ……」 ろ、という政岡の声は続かなかった。 理由はわかった。こいつだ、この目の前の男、あろうことか抱きしめた挙げ句俺の唇を奪いやがったのだ。政岡を無視して。 「ぅ゛ッ、ん゛んん……っ?!」 一瞬何が起こったのかわからなかった。 ちゅ、ちゅ、と唇の上を這う柔らかな薄皮に包まれた唇に撫でるような口付けをされ、血の気が引いた。 こいつ、まじか、頭おかしくなったのか。青褪める。心配した俺が馬鹿みたいだと後悔してる場合ではない。 「ん゛……ぅ……っ!!」 硬い胸板をぶん殴って引き離そうとするが苦しむどころかこいつ思いっきり後頭部掴んできやがる。息苦しさのあまり口を開きそうになり、その際僅かに開いた隙間から捩じ込まれる太い舌に堪らず身じろいだ。逃げようとすればするほど咥内奥深くまで侵入してくる舌先に頭が真っ白になり、やり場のない手すらも五十嵐に握られ、そりゃもうチェックメイトだ。 「……俺の目の届かないところに行くのやめろ」 「いいな」と、濡れた舌でぺろりと俺の唇を舐める五十嵐に、俺も、政岡も暫くその場から動くことができなかった。 【非合法ラブドラッグ】 「なるほど、惚れ薬ですか。……だからこんな面白いことになってるんですね」 政岡により緊急役員招集がかかった生徒会室にて、能義はこちらを見るなり楽しげに微笑む。 ……こいつ他人事だと思って楽しんでやがる。 俺を膝の上に乗せてベタベタと身体に触れてくる五十嵐の手を払いながら俺は能義を睨み返した。 あれからなんとか五十嵐のキスから逃れたものの、この男俺から離れようとしないのだ。イライラマックスの政岡と、そんな俺達の横、床の上で正座させられる神楽の頭の上には政岡によって作り出されたたんこぶが三段ほど連なっている。 「おい神楽よぉ……さっさとこいつにその解毒剤とやら飲ませろよ。さっきから全然こいつ尾張を離そうとしねえんだけど?!」 ガン、と苛ついたように机を蹴る政岡。 そう、五十嵐は俺を抱き締めたまま離そうともしない。そのくせ表情はいつもと変わんねえし、馬鹿力だし、そんなおかげで現在に至っていた。 政岡にしこたま怒られた神楽はブチ切れる政岡を前に子犬のように震えてる。 「そ、それがぁ〜〜ええと……怒んないでね?ここに来る途中転んじゃって……」 それでね〜〜と、ゴニョゴニョ語尾を小さくする神楽に俺と政岡は青褪める。 「まっ、まさか……」 「あ〜〜でもでもっ!今俺の後輩たちに急いで作らせてるからねえ!だからそーんなに時間はかかんないと思うんだけどぉ〜〜……」 「お……お前っ、じゃあまさかそれが出来上がるまでこいつこのままってことか?!」 う、嘘だろ……冗談だと言ってくれ。あとさり気なくケツを揉むのやめろ五十嵐。 絶望する俺と政岡に対し、能義はというと普段となんら変わりない。 「まあ正直私は別に支障はありませんけどね。このままでも。彩乃は尾張さんがいたら大人しいようですし」 「俺が居たらって……」 これのどこがおかしいんだ、目ん玉腐ってんのかと問いただそうとしたときだった。 「……おい、俺以外のやつと話すな」 むっとした五十嵐は人の顎を掴んでくる。必死に首を動かして逃れようとすれば、耳を甘噛みされる。 「この……っ、今そんなこと言ってる場合じゃね……っ、ん、ぅんんっ」 耳から頬、唇へと落ちてくるキスに全身が震える。 人前だということを忘れてるかのような五十嵐の態度にもおやおやと動じない能義。そして、 「ちょっ、ちょーっと書記!元君にちゅーしちゃだめ〜〜!!おれもしたいっ!」 「あ゛ぁ?!テメェなに抜かしてんだ……じゃねえ!お前一度ならず二度までも尾張にキッ、キッキキキキスするとは!!」 「……あれ、会長勃起してる?」 「しねえわけねえだろ!!ってうるせえ!!目の前でこんなことされてシラフでいられっかよ!彩乃縛って隔離すんぞ、おい能義テメェも手伝え!!」 「えー、正直私はこのまま薬の効果切れるのを待ってても構わないと思ってるんですが」 「なんでだよ!」 「だって尾張さんがエロい事されてるの興奮するじゃありませんか」 「この下半身ガバガバ男がッ!!!」 「会長には言われたくないだろうけどね〜〜」 「おっ、お前ら……好き勝手言いやがって……んんっ、いいから、早く助……へ……っ、んんう……っ!」 