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【無料小説】意識転移アプリ②~スプーンとして使われ、魅了される~

(お、俺は……弁当箱のスプーンに入ってしまったのか…!?) 自分の身体に視線を移して、気づく。自分の身体は真っ白で平たい形状になっていて、プラスチックのような素材でできているように見えた。そして足先はお椀のような形になっていて、食べ物をすくって食べるのに適切なデザインとなっていた。 「「間違えちゃったよー…」」 上空に、巨大な瑞樹のやや困った顔が浮かんでいた。俺の意識を自分の私物の何かに移そうと思っていた瑞樹は、間違えてスマホをタップしてしまい、今から食べる予定だった弁当箱に付いていたスプーンに俺の意識を送ってしまったのだ。 「「また4時間このままなんだね」」 (え……) 瑞樹がスマホの説明画面を読みながら呟く。どうやら一度意識が送られてしまったら、4時間経つまで解除することはできないらしい。あくまで4時間が過ぎてから、自動的に元の肉体に意識が戻るとのことだった。 (最悪だ…。夕方までこのままなのか……) 授業が終わるまで自分の肉体に戻れない事実を知り、がっくりとする。そして、それとは別に…。自分の意識が入ったこの物体の用途を思い出し、不穏な感情が脳を渦巻いていく。 「「お弁当、どうやって食べよう……」」 巨大な瑞樹が、思案している。その様子に少しだけ安心する。さすがに、幼馴染の意識が入ったスプーンを使うことはしないみたいだった。いくら友達のように遊んできた幼馴染であっても、同い年の男子をスプーン代わりに使うなんて高校生女子のすることじゃない。あんな大きな唇で咥えられたら…。 (っ……) 変な光景を想像してしまい、俺はかぶりを振る。俺の貧弱な身体よりも大きな口にスプーンとして使われたら。どれだけの迫力があるのだろう。どんな感触なのだろう。昨日シャーペンとして使われた時に瑞樹の唇に軽くキスされたときの感触を、思い出してしまう。 「「瑞樹ー、一緒に食べよ」」 「「あ、うん!」」 「「何スプーン見つめてるの?」」 ズンッ!ズンッ! ガラガラッ…… 瑞樹と仲の良いクラスメイト、中野と堀山が、強烈な地響きを鳴らしながら瑞樹の机に集まってくる。机の上にいる小さなスプーンの俺から見上げれば、ビルのように大きな中野たちの上半身が巨大な影を落としてきて、かなり怖い。そのまま周囲の机をガラガラッ!!とずらし、3つの机をくっつけて3人で弁当を食べる準備をし始めた。 「「?瑞樹、どうしたの?」」 「「早く食べよーぜー」」 「「あっ…うん、そうだね」」 瑞樹はぎこちない反応を見せる。それもそうだ。どうやら今日のお弁当にはチャーハンが入っていたようで、スプーンしか入れられてなかったらしかった。俺の意識が入っているスプーン以外、お弁当を食べるための道具が無いのだ。 「「………」」 ぎゅっ…… (ひぃっ……) 瑞樹が俺の胴体を右手で掴み、じっと見つめてくる。何かを考えているようだった。…既に中野と堀山はお弁当を食べ始めていて、瑞樹もそれに合わせて食べ始めなければいけないような状況となっていた。 「「はあ……まあいいや。…使っちゃうよ?」」 囁くような瑞樹の声が、吐息と共にスプーンの俺に浴びせられた。 (…………は?) 瑞樹が何を言ったのか、すぐにはよく分からなかった。使う?何を? すっ…… 瑞樹は右手で掴んだ俺を、お弁当箱のチャーハンの海に向けて降ろしていく。 (ちょっ……何をっ…!?) にちっ…… 少しだけ乾いたチャーハンに向かって、俺の足元から腰下あたりまでが突き刺さる。実際は、スプーンのお椀の部分が突き立てられたのだが。柔らかい米粒がにちゃっ、と簡単に割れる音が聞こえる。