「ぁあぁああぁぁあああッッ!! あああああッッ、あああーーーッッーーー!!」
彼女専用に設えられた研究室で、最強の淫魔ハンターの媚肢体は淫猥に茹で上がっていた。瑞々しい艶肌は赤らみ、肉感の迫力も相まってむわりと白い湯気を幻視させる。特徴的な爆乳はパンパンに張り詰めて、これでもかとずっしりと量感を増していた。
蠱惑そのもののような女肉膨の中心にあって唯一、見るに堪えない窪みを結ぶ陥没乳首には、濁った汗の汁が溜まって溢れた涎を乳房に垂れ流している。
シオンは絶え間なく腰をくねらせ、拘束の証拠である金属音を鳴らしてはいるが、指1本として彼女の身体には触れていない。
否、触れられていないからこそ、ここまでみっともなく悶えているのだった。研究員から快楽を断つことを告げられてから、いったいどれだけの時間が経過したのだろうか。数時間? 数日? 数週間? 実際のところ、それがたった数分の出来事だったとしても、シオンにとってはもはや永遠のようにしか感じられない。
(切なすぎます……ッッ、あぁあぁッ、身体がッ、燃えるぅぅ……!! 燃えてしまいますぅぅ……!!)
予感はあった。半ば確信すらしていた。ときおり自分でも驚くべき貪婪さを見せる他には、長い付き合いである己の肉体なのだ。快楽に弱すぎる身体が、いざその快楽に飢えさせられた際にどうなってしまうのか、予想できないはずもない。
「あぁふぅぅ……ッッ、はひっ、きぃひぃ……っっ、はぁふぅッ、くぅふぅぅンッッ……!!」
股座から止め処なく滲み出る愛液は、その全てがもどかしい我慢汁だった。宣言通り、シオンはあれから一度の絶頂も許されていない。あれほど辛かったソフトタッチの愛撫すら、今となっては恋しくて仕方ないほど。
「乳房感度、上昇中。指輪魔力不活性……断続的に活性」
シオンの隣で淡々と実験記録を付けてゆく女研究者は、悶えまくる媚肉の躍動にもまるで動じることなくペンを走らせ、冷めた目で淫魔ハンターの痴態を観察している。
「膣部、臀部、感度の急上昇を確認。乳首……失礼。陥没乳首、隆起の兆候を確認。性感指数推定第4段階を突破」
自らの媚態が、温度のないただのデータへと変換され、記録されてゆく。厳重な拘束で身じろぎすら許されず、それでも本能的に身を捩らずにはいられない。異様なままならなさにマゾ心をカリカリと引っ掻かれる。こみ上げる羞恥も相まって、シオンは目の前の景色が溶けてゆくような錯覚を何度も何度も味わっていた。
もう、嫌というほど自分の喘ぎ声を聞いた気がする。蕩け、引き攣った声音は何の慰めにもならない。ショート寸前の脳髄が導き出した結論はひとつだけ。――イキたい。イッてしまいたい。思う存分イッて、楽になりたい。
「ぁあおぉぉくぅぅ……ッッ、はぉおぉぉぉッッ……!!」
指輪の効果によって高められる身体の感度は、一定の周期で飽和し、次の段階へ移行する境目がある。
そのたびに神経は絶頂と呼べる状態を通るのだが、その程度ではもはや、飢え渇ききったマゾ媚肉にとっては絶頂と見なし得なかった。むしろ、中途半端な法悦は渇きを促進し、肉芯の疼きを深める。
まるで、水分を求めて濃塩水を飲むかのような愚かさだ。もっとも、それすらもシオンが望んだことであるはずもなく、指輪の淫呪と研究員たちの正確な快楽管理が導き、かつて淫魔女王が手ずから仕立てた淫弱の肉体とがマリアージュを起こした結果なのだが。
(イキたいぃ……っっ、イキたいっ、イキたいイキたい……っっ、あぁあぁぁあぁ……ッッ……!!)