ギャーギャーと騒ぐ外野を無視して俺の口の中に舌入れて遊ぶ五十嵐だったが、俺の助けに気付いたらしい。ハッとした政岡は慌てて俺を抱き抱えて引き離そうとしてくれる。 「あ゛ぁ!テメェ彩乃この……っ!尾張待ってろ!すぐに俺が……って硬え!こいつガチじゃねえか!……おい!手伝えお前ら!!」 「やれやれ……面倒ですね」 「あわわ元く〜ん!!エッチでかわい……じゃなくて!!駄目だよ書記俺もそれやりたい〜!!……あでっ!!ちょっとかいちょー今まじで殴ったでしょ!!」 もうまさにてんやわんや。ようやく五十嵐から引き離されたときには皆(主に政岡)が満身創痍になっていた。 五十嵐はというと一時的政岡のちから技により隣の部屋へと隔離された。 あいつからようやく開放されたときにはもう半裸状態だ。ヨレヨレになったシャツを着直し、俺はようやくちゃんと 腰を落ち着けさせることが出来た。 硬い男の膝の上ではない、これぞソファーの包み込むようなクッション。最高だ。泣けてくる。 「お、尾張……その、大丈夫か……」 「大丈夫なように見えるか?」 「ふふ、大分表情筋が死んでますね」 何笑ってやがんだこの野郎は。 ハラハラする政岡とは対象的に楽しそうな能義にムカつかずにはいられない。 「取り敢えず、書記は薬の効果が落ちるまで隔離だね〜」 「本当に時間で効き目切れるんだろうな」 「た……多分?」 「また多分か……?」 「わーっ!怒らないで〜俺もまだ試作段階だったからさぁ〜詳しいことはなんとも……」 「それで……これが貴方が作った惚れ薬ですか」 机の上、神楽が持ってきていた惚れ薬のボトルを手に能義は興味深そうに中を覗き込む。 「……匂いは大丈夫そうですね」 「うんっ、勿論だよぉ。飲み物に混ぜても違和感ないように無味無臭に近い状態になってるしね〜」 「はぁ……科学部潰すか」 「ちょっ、かいちょー待って待って〜!本当はこれあれだから、人助けのために作ったんだから!ね!悪いことに使うためのものじゃないんだよ〜?」 「…………」 どの口で言うのか。 突っ込む気力すらない。 「それにしても……あの五十嵐があそこまでなりふり構わないとは……少なくとも効果は確かのようですね」 「えへへ、でしょ〜??」 「おい、能義あんま褒めんじゃねえよ、こいつがまた調子に乗りやがるだろ!」 「ああ、すみません。……そうですよ会計、貴方のその知的好奇心は褒めるに値しますが今回の件はそれとこれとは別ですからね。反省するように」 「はぁ〜〜い……」 「……まあお詫びと言ってはなんですが、この残りの惚れ薬。私が責任とって処分しておきますね」 しゅんと項垂れる神楽の横、そんなことを言いながらボトルを手にしようとする能義に、政岡は慌てて「おい」とその伸ばされた手を掴んで止めた。 「おや……どうしました?」 「……処分なら俺がする」 険しい顔でそんなことを言い出す政岡に、ピクリと能義の眉が反応した。そして、薄い唇に冷ややかな笑みが浮かんだ。 「おや、会長の手を煩わせずともこのような雑務いつものように私に任せてください」 「いや、俺がやる!お前……妙なこと考えてるだろ?!」 「人聞きが悪いですね。そういう発想は自分がそのように考えるから来るんですよ。妙なことを考えてるのなら貴方の方ではありませんか、会長」 「んだと……やるってのか?」 「構いませんよ、今日こそどちらが上の立場か決着つけましょうか」 「お、おいお前ら……」 「ちょちょちょちょちょ……二人とも何やってんの?!落ち着いてよ〜〜!!」 気づけば机に乗り上がりお互いの胸ぐら掴み合う政岡と能義に俺と神楽は慌てて仲裁に入る。 と言うか俺からしてみればどちらも下心丸出しすぎてどんぐりの背比べ状態なんだが。 「……あのな……お前らが喧嘩するならこの惚れ薬は俺が持っとくよ。そんで、あとから神楽と一緒に処分する。それならいいだろ」 せっかく五十嵐隔離したことで落ち着いたと思ったのに、こんなことで喧嘩になってはどうしようもない。 そう机の上の惚れ薬ボトルを掴もうとしたとき、今度は政岡と能義に同時に止められた。 「駄目だ」 「駄目ですね」 そして睨まれる。……というかお前らそこでハモるとか本当は仲良しだろ。なんなんだ。 「駄目って……ちゃんと神楽の前で捨てるって言ってるだろ」 「信用できません。