惑星フースの警備隊には女性隊員が少ない。
その理由はフース人は男女で身体能力に差があるためだ。
裏を返せば警備隊に属している女性隊員は狭き門を潜って入隊したエリートであるとも言える。
そのため女性隊員は人々から憧れの眼差しを向けられ、警備隊に志願する若き乙女も後を絶たない。
しかし警備隊が女性隊員を採用しているのは能力の他にも理由が存在した。
警備隊に配属された女性たちの多くは入隊後に初めてそれを知らされ後悔することになる。
◇◇◇
「リリ・アーカイヴ、お前に奉仕任務を命ずる」
「……っ!! ……わ、わかりました」
警備隊の隊舎の一室。
隊長のサイロから告げられた言葉に、リリは思わず拒否しそうになった自分をどうにか抑えてそう答えた。
怪獣が現れたわけでもインフェルニアの暴動が起こったわけでもないのに隊長から直々に呼び出されたことに嫌な予感はしていたが、残念ながらそれは的中してしまったらしい。
奉仕任務とは警備隊の女性隊員にだけ定期的に命じられるある特別な任務を現す隠語である。
リリも過去に何度か経験したことがあるが未だに慣れることはない。
複雑な表情を浮かべるリリにサイロが訊ねる。
「不服か?」
「い、いえ……、そういうわけでは……」
もちろん本音を言えば不服である。
むしろこの任務を嬉々として受ける女性隊員などいないだろう。
しかし警備隊の隊員として上司からの命令は絶対である。
「受けたくなければ受けなくてもかまわん」
「え? それって……」
サイロの言葉にリリは耳を疑った。
受けずに済むならそれに越したことはない。
わずかに見えた希望は、しかしリリの望んだようなものではなかった。
「今この場で辞表を書けばいい。隊員でなくなれば受けずに済む」
なるほど、たしかにその通りである。
実際この奉仕任務が理由で隊を去った女性隊員も少なくない。
つまり隊に残っている女性隊員はそれを差し引いても隊員を続ける理由があるということである。
そしてリリもそのひとりだった。
「……いえ、除隊する気はありません。リリ・アーカイヴ、奉仕任務を受諾します」
リリは敬礼して部屋を後にした。
彼女には行方を眩ませた母親を探すという目的がある。
そのためには母もかつて所属していたこの警備隊に留まる必要があるのだ。
母を見つけるためならばこの程度のことなど我慢できる。
決意を胸に隊舎の廊下を進むリリだが、意思とは裏腹にその足取りは重いものだった。
◇◇◇
隊舎の中でも人気のない最奥の部屋。
そこが毎回奉仕任務に使われる場所である。
部屋の前までたどり着いたリリは扉の前で大きく深呼吸する。
(大丈夫……。何も考えず、ただじっとしてればいいだけだから……)
奉仕任務は決して何か難しいことをするわけではない。
むしろ何もしないことが任務の内容である。
何が起きても抵抗せずその場でじっとしていればいいだけである。
ただそれが苦痛ではあるのだが……。
「失礼します」
努めて平常心を保ちながらリリは扉を開けて部屋に入った。
部屋の中はやや薄暗く、しかし視界が効かないほどの真っ暗闇でもなかった。
そして室内には既に先客がいた。警備隊の男性隊員たちである。
奉仕任務とは彼らの『相手』をすることなのだ。
「やっと来たか。待ちくたびれたぜ」
「ほう、今日の相手はアーカイヴか」
「へへ、楽しみだなぁ」
男性隊員たちの視線を一身に受けながらリリは部屋の中央まで歩を進める。
男たちの眼差しには明らかに下卑た意思が込められ、リリの肢体を視姦していた。
警備隊の隊員が身に纏うスーツは全身を覆ってはいるが、体にフィットしボディラインが露わになってしまう。
リリのしなやかな手足も、柔らかそうな胸も、くびれた腰も、丸みを帯びた尻も。
その形を余すことなく晒し、男たちの視線から守る役目を果たしてはくれない。
羞恥に耐える彼女を取り囲むように陣取る男性隊員たちの姿は、まるでリリの逃げ場を塞いでいるかのようのも見える。
「さて、じゃあ早速始めようか。準備を頼むぞ」
「……は、はい」
リリは僅かな逡巡の後に、まずは履いていたニーハイブーツを脱ぎ始めた。
ブーツに隠されていた脚線美が露わになると周りの男たちの視線がさらに集まる。
脱ぎ終わったブーツを邪魔にならない場所に置くと、リリは一度目を閉じてまた深呼吸した。
「おいおい、早くしてくれよ」
「今さら怖気づいたのかぁ?」
「何なら手伝ってやろうか、ハハハ」
緊張の面持ちで俯くリリを周りの男性隊員たちが囃し立てる。
