夜の街を俺は千鳥足で歩いていた。
大学の部活の飲み会が終わり、酔い覚ましを兼ねて徒歩で帰宅することにしたのだ。部活仲間と飲み屋の前で分かれ、フラフラとしつつも繁華街を抜けていこうとしていた。
(今日もミキ先輩可愛かったなあ……今度遊びに誘ってみてぇなあ……)
本当ならば俺は大学に入ったらチャラチャラした軟派なサークルで遊び暮らすつもりだったのだが、高校からやっていたラグビーを大学に入ってからも続けてしまっていたのは、一学年先輩のマネージャーに一目ぼれしたためだった。
もちろん男子校あがりの俺に女子マージャ―を口説くスキルなどあるはずもなく、いまも絶賛童貞継続中である。
ほろ酔い気分でかの女子マネとの妄想にふけっていた俺は、誰かの肩におもいっきりぶつかってしまった。
「あ、すいません」
慌てて謝りつつ相手の方を見やると……自然と目線が自分の頭一つ分上に向けられた。目の前にいたのは非常にガラの悪い大男だったからだ。
「おお、痛ェなあ~」
大男のかけているサングラスと髭のせいで俺には相手の表情はよく分からなかったが、何か思いがけない獲物を見つけた肉食獣のような迫力があった。
「兄さん、なんか体鍛えてるみてぇだなあ。こんな立派な体にぶつかって来られたら、か弱い俺なんか痛くて痛くてたまんねェよなあ~」
俺よりはるかに筋肉質な体のくせに、確かめるように俺の体をまさぐりながら言った。
「あ、ご、ごめんなさ……」
大男は何も言葉は聞こえないとばかりに体をまさぐり続け、俺の背後に回ってややかがみこみ、俺の耳に口を近づけて囁いた。
「おい兄さん、人にぶつかっておいてごめんなさいだけで許されるだなんて思ってねェよなァ?」
……それから俺の長い夜が始まった。
ここからはいつものセリフ無し版です
岩山ゲンタ
2025-02-20 19:38:07 +0000 UTCヒトシ
2025-02-19 11:48:30 +0000 UTC