会計を懐柔させて悪用する危険性もありますしね」 「んな……っ!お、お前……能義じゃあるまいしそんなことしねーよ!」 「お、尾張……あのな、俺はお前のことを一ミリも疑っていないんだがこのド変態野郎が何しでかすかわかんねえだろ?だからお前に危ない橋を渡らせたくないんだよ俺は……わかってくれ尾張……っ」 「ぅ……く……っ」 なんなんだこいつら。 いい加減にしろと言いたいところだが、このままでは話は平行線だ。 おまけに短気の筋肉馬鹿しかいねえし……どうしたものかと思案した矢先だった。 何かを思いついたように能義は手を叩いた。 「ではこうしましょう。……今ここでこの薬を尾張さんに飲んでもらうんですよ。そうすれば薬も有効活用かつ確実に処分することが可能ですし尾張さんの身に何かがあっても私達が止めれますから安心できますでしょう」 「一石二鳥どころか三鳥ですね」と笑う能義に世界が凍り付いた。 「っ、な、何……言ってんだよ……冗談だろ?!それなら皆一緒に便所に行って流したの見りゃいいだろ!」 「だ、だけど勿体ねえじゃねえか……」 「政岡?!お前もまさか、こいつの意見に賛成なのか……?!」 「いやだって、このメンツならお前しかいねえだろ……一番まともだし」 うんうんと隣で頷く神楽。 待て、明らかに流れがおかしい。さっきまで仲間と思ってた相手がいきなり凶器向けてきたような恐怖に血の気が引く。 「悪いけど、付き合いきれないな。……そんなことなら俺は帰らせてもらうから」 嫌な予感がしていち早くその場から帰ろうとするが、能義に羽交い締めにされた。 「いけませんよ、尾張さん」 「っ、離せ……おいっ!」 「大丈夫です。ただ……五十嵐のようになるだけではありませんか。私たちも貴方になら大歓迎ですよ」 なにが、と聞くことすらできなかった。 「会長」と能義が呼んだとき、ボトルを手にした政岡がいて。 「ま……っ、政岡……冗談だよな……?」 「……尾張、大丈夫だ。もしものときは俺がなんとかしてやるから」 もしもってなんだよ!怖すぎるわ! 「だから、我慢してくれ」なんて掠れた声、申し訳なさそうな顔で、そのくせその目に獣じみた凶暴さを滲ませる政岡に血の気が引く。 俺はこの男が根っからの善人ではないことを知ってたはずだ。けれど少なからず俺に対しては優しい政岡を信じていた。いたかった。が、目の前にいるこいつは好奇心に完全に溺れてる。 その手に握られた惚れ薬に、絶対飲むものかと唇を硬く閉じる。が、鼻を摘まれ、思わず硬直した。口を閉じてるところを鼻を塞がれれば呼吸ができない。なんとしてでも俺の口を開かされるつもりらしい。 限界まで堪えようとするが、俺も人間である。小学生の頃プールの中で誰か一番長く息止めれるかと競争して優勝したこともあったが、前とこれでは状況から違う。 「……っ、は……」 限界がきて、思わず口を開いたときだった。ボトルのキャップを開き、中身を口に含んだ政岡は俺の唇をなぞり、そしてそっと唇を重ねてきた。 瞬間、ジュースの味が広がる。舌とともに流し込まれる液体は無防備に開いた喉奥、そして体の奥まで浸透していく。 しまった、飲んでしまった。そう思ったときにはもう遅い。政岡の口移しにより受け止めきれなかったジュースは口から零れ制服の襟を濡らす。空になったボトルを捨て、愕然とする俺の唇を親指で拭おうとする政岡。その指に、全身が硬直した。 「……お、まえら……よくも……っ」 「どうですか?惚れてきそうです?」 「っ、そんなわけ……」 あるわけないだろ。と、能義を睨みつけようとしたとき、胸の奥がじわりと熱くなる。何もしてないのにバクバクとうるさくなる心臓の音に、ドッと嫌な汗が滲んできた。 なんだ、これ。 ……嘘だろ。 「……尾張?」 心配そうに覗き込んでくる政岡と目があった瞬間、身体が震えた。咄嗟に俺は「触るな」とやつの胸板を押し返して離れようとするが、力が入らない。 なんか、何かおかしい。五十嵐はほぼ原液の状態で全然平気そうだったのに、なんで、これ、惚れ薬のせいなのか? わからない、わからないが、わからないからこそ余計不安になった。 そんな中、無言で三人が目配せし合っていたなんて……そのときの俺は気づけなかった。気づく由もなかった。 コノヤロウだとか、よくもお前とか、言いたいことは山ほどあった。 