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ナーヴ
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SS_C105向け一部先行公開

すっかり冬ですね、とても冷え込みます。

風邪には気をつけたいところです。


さて、C105で出す予定の本について以下の記事を書いていますが

https://th-chara-gts.fanbox.cc/posts/8864927


そのなかでもこれをここで公開します。

> ・天網恢恢なんとやら ※加筆予定

> https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22080092


具体的には、『天網恢恢なんとやら(エクステンド版)』として

pixivで公開しているSSの後に2,000字ほど追記してボリュームアップしました。


ここでは全部掲載しますが、追記部分だけ読みたい人は

☆マークでページ内検索をするとすぐに飛べます。


それでは、どうぞ。


※無断転載禁止


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「さてさて、今日はどこで遊んじゃおうかしら?」


上空にふよふよと浮かぶひとりの少女。黒髪のロングヘアーで前髪はぱっつん。

青色の服にいくつかの星の模様。

頭には大きめの青色のリボン。

そして背中には後ろが見える程度には透き通っている羽。

スターサファイア、妖精である。

自然の権化ともいえる種族ではあるが、

少なくとも彼女の住む世界での種族間のパワーバランスは最弱である。

その代わり、

倒されても一回休みになるだけで少し経てば復活するという特性を持つ。


「街はあちこちあるけど……

 広さもちょうどよさそうだし、ここにしちゃいましょう。」


地上に見えるのは海に近い街。中心部には高層ビルが建ち並んでいて、

山側のエリアは住宅街、海側のエリアには空港や工業地区などがある。

そして彼女は街の山側、住宅街エリアへ着地しようと高度を下げる。


ずどぉぉぉぉんん……


彼女が着地したその瞬間、周囲に巨大な揺れが襲いかかった。

地響きとその直後に広がる衝撃波で

彼女の周囲の民家は倒壊したり粉々になったりしている。


「大きくなって人間にイタズラ……やっぱり興奮しちゃうわ?」


今の彼女の身長は一五〇〇メートルに届かないほどである。

妖精が最弱なのは普段の大きさの話であるが、

これだけ巨大な存在であると話が変わってくる。


ずしぃぃん…… どしぃぃん……


ブーツをまとった二つの足が交互に踏み下ろされることで

住宅街の建物たちがどんどんつぶされていく。

彼女にとって二階建ての民家は

ブーツの靴底の厚みよりも小さいというちっぽけなオモチャなのだ。


「ふふっ、逃げてる逃げてる。

 ちゃんと逃げないとぺちゃんこになっちゃうわよー?」


地上を見下ろしながら微笑む彼女。

本来ならば、今の彼女の身長では

人間の大きさは点として認識できるかどうかである。

しかし彼女は人間の場所や動きが手に取るようにわかる。

何故ならば、動く物の気配を探る程度の能力を彼女が持っているからだ。

簡単に言えば彼女が持つ能力はレーダー能力である。

人間や動物が居るところを避けることもできるし、

人間たちを狙って襲うこともできる。

どのように使うかは彼女次第である。


「サクサクして踏み心地もいいし、

 足元でうじゃうじゃ逃げているし、

 こんなに面白いことはなかなかないわ?」


ずずぅぅん…… どごぉぉん……


建ち並ぶ民家たちをどんどん踏み抜いて住宅街を靴跡まみれに変えていく。

マンションやアパートも踏み抜いて真っ二つにしたり

蹴り飛ばして粉々にしたりで瓦礫の山にしていく。

人間の住処をどんどんめちゃくちゃにして楽しむ彼女が止まる様子はまったくない。


「せっかくなら裸足で直接踏んじゃおうかしら?