(うぅ……、好き勝手言って……ッ)
リリは意を決して身に付けていたスーツに手をかけた。
スーツの首元を伸ばして下に摺り下げると、男たちが歓声を上げた。
リリの豊かな乳房が晒され、厭らしい視線が集中する。
羞恥のあまり腕で胸元を隠すリリだったが、決して小さくない彼女の胸は隠しきれず隙間から谷間やピンクの乳首が顔を出していた。
好色を隠すことなくニヤニヤと笑みを浮かべながらリリを視姦する男たち。
顔から火が出るほど恥ずかしかったが、このままでは埒が明かない。
リリは思い切ってスーツをさらに摺り下げた。
「ヒュ~! たまんねぇぜ!!」
「相変わらず小娘のくせにエロいボディしてるよなぁ」
膝元まで一気にスーツを下ろしたリリはそのまま両脚を抜いて完全にスーツを脱ぎ捨てた。
染みひとつない綺麗な桃尻に、適度に引き締まった脚。
そして鼠径部の中央には無毛の割れ目がチラチラと見えていた。
一糸まとわぬ姿になったリリに今まで以上に下卑た言葉と視線が注がれる。
(うぅ……、やっぱり恥ずかしい……! どうして私がこんなことを……)
覚悟していたはずだが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
思わず胸元と大事な部分を両手で隠すが、その仕草もまた男たちを悦ばすだけだった。
「へへ、じゃあ今日も世話になるぜ」
男のひとりがそう言って服を脱ぎ始めると、他の男性隊員たちも一斉に脱衣を始めた。
男たちが服を脱ぐたびにムッとした熱気と汗の臭いが伝わってくる。
そして眼前の男がズボンを摺り下げると、勃起したペニスがリリの視界に飛び込んできた。
「ッ!!」
リリは咄嗟に顔を背けたが、その先にも別の男のモノが待ち受けていた。
瞬く間にリリは無数のペニスに取り囲まれる。
「へっへっへ、警備隊員の役得ってヤツだよなぁ」
「これがあるおかげでオカズに困らずに済むってもんよ」
「俺なんか今日のために一週間オナ禁してきたんだぜ」
男たちはリリの裸体を眺めながら自らのペニスをしごき始めた。
これこそが奉仕任務の内容だ。
男性隊員たちの性欲処理の手伝い、平たく言えばオナニーのオカズになることである。
全裸の男に囲まれながら彼らの自慰行為を見せつけられるリリ。
(うぅ……。お願い、早く終わって……っ)
おそらく男たちの脳内では今頃リリがあられもない痴態を晒し嬌声を上げていることだろう。
リリにできるのはこの時間が一刻も早く終わることを願うことのみである。
「でも目の前に真っ裸の娘がいるのに手を出せないなんてなぁ」
「やっぱり一度ぐらいは生でやってみたいぜ」
男たちの言葉にリリはギョッとする。
この奉仕任務は一見すると女性隊員が男性隊員たちの言いなりになっているようにも見えるが、隊の規則で様々な制限が設けられている。
特に女性隊員に対する直接の接触は固く禁じられているのだ。
リリがこの任務を我慢できているのもそのためだ。
「やめとけよ。以前にそれで最前線送りにさせられた奴がいたろ」
「あぁ、さすがに命と引き換えにはできねぇよな」
「昔は生ハメもOKだったらしいけどな。く~、その時代に生まれたかったぜ」
リリが生まれるより前の時代の奉仕任務は、女性隊員が文字通り体を張って男性隊員たちの性欲処理を行っていたらしい。
女性隊員は奴隷のように扱われ、乱暴の末に再起不能になる者や妊娠して除隊する者が相次いだ。
その結果、今のように女性隊員に触れることが禁止されるようになったという。
(もしかして……、お母さんもこんなことを……)
母が警備隊に属していたなら、ひょっとしたら母もこうして男たちの慰み者になっていたのだろうか。
「う…、そろそろ出るぞ……っ!」
「俺もイキそうだ! しっかり受け止めろよ!」
男たちの言葉にリリはきつく目を閉じ歯を食いしばる。
次の瞬間、男たちのペニスから精液が噴出してリリの体中に浴びせかけられた。
艶のある黒髪が白濁液に汚され白い肌を伝っていく。
全身に感じる生暖かく粘ついた触感に羞恥と嫌悪が湧き上がる。
全員の射精が終わる頃にはリリの身体は精液が付着していない箇所の方が少ないほどドロドロになっていた。
(うぇ…、酷い臭い……。生暖かくて…気持ち悪い……)
「ふぅ……、スッキリした。ありがとよ嬢ちゃん」
「……いえ、……私を使っていただき…、ありがとうございました……」
リリは精液に塗れた自身の体を抱きしめながら震える声で返事をした。
吐き出しそうになるほどの生理的嫌悪感をどうにか抑え込む。