けれど、内臓から焼かれるような熱が全身に広がって、まともに立ってられない。 なんだこれ、惚れ薬というかこれは……。 「っ、く……」 「尾張、大丈夫かっ」 「大丈夫なわけ……あるか」 誰のせいだと思ってるんだと言ってやりたかったが、政岡の顔を見てると何も言えなくなる。頭が麻痺してるっつーか、モヤがかったようなそんな雲の上みたいな気分の中、俺は触れてくる政岡の手を振り払った。 「……っ、触るな」 「尾張……」 「おや、一人でどちらへ?」 「遊びはもう済んだだろ。……俺は、帰らせてもらう」 「そんな調子でですか」 生徒会室を出ようとしたとき、やってきた能義が目の前に立ちふさがる。 咄嗟にたじろぐが、やつが俺の肩を掴む方が早かった。 「……具合が収まるまでここで少し休んだ方がいいのではありませんか?」 「っ、誰のせいだと……」 「ええ、私達のせいですかね」 悪びれもせずそんなことをにっこにこ笑いながら言う能義に、神楽も呆れた顔して「達って」と突っ込んだ。正直お前は元凶なので間違いないがな。 「ほら、どうぞ腰を落ち着かせてください。……それともなにか?ここにいるのが不安と。誰かに惚れてしまいそうで?」 「……っそんなこと、は」 「なら問題ないではありませんか」 ――大アリだ。 下心具現化したような連中が揃いも揃ってるこの状況で何言ってんだ。けどそれを口にすると自意識過剰だと笑われてしまいそうで余計嫌だった。 きっと能義はそれをわかっててわざとこんな煽り方をしてきてるのだろう、本当、嫌なやつだ。 「……おい能義、尾張にあんま無理強いしてんじゃねえよ。……つか帰りてーなら俺が送るし」 俺と能義が座る座らない帰る帰らないでやりあってるときだ。 俺を庇うように仲裁に入ってくる政岡にぎょっとする。普段ならば助け舟と思うが、今この状況からするにこれは。 「うわ、かいちょーそれってさぁ……うわ〜〜露骨過ぎて怖〜」 「な……っ何言ってんだ!俺は……!」 「尾張さん、送り狼がああ言ってますが……どうしますか?ここなら、あの狼が何しようとしても私達がお守りすることできますが」 「誰が狼だっ!!お前らだって人のこと言えねーだろ!!」 「元君やめときなよ〜かいちょーってすんごいしつこいからさ〜」 どうやら能義と神楽も俺と同じ思考らしい。 俺からしてみればお前らが言うな状態なのだが、ただでさえ頭がガンガン揺れそうなところを両サイドでギャーギャーやられて余計痛くなってくる。 「お、尾張……違うからな、こいつらが好き勝手言ってるだけで……俺は……」 「え〜?書記にキスされてる元君で勃起してた人が言うとなーんの説得力もないんですけど〜?」 「うぐ……っ!」 神楽に指摘されぐうの音も出ない政岡。現在進行形で勃起してやがるそいつの下半身を見てしまい、喉が焼け付くように乾く。……本当、なんなんだこいつは。変態か。知ってるけども。 「お、尾張……」 縋るように見てくる政岡。そんな顔をする前にその前のブツをどうにかしてくれ。 視界に入れるのも嫌で、俺は顔ごとやつから逸した。 「……っ、最低だな」 「お、尾張……!!」 「フフ、これでは惚れ薬どころか嫌われ薬ですね」 うまいことを言ってるつもりか知らないが全然うまくないからな、能義。 ドン引きもドン引き、さっさとこの品の欠片もない空間から立ち去りたくて背中を向けたとき。 背後に嫌に暖かい感触が覆いかぶさってくる。鼻腔を刺激するのは甘い香水。――神楽だ。 「かわいそーな元君、俺は元君のかわいそーなところみても興奮なんかしないからね〜ほら、勃起してないでしょ〜?」 「っ、何、言って……っおいっ!離れろって……!」 抱き締めるように背中に密着してくる神楽にぎょっとするのもつかの間。お尻の辺りにグリグリと押し付けられる下腹部に心臓が飛び跳ねる。 逃れようと藻掻くが、腰の前に回されたしっかりと俺の腰を抱いて離れない。 クソ、こういうときだけなんで力強いんだよ……いや、俺の力が出てないのか? 「まったく……会計、貴方という方は」 仕方ないですね、と言いたげな能義。 やれやれじゃねえんだよ、お前も助けろ。 「俺ねえ、思うんだけどさぁかいちょーが本当に元君のこと純粋に好きって言うなら興奮しないと思うんだよね〜そういうもんでしょ?」 