もっといろんなおにんぎょうあそび
Added 2024-09-24 12:49:47 +0000 UTCかしゃ、と目の前から音がする。 向けられているのはスマホのカメラだ。最近はそんなに必要なのかというほど高性能化したそれで、私は何枚も撮られている。 だけど、私は動かない。ぴくりとも。……三脚で立てられているビデオカメラが記録する映像はほぼ全く動きがないけど、それでいい。それを撮っているのだから。 「…………」 私の身分を述べるとすれば、どうなるのだろうか。住み込みのアシスタント、ということに表向きはなっているけど、基本的には何の手助けもしていない。というか、できないようになっている。 言葉を選ばずに言うなら、人形だ。私は人間ではなく、目の前の若い女……ご主人様のお人形さんである。自由なんてなく、勝手に行動することは許されない……現代的価値観に限らず、人の扱いとしては異常とも呼べる立場。私はそんなものに、互いの強い希望のままになり続けている。 乱雑に分類すれば、私はマゾヒストだ。ただ何でもされたいわけではなくて、痛いのや苦しいのにはさして興味がない。やりたいと言われれば程々にはやるけど、私のツボは少々マニアックなところにあった。 それが「お人形願望」とご主人様が呼ぶもの。飾り付けられて、人形のように動かず、可愛がるためだけの物品として扱われるのが好き。きっと拘束や束縛だったり、尊厳剥奪だったり、好き勝手に扱われる支配だったり、そういういろんなものが重なったものなのだと思うんだけど……アニメで女の子が魔法で人形に帰られてしまうシーンで目覚めたからか、完璧にハマったのがこれだった。 それとは関係ない紆余曲折もあったんだけど、最終的にはかねてからの旧友とパートナーと呼べる関係に落ち着いた。そんな旧友であり今はご主人様と呼ぶ人物は、同性愛は今どき市民権を得つつあるとしても、他者の全てを支配したいという少々困った監禁欲をどうにか創作物で紛らし続ける我慢の日々を過ごしていたらしい。好きな作品が共通したところから運よく互いの嗜好が大部分噛み合っていたことに気付いて以来、私の生活があまりうまくいっていなかったこともあって案外あっさり今の生活が始まった。 具体的には、週に五日は起きてから寝るまでずっと人形として自由を失い預けて、全てを支配された人形としてお世話されたり放置されたり、遊ばれたりする日々。週二日の休息日で人間らしさを取り戻しているのは慣れ過ぎて嫌にならないようにだけど、その間もご主人様こと紗綾から離れる気はない。それがまた紗綾を満たすようで、今ではべったりのカップルなのは私としても満更でもない。 人形へのなり方は様々だけど、ご主人様の好みとして「絶対に逃げ出せない籠の鳥」のようなものがあるようでがっちり拘束されるのはいつも共通していた。何もできない無力でかわいいだけの存在に貶められることは私の嗜好とも噛み合っていたから、それに嬉々として従っていたんだけど……今日は違った。 「…………」 写真の手を止めたご主人様はスマホを片手で持ったまま、投げ出されたままの私の手を甲のほうからそっと掴んだ。するとその手は何の抵抗もなく、腕自体の重量ぶんだけの負担を掴んだ手に伝えながらあっさり持ち上がる。そうして浮いてもどこにも力が入っていないまま、ぷらんと指先が垂れ下がっている。 ……そう、私は今、拘束されていない。なんとも珍しく新鮮なことなんだけど、今日の人形姿は物理的には一切制限されていなかった。 私は今、真っ白で肌色が透けない程度には厚手の全身タイツで頭まで包まれて、その上から可愛いけど普段着にはしづらい甘ロリを着せられている。加えて頭には白のセミロングという現実感のないウィッグを着けられて……だけど、それだけだった。 あとはただクッションに包まれるような配置でソファに座らされて、全身から全ての力を抜いているだけ。