男たちの射精が終わったらしいことを見て取ると、すぐさま立ち上がって脱いだ衣服をかき集めた。
そして男たちを搔き分けるように出入り口に急ぐ。
全裸のまま廊下に出るのは恥ずかしいが、性液に塗れた状態のまま着る気にはなれなかった。
何より終わったのならこんな場所には一分一秒だって留まりたくない。
しかし扉まであと少しというところでリリの前に数人の男が立ちはだかった。
「……っ! ど、どいてください! もう奉仕任務は終わりましたよね」
「まぁそう急ぐなよ。もう少しゆっくりしていけって」
「俺は一回じゃ足りないからよう。もう一回頼むわ、な」
「心配すんなって。手は出さねぇからさ」
男たちの態度にリリは怒りを覚え彼らを睨み付ける。
しかし男たちは彼女の怒りなど意に返さないように厭らしい笑みを浮かべるのみだ。
この人数の男たちにたったひとりでは太刀打ちなどできるはずもない。
悔しそうに唇を噛むリリと、それを眺めながら嗤う男たち。
だが状況を動かしたのはそのどちらでもなかった。
バンッ、と音がして扉が開け放たれ、扉の前にいた男のひとりが勢いそのままに吹っ飛ばされた。
さらに数人の男たちに激突して精液まみれの床に倒れ込む。
突然のことに驚く一同に、部屋に入ってきた人物は低い声で問いかけた。
「お前たち、何をしている」
「げっ、サイロ隊長!?」
「い、いや~、何もしてないっすよ、アハハ……」
明らかに動揺しながら誤魔化そうとする男たち。
それを冷ややかな目で一瞥した後、サイロは驚いたまま硬直していたリリに向き直って淡々と言った。
「アーカイヴ、奉仕任務が終わったのなら早く着替えて報告書を提出しろ」
「…え、あ…、は、はい」
「お前たちはこの部屋を片付けろ。そこで気絶してる連中もさっさと叩き起こせ」
「い、いや、これは隊長が……」
「何か言ったか」
「い、いえ! 何でもありません!!」
サイロに睨まれて男たちはいそいそと部屋の片づけを始めた。
床に散らばった自分たちの精液を掃除する男たちを尻目にリリとサイロは退室する。
扉を閉めたリリはあの部屋から無事脱出できたことに安堵しながら隣にいる上司に頭を下げた。
「あの…サイロ隊長…、助けていただいてありがとうございました」
「……私は隊の規則を守っただけだ」
「それでも……私は助けられましたから、お礼は言うべきだと思います」
「………」
リリの言葉にサイロは何か言うでもなく、ただ彼女のことを見つめ返すだけだ。
その無表情からはいかなる感情も読み取れなかったが、彼が自分を助けてくれた理由はきっと規則だけではないのだろう。
リリはもう一度頭を下げてからその場を後にしようとしたが、サイロに呼び止められた。
「アーカイヴ」
「は、はい、何ですか?」
「お前は警備隊を辞めたいとは思わないのか。そんな目に遭ってまで、何故隊に留まり続ける?」
サイロの問いにリリは考える。
警備隊に入ったきっかけは母を探すためだったが、留まる理由はそれだけではない気がした。
「うまく言えませんけど……、私は昔話に出てくるみんなの未来を照らす光の巨人のようになりたいんです」
幼い頃に母から聞かされたおとぎ話。
悪い怪獣をやっつけて人々の笑顔を守った光の巨人。
それこそがリリが戦いに身を投じる原動力だった。
「辛いことも多いですけど…、私の力が誰かの未来になるのなら諦めたくないって……。そう思うんです」
「それはこの部隊にいなければできないことなのか?」
「他にも選択肢はあるのかもしれませんけど……、私はこれしか知らないので。それに男性隊員にも隊長みたいに優しい人もいますから」
「……ッ、………そうか。もういい、引き留めてすまなかった」
「いえ。それでは失礼します」
足早に去っていく少女の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから、サイロはため息をついた。
廊下の窓から外の風景を眺めながら独り言ちる。
「やれやれ……、やはり親子は似るということか……」
もうずいぶん昔のことだが、リリと同じセリフを言った少女のことを思い出す。
『私の力が誰かの未来になるのなら諦めたくないの』
『貴方みたいに優しい人もいるのね』
「君にそっくりだよ。なぁ、アーリ……」
この場にいない誰かに向けたその言葉は誰にも聞かれることなく、サイロは踵を返して歩き出した。
The End
リリ好きなひと
2024-07-15 08:09:52 +0000 UTC