「なに言ってんだ、この……」 「だーかーら、元君のエッチなところみても我慢できるなら信じれるかな〜?」 「ふ、ふざけ……っんんぅ……」 ちゅ、とうなじにキスをされたかと思えばそのまま舐められ、瞬間頭の中に広がる奇妙な熱に全身がぶるりと震えた。 熱い、舌の感触が生々しくて、逃れようとする俺の背中にさらにぴったりとくっついてきた神楽はそのままピチャピチャと耳の裏を舐めてきやがる。 「ぅ、や、め……ろ……っ」 「……っ、お、尾張……っ!」 「……ふふ、貴方は本当いい趣味してますね」 「……ん……ふくかいちょーほどじゃないけどね」 「ッふ……、ぅ、この……ッ」 どさくさに紛れて胸を揉むな。腹を触るな。服を脱がそうとするな。変な触り方もするな。 肘鉄でも食らわせてなんとか引っ剥がそうとするが、分かってて俺の腕を後ろ手に拘束する神楽に全身が強張った。 本気か、こいつ。 政岡お前も見てんじゃねえよ、助けろよ、そう思う反面人の恥態見て勃起するようなやつに素直に助けを求められず、回らない頭で必死に逃げ道を探す。 けれど、目の前に現れたそいつにより残された退路を断たれた。 「おや、尾張さん……貴方もしかして」 そう言いながら、俺の顔を覗き込む能義はブレザーの裾の下に手を入れ、隠れていたそこにそっと指を這わせる。 いつの間にかに血流が集まり、スラックスの下で張り詰めていたそこをつぅっとなぞられればそれだけで腰が揺れた。腰を引こうとすれば背後の神楽にぶつかり、血の気が引いた。 「……薬、効いてますね?」 長い睫毛で縁取られた瞳は俺を見て嗤う。 その笑みに、含んだような言葉に、内側から嬲られるような感覚が駆け抜けた。 「……っ、く……ぅ……」 「あはっ、そーなの?元君、本当はもうドッキドキなの〜?」 「期待してるんだ」と嬉しそうに笑う神楽。その手は脇腹からゆっくりと胸元へと伸び、鼓動を確認するように触れてくるその手に思わず体を攀じる。 「……っ、ちが」 「違わないでしょう。スラックス越しでも分かるくらい勃起してるじゃありませんか」 「誰に惚れちゃったのかな〜?俺?ね〜元君俺はどう?とくんとくんってしてるけどもしかして俺のこと惚れちゃった〜?」 「っ、誰が、お前なんか……」 「えー?本当にぃ?……じゃあ、確かめちゃおっかな」 え、と思ったときには目の前に神楽の顔があった。 顎を掴まれ、深く唇を重ねられる。 咄嗟に唇を一文字に結び、顔を逸らそうとすれば神楽は唇の端から頬を舐め始めた。 「っ、く……ふ……っ」 辿るように再度唇に触れたとき、親指を捩じ込まれて大きく口を開かされる。噛んでやろうと思うのに、それよりも先に神楽の舌がぬるりと入ってきて全身が跳ねた。 歯から上顎、口の中を縦横無尽に蠢く舌に舐められる。こそばゆいなんてものではない。意思を持って動く肉が入ってる感触はただ気持ち悪い。 気持ち悪い、はずなのに。 「っ、う、んん……っ!」 「っ……はぁ、元君の口の中……っん、……熱すぎでしょ……っ」 「ベロも甘くて、プリプリしてて……おいしそー……」ぐちゅぐちゅと品のない音を立て、粘膜を愛撫する神楽は吐息混じり、うわ言のように恐ろしいことを言い出す。 こいつ、好き勝手いいやがって。 文句言ってやりたいのに、舌を絡み取られれば完全に神楽のペースに持ってかれる。それに、クソ、悔しいけど……こいつのキスはまじで気持ちいい。伊達に遊んでねえんだろうけど、それが余計癪だった。 頭の中がぽかぽかして、四肢に力が入らない。びくびくと震える下腹部に、下着の中でぬるりとした感触を感じそれが余計嫌になったとき。 ようやく神楽の唇が離れた。 とろりと溢れる唾液を啜ることもできず、唖然とする俺に能義はうっとりと目を細める。 「おや……会計とのキス、随分と気持ち良さそうではありませんか。もしかして会計に惚れたんですか?」 「っ、は……んな、わけ」 「では私とも試してくださいますか」 どうしてそうなる。という突っ込みはオール無視。わかっていた、わかっていたけれど。 開いたままの口を塞がれる。薄く長い舌にズッと音を立て入ってきた。口いっぱいに広がる肉に全身が硬直した。 呼吸が出来ない。鼻呼吸の仕方も一瞬わからなくなって、それ以上に舌の根から舌の先っぽまで絡め取られれば背筋に甘い刺激が走る。 