仕事帰りのタヂカラオと待ち合わせしてご飯を食べ、ちょっと寮にお邪魔する事になった。お茶を淹れてもらい、落ち着いたところでタヂカラオは満足そうに言った。
「いや~、せっかくの転光日なのに、寂しく仕事だけの一日なのかと思っていましたが、まさかサモナー殿に祝っていただけるとは」
俺はギクリとした。思いっきりタヂカラオの転光日だという事を忘れていたのだ。強面の顔をニコニコとほころばせた嬉しそうなタヂカラオを見ていると、腹が減ったので彼を誘っただけだなんてとてもじゃないが言えない。
だが俺も数多の闘いを潜り抜けてきたギルドマスターだ。こちらも笑顔を一切崩す事なく言ってのけてやった。
「転光日祝いに、タヂのいう事を何でも一つ聞いてあげようと思ってね」
「え、うえええっ!?な、何でもでありますかっ!???」
「うん何でも、だよ。いつもタヂカラオがああしたい、こうしたいって思っている秘めたとんでもないお願いだって聞いてあげるよ。いつもいつもタヂカラオがコッソリと一人で考えている、公共の場じゃ決して口にできないような妄想の数々を叶えるチャンスだよ」
俺は転光日を忘れていたというピンチをチャンスに変えることにした。目の前の男をからかう事にしたのだ。
このタヂカラオという男は、体ばかり大きくて毛むくじゃらで一見男らしく見えるが、何を隠そうヘタレである。こういう肝心な所で必ず一歩下がるような選択をする。
だからこんな挑発的な事を言っても、絶対に何もしない……何もできないのだ。
だから俺は安心してタヂカラオをからかう事を続けられる。面白い。
「こ、公共の場で口にできないような事ッ……!?、ほ、本官はそそそそんなハレンチな事考えたりしないでありますッッ!!!」
「そうなの?俺はてっきりタヂカラオのぶっとい腕でを組み伏せられて、人には言えないようなあ~~んな事やこ~~んな事をされちゃうのかと思ってたのにな。今ならそ~~んな事やど~~んな事もいう事聞いてあげるのに」
やれやれ残念、という顔をして言ってのけてやった。
タヂカラオは顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。楽しい。
「あ~がっかり。何もないのなら、また今度何かつまらないものをプレゼントするよ。こんなつもりじゃなかったんだけどな。今日は元々タヂのいう事を何でも聞くつもりだったから準備してなかったんだ。いやあ残念無念。もう遅くなったし、俺はそろそろ帰ろうかなあ」
立ち上がって自分の荷物を手に取るフリをしていると背後から――タヂカラオの方から――何かブチッと切れる音がして、そして両肩を捕まれ強引に引き戻された。
「本当に何でもいう事を聞いてくれるでありますか?」
俺はいつの間にかギラギラした目をした飢えたケダモノの前にいた。
ヤバイ。
からかい過ぎたのだ。
いつの間にか警察の制服の前をはだけたタヂカラオの眼力の前に、俺は射すくめられたかのように動けなくなっていた……。
続けてオマケのセリフ無しです