力を入れるなという命令だけで拘束は何一つされず、一方で素肌は一切露出されない上に、顔は真っ白な無地になったことで確かに人形っぽい見栄えになっている。 「…………」 掴んだ手に何度か腕を振らされて、そのままの勢いでぽいと投げられる。その間も力は抜いたままで、されたままのものを受け入れて座面に手を投げ出した。さながら、糸の切れた操り人形のように。 それを見届けたご主人様はとてもご機嫌な表情で、自分は普段着のまま人形の私を持ち上げた。腋の下に手を差し込んで、小柄で体重もない私のことを軽々と。急激に近づいたから全身タイツ越しにご主人様の至福の表情が見えて……下着は一切着けていないせいで直接触れている布地が敏感なところに少し擦れた。 だけど、私は力を入れすらしない。人形化といってもいろいろあるけど、今回はこんなふうに動かされてもだらりと垂れ下がった姿を表現するのがいいと思ったから。それなら、ちょっと気持ちいいくらい我慢して当然だ。人形なのだから。 ご主人様は私をそのまま横倒しにして……わざとスカートが大きく捲れるようにした。するとその中身、タイツに覆われ白くのっぺりとした股間部が露わになる。 「…………っ」 ……さすがに、恥ずかしい。だってそこには、それが人間の女であるたったひとつの表れである、水気の染みがはっきりとできているのだから。 こんな扱いをされて濡らして、自ら人形扱いを受け入れ力を抜いているのが目の当たりにされたのだ。恥ずかしくないわけがない。だけど、それを含めてこの“作品”は完成するのだと、私にもわかってしまった。 私はそのまま力を入れず、なされるがままに寝かされた。ソファに収まりきらず溢れるように落ちた片腕も引き戻さず、くたりと寝たままになった。心臓は高鳴っているし染みは広がっているけど、それも無視してただ動かずにだけいる。 できる限り呼吸も目立たないように努めている私をだらしなく緩んだ顔で見下ろしたご主人様は、一度足音を立てながらカメラの向こうへ去っていき……今度は足音を消して戻ってくると録画を止めた。 だけど、私はまだ動かない。私が人形なのは撮影のシチュエーションでの演技ではなく、ご主人様と私の深く浅ましい欲望が絡み合った幸せな日常によるものなのだから。 「おお、今回はだいぶ伸びてる」 私たちは最近、自分たちの趣味として行っていたプレイを少しずつ外の同好の士にも発信するようになった。 SNSで活動用のアカウントを作って、そこで写真や動画を投稿しているのだ。ご主人様の普段のほうのアカウントとは完全に切り離して、事実上の私のアカウントとして。といっても本当に日常でこんなことをしているというのも悪目立ちするから、公開するのはほんの一部。たまにカメラ付きで遊ばれたり放置されたりして、尺もある程度までカットした上での投稿だ。 その内容は私たちのプレイの中からさほど選り好みしないから、人形プレイという以外はある程度雑多になる。露出していたりいなかったり、玩具があったりなかったり、顔も覆われていたりメイクだったり。ただ傾向としては拘束されていることが多いけど、それも今回は例外だった。 だからある程度抑えられているときと露骨なエロのときの差も激しいんだけど、どうやらどちらも受け入れられているようだった。だからもはやどれが特に気に入られて伸びるかなんて私たちにもわからない。 「ま、うちの人形かわいいもんね……いい匂いまでするのは、みんな知らないだろうけど」 「ん…………」 それはご主人様が楽しむためと言ってわざわざ別の、自分のより高いシャンプーを用意しているからだろう、とは思うけど、口は開かない。猿轡はあれば楽しむし好きだけど、なくてもなるべく喋らないのが人形だ。 私は今、ご主人様の膝の上に置かれて抱かれながらそのアカウントと支援サイトの様子を見ていた。ラバーのボディサックに閉じ込められて、芋虫同然になってしまった体からそれでも力を抜いている。 