常に身体が痙攣しているのは、拘束台に茹で肌を擦ることで少しでも刺激を得たいから。シオンは限界を感じていた。触診時に感じていたのとは真逆の種類の限界だ。
そして、事態はより逼迫しているように思えた。絶頂として発散されない分、身体の昂りだけが異常値だ。これまでにも覚えのない淫疼に全身を絶えず炙られている。
触って、イかせて欲しいのに、それを耐えきるだけの自信はない。官能への誘惑は、シオンにとって絶望的な破滅の予感と一揃えだった。
それでも、肉欲の衝動は収まらない。むしろイキ狂う快楽を想像すると、マゾったらしい牝芯が涎を垂れ流す。
「……あまりデータの収集ペースが変化していませんね。困りますね。きちんと我慢して貰わないと」
「だって、こんなッ……、こんなあぁぁ……ッッ……!!」
触診と称した愛撫が止まっても、指輪の効力が失われたわけではない。強制的な感度の上昇によって、愉悦に喘がなければいけない状況は何ら変わっていないのだ。
なのに、要求されるのは無理な我慢ばかり。不可抗力の発情を咎められ、甘くイクたびに侮蔑の眼差しを注がれる。
「ですが、こちらの方が幾分かマシではありますね。このまま続けましょう」
「あぁうぅうぅぅ…………ッッ」
大人しくしていれば性感も和らぐのではないか、と淡い期待を抱くも、そもそも、完全に身じろぎを抑えることなど不可能だ。
通常ならばそんなことは問題にならないのだろうが、今のシオンにとってはわずかな摩擦さえ致命的な刺激となり得る。しかも、いくらシオンが気を強く保とうと思ったところで、肉体が勝手に快楽を求めて止まないのだから拒みようもない。
「んんぅうあぁあぁあぁぁ……ッッ、あぁはぁぁあぁぁ……ッッ」
目を白黒とさせ、自分の髪に肌をくすぐられて喘ぐ。そんな美乙女に快感を拒む意志があるようにはとても見えなかったが、これでも、研究員の指示に従って協力的な態度を取ろうとしているのだ。
(イキたいぃ……っっ、楽になりたい……!)
だが、そこに付き纏う妨害も根深い。気丈を保とうとする心を、浅ましい本能が上回っていることは紛れもない事実だった。
上がり続ける感度がいつまでも巡る生殺しの状況。それが果たしてどれほど辛いものであるのかは、シオン本人以外には想像もつかない領域だろう。
「はぁッ、はぁッ、はぁッ、あッ……!!」
不意に、塩辛い味が舌を刺激した。髪から、額から、顔中をしとどに濡らす汗が唇を滑って味蕾にまで伝ってきていた。
同じように濁った雫が、ポタリポタリと拘束台からも垂れ落ちている。厳しく戒められたシオンがそれでも尻や背中に摩擦を感じているのは、単純なことで、シオンの身体が大量のローションをぶっかけられているも同然の有様だったからだ。
「あふぅぅぅッ……!! ふぅッ、ふー……ッッ、ふーーー……ッッ」
ずちゅり、ぬちゃりと淫猥に奏でられる水音。拘束台に溜まり過ぎた汗は台下にも濃いシミを広げているほどで、そこだけを見ていても、シオンの身体中にある水分という水分が流れ出ているのではないかと思えてくる。加えて、涙に唾液に愛液にと、あらゆる体液を垂れ流すシオン。
「水分量の危険アラート……。もう、ですか」
「はへ……ッ、ひ、ふくぅ……ッッ、はぁ……ッ、はッ、はッ、ハッ……」
「投薬しますね。失礼」
「はぁ……ッ、ぁ、は、ぃぃ……。ふぅぅ……っっ、ふくっ……」
そうした脱水による危険症状は、もちろん事前に想定されていた。禁欲開始直後、膨大な量の薬品を用意されていると聞かされたシオンは周到に仕組まれた逃げ場のなさに生唾を呑み込んだものだ。
そして予定調和のように、研究所の技術力によって危機は防がれていた。栄養剤と精神安定剤が継続的に投与されている。
ただ、いくら辛かろうとも、研究員たちの最終目標は呪いの指輪を取り外すことなのだ。シオンを害することではない。むしろ、助けようとすらしている。
だからこそ逆らえない、ということでもあるのだが、疼きに耐えるシオンは女研究員に期待の目を向けた。ご褒美を求めてねだる顔には飼い犬の媚びがたっぷりと含まれている。
しかし、意地悪なご主人様はすぐに手元へと視線を落として、何事かをモニター室とやり取りするだけだった。
(熱い……熱すぎます……。また汗が……あああ……。薬が入ってくるだけで、気持ち良くさせられてしまいます……!)
