ガタンッ!! 坂津栞里(さかつしおり)は体が揺れる感覚と何かに体がぶつかった感覚で目が覚めた。 目を開けているはずなのに視界が真っ暗になっている。 かろうじて一直線になった光が漏れていて、なんとか自分の体をうっすらと確認できる状態である。 (えっ?何で?私……どうしたんだっけ?) 見覚えのない光景に栞里は自分の行動を思い出してみる。 (確か……今日は期末テストで学校が早めに終わったから家に帰ったんだよね……そして宅急便が来たから荷物を受け取って……) 冷静に自分がこうなる前の記憶を思い出していく栞里。 しかし…… (あれ……なんでだろう……?) 宅配業者の記憶が曖昧だ。 やたらと大きい箱を持っていたこととサインを求められたことは覚えているが、それ以外が思い出せない。 いくら記憶の中から思い出そうとしても、具体的かな思い出せないのである。 (普段ならそんなことないのに……) 落ち着いて考えても栞里の記憶の一部がすっぽり抜け落ちているのだ。 それに頭も車酔いしたようにクラクラする。 目を開けているのに視界が真っ暗なことも気になる。 あれこれ考えているうちに何か近くにヒントがないかと栞里はその場から立ち上がろうとした。 ギシッ!! 立ち上がろうとする足に何かが擦れる音がしてから、力が掛かってくる。 一瞬、驚いていて自分の足を見ても、暗闇の中でよく見えないが、両足は微動だにしない。 (まさか……縛られている……!?) そう考えると痛みと同時に押さえつけられるような感触も感じてくる。 暗闇に目が少しずつ慣れてきたこともあり、漏れている光で下半身を確認すると、膝を折り畳まれた状態で足に何か細いものが巻き付いていたことがわかる。 体勢としては自分は正座をした状態で縛られているようだ。 気になって手を動かしてみる。 カチャカチャ……カチャカチャ…… 手の方は何か金属が擦れるような音がする。 後ろ手にされ、手首に何か柔らかい輪っかのようなものが巻き付いているようだった。 (何で……私が……縛られているの…?) 今まで陥ったことがない状況を把握した栞里は顔から血の気が引いていくことがわかった。 とにかく今は自分の置かれている状況を明らかにしたくてたまらない。 正座させられ、後ろ手に縛られている状況までは理解することが出来たものの、なぜ自分がこのようなことになっているのか考えるものの、心当たりは浮かばない。 (何よこれ!?いやああああ!!!) 自分の置かれている状況がわかり、恐怖や焦りから思わず声を上げる栞里。 「んむうううっ……!!」 栞里の口から発せられたのはくぐもった小さな呻き声。 大声で叫んだ筈なのに言葉にならない小さな呻き声に変換された栞里は自分の口まで塞がれていることを理解した。 「んんっ……んむっ……」 顔に意識を集中させると、顔の下半分に何かが貼り付いて覆われている感じがした。 「んううっ……んぶぅっ……」 それでいて、口を開こうとするが何か押さえつけられたような感覚と口の中に何かが入っているようだ。 (口まで塞がれてる……これじゃ……喋れないよぉ……) 縛られて口も塞がれている状況から考えられるのは誘拐されたと考えるのが妥当だろう。 とはいえ何のために? そもそもここは一体何処なのだろう? 恐怖に怯えながらも栞里は試しに体を思い切り左右に動かしてみた。 ゴンッ!! 動かした場所の暗闇部分が体と触れた部分とぶつかる。 栞里の体に衝撃が走り、少ししてから痛みが走った。 それと同時に栞里は自分が動ける範囲が予想以上に狭いことに気がつく。 (えっ!?何これ、全然動けるスペースがないじゃない!?) 目を開けていても、暗い視界。 身体を思うように動かせないほど狭いスペース。 それからは考えられるのは、栞里は何か箱のようなの中に入れられているということだった。 (一体、何の中なの?) そういえばさっきから音がする。 どうやら音は外から聞こえてくる。 時折、ガタンッと音がして入れ物全体が揺れる感じもする。 (もしかしたら……) 栞里は、自分の状況に合致する入れ物を想像することが出来た。 (私、宅急便の箱の中に入ってるんだ……) 栞里の想像の答えを裏付けるように、体全体がガタンッと音を立てる。 自分が記憶を失う直前に覚えている景色の中にあったのはかなり大きい人一人が入れそうな業務用の箱。 身に覚えがない宅配業者。 全ての出来事がパズルのように当て嵌まっていく。 それは栞里が宅配業者に誘拐されたことを意味していた。