私は気が付くとこの部屋にいた。 「…ふっ…んっ…んんっ…」 体が重く、少し頭痛がして意識が朦朧とする。 (…何…この部屋……) コンクリートの壁に囲まれた見知らぬ部屋で、薄暗くてうまく周りが見えない。 (ひとまず状況を確認しないと……) そう思って立ち上がろうとしたけれど…… ギリッ……!! (えっ……?) 足が何かに押さえつけられているような感覚。 思わず自分の足を確認する。 「っ!!?」 心臓がドクンと脈打つのがわかる。 私の両足は正座した体勢でしっかりと折りたたまれ、太ももとふくらはぎを一括りにしている革の太いベルトが見えた。 それに足首には頑丈な鉄の輪が嵌められており、輪から鎖が伸びている。 その鎖の先は柱に設置された鉄製の輪にがっちりと固定されていた。 (何よ、これ……?) 私は輪を外そうと手を伸ばそうとする。 チャリッ…… 今度は手首から金属音がする。 (噓でしょ……) 手首からした金属音と自由が利かない両手の感覚。 本来、自由に動かせるはずの両手は全く動かない。 (なんで……どうしてこんなことに……!?) そこで私は自分の身体の自由が奪われていることに気づいた。 自分の置かれている状況をすぐには理解できなかったが、次第に大きくなってくる得体の知れない不安に恐怖を感じた。 (いやああああああっ…!!) 私は耐えきれなくなって恐怖に思わず声を上げた。 「んううううううっ…!!」 口から聞こえたのは弱弱しいくぐもった声だった。 本来、喋れるはずの口も何が取り付けられ喋れないようにされている。 「んむううっ…?んぐむぐうっ……」 (喋れない……?口まで塞がれてる……) 口の回りに意識を集中させると、顔に何かが貼り付いた違和感がするし、口の中には何かが押し込まれて舌が動かせない。 その貼り付いたものは鼻まで覆っているようで、息をする度に何かが自分の呼吸を阻害しているような感じだ。 「……うぐっ……んんっ…んーっ……」 (なにこれ……苦しい……息が思うように出来ない……) 何度声を上げても呻き声にしかならない。 「んうううっ……んふうっ……」 これで自分が監禁されていることは疑いようがなくなった。 もがくたびにカチャカチャと手錠と足枷の音が鳴る。 肌に足枷が食い込むたびに鈍い痛みが走り、心をますます動揺させている。 「んむうっ…んううっ…!!」 (お願い…助けてっ!!誰かっ!) いくら叫んでみても顔に貼り付いたものせいで声も出ない。 (どうしてっ!?なんで…私……お願いっ!……誰かっ!……誰か助けて!!) ほとんどパニック状態となった私は藻掻き続けた。 「っ!?誰かいるの?」 私の近くで声が聞こえた。 今まで自分の拘束に動揺していたせいでよく気付かなかったけれど、よく見てみると私以外に誰かいるみたい。 「んむううっ……!んうううっ……!」 喋れないながらもその声の主に気付いてもらえるように一生懸命声を出す私。 「ああ、よかった……貴女ももしかして縛られているの?私は法条未来って言うんだけど気が付いたらこんなことになっていたの。」 「んむう……んううっ……んっ……!?」 えっ!!?……どういうことなの? まさか未来!? 私はその少女の口から発せられた女の子の名前を聞いて驚いた。 なぜならそれは私の実の妹の名前だったからだ。 「んむう……んううっ……んっ……!」 暗い部屋の中でようやく目が慣れてきて彼女の姿を見てみる。 黒い白を基調としたセーラー服に赤いリボン、黒色のプリーツスカートに白色のハイソックスといった学校指定の制服に栗色のセミロングの髪型は確かに妹である未来と一緒だ。 黒い目隠しをされているけれど、ほぼ未来に間違いないだろう。 見たところ、彼女も後ろ手に縛られていて身体を思うように動かせずにいるようだ。 「貴女、口を塞がれていて喋れないの!?