「っん゛、ぅ゛、んんっ」 ヂュルルル!と音を立て、舌の先っぽごと唾液を啜られれば何も考えられなくなった。思わず足をバタつかせ、能義の胸を何度も叩くが、固定された顎は逃れるどころかより一層執拗に舌を絡み取られる。 まじで食われそうなキスに頭が真っ白になり、突き飛ばすつもりだった手でやつにしがみついてしまう。 「あはっ、ちょっとふくかいちょーってば元君ちょー嫌がってるじゃん」 「っふ……何言ってるんですか、嫌よ嫌よもですよ」 なんて、好き勝手言いながら舌を抜いた能義。 ようやく新鮮な空気が肺に入ってきて、乱れた呼吸を整えようと肩で息をしたときだった。横からぬっと伸びてきた手に体を抱き寄せられる。 「……っ!」 ……政岡だ。 神楽と能義の間から強引に救出されたのは助かったが、政岡の様子がおかしい。 「あれ、かいちょーどうしたのぉ?……もしかして、もう我慢できないの?」 「っ、……本当に貴方は我慢という言葉を知らないですね。……それとも、惚れ薬の効果でしょうか」 「……っるせえ!」 赤い顔、額に青筋を浮かべた政岡は二人を睨み、そして俺を抱いたままソファーへと向かう。 「ま、さおか……?」 助けてくれたはずなのに、何か、様子がおかしい。 不審に思った矢先だった、広いソファーのクッションの上。思いっきり押し倒された。 大きく揺れる視界。こちらを見下ろす政岡の肩越しに天井が映り込む。そして、その目は血走っていた。 嫌の予感。というか、デジャヴ。 「っ、尾張……」 何かを我慢するような、歪んだ表情に全身が凍り付く。ネクタイを乱暴に引き抜いた政岡の目に滲むのはいつもと違う、剥き出しになった熱。 「……っ、待っ……んんッ!」 待ってくれ、という言葉すら飲み込まれる。両頬を鷲掴むように上を向かされ、食われる。ああ、そうだ。これは捕食だ。 噛み付くように食い込む歯に、隈なく這わされる太く熱い舌。何度も角度を変えてはより深く舌をねじ込ませようとする政岡に余裕なんてなかった。 「ん゛っ、ぅ、うッ!」 「っ、は……ん、尾張……ッ尾張、クソ……っ可愛い……っ!」 覆いかぶさってくる政岡はただでさえ図体でかいのに俺をガッチリ抱いて離さない。潰される、というか、なんだこれ。いつもの政岡じゃない。理性の欠片もない性急な動作は獣じみていて、そこまで考えて俺はこいつが口移しで俺に惚れ薬を飲ませてきたことを思い出す。 まさか、まさか、まさかこいつにまで惚れ薬の効果入ったとかそういうんじゃないだろうな。 「っ、まっ、て、まさお……っ、んぐ、ぅ……ふ……ッ!」 唾液を流し込まれ、口の中を舐られる。気持ちいいなんてもんじゃない。このまま牙を突き立てられて咀嚼されるんじゃないかって勢いに気圧され、文字通り抵抗することもままならない。おまけに重い。 「うっわ容赦なー……」 「余程溜まってたんでしょうね。……こうなった会長はしつこいですよ」 お前らはなに呑気に傍観してるんだ、助けろよ。 なんて、政岡の胸をどんどん殴ろうかとしたとき、思いっきり手首を掴まれ、頭の上で固定された。そして。 「ん゛っ、ん゛んぅ……ッぐぅ……!!」 もう口の中の唾液が誰のものかもわかんねーぐらいどろどろになった口の中、溢れる唾液を舐め取られ、舌を思いっきり吸われる。ぬるぬると絡みついてくる太い舌に扱かれ、先っぽを吸われ、口の周りべろべろに濡れるのも拭えない。盛りついた犬に勃起チンポ押し付けられながら口の中舐めまくられてそれでも頑張れというのか、神は。息苦しさに、頭が麻痺して、目が回る。指先すら力が入らなくて、頭に血が登っていくのがわかった。 「ちょ、会長っ、元君死んじゃうっ、窒息死するから!」 「会計、こうなったら私達の声も聞こえませんよ。落ち着くまで放っておきますか」 「いや……この状況で放っておけるふくかいちょーってやっぱすげーわ」 感心してる場合か。 殺意すら覚えたが、それもすぐに政岡の大きな手のひらに身体を弄られ、思考が乱れる。 ようやく離れた唇はキスされすぎて腫れた唇に何度もキスを落とし、そして、頬を舐めた。 「ふ、ぅ……うう……っ!」 頬から顎先、首筋へと落ちていく舌はべろりと舐め、そしてじゃれつくように甘く噛み付くのだ。 ゴツゴツとした指が、胸元へと伸びる。