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和室から出る時、キッチンの奥を恐る恐る照らすと、さっきグチャグチャにした床にふたたび虫が集まっているのが見えた。「うえー…」と気味悪がりながら、玄関に続く廊下まで戻っていく。ホントはもうこのまま家から出てしまおうかと思っていたサナだったが、虫やお面なんかに驚いてしまったのを子供っぽく感じてもいた。背伸びがしたい年ごろということもあり、こんなことでは男の子たちに笑われると思い、玄関近くの階段の前で立ち止まって2階を見上げた。階段の先も真っ暗ですこし怖かったが、全部の部屋を見て回って男の子たちを驚かせてやろうという一心で、2階に向かって懐中電灯を向けた。深く息を吸い、ゆっくり、そして力強く階段を上りはじめるサナ。1段1段強く踏みしめるたびにギィッ…ギィッ……と階段がきしむ。上っていく最中、ところどころにクモが巣を作っていたが、覚悟を決めたサナは懐中電灯を使って振り払いどんどん進んで行く。運悪く上の段にはたき落されたクモは、ズシリと襲いかかるブーツによって逃げることもできずに踏み潰されてしまった。物音に反応して出てきたのか、人気のなくなった階段に住みついていたムカデも何匹か姿を現す。しかし、近づいてくる巨大な獲物を待ち構えるムカデたちだったが、足元に気を回す余裕がないサナによって呆気なくブチブチと踏み潰されていく。クモもムカデもゴツい靴底に体の一部を踏み潰され、もがき苦しむばかりで、哀れにも階段の上で身動きが取れなくなってしまったのだった。
2階に上がってすぐの部屋は子ども部屋らしい。ゆっくりとドアを開け、中に入ると早速足元で何かがバキバキと音を立てて壊れた。このころには、自分がワルイ子になっていることにドキドキしはじめていて、イケナイことだと分かっていながら、気づかないフリをして足元にあるものを踏みつけて壊すことが楽しくなってきていた。ワザとらしく勉強机にぶつかると、バラバラと床に落ちた教科書やノートを知らないフリをして踏みつけていく。いつもだったらこんなにヒドイことは絶対にしないのに、イケナイことをしてる自分にゾクゾクしてしまうサナ。そして、机の上に飾られているプラモデルを見つけると、その中の戦車を1台つまみ上げ、床にポトリと落とした。それから懐中電灯をあえて向けず、何も気づいていないというフリをしながら、1歩前に足を出す。すると、案の定バキバキバキッ!!と暗闇に音が鳴り響いた。さらにその場で両足を揃えて立ち止まるとメキメキ!!バキッ!!と音を立て、自分のブーツの下でどんどん戦車が壊れていくのを感じ取った。男の子の大事なものを、ブーツで踏み潰していくというシチュエーションにドキドキしはじめるサナ。誰も見てないことをイイことに、そこからは歯止めがきかなくなり、他のプラモデルも次々に床に落としていく。ていねいに作られたプラモデルの上を、ぴょんぴょんと飛び跳ねながらグシャグシャに壊していくのが爽快で、飛び散ったパーツにも跳び乗って、体重をかけて踏み躙り跡形もなく破壊しつくしていく。これだけでは飽きたらず、奥の棚に飾られていたジオラマを見つけると、目を輝かせながらそれを引っぱり出して床に落とし、何のためらいもなく上に飛び乗ってみせた。よくできた小さな街は、突如として現れた巨大なブーツによってむごたらしくグシャリと踏み潰されてしまった。
怪獣さながらの巨大なサナがその場で無邪気に足踏みをすると、メキメキと音を立てながら街がゴミに変わり果てていく。この上なくヒドイことをしているのは分かっているが、小さな街を壊滅させていくのがとても楽しく、靴底が食いこんだジオラマを懐中電灯で照らして興奮するサナ。すでにジオラマはメチャクチャになっているにもかかわらず、グリグリと踏み躙り続け、ブーツの下からは山や森だったものがグジュグジュとこぼれ落ちていった。
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