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気づけばキッチンに入っていて、食器が散らばっているのか、歩くたびにバキバキと陶器やガラスが割れる音が鳴り響く。皿やコップを踏み割りながら進んで行くと、奥の壁に近づいた瞬間、ブチュゥゥゥゥッ!!とやわらかいものを両足で踏み潰すのを感じた。足元を照らすと、傷んだミカンやバナナが転がっているのが見える。そして、自分のブーツが腐ったミカンと一緒に虫の頭を踏み潰していることに気づいてしまう。驚いてミカンを蹴っ飛ばすと、フルーツを目当てに集まっていた他の虫たちが騒がしく床中を歩き回り出した。そして、汚らしくへばりついた金魚の内臓のニオイを嗅ぎつけ、次々に虫たちがサナのブーツに集まってくる。それを見たサナは鳥肌を立たせて取り乱し、「キモイキモイキモイ!!」と騒ぎながら足元でうごめく虫たちを次々に踏み潰しはじめた。グチャッ!!グチュゥゥッ!!ブチュブチュッ!!と、近づいてくる虫たちをフルーツごと一心不乱に潰していく。息を荒げながら、全部潰せたかを念入りに確認して、足だけがかすかに動いている虫を最後に思いきり踏み潰すと、グリグリと足をひねってトドメを刺すサナ。そして、「ふー…」と一息つき、潰れたフルーツにまみれてグチャグチャになった虫たちの死骸を見渡すと、急に我に返って気持ち悪くなり、キッチンから逃げるように飛び出した。すると、割れた食器が散らばる不安定な足場を歩いた先で、ゴミ箱か何かにつまずいてしまう。そのまま外れかけていた襖にぶつかると、倒れる襖といっしょに隣の和室に転がりこんだ。
ホコリが立ち、咳こみながら襖の上で立ち上がろうとするが、どうやら和室も荒らされたあとのようだ。畳の上にはいろいろなものが散らばっているらしく、その上に倒れた襖がミシミシと音を立ててきしんでいる。サナが立ち上がると襖はブーツによって踏み抜かれ、歩くたびにボコボコと足跡が刻まれ穴だらけになっていった。そのまま畳の上を土足で歩き回るサナだったが、そのころには和室をブーツで踏み荒らすことなんて気にならなくなっていた。玄関前から泥だらけになっていたブーツは、いつしか濁った水と金魚の死骸をまとわせ、腐ったフルーツと虫の死骸で畳の上に汚らしい足跡を刻んでいく。奥で敷きっぱなしになっていた布団の上に乗ると、ちょうどいいと思ったのか、その場で足踏みをしたり、グリグリと足をひねってブーツの底についた汚れをキレイにぬぐい取りはじめた。
ミカンやバナナを踏み潰していた時に汁も飛び散ったらしく、ブーツの側面についた汁にはホコリも混じってベタベタになっていることに気づく。「げ、サイアクー……」とつぶやきながら、足元のかけ布団を手に取り、自分のブーツの汚れをふき取るサナ。その最中、たまたま懐中電灯が、近くに転がっていた天狗や鬼のお面を照らした。サナはビックリして後ずさりするが、和紙でできたお面であることが分かると、驚かされたことにすこしイラついてきた。そして、もう他人の家であることすらもおかまいなしに、お面をグシャッ!!と踏み潰し、知らんぷりして廊下に向かっていく。その間、畳の上に転がっていたよく分からない民芸品も次々に踏み潰し、倒れた襖もふたたびバキバキと音を立てて踏み破りながら和室を後にする。
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