 ちょうどいい広場もあるし……よい、しょっと。」


どすぅぅぅぅんん……


彼女が見つけた広場とは学校の運動場だった。

勢いよくお尻をついて座り込んだ彼女。

しかし今の彼女の大きさでは運動場程度の狭さでは収まるはずもなく、

校舎部分も全てお尻でつぶしてしまったのだった。

まずはブーツを脱ぐ彼女。脱いだブーツを地面に寝かせれば、

人類にとっては長さ数百メートルの巨大な筒形のものが横たわる。

寝かせているのに高さは一〇〇メートルに届くほど。

まるで小さな山脈である。

続いてニーソを脱ぐ彼女。

寝かせておいたブーツの近くの住宅地に広げて置いてみると

敷かれた民家たちがだんだんと軋み、少し経つと一気につぶれてしまった。

これほどの大きさになればニーソも重さ数万トンになる。

民家がニーソの重みでつぶされてしまうのも無理はない。


「こんな薄っぺらい布でつぶれちゃうなんて、そんな脆いおうちで大丈夫?」


その様子を見てくすくすと微笑む彼女。

民家が布につぶされる様子は傍から見るとたしかに滑稽だろう。

あるいはあまりにも非常識すぎて疑ってしまうかもしれない。

そして彼女は素足のまま立ち上がると、再び散歩を始める。


どしぃぃん…… ずしぃぃん……


ブーツの重みがなくなったことで

こころなしか響き渡る音と衝撃が少し小さくなっている。

とはいえ、相変わらず民家やマンションを踏みつぶすには

充分すぎる重さと大きさだ。


「ちょっとくすぐったいけど、

 踏んでる感触があるのはとても楽しいわ?」


踏みつぶす感触を彼女が楽しんでいることを考えると

履物を脱いだことはむしろ状況が悪化したといえるかもしれない。

まだ踏み荒らしていない地区に侵入すれば再び踏み荒らしていく。

ただ足を下ろして踏みつぶしたり、足の指を閉じてさらに細かくつぶしたり。

住宅街には靴跡だけでなく足跡もどんどん刻まれていく。


「あら、あのあたりは人が集まっているみたいね。

 何があるのかしら?」


住宅街の半分以上を踏み荒らしたところで進路を変える彼女。

そこにあったのはショッピングモールだった。

中心地から少し離れたところにあるため土地を広々と使っている。

建物の階層はあまり高くないが、その代わり横に長い。

そして駐車場も広く、この時間は停まっている車も多い。

あっという間にたどり着いた彼女はショッピングモールを興味深そうに見下ろす。


「うーん、お店がいっぱい集まっているのかしら?

 ……まあ、人が多ければなんだっていいわ?」


ずどぉぉん! どすぅぅん!


容赦なくショッピングモールへと踏み入れた彼女。

彼女にとってはどういう施設だって構わない。

人間がたくさん居てイタズラになるならそれでいいのだ。

駐車場に踏み入れれば車たちを一瞬でぺちゃんこにしていき

足元で爆発を起こしていく。

続いて建物の方に踏み入れれば屋上から地下まで一気に踏み抜いていき

中にあるものすべてをひとつ残らず踏みつぶしていく。

その調子で踏み荒らしていけば、

彼女が踏みつけるところを十回ちょっと変えただけで

ショッピングモールは壊滅してしまった。

残ったのは複数の足跡と多くの瓦礫と数か所から上がる煙や炎だけである。


「ここだけでも千人くらい退治出来たわね?

 でもあっちにはもっともっと居るから、今度はそっちに行きましょうか。」


そう言うと彼女はこの街の中心地へと向かい始める。

ショッピングモールから中心地までは車でおよそ七分かかる。

しかし今の彼女にとっては十歩あれば充分だ。

道路に従う必要もなく、

足元に建物があろうと構わず踏みつぶして真っすぐと向かっていく。

見かけはゆったりとした一歩でも、その速さは自動車よりも上なのである。

あっという間に中心地へと着いた彼女。

高層ビルも建ち並んでいるが、どの建物も彼女の膝にすら届かない。


「さてと、遊びがいのあるものが多いけど……まずはここよね。

 これがあると人間は速く移動できちゃうみたいだし?」


雑多なビルを蹴散らしながら彼女が真っすぐ向かったのは駅だった。

比較的大型の駅のようで複数の線路が出ている。

たくさんの人間がまとまって素早く移動していることを

彼女が見逃すはずがなかった。


「それに、早く逃げたくてたくさん人が集まっているもの。

 イタズラして、って言っているようなものでしょう?」


ずどぉぉぉぉんん!


力いっぱい駅を踏み抜いてしまう彼女。

右足は駅舎の天井から駅のホーム、線路、高架まで

すべてを一気に踏みつぶしてしまう。

駅に停まっていた電車たちは中央の車両がつぶされて

身動き取れなくなってしまった。


ずしぃぃぃぃんん! どしぃぃぃぃんん!


そこから左足も使って踏み荒らしていったり

足を大きく振り上げて蹴散らしたりで追い打ちをかけていく。

駅の建物は土煙をあげながら一気に崩壊していき、

線路も駅に停まっていた電車もひとつ残らず使い物にならなくなってしまった。

さすが妖精というべきだろうか、

彼女はやられても一回休みで済むため、命に対する価値観があまりにも違う。


「ここだけで数百人居るのだから、やっぱりこのあたりは遊びがいがあるわね。

 次は……」


足元の瓦礫を踏みにじりながら周囲を見渡す彼女。

ふと、とある地点を見つめる。

そこにはビルが建ち並んでいるが、特に目立った建物があるわけではない。

にもかかわらず、そこに向けてふわりと浮いて移動したのだ。


「……なるほど。このあたりには地下があるみたい?