首筋へと顔を埋め、鼻先を押し付けてくる政岡にその前髪のこそばゆさに吐息の気持ち悪さにわけわかんなくなって全身が緊張した。 「っは、甘ぇ……汗も、唾液も、匂いも……全部甘え……っお前どうなってんだよ、なんだよ……お前の身体……っ」 「っ、何、言ってんだよ……お前、おかし……って……まじで……っ!」 「……おかしくねえよ」 シャツを引っ張られ、大きく開かれる襟。引きちぎる勢いで大きく胸元を曝され、血の気が引いた。 「や、めろぉ……っ、この、腕力馬鹿……ッ!!」 シャツ越しに胸を掴まれ、揉まれてぎょっとする。 咄嗟にやつの腕を引っ張って剥がそうとするが、こんの馬鹿力まじで力だけは強い。 「っ、……尾張……っ」 「な、や、めろ……っ!どこ、触って……」 「……っ、お前、なんだよまじで……こんな薄着ばっかしやがって……前開けやがって、チラチラエロすぎんだよ……っ!」 「意味わかんね……っ、おい、やめ、……ッ!」 噛み付くように胸元に顔を埋めた政岡に、次の瞬間電流が流れたみたいに身体が震えた。 「っ、ん、ぅ……ッ!!」 ぬるりとした舌が触れてる。いつの間にかに勃起したそこを舌の先っぽで嬲られる。ほじくり返され、更に凝るそこを噛まれ、思いっきり吸われたらそれだけで腰がびくびくと震え、頭の中が真っ白になった。 「っ、く……ヒッ、ィ……ッ!」 噛み締めた奥歯から漏れる息。乳輪ごと口に含まれ、吸い出されたそこをコリコリと舌で刺激されればそれだけで胸の奥が熱くなり、わけがわからなくなる。 片方の胸が寂しくなったとき、政岡の太い指でそこを抓られ、思わず声が出そうになった。 「っ、ん、は……ックソ……っ堪んねえ……お前の胸……なんでこんなでかいくせに乳首は可愛いんだよ……っ!」 「る……せぇ……、っ、まじ、バカじゃね……の……っ!」 普段は言わねえようなこっ恥ずかしいことも言いやがるこの男に俺はもう恥ずかしいどころではなかった。 向かい側のソファーには足を組んで見守る二人がお茶とジュース片手に傍観してるではないか。というかさり気なく自分らの分の飲み物用意してんじゃねえ助けろ。 「……はぁー……嫌がってる元君めっちゃ可愛い〜……会長がいなけりゃなぁ」 「混ぜてもらえばいいじゃないですか」 「やだよ、今のかいちょー『邪魔すんな』って絶対殴り殺してくるハマり方してるじゃんあれ〜」 「独占欲強いですからね」 「ごちゃごちゃ言ってねえで、助け……っく、ぅ……ひ……ィ……ッ!」 言い掛けて、指の腹同士で挟んだ乳首を擦られ、情けない声が漏れる。仰け反る身体。痛いほど張り詰めた下腹部、その股の間に突っ込まれた膝の頭に下腹部を押さえられる。 瞬間、体いっぱいに広がる熱。そして、目眩。 「……なぁ、俺以外のやつに助け求めんなよ尾張……っ」 「っ、待て、嘘だろ……っ」 テント張ったそこに伸びる政岡の手に全身が強張った。手の甲で撫でられ、息を飲む。顔を逸らそうとすれば正面を向かされ、真正面から見つめられるのだ。 「なぁ尾張……苦しいんだろ、ここ。……俺もだ、俺も、お前見てるだけですっげぇ苦しい……どーにかなりそうだよ」 「……っま、さおか」 言いながら、俺の頬を撫でる政岡。その片方の手で自分のベルトに手を掛けるやつに、血の気が引いた。 それ以上に、高鳴る心臓の音に、どうにかなりそうになって。 息ができない。恐怖というよりも、未知の感覚だった。 今にも爆発しそうな爆弾みてーな心臓に、アホみたいに熱くなった体に、政岡の熱に、食われる。 まるで自分の体じゃないみたいな、乖離感。それなのに感じる熱も快感も不安も全部俺のもので。 頭が混乱する。 俺は、俺は……。 「……おわ、り」 ほんの一瞬のことだった。 俺の顔を見詰めていた政岡の表情が凍り付いた。 その一瞬、政岡の動きが止まった。 助かったが、どうしたのか、と思った瞬間。自分の頬が濡れていることに気付いた。汗でもない、これは……なんだ? そのとき。 政岡が、飛び跳ねるように俺から離れた。そして、先程までの勢いはどこに行ったのか真っ青になった政岡は顔を押さえた。 「ぁ……あ、お、尾張……?尾張、なんで、え……っ?あ、お、俺……っ」 「あーあ、会長、なに尾張さんのこと泣かせてるんですか」 「かいちょーサイテー!」 「俺はっ、ちが、ぁ……あれ、俺……何やって……」 様子がおかしい。 