そうなのね!?」 「んむうううううっ…!!!」 喋れない口で未来に必死に自分が姉であることと口を塞がれて喋れない状態であることを伝えようとする。 実の姉妹だ。 くぐもった声とはいえ頭のいい妹だからおそらく気付いてくれる。 そう信じて声を上げ続ける。 「お姉ちゃんっ!!……お姉ちゃんなの!?」 「んむうううぅっ……!!ううんっ……!!!」 未来はどうやら気づいてくれたみたいだ。 「やっぱりお姉ちゃんだ!お姉ちゃん……大丈夫…!?」 「んんっ……むむうっ……」 未来が私に気付いてくれたことで少し安心することが出来た。 おそらく未来も同じ気持ちだろう。 この口を塞いでいるものが無ければいいのに…… 私は未来の声を聞けるという安堵と言葉を伝えられないことへの絶望を一気に味わうこととなった。 見たところ、どうやら怪我とかはしていないみたい無事で良かった… でもどうして……… 誰がこんなことを…… 私達、気になるのが私達姉妹を誘拐した犯人の正体だ。 私は弁護士で未来はただの女子高生だ。 とはいえ私は弁護士になってまだまだ日が浅いし、大きな裁判を抱えているわけでもない。 未来は明るい性格で友達も多いし、何よりも正義感が強いから人から恨みを買うような性格じゃないはずだ。 となると両親だろうか…… 父も母も警察官だげど、そんなに恨まれるようなことはしていないはずだ。 「お姉ちゃん……今そっちに行くから……何処にいるか教えて!!」 未来は後ろ手に縛られているけれど、幸い足は縛られておらず自由に動けるようだ。 ただ、目隠しをされているせいかフラフラしてものすごく不安定だ。 未来がこちらに向けて足を踏み出そうとしたその時…… ザッ……ザザッ……ザザッ…… 私の後ろから不気味なノイズ音が聞こえて来る。 その方角を見るとそこそこ大きなスピーカーがあった。 「ようこそ……法条希さんに未来ちゃん……ご機嫌いかがかな?」 ボイスチェンジャーで変えられた不気味な機械音声のような声が聞こえて来た。 「誰っ!?誰なの!?」 「んうううっ……!!んぐうーっ!!」 いきなり聞こえて来た声に反応する私達。 もちろんこんなことをされて機嫌がいいはずがない。 「貴方は誰!?なんでこんなことをしたの?早く私とお姉ちゃんを家に帰してよ!!」 「んんっ!!んぐぉっ……!!」 (そうよ!!いい加減にしてよ…!!) 未来が怒りを込めた口調でそう叫んで、私も塞がれた口で必死に抗議した。 「君達をここに呼んだのはゲームに参加してもらうためさ。もちろん拒否権はないし、俺は君達に用があるんだよ。」 どうやら私達の声は誘拐犯に聞こえているようだが、声を聞いているはずの誘拐犯は一方的に話を続ける。 「何それ……ゲーム?いいからさっさと私とお姉ちゃんを家に帰してよ!こんなことをして許されると思っているの?」 「んふぐぅっ……!!んうっ……!!!!」 「君達がどう思おうが、ゲームはもう始まっているよ。このゲームの成功報酬は君達の解放だ。意味がわかるな?」 「っ!?」 どういうことなの? 私達を監禁して苦しめるのが目的じゃないの…? 「つまりそのゲームに勝てば無事に帰れる……そういうことでしょ……?」 「正解だ。頭がよくて助かるよ。ルールを説明する。君達にはそれぞれ拘束具が着けてある。未来ちゃんには目隠しと手錠がね。」 未来がそう答えると上機嫌にな様子で拘束を説明する誘拐犯。 確かに未来は後ろ手に縛られていて、目隠しをされている。 「君は目隠しされた状態で監禁されている部屋にある手錠の鍵を探すんだ。その鍵を使えば手錠が外れるぞ。」 手錠の鍵? そんなものがこの部屋にあるの……? 部屋をもう一度確認する。 すると部屋の隅のフックに小さな鍵が掛けられていた。 さらにすぐ下の床にメモ用紙が置かれており、「手錠の鍵」と書かれていた。 (あれが……鍵……私と未来の手錠を外せるかも……) ギチギチッ!!ジャラッ!! 「うむうっ!!」 案の定、足を拘束されている私では鍵には届かない。 未来のいる場所から1メートルほどで鍵が取れそうな距離であるが、目隠しされている未来には見えるはずもない。 (何を考えてこんなことするのよ……あと少しなのに……) 希望を見せつけてギリギリの所でそれを打ち砕く仕打ちに私は怒りともどかしさを感じる。 ジャラッ!! 「まあ、聞くんだ。当然そのままじゃあ面白くないからヒントがあるんだ。君のお姉さんの希さんは鍵の場所を知っているぞ!!」 「えっ…!?」 「そうだとも、ヒントがないゲームなんてつまらないだろ?だから君のお姉さんは鍵の場所を知っているんだ。だが、そんな簡単に場所がわかっちゃゲームにならないから、口を塞がせて足も縛って身動きできないようにさせてもらったよ。」 「むううっ……んむうっ……!!」 確かに私は今、鍵の場所を把握することが出来た。 これを未来に何とか伝えることが出来れば、なんとかなるかもしれない。 「なんと言われようとも構わないよ……まあ、頑張りたまえ。大好きなお姉ちゃんと協力してな。そうだ、そうそう、お姉ちゃんの拘束具を外そうとしても無駄だよ。猿轡は頑丈な革製のマスクだし、足の革ベルトもかなり太いから人力で切断するのは無理だよ。それに手錠も嵌めたから3つとも鍵がなきゃ外れないよ。」 「んぐうぅぅっ………」 どうやら誘拐犯は私の顔に特殊なマスクを取り付けたようだ。 顔の下半分を覆う感覚と思うように喋ることが出来ないのはどうやらそのせいだろう。 この誘拐犯の説明を聞く限りでは、目隠しされた未来と口を塞がれた私が協力して鍵を手に入れるように仕向けているらしい。 「つまりお姉ちゃんと私がそれぞれ協力して鍵を手に入れればいいわけね。」 「そうだ。君達、姉妹の絆をしっかりと見せてもらおうじゃないか。それではグッドラック。」 頭のいい未来はすぐにそれを理解したようだ。 スピーカーが切れたタイミングを見計らって私は未来に鍵の場所を何とか伝えようとする。 「んむうっ!!んんふううっ!!!んおおおっ!!!」 (未来っ!!すぐ近くに鍵があるの!!!お願い…気付いて!!!) 必死に鍵の場所を伝えようとする私。 でも口を塞がれている私の声は未来に上手く伝わりそうもない。 「待ってて、お姉ちゃん。すぐにそっちに行くから……」 未来の方も目隠しのせいで全く周囲の状況が掴めないためにフラフラとしてうまく歩けない。 でも、なんとかして意思疎通ができればここから逃げることができる。 (…負けない!!未来……絶対に負けちゃ駄目なんだからね!!私と一緒にここから出て、また一緒に買い物したり、美味しい物を食べに行くんだから……私と一緒にこの状況を乗り切ってお父さんやお母さんの所へ帰るからね…) 私はマスクの裏で口を塞いでいる突起物を噛みしめて歯を食いしばった。 「んんんんーーーっ!!んんむぅっ!んんんぐぅーーーーっ!!」 (未来っ!!鍵はすぐそばにあるのよ!!お願い…気付いてー-っ!!) 必死に鍵の場所を叫ぶ私。 「お姉ちゃん…!!大丈夫だよ…!!私と一緒にウチに帰るんだから!!」 「んむううっ……!!んぐううっ!!」 こんな状況でも励ましてくれる健気な妹に「大丈夫、心配しないで」って言いたいのに…… こんな拘束、今すぐにでもとって妹を抱きしめてあげたい…… でも今は耐えなくちゃ…… ツラいのは未来も一緒なんだから…… 「んうっ…、ふむぅんっ!! 未来を心配させないよう明るい声になるように、私は声を上げた。
筋肉男爵pkpk
2022-08-24 12:23:02 +0000 UTC矢那
2022-08-24 10:31:03 +0000 UTC