 私じゃなければ見逃していたかもしれないけど……えいっ!」


直後、上空から勢いをつけて地上へと下りる彼女。


どごぉぉぉぉんん!


周囲に今日一番の轟音と衝撃が広がる。

地上に建っていたビルを

屋上から地上まで踏み抜いていきながら崩していくのはもちろん、

着地しても勢い止まらずに地表部分を踏み割ってしまい、

深さ数十メートルにもなる足跡を刻んでしまった彼女。

着地の衝撃で周辺のビルのガラスがひとつ残らず粉砕したのはもちろん、

彼女が着地したところには小さなクレーターが出来上がっている。

そして彼女の足の周辺には小さな空洞がいくつか見えた。

地下通路。

そして地下鉄のホームと線路の通ったトンネルだった。

彼女の足によって踏みつぶされて寸断されてしまっている。


「ふむふむ……よく見てみると、

 この地下って結構あちこちに広がっているみたいね?

 人間の作った大きなアリの巣みたいだわ?」


地上から地下を見ることは難しいと同時に地下から地上をみることも難しい。

しかし彼女は一方的にそれを見ることができる。

地下に居るときになんの前触れもなく地上から踏み抜かれてしまうというのは

人間にとっては相当な衝撃である。


「この調子でどんどん……っと、

 今度はあっちの方で人間たちが変な動きをしているわね?」


ふと海の方を見る彼女。

同時にふわりと宙に舞い、向いている方に飛び始めた。

飛ぶ方が歩くよりも速いようだ。

あっという間に中心地を離れて海側のエリアに。

さらにはそこも通り過ぎて海の上空を飛ぶ彼女。

そのまま少し進み続けると、彼女はあるものを見つけた。


「まさか空を飛ぶ乗り物もあるなんて……

 人間ってなかなか侮れないわ?」


そこにあったのは飛行機だった。

彼女が能力で先ほど見ていたのは複数の人間たちが素早く動き、

さらには空を飛び始めた様子だったのだ。

種族的に空を飛べない人間が空飛ぶ乗り物を使っていることに少し感心しつつも、

結局のところ彼女にとってはオモチャのひとつでしかない。


「遠くに逃げようとしたのでしょうけど、

 そんなことしたら逃げ遅れた人たちが可愛そうでしょう?」


そう言いながら両手を広げて、飛行機の上と下にそれぞれ持ってくる彼女。

彼女にとっては秒速数十センチメートルでしか動いていない飛行機。

しかも速さをあわせて飛びながらなのだから、止まっているも同然である。


どごぉぉん……


容赦なく両手をあわせた彼女。

飛行機は両手で簡単につぶされ、手のひらの中で小さく爆発を起こした。

無残にも翼の端の部分だけが手のひらから飛び出している。


「思ったより脆かったわね?

 手のひらがちょっと汚れちゃったけど……」


軽く手のひらを払って破片や残骸を落とす彼女。

飛行機もまさか手のひらで挟まれることは想定していなかっただろう。

残骸が海へと落ちていくのをよそに振り返って街の方へと戻っていく。


「あの乗り物がさっき飛び立ったのは……あそこね。

 たしかに人間たちがいっぱい集まっているわ?」


空港。

巨大な妖精の襲来により多くの人間が集まっていた。

駐車場は全て埋まり、通路に停められたものも多数ある。

滑走路は二つあり、離陸準備中の飛行機も居る。

巨大な妖精がやってきてから一番最初に空港を離陸した飛行機は

残念なことに彼女の手によって先ほど撃墜されてしまった。


ずどぉぉぉぉんん……


そしてその妖精がいよいよこの空港にやってきた。


「結構広いわね?

 それにしても、人間がこんなにたくさん……」


彼女が着地した衝撃で片方の滑走路にクレーターが刻まれた。


ずしぃぃん…… どしぃぃん……


そのまま彼女は出発ロビーのある建物へと近づいていく。

その間にもうひとつの滑走路にいくつも足跡が刻まれて

アスファルトは粉々になっていく。

たったこれだけで飛行機は離着陸不能となり、

空港としての価値がほとんどなくなってしまった。

そんなこととはつゆ知らず、

出発ロビーの目の前に到着するとまずは停まっている飛行機に目をつける彼女。


「人間は中に居ないみたいだけど、これがなければ意味ないのよね。」


ずどぉぉん! がしゃぁぁん!