「まあ楽しんでくれるのは嬉しいけど、あくまでお裾分けだからね。まいは私のものだし」 「ぅ…………」 私にはその独占欲は心地いい。人形として扱うだけなら見た目的には必ずしも拘束が必要なわけではないのに、ご主人様が好んで身動きを封じてくるのはその溢れる独占欲の表れだ。 もがいて確かめて楽しむか、拘束がなくても変わらないような脱力にするかはその時次第だけど、私はどちらも好き。何もかもを支配されて可愛がられる一方で、ご主人様にとっても何より大切なものであるのが幸せだった。今も私の後頭部に鼻を押し付けて吸っているご主人様に、ぴっちりしたラバーを楽しみながら身を委ねている。 画面に並んでいるのは、たくさんの私の痴態たち。玩具地獄に必死に喘いでいたり、自分から人形を演じていたりと方向性はさまざまだけど、どうやらこういうのが好きな人は相当数いるらしい。まだ始めて幾ばくもないのにフォロワーは五桁に届き、支援サイトも尺の長いものがあるだけで大半が無制限公開と内容は変わらないのに順調に支援者が増えている。 中にはその界隈では有名なニッチ系イラストレーターや他のフェチ動画投稿者の名前も。この絵師さんだって、表垢でご主人様の本来のアカウントと交流があることなんて知る由もないのだろう。 それどころか某アダルトグッズメーカーの会員サイトで動画を出している面々も揃ってフォローしてきているのだ。これにはご主人様も製品を動画に映して媚びていた。 「嬉しいねー……こんな形でも、認められるのは。私たち、もう本性では人間社会に溶け込めないと思ってたけど」 「んっ……ぅ、ふ……んぅ……」 そんな人々に、たくさんの人たちに、私は人形として見られている。楽しんでもらえているし、中にはきっと私を見て自分を慰める人も少なからずいるはずだ。 願望や欲に素直に生きていくことを一度は諦めた私たちが、好き者たちにとはいえ受け入れられている。それはどうしようもなく嬉しかった。 別に私たちとて、厳格に人形扱いを守り抜いているというわけではない。今だってご主人様は、ふつう人形にはやらないであろう動作で私のラバー越しの胸を揉んでいるし、そんな幸せな感触に私は耐えられずにびくびくと震えている。 我慢できずに硬くなった乳首が薄くローションを纏って、ラバーに擦り付けられ続けているのだ。単純に女としての快感が響いて、疼いて腰も動いてしまうのは仕方ないこと。だから私たちの線引きは、「意識的に動かないこと」や「わざと喋らず、なるべく声も我慢すること」くらいの緩いところにあった。 「ほら、これとかいつもよりだいぶ。スカート捲ったところをショート版ではカットしたのが良かったのかもね」 「……っ」 最新の、拘束なしの白マネキンのSNS動画を見ながら、ご主人様は私の股のあたりを上からなぞった。私は思い出してしまって顔を赤らめてしまったけど、口は開けない……いや、開かない。 動いてはいけないのをいいことに、ご主人様はあのとき私のスカートを思いっきり捲り上げたのだ。素肌に直接全身タイツを身につけていた私は、人形プレイで当たり前に爆発した興奮で思いっきり濡らしていたそこをじっくり撮影してしまっていた。 そのシーンは支援サイトのロングバージョン限定になったんだけど、それによってどうやらある程度エロに振っていない人たちの目にも留まったようだった。私たちのアカウントとしては露骨すぎるくらいの性的アカウントであることを、改めて強調しておくことになったほどだ。 おまけに支援サイトのほうのコメント欄にも「わかる感じがいい」とか「ご馳走様です」とか、ファンからの受けもよかった。わかりやすい拘束はない分、普段からのファンからの受けは今回はさほどでもないと思っていたんだけど……垣間見えたモノは満足いただけたらしい。 …………いや、そりゃもう、とんでもなく……下手をすると丸出しの回よりも恥ずかしいんだけど。 「こういう雰囲気のも、今度もまたやろうね。