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レッツトレーニング〜チアリーダー編〜

 真夏の体育館はかなり暑い。  ただですら暑いのに、運動する生徒の吐く息が充満している。  汗の臭いも混じり合いプンプンした酸っぱい臭いも所々から漂っている。  しかし、そんなことはお構いなしにバスケットボール部やバレー部が一生懸命練習をしている。  その中でも最も目を引くのはチアリーディング部だ。  チアリーディング部は運動量が多く、激しい運動のせいでかなり汗を掻いているが、彼女達はそれ以上に練習することを楽しんでいるようだ。  この学校のチアリーディング部は大会でも強豪でかなりキレのある派手な動きをすることからテレビに取材されるほど有名で、練習もかなりキツい。  しかし、夏になれば体育会系の部活動の大会も増える。  とはいえ、彼女達にとっては活躍の季節だ。  その晴れ舞台にむけて、汗を飛び散らせながら練習に励む部員達。  この汗の滲んだコスチュームが彼女達の勲章だ。 「それじゃあ、休憩にしましょう!!」  主将の合図で動きを止める部員達。  かなりハードな練習の中でも貴重な水分補給の時間が始まる。 「みんな、しっかり水分を摂るのよ。途中で倒れないようにね?」  主将が部員達を周りながら注意を促す。 そして、とある女子部員の前まで来ると足を止めた。 「今日は貴女の番だからね?」  チアリーダー部の部長が1人の女子部員を指名する。 「私ですか……?ううっ……わかりました……」  なんとも複雑な顔を浮かべる女子部員。  なぜなら、これから行われようとしていることは、このチアリーディング部独特の変わったトレーニングであり、さっきまでの練習と比べものにならないくらいキツいものだからだ。  15分ほどの休憩の後、水分を摂り終えた部員達が動き始める。   「それじゃあ、練習再開!それと……」  主将がスポーツバッグの中から何かを取り出す。  それは分厚いマスクだった。  革の材質でできているであろうそれは、生地の材質からして明らかに通気性が悪そうだ。  取り付けるためのベルトも太く着けられたらそう簡単に外れそうにない。    一体、何に使うのだろう? 「貴女が今日の特トレ対象者だからね?それじゃあ着けてあげるから口を開けて?」  先ほどの女子生徒の顔の前にマスクを持ってくる主将。 「はい……お願いします…」  自分がこれからマスクを着けられるとわかっている女子部員は少し恥ずかしさと不安を感じているようにも見える。  しかし、意を決したのか表情を切り替えるとマスクの裏側にある突起物を咥え込んだ。 「うぐっ!あがあっ!」  マスクの裏側に付いている棒のような革製の突起物を咥える女子部員。  突起物が口に入ったことを確認すると、主将はマスクのベルトを彼女の後頭部で止めた。 「どう?息苦しいでしょ?でもこれが必要なことだから我慢してね?」 「むぁい……」 (はい……)  マスクで顔の下半分が覆われてしまった女子生徒は苦しそうに息をしている。  蒸し暑い体育館の中でもわっとした空気がただですら不快で息苦しいのに、マスクで顔を覆われては、息苦しさも加わり、頭がぼんやりしてしまう。 「ふーっ……ふーっ……ふーっ……」  口を塞がれてしまい、事実上呼吸が出来るのは鼻だけだが、その鼻もマスクに覆われて不自由になってしまう。  口や鼻を強く圧迫された苦しみに、しっかり息を吸おうとすると、マスクがピッチリと口と鼻に貼り付いてくる。  さらに…… 「んふぅう……」 (臭い……)  マスクを着けられて流れ出る汗や唾、そして吐いた息が混じった異臭がマスクの裏側に充満する。  革製の生地は蒸れたその汗や唾を閉じ込めて酸っぱい臭いを閉じ込める。  逃げ場のない臭い空気は、女子部員の鼻から吸引されるが、そのあまりに酷い悪臭に眩暈がしそうになる。 