そのまま飛行機を襲い始める彼女。

飛行機の全長よりも大きな足で踏みつぶしてしまえば

半分以上が一瞬でぺちゃんこになる。

足を振り上げて蹴り飛ばせば

勢いよく飛行機同士がぶつかりあってお互いにボロボロになる。

さらには飛行機を捕まえてしまい、

そのまま投げてしまえば数秒ほど空の旅をさせた後に

駐車場に不時着させて大爆発を起こさせる。


「そして仕上げは、ここよね?」


ずがぁぁん! どしぃぃん!


人間たちに逃げる暇を与えることなく

出発ロビーのある建物を踏み荒らしていく彼女。

一歩一歩丁寧に建物ごと人間たちを襲って

しっかりと退治できていることを能力で確認しながら楽しんでいく。


「これでここはおしまいね。

 狭いところにたくさん集まってくれたから簡単だったわ?」


足跡だらけの滑走路、炎上している駐車場、建物があったはずの瓦礫広場。

彼女が空港を襲い始めてからたったの二分ほどで空港は壊滅。

数千人が彼女によって退治されてしまった。


「さてと、次は……

 近づいてきている何かを相手しないとダメそうね?」


当然ながら彼女は気づいていた。

飛行機よりも小さい代わりに飛行機よりも速く近づいてくる存在に。

それはちょうど彼女の目に見えるところまでやって来た。


「アレも空を飛ぶ乗り物みたいだけど、小型で速いわね?」


戦闘機である。

先ほどまで彼女が襲っていた旅客機よりも速く動き回るそれが

彼女のところにやってきたのだ。

全部で六機、緊急発進してきた様子。


「わっ、とと……」

思わず少しのけぞる彼女。

戦闘機から攻撃を仕掛けられたのだ。

さすがに弾を避けることはできずに直撃……したのだが、

彼女にとっては何かが当たったという感触があるだけで痛みは一切ない様子。


「弾幕も撃ってくるなんて意外ね?

 でもこのくらいなら、私の方がずっと上よ?」


そう言うと彼女は周囲に星型の弾幕を展開する。

戦闘機を狙って撃つのではなく全方向にばらまいている。

彼女なりのやり方らしい。

しかしそれは避ける側としてはなかなかの難題となる。

星弾ひとつの大きさでも十メートル以上、

それが彼女の周囲全方向に壁のように放たれたのだ。

それを二回、三回と放ってみせる彼女。

もし普通の弾幕ごっこならその場で止まったり後ろに下がったりで対応できるが、

戦闘機にその動きを求めるのは無茶な話である。

避けきれずに弾幕の壁に突っ込んでしまい爆発した機体や

高度を急激に変えて避けようとした結果、制御を失って墜落した機体。

あっという間に六機すべてが倒されてしまったのだった。


「戦いを挑みに来たみたいだけど、無茶したらダメよ?