次は黒で……どんな服がいいかな」 「んっ……ぁ、! …………」 それを思い出したのと、承認欲求が健康によくない満たされ方をしてしまったのと……胸と割れ目を外からぐにぐに弄り回されたことで、私は絶頂してしまった。全身を固くして痙攣させて、伸びて喉を鳴らしてとバレバレだったけど、こういう致し方ないものならセーフというルールだから何も言われない。 それどころか構わず続けられるせいでなかなか降りてこられない中で、囁かれたもう一度を想像してまた興奮が増してしまった。真っ黒な全身タイツはよりフェティシズムを誘う気がするから、どんな姿になれるか私も楽しみだ。……濡れてもわかりづらいから、他のどんな辱め方をされるかだけちょっと怖いけど。 ひとつわかっているのは、私は確実にそれも楽しめるということだけだった。 その翌日の午後八時頃。私は全身を頭まで覆うインナースーツで包まれて、既に視界は塞がれている状態で待機させられていた。 スーツはミスト・スランバーが会員限定販売しているもので、お高めな代わりに長時間着用に向いているらしい。それを着せられているということは、つまり。 「はい、あーん」 「あー……ん、ぐ…………ぅ」 声が出ないような大きめの猿轡を噛まされた。今回はハード志向らしく凶悪なディルドギャグだけど、その中に細い管が通っている。鼻は塞がっていないから、これは呼吸用ではない。 続けて腕を取り上げられると、無抵抗の私の肘を畳んでからまとめて包帯で巻かれていく。マミフィケーションは初めてではないけど、以前とは素材と感触が違った。今回はこの外側にさらに身につけるものがあるから、ストレッチフィルムだと暑いだろうという判断だ。 半分の長さになってしまった腕の包帯をしっかり留めれば、反対側も……ただし、こちらは手の中に小さなリモコンを握らされた。それを巻き込みながら同様に。それから一度仰向けに倒されて、両脚も巻かれてしまった。……このスーツは割れ目のところが開いているから、この姿勢はかなり恥ずかしい。 「一回押してみて」 「ん」 寝転がったまま右手と右肩がくっついたところを軽く触れられた私は、指示通り握り込む形で添えられている指でリモコンのボタンを押した。……少し離れた位置で、短く水が流れ出るような音が聞こえる。 私は事前に今回使うものを全部見ているんだけど、このスイッチは押している間だけ水が流れる仕組みだ。確認と披露が終わったらボタンから指は離しておく。 続けて、曝け出していたところにリモコン式の玩具を取り付けられていく。つけられるところには片っ端からつけられてしまっていて、全く容赦がない。 それから腰を軽く持ち上げられた。爪先で転がされているベッドから体を浮かせて手助けしてから戻ると、腰の下には何かが敷かれているのがわかった。股間部を玩具ごと覆うように装着されていく。これ、大人用のおむつだ。 露出したままと大差ないくらい恥ずかしいけど、そんなことはお構いなし。短くなっている四肢を真上に向けるように整えられてから、私の上に大きく柔らかい一方で形がしっかりしているものを被せられた。 「…………っ」 触れて感じるのは柔らかいクッションだけど、それぞれ用意されたスペースに入れられた四肢は大幅に可動域が狭まった。ばたつこうとしても緩やかに手を振るくらいの動きにしかならないほど。 それごとひっくり返されて、一度首を曲げて潜り込むようにして頭もスペースの中へ。これの中は今の私の格好と同じ形をしていた。 しっかり入ったら頭のあたりにご主人様の手が潜り込んできて、猿轡に何かが繋げられる感覚。再び右肩を叩かれたからボタンを押すと……口の中、というよりは喉の奥に直接、水が流れ込んできた。 OKを示すサインとして大きく縦に頷けば、手は離れていった。要はこれは給水装置だ。こんなものがあるということは、それが必要な長時間のプレイになる。 「じゃあ、楽しんでね。