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※モブとの性行為描写が含まれます。
「ん……ンぅ…………あ゛………っ」
それなりに体格のいい娼夫だったが、少し前から声が途切れがちになっている。
最初はうるさいほど鳴いていたはずだが、三回目に達したあたりから反応が鈍くなってきていた。
四つん這いになった相手の腰を掴み、力強く中へと押し入っては、引く。
ぎりぎりまで引いては、根元まで強く挿入するたびに、一度中に出した精液が絡み、塗り込められていく。
娼夫の尻の穴は限界まで押し拡げられて、縁は赤らんでいた。
「おいおい、どうしたんだ。もっと愉しませてくれよ」
「ア゛、……も、……む゛り……っ」
泣き言には応えず、俺は一際強く腰を打ち付ける。
奥の狭まった場所を無理やり割り開かれ、娼夫は背を反らしながら「あ゛ぁーッ!!」と裏返った声で絶叫し、尻の中がびくびくと震えた。
俺が与える身体の中から湧き出る快楽から腰を引いて逃げようとするのを、強い力で押さえつける。
波打つように、娼夫の中が俺の怒張を締め付け続けている。
達しているはずだが娼夫のそこからは精液は出ない。
何回イかせたか数えてはないが、途中から何も出なくなっていた。
体が密着している。
顎から汗が一筋滴った。中を奥深く突き上げるたびに、互いの腰が当たりくぐもった音が室内に響き渡る。
俺の荒い息と、すでに喘ぎや嬌声ではなく呻きに近くなった娼夫の声が、暗い部屋の中で絡み合っていた。
「く、……ッ、出すぞ」
腰を打ち付ける間隔が早くなり、ひときわ奥にねじ込んだ時、俺のペニスから精液が迸った。
射精と同時に娼夫から、吐息にほぼ近いかすれきった声が洩れた。
俺のペニスからどくどくと精液が溢れてゆき、そのたびに無意識なのだろうが相手のアナルが収縮するように俺を締め付ける。
その時、がくりと娼夫の体から力が抜けた。締め付けていたアナルもじわじわと緩んでゆく。
中からずるりとペニスを引き抜くと、それはまだ硬さを失っていなかった。俺は汗を拭いながら、ゆっくりと体を起こす。
娼夫の体も……と思ったが、完全に意識を失ってしまっている。
うつぶせの体を返すと、股の間は精液か潮か、あるいは失禁の結果か……、ぐっしょりと濡れていた。
「ダメだな……くそっ……」
俺の飢えは、まだまだ満たされてないというのに、これでは不完全燃焼もいいところだ。
手を伸ばし、壁際の鈴を鳴らした。
この娼館の従業員を呼ぶためのものだ。
薄暗い部屋の中で、葉巻を手に取り、火をつける。
紫煙を味わいながら、窓辺へと向かった。
煤煙で月は見えない。
かわりに見えるのは、明かりのない深淵に沈んだ街なみだ。
振り返ると男と女が二人ずつ、ベッドの上に三人、ソファに一人、交わった時のままの足を開いた格好で横たわっている。
全員が意識を失っていて、股の間からは俺の注いだ精液が溢れ、太ももを伝い落ちていた。
「……」
その様子に、ため息が自然と漏れる。
再び外に視線をやる。
葉巻をくゆらせながらぼんやりとその様子を眺めていると、入口から呆れたような声が聞こえた。
「ひどい有り様だな」
振り返ると、そこには娼館の主が立っていた。
「グラントさんよ、確かにうちもこういう商売でお代をもらっちゃいるが、限度ってもんがあるだろう」
「……分かってるさ。けどなぁ、足りねえんだよ」
はなから説教など聞くつもりはなかった。
俺の中に交じる血がそれを許してくれないのだから、仕方がない。
俺は、自身の股間に視線を移す。
先ほど射精したばかりだというのに、散々使い込まれ色づいた怒張は既に天に向けて反り返り、血管を浮き上がらせていた。