注入の実感はほとんどないはずなのに、刺激に飢えすぎた神経は幻影じみた刺激をも追ってしまう。
ズゾゾゾゾゾッ……!! っと、粘着質な印象を含む水音が聞こえてきた。床に溜まったシオンの体液が、排水チューブによって吸引される音だ。
それがそのまま捨てられているのか、それともサンプルとして保存されることになるのか。いずれにせよ、シオンにとっては倒錯的な気分を煽られる音色だった。白く泡立った唾液が口元に纏わり付く。
「あ”ぁ”う”ぅ”……ぁ”ぁ”ぁ”…………ぉ”ぁ”…………」
屈辱に呻く被虐精神。甘美な痺れ。意識に朦朧と桃霧が立ちこめ始めると、シオンはヘラリと口元を歪ませ、虚ろな瞳を恍惚に彷徨わせることとなっていた。そんな夢見心地から快楽が行き過ぎれば、苦悦にて引き戻される辛い現実。その繰り返し。
「ッ”ぅ”ぅ”ぅ”ッう”ぅ”ッ…………!!」
生殺し最中の刺激は痛みに似る。全身を蝕む疼きが神経に侵入り込み、棘を撒き散らすイメージだ。肌が強制的にささくれ立って、ひどく逼迫した衝動が駆けずり回る。
じわじわと、快楽以外に何も考えられなくなってゆく。少しずつ少しずつ毒が染み込むかのように、快楽以外のことを考えている時間が短くなってゆく。まともな意識を忘れ去ってしまいそうになる。
「――さん。――――オ――さん」
「は、ひぃいぃっ…………?」
「シオンさん。投薬しますよ」
「っはひっ、わかひまひひゃっ……!」
どうやら名前を呼ばれていたらしかった。ふにゃふにゃと返事を紡いだシオンはもうそんなに時間が経ったのかと思いつつも投薬時の微悦に感じ入る。
水分補給に投薬を受けたのはつい先ほど――のはずだ。たぶん。恐らく。きっと。そんなことはどうでもよくて、狂ってしまいそうなほど身体が渇いて。喉の渇きなど気にもならなくて。
「――――シオンさん」
「ひゃひぃいぃぃッッ!?」
頬をペチペチと軽く叩かれたらしく、全身の筋肉がひっくり返ってしまったかのように引き攣った。
目を丸くして、研究員の女性を見つめ直すシオン。彼女は呆れたように、ため息混じりに首を振っていた。その仕草が、雰囲気が、シオンに対して心の底から軽蔑の感情を向けているような気がして、正気に戻ったばかりの淫魔ハンターは被虐の身震いを走らせる。
「脳波に異常が計測されました。限界ですか?」
しばらくして、その質問の意味を理解したシオンは何度も小さく頷いた。限界、どころではない。髪の毛の先から指の爪に至るまで快楽への期待がパンパンに詰まっており、感度そのものもあり得ない段階へと踏み入っている。
未だに狂っていないのが、シオン自身でも不思議なほどだ。……研究者たちはシオンの状態を詳細に把握しているのだから、当然、シオンが狂ったり壊れたりする前に対策を打つことは簡単だ。ただ、官能の世界に耽溺しているシオンがそうした瞬間を覚えていられないだけで。
こうして声をかけているのも、ここで一度落ち着かせなければ発狂に繋がるとデータが語ったからに過ぎない。すなわち、
「ええ。はい。安定しましたか。……実験継続は可能なレベルですか。了解しました」
「あ、あぁあぁぁッ!? どうし……ッ、て……ッッ!? げんかいぃッ、わらひッ、げんかいれすぅうぅぅッッ……!!?」
質問そのものにシオンが想像していたような意味などない。シオンが問いかけに応答できた時点で、すでに目的は達成されているからだ。
またしても機械的な観察記録に戻ってゆく女研究員。期待の風船をチョンとつつかれ、破裂させられてしまったシオンだけを置き去りに。
「も、もうダメぇぇ……ッッ……!! ダメれすぅうぅぅ……ッ、おねがひッ、しまひゅッ、イかせへぇッ!! イカへてくらひゃッ……いちどだけでも……ッッ」
舌っ足らずな哀願はどこまでも惨めで、淫魔ハンターの美貌は汗と涙でぐちゃぐちゃに濡れていた。
勝手に期待を抱き、限界から救ってくれるものなのだと一瞬でも思ってしまったがために、なけなしのプライドで保たせていた均衡が崩れた。溢れ出す切望は、間違いなくシオンの本心であった。快楽を求め浅ましく咽ぶ。ここまでの我慢を無に帰してすら、渇きから逃れたい一心で。
「まだ十分なデータが採れていないのですが……そんなにイキたいのですか?」
「う、うぅぅ……ッッ、は、ぃぃ……ッッ、イキたいッ、イキたいですぅ……! このままりゃわひゃひっ、くるっへぇぇ…………っっ」