くまさん?」 「ん……」 背中側でファスナーが閉まっていく。お尻のあたりから首の後ろまで上がったそれは、カモフラージュに隠されつつ小型のロックを掛けられた。どちらにせよ私は自力で出られはしないけど、これで事故で開いてしまったりもしない。 そう、ご主人様が言った通りだ。私は今、大きなくまのぬいぐるみの中にいた。全身をふわふわに包まれて、いつも以上にモノに貶められて……そして外から見たら、中に人がいるとすらわからないようにされてしまっている。 完成してからではわからないから、今回は作成過程を動画として撮影されていた。こんな願望に塗れた、ちょっと気軽にはできないほど本格的なプレイを、ファンに見てもらえるらしい。 ……嬉しい。目覚めたきっかけになった少女アニメでのシーンがまさにぬいぐるみだったから、ちょっとした夢だったのだ。 こうなってからだと、もう起こされてしまえば本当にわからない。妙に重かったり、触れば感触が変だったりはするけど、それだって誤魔化しは効いてしまうだろう。 完成してすぐはやってもいいと許可を得ているから、このままカメラの前で動いてみる。といっても畳まれた脚では歩くどころか立ち上がれるはずもないから、まともに動くのは腕だけだ。それも、ふりふり、なんて効果音がつく程度でしかない。 「……っ」 あまりの無力さにぞくりときた直後、ご主人様に手を取られた。といっても握られたのはぬいぐるみの手で私の肘のところなんだけど、そのまま緩く振るようにされれば私はなすがまま。抵抗はやろうとおもえばできるけど、やるつもりもない。傍からは本当にただの人形にしか見えないはずだ。 そのまましばらく遊ばれていると……インターホンが鳴った。 「お邪魔します」 入ってきたのは心ちゃん、最近いろいろあって仲良くなった大学生の女の子だった。今日はこの時間に約束していて、うちでお泊まり会をすることになっていた。 そして私はその間、明日の朝までこのまま。今日はご主人様と心ちゃんのお泊まり会で、そこに私は含まれていない。 「うわ、よくできてますね……」 「でしょ。好きに触っていいからね」 ちなみに、このプレイのことは隠す気はなかった。ないものとして扱ってこっそりぬいぐるみの中、というプレイも考えはしたんだけど、冷静に考えてバレないわけがなかったから。なにしろ相手は心ちゃん、彼女は兄の彼女とレズSMを嗜む同好の士だ。 そもそも私の存在と関係や嗜好を知っている上に、やたら大きいぬいぐるみが鎮座ましましていれば気付くなというほうが無理がある。わざわざ事前に伝えてはいなかったけど、カメラは回されっ放し。案の定即座に見抜いていた。 そんなわけでこれから一晩の間は、マゾ人形が封入されたぬいぐるみと一緒にサド女二人がお泊まり会。何が起こるかは今更想像するまでもないけど、それでもあくまで徹底的にぬいぐるみとして扱うのがルールとなるだろう。私も何をされても、ぬいぐるみのままでいなければならない。 私はこのために早めの夕飯を済ませてあるけど、二人はまだ。遅めの晩餐会が聞こえてくる間、これだけ期待させられた私は完全に放置でお預けを喰らっていた。 これも予定通りの流れで、ぬいぐるみらしい扱いだ。そもそも玩具に過ぎないのだから、遊ぶ時以外は見向きもされなくて当然だから。当然この間も容赦のないカット編集が前提とはいえ撮影はされている。 「お湯いただきました」 「うん、しばらくくつろいでて」 先にお風呂に入ってきた心ちゃんが戻ってきて、入れ替わりでご主人様が出ていく。わかってはいたけど、心ちゃん一人きりの時間も生まれてしまった。 彼女のパートナーから聞くに、この心ちゃんは悪戯っ子系のけっこう遠慮のない責め方をしてくるらしい。それが私にも向くかはわからないけど……何も見えない私の前に、正面から抱きついてくるような感触があった。 「ふわふわ……」 「……」 なんでもない、ただ大きなぬいぐるみに埋もれるような普通の扱いだ。