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『オナホを買い替えた』

2020年11月21日に買ったオナホがあった。


丁寧に大事に、俺には子供がいなかったのでさながら我が子のように使って来た。

けれど、長期及び週3~5の使用、オナホ表面の綻びは大きくなり、ついに耐えきれず内から汁が漏れ出した。我が子の崩壊―――

岩の割れ目から噴き出す滝のように、細く、しかし確実に存在を感じさせる汁だ。

「もうこれ以上の使用は無理だ」

年老いた医者は言う、こいつは俺の幻覚だ。


でもその判断は幻覚じゃなかった、俺も薄々気づいていた、別れ・終焉の時。

そう判断した、せざるを得なかった、こいつは限界だった、カリを擦る力の弱々しさ、竿を包み込む弾力も衰え、少しずつ衰弱していく感触は気づかないうちに俺の心に刻み込まれていった、もう終わらせてやれ、と。

だから判断した、お前はもうおしまいなんだと。


その判断がどれだけつらかったかわかるかよ。

冬季のグランドジョラス北壁で、動けなくなり宙づりになった我が子、そして結ばれたザイルを切り落とすんだ。

硬いザイルに少しずつナイフの刃が食い込んでいく、プツリプツリと、繊維が切れていく音が悴んだ指に響く、骨に染み込む。「この音を忘れるな」。

やがてザイルは切れる、奈落へ、小さくなっていく我が子。


もう俺には送る事しかできない。

送ろう、送ろう。

そういった意味も兼ね先日引退セレモニーを開催した。

オカズは舞ちゃんをふんだんに使用した豪華なものだったのを覚えている。

セレモニーはとても盛り上がり(性的な意味で)、オナホはどこか笑っているように見えた。幻覚かな。

唇を触る、何年も前に辞めたタバコを吸いたくなった。夜の暗闇はずっと深いままだった。


よく聞く話、ペットロスを埋められるのはペットだけという話。ここではオナペットの話だ。

たしかにそれはそうだ、新しいオナホはあらかじめ購入していた。

通販サイトで注文し、あえて宅配ボックスには配達せず、最寄りの駅付近のコンビニで受け取る。

なんでそんな面倒な事をするか、くだらない事だ。


クリスマスにデパートで母親に買ってもらったおもちゃを開けたくて、帰路を急ぐ。

それを低い解像度で再現したいだけだ。

当時のように心臓は早鐘を打たない、早足で歩く自分に自嘲気味な笑いがこみあげてくる。

それでもいい、こみ上げてくるのは笑いだけじゃない。熱い迸りだ。


家に着いた、まず絵を描く、ルーティーンだ。

生活に組み込まれている、趣味の奴隷、しかし自分が奴隷であることに気づいていない。

気付かなければ奴隷ではないからだ。誇り高くいられる。


やがて日が変わり、シャワーを浴びて新しいオナホを開封し暖めた。


重い、重いな。

最初に感じた事、そしてだらりとした弾力。

今まで使っていたものよりずっとずっと重く柔らかい。

ローションを流し込み揉む、柔らかい、信じられない柔らかさだ。

何が起こっているんだ?何も起こっていない、俺が混乱しているだけだ。

夜の暗闇はずっと深いままだった。


テーブルに戻る、尻の下に小さなシートを敷く、新しい子に、俺自身をゆっくり沈めていく。

FANZAのセールで買った動画を開く、昔、そういうセールで買った動画でシコる事はハードボイルドじゃないと思っていた青臭い時代があった。

しかし今はそれは正しく、普遍的な事だと思えるようになった。

そう考えれば年を取る事も悪い事ではない。


「ズッ…プ…」


ゆるふわだ、キャッチコピーの通りだった。

俺の俺自身はゆるふわに包まれ動けなくなっていた。

呪いなのか、前の子供の顔が脳裏によぎる、顔?

そうか、祝福か。

わからなかったことが少しずつわかっていった、それは奥からこみ上げてくる衝動と比例していた。

一定の蠕動を経てゆるふわチンポは花を咲かせた。


この世界にはわからないことが多すぎる。

わかったと思ったことが結局は何もわかっていないなんてよくある事だ。

わからないまま終わる事が当たり前になってしまって俺はその答えを決して知ろうとしない。

それが良い事なのか悪い事なのかもわからない。

出しきったチンポはダラリとうなだれて俺の答えを待っているようだった。

なんて声をかければいいのかもわからなかった。

窓の外を見た、春の匂いが湿り気を含み、そこになにかしらの、生命の息吹だとか、木々の囁きだとか、そういったものが流れ込んでくることを期待していた。


しかし俺の目に飛び込んできたのは深い深い暗闇だった。

夜の暗闇はずっと深いまま俺の答えを永遠に待っているのだ。


なら教えよう、それは、祝福だ。


2025年5月

『オナホを買い替えた』

Comments

深ぇ…

へすreo

ネタが舞ちゃんなのにゆるふわ選んでるのはアンビバレントな何かを感じざるを得ない

たたかうカウボーイ

2025年に残る名文、碑に刻みこもう

蒼真

ペットロスというか太陽に墜ちて往くイカ臭いイカロス だが新しい世界に対する探究心を失わない素晴らしき漢

ソラ(最低

忘れてたがママ文章もイケる方なんだよな… それはそれとして……舞ちゃんのオカズ…?出しな……

黒井 鴉

ゆるふわチンポとは

木野一平

オナホって3年以上もつんだ…

tidus

あなた疲れてるのよ… ゆっくり休んで

SCP-1919810-JP-J

オナホは男を文豪にさせる、もとより文豪であるのなら殊更。季節外れの冷える夜に染みる名文

sundbird8219

ママの文章は染み入るな…

鉈野郎

全盛期のVIPみたいなノリ大好き

sue

ちくしょう読み入ってしまった

SUNGMA

今ニシンのパイをグロスでもらったときのマジョタクの女の子と同じ顔してる

mmmv

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myao

全米が泣いた

moonlight mask

とりあえず舞ちゃんをふんだんに使用したオカズを詳しく

鶺鴒

泣いた

いたずら黒うさぎ

ママは文豪

くどーゆーじ

たすかる

輪切りにして処分したのはわかった()

紅魔

怪文書すぎる

あいおー

「使い慣れたオナホが壊れたから買い替えました」というお下品なネタで美麗な文章でっち上げられると反応に困るからこれからも時々やれ。

fadotsu

何これ

YKMP


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