そんな姿に店主はため息一つ、そして部屋から姿を消した。
一人、部屋に残された俺は、ふぅと再びため息をこぼす。
俺の欲望のはけ口となった相手が意識を失ったままのベッドに戻りその隅に座る。
天井を仰いだが、手はいつの間にか自分の性器に触れていた。
「……ッ、……」
考えるよりも先に、自然と手が動き、ゆっくりとそれを扱き始める。
精液と香油に濡れ未だ硬く張り詰めていた。
俺の持つ血の業とも言うべきか、強い渇望にも似た欲求はまだ満たされぬままだ。
年を重ねると共に多少は付き合い方を覚えたが、今日のように、何人抱いても治まらないほど激しい飢えと衝動に襲われる時もある。
見回し、まだ誰か相手が出来そうな奴はいないかと思ったが、どうやら全員幸せな夢の真っ最中のようで、起き上がる気配もない。
体力を使い果たし眠りに落ちたその表情が苦悶ではなく、悦楽に満ちているのがその証明だろう。
まぁ、魔人の血を引く俺との交わりはそりゃイイらしいからうらやましいこった。
だが、意識が飛んだ人間を、無理やり犯さない程度の倫理観はさすがの俺でも持っている。
それでも、してもしても、し足りない、まだよこせと俺の中の血が叫ぶ。
そんな時は、どんなに戒めても自分で止めることが出来ない。それが今だった。
こうなってしまっては、手当たり次第に誰かの肉体を貪るより、さっさと自分で抜いてしまった方がいい。
そうしなければ、わずかに残った人としての理性が倫理観すら消えてしまう。
無心で己の昂りをを扱いた。
技巧も工夫もない、ただただ精液を出すためだけの行為だ。
今し方射精したばかりだというのに、先端からは先走りが溢れ出てくる。
粘り気のあるそれは竿を擦る手に絡み、卑猥な水音を立てていた。
「……っ、う……」
喉がごくりと鳴る。
ペニスを握る手に少しでも力を込めれば、すぐにイけそうな気配すらあった。
徐々に息が荒くなり、室内に響く卑猥な音はどんどん増して行く。
そういえば、今日は何回出しただろうかと考えた。
全員、中に二回ずつは出したはずだから、九回か、十回か……我ながら化け物じみているなとは思ったが、射精感が高まるにつれそんなことはどうでも良くなっていった。
「く、……はぁ、……ッ……」
熱を孕んだ呻き声が自然と洩れた。
ペニスがどくどくと激しく脈打っているのを全身で感じる。
思考が曖昧になってゆき、身体の奥底から絶頂へと、もう幾度となく感じたものが上り詰めてくる。
尿道を質量を感じる液体が駆け上がってくる強烈な快感に自然と腰が浮く。
喉を反らして目を閉じ、ペニスを僅かに力を込めて握り込んだだけで、鈴口からは大量の精子が吐き出された。
幾度となく射精を重ねたにもかかわらず、シーツの上に散った精液は未だ終わらぬ欲求と飢えの強さをあらわしているかのように濃く、染み込むことなくその様を晒していた。
張り詰めていた息を吐き、どさりと背中をベッドに投げ出す。
「……」
手が枕元の葉巻を探る。何度目かの空振りの後にようやく掴み、口元に持っていった。
火を点けると、暗い部屋の中で紫煙が立ち昇り、天井にあたって広がってゆく。
それをせっかくの葉巻を味わうわけでもなく、ただ眺めていた。
「あー……腹減った……」
体を投げ出しながら、目を細めて吐きだした煙を見る。
腹が減る飢えと俺の血による飢えはまったくの別物だ。
だが、行きつけのあの店の料理を食べた時は、どちらの飢えも少しだけやわらぐような気がした。
「あいつの作った飯が食いてぇな……」
ひとりごとのような言葉に応える者は、ここにはいない。
そんなことを考えながら火のついた葉巻が少しずつ短くなってゆくのを、俺はじっと見上げていた。
END.