「ほらっ、まだ準備終わってないんだから!!」 「特トレはまだまだこれからなんだから!!」 「ふぐうっ!!」  女子生徒が臭いに悶絶していると仲間達に引立てられた。  やや手荒な彼女達は手に縄を持って、マスクを着けられた女子部員の身体に縄を掛けられる。 「んふうっ!!」  両腕を後ろに回されて、縄で一括りにされた後は、胸を上下に挟むように縄を掛けられる。  縄がギリギリと引き絞られると、彼女の上半身の自由は完全に奪われた。 「んふーッ……んむふーッ……」  縄で強調された胸を激しく動かしながら、息を必死に吸い込む女子部員。  急に身体を無理に動かした反動で息が乱れると、呼吸した分だけ悪臭を吸い込んで悶絶してしまう。  彼女が受けている特トレ。  それは呼吸と言葉を制限するマスクを装着させられ、縄で縛られた状態で運動することだった。  このチアリーディング部で何時から始まったかはわからなかったが、マスク型の猿轡により呼吸を制限することで肺活量と体力を鍛える。  あえて縄で身体を縛って運動することで体幹を鍛えることを目的としたトレーニングで伝統と化していた。  このトレーニングに選ばれる部員は日替わりで選ばれる。  上級生も下級生も関係なく平等に選ばれる公平なものだ。  このトレーニングは確かにキツいがかなり効果があることが有名で炎天下の中で応援する彼女達の体力の根幹を支えているトレーニングである。  唯一の欠点といえば、マスクを共有していることで唾や汗の臭いが染み込んでかなり臭いということだが…… 「特トレ対象者はメニューが別だからね。それじゃあ、私達は練習に戻るから。」  主将を含めた特トレをしない部員達はさっきと同じ練習メニューを始める。  一方の特トレ対象者になってしまった彼女はというと……  タッタッタッ……!  体育館の中をひたすらランニングする女子部員。 「すふーっ……すふーっ……」    マスクで覆われた鼻から苦しそうな息遣いが聞こえる。  マスクの息苦しさと臭いに耐えながら体育館の中をひたすら走り続けるのだ。  縛られた状態のため、本来走るフォームとはほど遠いが、無理な体勢で動いているため、インナーマッスルが鍛えられ、体幹がかなり強くなる。  それにより、しなやかさとキレのある動きを手に入れることが出来るのだ。 (苦しい……しかも臭いよぉ……)  とはいえ、マスクの裏側には汗が滲んでそのせいでぴったりと顔に貼り付いて息苦しいのは変わらない。  それに唾も出続けるので、ツーンとした臭いは絶えることなく充満し続ける。 「うわあ~、今日もチア部の練習キツそう。」 「こんな暑いのに、あんなマスク着けられて練習するとかマジで地獄だよね……」  当然ながら体育館は他の部活の生徒も使っている。  しかし、チアリーディング部の特トレの光景は学校の生徒にとっては見慣れたものであり、それほど奇異に思われることもない。  これで驚くのは新入生くらいだろう。 「ふぅっ!!んふぅ!!」  口を塞がれて縛られて走っている彼女の息が上がってきた。  それと同時にまれに部員の中でも特別なけとを感じる者もいる。 (やだっ……こんな服装のまま縛られて走らせられちゃうのやっぱり恥ずかしい……///)  まるでSMプレイのような格好と周りからの視線に恥じらいを感じてしまう部員もいる。  今日の特トレ対象者の彼女はその中の一人のようだ。    ただでさえマスクの強烈な悪臭と息苦しさのために酸素が供給されにくい状態の脳は理性をどんどん奪っていくため、まともな思考が出来なくなる。  そのため、変な考えに至りマゾヒズムに目覚める者もいるようだ。 (変なこと考えてたらなんかアソコ湿っぽくなっちゃった…♡)  本来の目的以外のものを身に付けるこの特トレはまだまだ廃れる様子はなさそうだ。


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