あとで見たところによれば可愛らしいネグリジェに加えてちょっとした地雷系のような黒い布のマスクを着けて、全身でぬいぐるみに甘えてくる。 だけど、私と動画の視聴者にとってはそれはそんな単純なものではなかった。そのくまさんは人が封じ込められた背徳的なぬいぐるみなのだ。画面越しにどう見えているかもなんとなくは想像がつくし、私は柔らかい綿クッションの向こうに小柄な体を感じる。 だけど、心ちゃんはお構いなし。少し硬めの芯のような感触はしているだろうに、全く普通のぬいぐるみのように扱って抱き締めてくる。楽しそうに、日常のストレスから解放されて甘えるような仕草で。 当然だけど、甘えられる側の私にできることは何一つない。撫でることもできやしないし、そもそもそんなことを試みて動いたらお仕置きは間違いない。ただ変なところに触れた感触に反応してしまって、ひとりでにぴくぴくと震えるくらいだ。 とにかく、ぬいぐるみであり続ける。……やたら嗅がれているような気がするけど、雌の匂いはしないはずだ。たぶん。スーツとおむつで全身を覆われているし、少なくとも自分の嗅覚には今のところおむつから漏れてきた匂いなんかも届いていない。体臭なんかもインナースーツで遮断されている……と思うんだけど。 「ふぅ……あ、これ」 「ん…………っ」 ぬいぐるみの足の間に膝を立ててカメラの方へお尻を突き出す姿勢だったり、そのぬいぐるみの開いている足のさらに外を跨ぐように座ったり、心ちゃんも感触から想像するに際どいポーズをしている気がする。小悪魔系とはいえまだまだ少女らしさの残る容姿の彼女だけど、自縛に失敗していた同居中の兄彼女へ迷わず迫ったという話も聞くし、案外大胆なのかもしれない。 そんな心ちゃんはしばらく抱き締めて楽しんでいる様子だったけど、やがて傍らの座面に置かれていたリモコンの存在を思い出すように手に取った。そこにあることはわかっていたから覚悟はしていたけど、いざ遊ばれるとなると身構えてしまって……ずっと興奮しっ放しで期待していた体は、弱振動で早くも跳ねてしまった。 「おおお……」 「……、……っ」 決して大きな動作ではないものの、密着していた心ちゃんには当然ダイレクトに伝わる。中に入っているモノとそれが受けている仕打ちを理解したのか、わずかに戸惑いつつもすぐに感心したように、次いで楽しそうに声を上げた。 乳首の、それにクリのローターに、膣に深々と宛てがわれたバイブ、それに……。いくつもあるリモコンはそれぞれに対応していて、細かく調整して反応を楽しめる玩具になっていた。それを受けて必死に動かないようにしながら反応させられる私としてはたまったものではないけれど、やはりサドの血が疼くのか好き勝手弄り始める心ちゃん。口が塞がっている分荒くなる鼻息も至近距離なら感じられるからか、気配だけで楽しそうだとわかる。 「……あ、これいいかも」 「ん、ぅ…………!」 しばらくするともっと楽な体勢を取りたくなったのか動き始めたものの、密着から離れる様子はない。くっついたまましばらくもぞもぞ、結果的に堪能される形となって……やがて、ぬいぐるみを背もたれにして座る形で落ち着いた。 ぬいぐるみの方に抱かせるように短い腕を動かされて、心ちゃんの肩を押さえる形になる。凭れかかってくる重みがしっかり感じられたけど、成人女性としても軽いそれは私にとってもどこか心地いい。 「ふぅ……こんなことする歳でもないけど、けっこう……」 「……っ、ん…………ぁ、!!」 ただ……そこまで落ち着いても、細かくリモコンを操作し続ける遊びは収まらなかった。むしろ密着部位が増えたからかどこがどう動いているのかわかるのが楽しそうで、操作はより細かく、振動はより強くなっていく。 最終的にはさもマッサージチェアのように、胸のローターから届くほんのわずかであろう振動を肩に、バイブからのさらに弱いはずのそれを腰に受けて気持ちよさそうにする始末。 