まるで殺人でも犯したかのように動揺する政岡は押し倒されたままになってた俺の頭からつま先まで見て、そしてまた更に青褪める。 よろよろと立ち上がった政岡はまるで夢から覚めたような顔をしていて、そして。 「う……うおおお!!!」 「あっ、ちょ、かいちょ……」 ドドドと騒がしい足音を立て生徒会室から飛び出していく政岡に俺も二人も唖然としていた。 なんなんだ、薬が切れたのか?それはそれでありがたいが、普通この状況で置いていくかよと突っ込まざる得ない俺もいた。 一まずは助かった、が。 「全く……肝心なところでツメが甘いというか……ねえ、尾張さん」 ……前言撤回、全然助かってなかった。 バクバクと高鳴る心臓を抑えながらゆっくりと起き上がれば、当たり前のように隣に座ってくる能義に顎の下を撫でられる。 こそばゆい、けど、正直気持ちいい。 これが犬の気持ちか。屈辱的なことには変わりないが、抵抗する気力もなかった。 「……もう大丈夫ですよ、怖いお兄さんはどっかへ行きましたので」 中途半端に食い散らかされ、火を付けられた体だけが燻ってる。……頭もふわふわする。なんだこれ。 揺れる視界。すぐ目の前の能義からはふわりといい匂いがして、更に現実感が薄れていくのだ。 「っ……能義……」 「尾張さん?」 夢を見てるようだった。俺は、目の前の赤い唇を見詰めていた。形がよく艷やかな、綺麗な唇。 それから先はよく覚えていない。 「え」と、神楽が間抜けな声を上げたのだけは覚えてる。そしていつもニコニコ笑っているだけの能義の表情が凍り付いたのも。そんで、やつの睫毛はやっぱり長いもんだと。それだけ覚えてた。 「っ、ん……」 柔らかそうだと思った能義の唇はやはり柔らかかった。 自身の中の熱を発散させるため、わけもわからず目の前の唇に自分の唇を押し付ける。こうすることでなにが変わるのかもわからなかったが、回らない頭の中、無性にそうしたくなったのだけはわかった。 そっと唇を離したとき、凍りついていた能義の顔に笑みが浮かぶ。 「っ、は……はは……これはこれは……」 「えっ?!まさかのそっち?!ふくかいちょーなの?!てか今効くの?!」 「……いけない方ですね」 「ふくかいちょーも脱ぐの早くない?!」 血相変えた神楽はぶんぶんと手を振り、そして俺と能義を強引に引き離す。 いつの間にかに上のシャツを脱いでいた能義は「なんですか」と不服そうな顔をした。 「待って待って!だってそこでふくかいちょーなのおかしくない?!」 「何もおかしくありませんよ。ねえ尾張さん。……貴方は私としたかったんでしょう。ええ、構いませんよ。貴方の望みならいつでもどこでもどんなプレイでも付き合いましょう」 「最ッ低なこと言ってるし……元君、しっかりして!それならまだかいちょーのがマシだから!」 神楽が「ねえ」とこちらを振り返ったとき、俺はその髪を掴んで唇を重ねた。理由なんて覚えてない。多分、神楽の大きな声がうるさくて、あと唇が柔そうだったから。そんなことをぼんやりと考えながらちゅっと唇を重ねた。 「っふ……んぅ……っ」 押し当てるようなキスをすれば、開いた唇から真っ赤な舌が現れる。きた、と思ったときには舌を絡め取られ、そのまま後頭部を掴まれ、舌の根までずっぽし絡めらた。 ぢゅ、ぐぢゅ、と粘膜同士が擦れる音が響く。気持ちいい、頭の中を掻き回すような熱い舌の感覚にただ身を委ねてると、不意にちゅぽんと舌が引き抜かれた。 「……これって和姦だよね」 「会計貴方切り替え早すぎますよ」 「元君からちゅーなんて……うわ、どーしよ、ね、元君もっかい今のして……?」 ぼんやりとした頭の中、神楽の声が、熱が心地良い。 優しく背中を撫でられたとき、張り詰めていた糸が切れていたように眠気に襲われた。 目の前がぐらぐらと揺れる。 「……元君?」 そう俺の名前を呼ぶ柔らかな声が遠くなった。 違う、遠退いたのは神楽の方じゃなくて、寧ろ――。 「……すー……」 「え?!うそ元君寝てる?!」 「なるほど……これも惚れ薬の副作用と?」 「……もー俺わかんな〜い……」 「まあいいでしょう。寝ててもやることはやれるので」 「うわ、最っ低だぁ……けどまぁ、こんな状況で眠る元君も悪いよねぇ〜ま、いいか」 「「合意だし(ですし)ね」」 【next to continue...】