唯一自由になる首を緩慢に縦に振り、恥を捨てて女研究員の言葉を肯定する。あまりに弱々しく、淫らがましい艶姿に、シオンを見下ろす女研究員の瞳には嗜虐の輝きが宿っていた。
「ダメですね。イかせたらイかせたで、シオンさんは狂ってしまいますから。それなら、このまま私たちで快感を管理している方がまだマシです」
「あぁあぁ……ッッ、そんなぁぁ……。でもっ、でもぉぉっ……!」
絶頂できる――かもしれない。この苦しみから解放される――かもしれない。目の前にチラつく選択肢は、気丈な美女ハンターの弱みを絡め取って離さない。シオンは涙ながらに快感を得られるだけの理由を探していた。聡明な頭脳は淫熱に蕩け落ちて、もう、気持ち良くなること以外に何も考えられない。
「そもそもこうなったのは――」
「……ッッ!?」
「イかせても焦らしてもままならない、その弱すぎる身体のせいなんですよ?」
「はぁふぅうぅぅ……ッッ、ふくぅうぅぅ……ッッ……!!」
額から秘裂へと、正中線をなぞって人差し指が滑り降りた。触れられてはいない。が、ソフトタッチにも満たない運指のささやかな空気の流れがシオンを悶えさせる。
触れて貰えるのかもしれない、という内心の期待も手伝っていた。またしてもそんな甘い幻想は裏切られた訳だが、ますます淫感を昂ぶらせたシオンは豊満な媚肉を揺すり、情けない泣き顔を女研究員へと向け続けていた。
どれだけ屈辱的であっても、今この瞬間、シオンを生殺しの地獄から救ってくれる可能性を持っているのは彼女だけなのだ。
ぴゅるっ、ぴゅくくくっ……。
「おや」
ぱっくりと割れる淫裂から透明な分泌液が漏れ出していた。イクにイケない我慢汁。ただでさえ汗塗れの股周りにむわりと湯気が立つ。漂うのは濃縮された牝の臭い。次々と滲み出てくる透明蜜は、涎か、あるいは涙か。
「刺激は与えていないはずですが。おかしいですね」
「うぅ……っ、あ、あぁぁ……っっ、あぁあぁぁ……っっ」
「確かめてみましょうか。……コレで」
わざとらしく小首を傾げつつ、女研究員が取り出したのは1本の筆だった。何の変哲もない、絵画に使うような普通の絵筆だ。
ただ、この場においては恐ろしい拷問器具にもなり得る。実際、シオンは筆を目にした瞬間、緊張に鼓動を跳ねさせた。ひとつしか想像し得ない筆の用途を察したからだ。
――――すぅ。
「ふッ……くッ…………ほォォ…………ッッ!!?」
筆先が空をなぞる。実際には、筆はシオンに近づいてすらいない。今も女研究員の手元で弄ばれている。だが、思考がドス黒いピンク色に染まってしまっているシオンは、滑らかに描かれた軌跡を見ただけでも浅ましい願望を引きずり出されてしまう。
「脳内で多量の快楽物質の分泌を確認しました。興奮状態が加速しましたね」
「あ、あぁ、あ……っっ、ひ……っ…………!」
淡々とデータを読み上げる女研究員の表情が、声音が、まるで全てを見透かしているかのようで。実際に、シオンの状態は余すことなく、シオン自身すら知る由のない段階まで掌握されきっていて。改めてその事実を突きつけられた途端、シオンの脳内に溢れ出したのは猛毒じみた多幸感ばかりだった。
シュリ……シュリリ……。
「くふぅうぅンンンッッ!?」
久しぶりの接触は触れるか触れないか、ギリギリのソフトタッチを喉元に。まるで飼い猫を愛でるかのように、白い咽を毛先がくすぐる。それに抗うどころか仰け反って喉を差し出し、紅い舌をこぼすシオンだ。
「あまり悶えないでください。それだけで感じてしまうんですから」
「らッッ……へえぇッ!! らへッ、はぁうぉぉぉッッ……!!」
「勘違いしないでくださいね。禁欲は継続ですよ。ただこれは少し、身体の状態を確認しているだけです」
データの搾取態勢は整いきっているのに、これ以上、何を確認する必要があるのか。シオンに答えは与えられない。彼女に与えられるのは得も言われぬ快感のみ。筆先の繊細なタッチは心地よいと同時に、激しくもあった。
普通ならば触れられていることにすら気づかないような刺激でも、焦らされ尽くし、いつ弾けてもおかしくないまでに性感を詰め込まれたシオンにとってはうねり来る濁流のようにしか思えない。
「あはふぅうぅぅッッ~~~ああッ、あぁああぁぁ~~~ッッ……!!」