完全拘束に加えて徹底的にモノに貶められて、玩具扱いされながら椅子にまでされて、ぐっと押し付けたクッション越しにも届くような振動で責め立てられたマゾが耐え切れるはずもない。私はさほど時間をおかず本気でイってしまったけれど……伝わらなかった。心ちゃんは気付く様子すらなく楽しみ続けていて、これでは動画でも伝わるかどうか。 結局そのまま強い範囲内で振動を変化され続けて、ご主人様が長風呂から帰ってくるまでそれが止まることはなかった。そこそこ荒い呼吸をしても許してもらえたのは、それがなかなか重労働だったことを察してのことだったのかもしれない。 「…………よい、しょっ、と」 「軽いですね……」 「そうなんだよね」 そのまましばらく二人がかりで遊ばれ続けて、ときに振動すら止められて放置もされて、そろそろ深夜にも近い時間……のはず。たった今まで流れていたテレビの音から推測しただけで、そもそも視界がないぬいぐるみに正しく時間を知る術なんてない。 予想はしていたけれど、やはり二人はぬいぐるみと一緒に寝るつもりのようだった。私が人形しとして生きていることもあってこの部屋にはキングサイズ一つきりのベッドへ、二人がかりで抱えて運ばれることとなった。こんな姿勢での拘束の中、ぬいぐるみの皮ごと持ち上げられるのは少しだけ不安になるような浮遊感がある。 体型は人形として見栄えするくらいを保っているけれど、私の体重が軽いとはご主人様には常々言われている。心ちゃんがどこか羨ましそうに、羨ましがる資格もないだろうに呟いているけど……生憎、ちょうど私はそれどころではなかった。 「…………っ」 「ん? なんか震えてるような」 「あー……ふふ」 あまり、直接的な言葉は使いたくない。私は今回十二時間かそれ以上をぬいぐるみとして過ごすことになっているし、給水器もつけられてさっきの遊びの後は使っていた。それに、愛液対策でもあるとはいえぬいぐるみの中にはおむつを穿いている。 初めてではない根源的な屈辱と生理現象に震えてしまった私を、ご主人様は見逃してくれた。わかっていない様子の心ちゃんに答えることはなく、ベッドの中央まで引きずってから私を横倒しにしてくる。 いいものであるらしいおむつはその前に大量の愛液も吸っているはずだけど、それでもまださらさらのままだから気分以外は気にならない。それが水分を吸い切るまでの時間を稼ぎつつ、新たな引きずられる屈辱を与えてくれたのはわざとかどうか。 仰向けではなく横倒しなのは私の負担のためだろう。このぬいぐるみは関節部は案外動かないから、仰向けだと腕はともかく脚が立ったままで休まらないのだ。 「じゃあ、そろそろ寝よっか」 「はい。おやすみなさい」 そのままご主人様が後ろから抱き締めてきた。これだけプレイが続いても、純粋なぬいぐるみ扱いはまだまだ新鮮な興奮を誘ってくれる。こうして抱かれるのが一番幸せなのはやっぱり、ご主人様のことが好きだからだと思う。 続けて心ちゃんは正面から、今度は楽な姿勢で抱きついて顔を埋めてきた。そろそろ純粋にふわふわのものが好きなのだとわかってきた彼女も、こうして心置きなくくっついて遊んでくれるのは私としても嬉しい。腕枕にされているから痺れそうだけど、そのくらいは構わないし。 さすがに寝かせてはくれるようで玩具は止まっている。やはり自然にしているよりは負担なのか、私は興奮の中でも二人とさほど変わらない速度で眠りに落ちた。 ただ……止まっていても装着はされたままだとすっかり失念していた私は、リモコン操作で間抜けな姿を晒しながら起こされることとなった。そのまま一番恥ずかしい開封と後処理を心ちゃんに手伝われた挙句、お仕置きとして翌日の人形プレイを心ちゃんにも遊ばれてしまったけど、それも楽しかった、かな。次は心ちゃんのパートナーも一緒に、と私から言い出して約束したくらいには。