 弱い自覚があるなら引き際も肝心なんだから。

 ……それに、私に弾幕を撃たせたせいでもっと大変なことに?」


ずどぉぉん…… どごぉぉん……


彼女から数キロ離れた各地で爆発音が響き渡る。

先ほどの弾幕の流れ弾が地上を襲ったのだ。

海沿いのエリアに着弾した星弾たちによって工業地区が爆発炎上。

さらには港の建物やフェリーにも星が降り注ぎ、破壊されてしまった。

これでは人間たちは海から逃げることができない。

隣町との境界となっている川にも多数の星弾が届き、

堤防が穴だらけになるだけでなく

川に架かっている橋がひとつ残らず破壊されてしまった。

中心地や住宅街にも大量の星弾が降り注ぎ、

各地で爆発が起きて大火事になっている。


「ふふっ。だいぶ手加減したから大した弾幕ではないのだけど、

 人間たちは大慌てね?」


ずしぃぃん…… どしぃぃん……


~~~★☆★☆エクステンド版ここから☆★☆★~~~


弾幕で焼け野原となっている海側のエリアを通り過ぎながら中心地へと戻る彼女。

彼女の言ったとおり、

中心地にもいくつか星弾が降ったものの手加減をしたためか

弾幕による被害はあまり大きくない。

いよいよ中心地へと再び踏み入れようとする直前、ふと彼女の足が止まる。


「あっ、せっかくならかくれんぼ兼おにごっこしましょうか。

 私が鬼で、三分間待ってあげる。

 三分経ったら戻ってくるから、それまでに隠れるなり逃げるなりしてね?」


言い終えるとふわりと体を宙に浮かべながら小さく手を振る。

そのまま彼女は空を飛んで中心地から離れてしまった。

まだ中心地から逃げられていない人間たちの多くは呆気に取られてしまったが、

すぐに我に返って逃げ始める。

三分間の猶予を与えられたのだから絶好のチャンスである。

しかし地下鉄を含む電車も飛行機もフェリーも全て動いていない状態であり、

状況はとても良くない。

どの方向に逃げるか、あるいはどこに隠れるか。

この判断が正しかったかは数分後に分かるだろう。


「……うん、このくらいならちょうどよさそう?」


一方、彼女は空を飛んで先ほど居た街の隣町の上空に来ていた。

彼女が先ほどまで居た街よりは規模は小さい。

三分間待っている間に別の街に遊びに来たのだ。


ずどぉぉぉぉぉぉんんん……


彼女が地上に降り立つと同時に地響きが広がる。

巨大な存在だから当然なのだが、どうも様子がおかしい。


「この街では二分間くらいのおにごっこをしちゃうわね?

 時間になったら止めてあげるから、頑張って逃げてちょうだい?」


ずしぃぃぃんん! どしぃぃぃんん!


スカートを小さくたくし上げながら踏み荒らし始める彼女。

彼女にとっては砂利や芝生のような建物たちをひとまとめに踏みつぶしていく。

しかしその一歩一歩の衝撃は先ほどまでよりも比較にならないほどに大きい。


「さすがにこのくらい大きくなるとひとつひとつ見分けるのは難しいけど、

 居る居ないとか多い少ないとかはちゃんと分かるわね?」


そう、彼女の今の大きさは約七〇〇〇メートル。

上空を移動中にさりげなく五倍ほど巨大化していたのだ。

隣町が襲われているのを見ていた人間たちは

妖精が突然こちらに襲い掛かってきて大慌て。

さらには先ほどまでより大きくなっているため逃げる時間はほぼ全くない。


「私があれだけ隣町で遊んでいたのに、

こんなにも残っているなんて……ふふっ。」


どすぅぅぅんん! ずしぃぃぃんん!


長さは約一キロメートル、幅は四〇〇メートル以上、

足の指の爪までの高さは約一〇〇メートル。

そんな足が何度も何度も街に襲い掛かれば、

街には深さ十メートル以上の足跡が刻まれる。

地上の建物はもちろん、地下道や地下鉄の駅なども踏み抜いてしまうほどだ。

街の規模を考えると、

十回踏みつければ全体を一回以上踏みつけることができるだろう。

二分間で踏みつけを十回というのは彼女にとってはあまりにも簡単すぎる。

隅から隅まで丁寧に、一度踏みつけたところも念入りに、

人間の反応があるところをしっかりと踏みしめていく。


「そろそろ二分経ったかしら。思ったより簡単だったわね?」


彼女の足元はすっかり茶色の足跡だらけになっていた。

そこに街があったとは全く分からないほどである。

当然ながら逃げることのできた人間はひとりも居なかった。


ずしぃぃぃんん…… どしぃぃぃんん……


ゆっくりと彼女は最初の街の中心地へと向かう。

そして三分間待つという宣言をしてからちょうど三分経ったタイミングで

戻ってきた。


「さてさて、ちゃんと逃げたり隠れたりできているかしら?

 時間になったから、始めちゃうわね?」


ずどぉぉぉんん!


中心地を力強く踏みつける彼女。

百を超える建物がまとめて踏みつぶされてしまい、

その地区は足跡に書き換えられていく。

踏みつけによる地響きにより人間たちは動くことも立ち上がることもできない。

彼女はおにごっこと言っていたが、

彼女に追いかけられている間は逃げられそうにない。

三分間で移動できる距離というのは長いようで短い。

自動車を使う場合、街中ならば三キロメートル移動できれば充分だろう。

しかし三キロメートルというのは彼女にとっては一歩で届く距離である。

つまり、三分間待ったところで彼女にとっては大差ないのだ。


「私からは誰も逃げることなんてできないんだから。」


かくれんぼなのに鬼には位置が見えている。

必死に逃げても一歩で追いつかれてしまう。

どこに逃げても隠れても絶対に捕まってしまう。

あまりにも理不尽な遊びは街に居る全員を妖精が退治するまで続くのであった。



おしまい。



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