喉だけでもいいように啼かされているのに、たとえば二の腕やあばらなど、敏感な箇所にほど近い部位を筆が掠めると、たちまち猫撫で声を上げて悶えまくるシオンだ。
波打ち、撓む媚肉は自分から柔毛を迎えにいこうとしている。だが、研究員たちはそんなシオンの反応まで全て予測済み。濡れ肌と絶妙な距離を保つ責め筆はシオンがどれだけ肉感を主張しようとも決してつかず、離れず。至福の擽悦を提供し続けて、ただあと一歩、本当に欲しい快楽には届かない、変わることのない生殺しの状態を維持していた。
「こんっ……あろぉぉ……! よけひにっ、ちゅらくぅぅ……!」
「楽にする、なんてひと言でも言いましたか? 勝手な思い込みはやめてくださいね。あなたのドマゾ妄想に付き合ってられるほどこちらも暇ではありませんので」
激しく痙攣し、粘汗の雫を撒き散らす極上媚肢体。意地悪な筆先の動きと、女研究員の冷ややかな声音が奇跡的なレベルでマッチしていた。燃え上がった被虐心が脳髄にもトロ火を点ける。悔しそうに眉根を寄せているのに、口元はだらしなく弛みきっている。実にマゾったらしい矛盾。
スス……ッ、スススッ…………。
「~~~~~~ォ”ォ”ッ!!」
付け根をなぞられた爆乳が迫力満点に揺れ撓んだ。炸裂する肉感はいっそ躍動的ですらある。すでに過敏な反応を見せている肉釣鐘だが、責め手は緩まない。たわわな乳房を縁取り、広い乳肌を掠め進む絵筆。
繊細な刺激を、乳房の細胞ひとつひとつが受け取っていた。恐ろしい速度で悦びが染み広がり、乳腺が開いてゆく。頂点の陥没乳首は未だ姿を隠したまま……だが、薄く濁り、窪みに溜まった汗にとろみのある液体が混じっている。
「あはぁぁぁっっ……!! んっあぁあぁぁ……っっ……あぁあぁぁ…………!!」
まろやかな肉峰の輪郭を全て曝ききられる頃には、切ない嬌声が抑えられなくなっていた。ぶるんぶるんと乳房を揺さぶり、どうにか最も感じる場所へ筆先を当てようとする。 しかし、逃げる責め筆を捉えることはない。膨大な疼きを塗り込められたまま、身を揺する刺激に感じることだけは許して貰えている。
度重なる甘イキが肉乳の内側で飽和していた。乳腺に沿って筆先が蠢きなどすれば、たちまちに仰け反る背中。不自由な拘束の最中で、精一杯に乳房のハリ艶が強調される。
ツツゥ~……、くるるっ、ツゥ~…………。
「ふぅくッ……ッッ、ッッ……!! ッくぅぅ……!! ……ッッ!!」
たかが絵筆1本で、それも掠めるようなソフトタッチだけで完膚なきまでに支配されてしまう恥辱。だが、随喜の涙は収まらず、歯を食い縛った口元からは唾液が溢れ出る。
巨大な乳房がむっちりと張り出し、乳輪を膨らませた。先端を縊らせた数センチほどもある樽型の乳首が乳肉の中で苦しそうに震える。劣等感の象徴が恥ずかしそうに顔を覗かせた。
「乳輪、極めて高純度の感受性を確認しました。他の主要性感帯と比較しても、興奮反応は軽く十数倍以上……ここがS級ハンター様の弱点のようですね」
丁寧に乳輪をなぞり回され、コンプレックスでもある陥没乳首に意識を集中させられれば灼け付くような恥悦から逃れる術はない。
たかが絵筆1本。それが、最強の淫魔ハンターを無力化するのに十分な戦力だった。特別な力もずば抜けた格闘技術も必要ない。そのどちらをも持っていながら指輪の淫呪に完封されている今のシオンなど、非力な研究員でも、子供でも、誰でも容易く与してしまえる存在なのだから。
研究者のシオンに対する言葉が、モルモットとして捕らえられている彼女のマゾヒズムを強かに打ち付ける。
被虐の羞恥心がぞくりと背筋を伝えば、シオンは身体中に鳥肌を立て、絶頂欲を倍増させた。
「はぁうぅふッ、くくぅッ……!! ほぉ”ッッ…………!!」
絶頂には届かない絶頂。仄やかな乳悦の果てを噛み締め、肉欲に薪をくべるだけの足りない衝撃に身を委ねる。
絵筆はようやく退いていってくれた。まだ肌には毛先の余韻が滞留している。そして、筆責めが止まった代わりに訪れるのは、またしても満たされぬ肉の渇きだ。辛かったはずのソフトタッチがいかにそれを誤魔化してくれていたか、堪え性のないマゾ女に思い知らせるかのように。
(あぁあぁぁっっ、そんな……! 余計に、ツラくぅ……っっ、これじゃ、あぁぁ……ッッ、ダメッ、ダメなんですぅぅ……!!)
ダラダラと涎を垂れ流す肉膣はうねり、満たされない女の虚に噎び啼いていた。何もされずとも開閉を繰り返す秘唇。分厚い姫ビラから顔を覗かせているのは、すっかり勃ち起こり、緩い包皮を被った大粒のクリトリスだ。どうしても膨れ切らない陥没乳首の代わりに主張を始めた肉豆が、女研究員にも目を付けられる。
「この皮被りのクリトリス――触って欲しそうですね」
また意地悪な問いかけだ。快楽に蕩ける頭でも、それが今まで通り、慈悲の言葉ではないことなど一瞬で理解できる。
なのに、シオンは惨めなほど首を縦に振り、視線だけで愛撫を懇願していた。
「いやらしく勃っていて、皮も弛んでいて、形状も歪に尖っています。さぞ遊び慣れていそうですね。サイズは元からですか? ずいぶんと膨れていますね」
「くひぃぃぃッ……! はぁッ、はッ、あ、あぁぁぁ……ッッ……!」
筆先が勃起豆を差した。触れられてはいない、寸止めだ。しかし、シオンの全身にはまるでクリトリスを鋭い針で刺し貫かれたかのような衝撃が駆け巡る。浅ましい肉欲が生み出した幻の刺激。
女研究員の指摘は、図星だった。確かに淫らな一人遊びの際、シオンは弱点の陰核を自ら嬲り苛め抜いている。だがそれは仕方のないことなのだ。淫魔に改造された肉体の疼きに毎夜耐えることなど、どんな聖人にも不可能なのだから。
「もしかして、淫魔に改造された、なんてホントは嘘で、あなたの身体がクソ雑魚なのは、あなたの自業自得なのではないですか、シオンさん?」
「うぅうぅぅぅぅ~~~ッッ~~~!!」
心底から見下すかのような言葉は、シオンの心の奥深くまで突き刺さるものだった。あまりの悔しさに涙が溢れてくる。己の根幹を否定され、淫魔に復讐を誓った決意まで貶められるかのような気分に陥る。
咄嗟に反論できなかったのは、何を言っても説得力がなさすぎるからだ。X字に磔られた裸体を晒し、改造済みの肉体と淫呪の指輪に翻弄されるまま散々に痴態を演じ続けてきた今となっては、もう。
(悔しいのに……っ、イ、イかせて欲しくて……ああ……。逆らえません……。これ以上はオカシクなってしまいます……!)
引き締まったくびれと男好きのする肉付きを両立させた細腰は、ヘコヘコと上下に跳ね動き、凌辱者に媚びを売っていた。拘束に制限された中で、必死に。苛めて欲しい陰核を差し出して踊る。
どんな悔しさもマゾヒスティックな悦楽に変換してしまう性奴のカラダは、無様を通り越して、滑稽ですらあった。
「触りたいんですよねコレを。この惨めなクリトリスを。弄くり回してイキまくりたいんですよね? 大好きなクリコキをされたり、皮を剥いたり被せたりしてほしいんですよね?」
「ああッ、ああッ、あああッッ!! は、ひぃいいぃぃ……ッッ……!!」
ぎこちなく首で頷く以上に、むっちりと肉付いた下肢が頷く。言葉によって思い出させられてしまった陰核を捏ね弄る快楽は、妄想を越え、リアルな媚悦電流となってシオンを痺れさせる。
「ダメです」
ピシャリと冷たく、斬って落とされる肉欲。シオンの美貌が絶望の色に翳った。目の前にぶら下がっていた甘露がまたしても取り上げられる。餌を待つ仔犬の瞳を彷徨わせるシオン。淫魔ハンターとしての矜持など忘れ去るほどに、快楽への飢餓感は深刻だった。
「ですが……」
「……ッッ!!」
「少しだけなら構わないとモニター室から許可が出ました。ただし、私は手を出しませんのから、気持ち良くなりたいならご自分でどうぞ」
言うや否や、女研究員は床からせり上がってきた椅子に腰掛け、バインダーを構え直した。いきなりのことに目を丸くするシオンだ。
どうぞ、と言われたところで、四肢を拘束されているシオンからすればできることなどせいぜい身を揺することくらい。それでは疼きを解消するなどほど遠いと、とっくに分かりきっているのに。
「さあ、どうぞ。……まぁ、その状態じゃ大した事はできないでしょうけど」
クスリと微笑む女研究員の態度に、結局はこれも焦らし責めの一環なのだと悟ってしまうシオン。
そう。シオンは厳重に拘束されており、腕も脚も使えず、大した事はできない。満足のいく自慰など夢のまた夢だ。だからこそ、許可も降りる。研究に支障が出ないのだから。 だが、それでもシオンに選択肢などない。淫呪のもたらす性への渇望に急き立てられた女ハンターは重々しく豊臀を揺すり、美爆乳を付け根から撓ませる。くねくねと無様に踊る肉感肢体。限界まで勃ち起った陰核を撫でてくれるのは、ほんのわずかな気流だけ。
「あぁぁッ、あぁあぁぁ……ッッ、あぁあぁぁぁ……ッッ……!!」
ミジメで、悔しくて、何よりも快感が満たされないことがツラくて。最強と評判の淫魔ハンターは、情けなく涙を流してもどかしい自慰に興じる。
否、それは自慰と呼べるようなものではない。拘束台に身体を擦りつけ、必死に身体を誤魔化そうとする。だが、仄やかな快美が飢え渇く女体に追いつくはずもなく、薄まった甘露を摂取することはむしろ、自滅的な行為だった。
(ダメダメダメぇッッ……!! ダメなんですぅぅ……ッッ、こんなのじゃ……ッッ、ああッ、あ”ぁ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”~~~ッッ……!!)
追い詰められた獲物は、時として思いも寄らない行動に出るものである。身を捩るばかりの刺激では満たされないと思い知ったシオンは舌を突き出し、首を捻り、頬を肩にひっつけようと藻掻いているようだった。
初めは何をしているのか分からなかったが、研究員たちは徐々に理解する。シオンが何をしようとしているのかを。そのあまりにも――滑稽すぎる行動理由を。
「へぉぉ……ッッ、へちゅッ、ンンン……! はぁッ……~~~ッッ!!」
シオンの視線は自らの腋へと向けられていた。爆乳へと続く媚肉がみっちりと詰まり、美しく整えられてはいるものの、その肉感のせいかどこか卑猥な印象が拭いきれない。そんな肉腋を凝視し、舌を伸ばしているのだ。
淫魔に躾けられた身体は全身が性感帯。すなわち、多量の汗に濡れテカる腋窩も例外ではない。シオン自身はそんな、フェティッシュな快楽であろうともお構いなしに反応してしまう肉体を恥じていた。
だが、そんなプライドにも縋れないほど追い詰められていたシオンは、どうにか強い性感を得られないかとそれだけを考えた結果、腋を舐めようとする、という行為に至ったらしい。
それがどれほど浅ましく、惨めな姿であっても、シオン本人は大真面目で、どこまでも必死だった。
「へぇうぅぅッッ、へりゅッ、クチュチュッ……! へッ、へッ、へッ、へッ……!」
羞恥は、屈辱は、もちろん殺し切れてはいない。恥辱の涙を溢れさせ、迸る背徳に脳髄を痺れさせながら牝犬の如く舌を蠢かせ続ける。
だが、X字磔の拘束姿勢は残酷だ。唾液を乗せた紅舌が肉窪に届くことは決してない。その縁にすら触れさせて貰えない。しかも、障害は拘束ばかりではなく、その大きすぎる乳房にも顎が引っかかり、腋舐めの邪魔をしていた。
腋を舐める、という倒錯的な自慰による快楽は、未だシオンの頭の中にしかなかった。唇の端から泡立った唾液が漏れ出す。舌の根が痛むほど突っ張らせても、なお遠いゴール。心なしか、汗ばむ腋窩が乳房や女膣と同じように強烈な疼熱を宿し始めていた。
「……ふふッ」
「…………ぁ、ぁぁ………………ッッ」
「いえ失礼。……あまりにも滑稽だったもので。そんな顔をせず、どうぞ続けて下さい」
つい漏れ出てしまった、といった様子の薄ら笑い。だからこそ、それはどうしようもなく研究員の本音を示していて、爆発的な羞恥と共に、腋を舐めようと夢中になっていたシオンは意識を現実に引き戻されてしまう。
「あ、あぇ……あぇぇ……ッッ、はちゅっ、へりゅっ、へぇぉぉ……っっ……!」
恥じらいの鉄槌を脳天に振り下ろされたかのようだった。瞳を虚ろに染め、舌を伸ばすことだけはやめられないシオン。ヂョロヂョロと秘裂から濁汁が漏れているのは、マゾ性感によって滲み出た牝液が膣壺には収まりきらなくなってしまったのだ。
「ぇ、へぇぇ……ッッ、へひッ……! へぇッ、へッ…………ッッ」
右がダメなら左、と頭を動かす。当然、左右で差があるはずもないのだが、聡明なはずの美乙女は淫熱にうかされて無駄な努力を繰り返している。攣った舌がビクビクと跳ね、唾液の光沢を纏っているのが艶めかしい。
「へぉおぉ~~~ッッ……!! ほぉ”ッ、ぇ”ぇ”ッ、ぇ”へッ、へぇ”ッ、ぇ”へへへぇ”~~~……ッッ……!!」
惨めったらしい濁声だけが部屋の壁に吸い込まれてゆく。女研究員はバインダーに顔を埋めて笑いを堪えており、その向こうのモニター室も――似たような反応なのだろうか。 1人の女が、凜々しいS級の淫魔ハンターであるらしい極上の美女が、グラマラスな肢体を捩り、爆乳を震えさせ、何をしているのかと思えば、自慰のために腋を舐めようとしているのだ。
これほど嗤うべき見世物も他にはないだろう。しかもその一部始終は、貴重なデータとして録画保存されることが決定している。S級淫魔ハンターシオンがこの場で演じた痴態は、この先永久に保存され、各研究施設や医療機関に出回ることすら約束されている……。
「へぅ”う”ぅ”~~~ッッ!! へぇ”ぇ”ぇ”~~~ッッ!!」
「ふっ、ふふふっ、シオンさん……。もうやめておきましょうか。ふふっ、これ以上は……あははっ! 私たちの方が保たなさそうですから」
恥ずかしく無様なばかりで、全くの無為に終わった腋舐め自慰……未遂だった。それも、面白すぎるから、という屈辱的な理由で制止されてしまっている。
うねる舌を引っ込ませ、赤らんだ淫腋から目を逸らしたシオンの美貌に浮かぶのは、後悔と絶望。あまりにもドス黒く濁り果てたマゾヒズム。
「う、あぁぁ……」
思い出したくもない痴態がぐるぐると頭の中を巡っている。淫魔ハンターとして、否、1人の女として失格の、あまりにも浅ましく、快楽に屈服した醜態。
そんな自涜を噛み締めてすら、被虐の乙女は脳イキを極めてしまう。牝犬のように舌を垂らして、倒錯的な悦びに瞳を潤ませてしまっている。
――それから、シオンには長い長い禁欲が課せられることとなった。
半日か、一日か、それともそれ以上か。実際にどのくらいの期間が経っていたのか、シオンには分からない。ただ、それがシオンにとって、永劫にも等しい苦悦であったことだけは確かだ。
理性を失い朧な表情で弱々しく絶頂を望む。
拘束台の上で研究員の女に”オナニーの御許し”を懇願するシオンだったが、そんな尊厳を投げ捨てた哀れなおねだりさえも無碍にされてしまう。
極限状態で延々と刺激のない時間を過ごすシオンに対し、研究員は残酷なまでに不干渉を貫いた。いっそ罵ってくれればそれだけでも今のシオンは絶頂できたというのに。
広大な砂漠で一滴の水を求めて延々と歩かされているかのような淫獄。全身を茹らせたシオンは時折何かに反応するように痙攣を繰り返した。
僅かに自由を許された手足の先をもじもじと捩らせ、首からを振り乱し髪の毛が首筋に触れる刺激を得る。その微妙な感覚にシオンは舌まで突き出して身悶える。
「はーっ、はぁ……っ、っあ……は…………」
そして水を求めるようにへろへろと伸ばした舌先の感覚にも甘いもどかしさを感じ取った。
常に欲求不満のシオンは、研究員が近付いた際の空気の流れ、拘束台と背面が擦れる刺激で絶頂の手前を行き来する。
今のシオンはどんな些細な刺激であっても貪欲に貪ろうとしていた。
そんな自分を自覚し被虐の羞恥が全身を炙る。ぞくりと背筋を震わせ、その痺れさえも媚肉の悦びに変換してしまう。
そして、ごく僅かな羞恥の絶頂を極めるが、次の瞬間にはより強い絶頂を求めて余計に身体を疼かせる。
「あ……ぁぁ…………」
こんな状況でも羞恥心が残っていることが余計に彼女を苦しめた。
研究員のシオンを見つめる蔑みの視線に泣きたくなるほどの心地良さを感じてしまう。
それがシオンを苦しめ、快楽の炎で身を焦がすという地獄のような悪循環。
シオンは無機質な研究所で、延々と悶え、狂い、泣き喚いた。
己の存在を形成する何もかもが、蕩け堕ちて流れ出ていってしまうのではないかと思えるほどに……。