冷えた柔らかいチャーハンの感触が下半身を埋め尽くし、何とも言えない感触に身震いする。こんな大量の食べ物に身体を包まれたことなんて、人生で一度も経験したことが無い。 がぼっ…… 「「………」」 スプーンでチャーハンの一部を掘り起こした瑞樹は、それを自分の顔の前まで持ってくる。 (ま、まさか……おい………) 下半身にチャーハンを乗せた状態の俺は、巨大な瑞樹の顔の前まで持ってこられ、気が気ではなかった。瑞樹が今から何をしようとしているかは明白だった。俺の身体に乗せられたチャーハン。それを、この巨大な瑞樹の口が捕食するのだ。俺はおっきな右手で握られたまま、その捕食から逃げることは叶わない。 「「…あー……」」 にちゃっ……♡ (あ……ああ……) 目の前で開かれた、あまりにも巨大すぎる唇。きちんと手入れされた綺麗な唇の間から、生暖かい吐息がむわあっ…♡と吐き出される。その奥には、唾液でぬらぬらと光る巨大な舌。その表面はざらざらしていて、粘性のあるよだれでコーティングされて光っていた。その周りには、臼のように大きな恐ろしい歯。本気で噛まれれば俺の身体など簡単に砕け散ってしまいそうな、強靭な歯がそこには並んでいた。…この口内が、いままでずっと遊んできた幼馴染のただの口の中とは思えなかった。 そして、 「「はむっ…♡」」 にゅるんっ…♡ (ああっ……!!??) 巨大な女の子のむっちりとした唇が、俺の足先から太もも当たりまではむっ…♡と咥えこんだ。 (み、みずきの…くちびるがっ……) あまりにも刺激的な感触だった。この世でこんなにも大きくて柔らかいものがあるのか、と思えるほど、巨大でむっちりとした唇は甘美な抱擁を与えてきて。表面が綺麗な唇に吸い付かれ、俺の華奢な身体を四方からむにっ♡むにっ♡と唇が変形しながら挟み込んでくる。 「「んんっ…」」 そして唇の奥に囚われた俺の足は、異常な熱気と水分に包まれていた。口内で作り出される唾液がたっぷりと混ざった高湿度な空気が、俺の足をサウナのように蒸していく。また、俺の足のふくらはぎあたりには。 にゅるんっ…♡ (ひゃあんっ…!!♡) 巨大な舌がねっとりと密着し、ざらざらした感触を押し付けてくる。女子の舌が足全体に押し付けられるという異常な体験。女の子のデリケートな部分に身体ごと押し込まれているという事実に気が動転し、怖いのか、興奮しているのか、自分でも分からないくらいに感情がぐちゃぐちゃになっていく。 「「んっ……」」 にゅるにゅるにゅるっ!!♡♡ (っっっ…あああっっ!!♡) チャーハンを口の中でとらえた瑞樹が、俺の身体を唇の隙間からにゅるにゅるにゅるっ♡と一気に引き抜く。俺の腰あたりを咥えていた巨大リップの表面が、臀部、太もも、ふくらはぎ、足先までえっちなむにむにの感触を与えながら滑っていく。腰に吸い付かれただけでその甘美な抱擁に骨抜きになりかけていたのに、一気に下半身全てを唇の柔らかさで制圧されてしまう。 「「くちゅっ…もぐっ…んちゅっ…♡」」 幼馴染の唇に心を奪われかけた俺の目の前で、さっきまで俺の身体に乗っていたチャーハンが容赦なく咀嚼される音を聞かされる。瑞樹の唇が大きく動いて歪み、チャーハンを栄養とするべく舌と歯で擦り潰して飲み込んでいく。…俺の身体とさっきのチャーハンの体積なんて、そこまで変わりはしない。それが今、瑞樹の口の中で簡単に咀嚼されて跡形もなく飲み込まれていっているのだ。どこか、他人事とは思えない自分がいた。 「「んくっ……はぁー……」」 むわあっ…♡ 咀嚼したものを全て飲み込んだ瑞樹が、口を開けて一息つく。ほのかにチャーハンの匂いが混じった熱気が、スプーンの俺に浴びせかけられる。巨大な口の中からはあれだけ量があったチャーハンが跡形もなく消えており、ピンク色の舌がぬらあっ…♡と恐ろしく蠢いているだけだった。 「「午後の授業、なんだっけ?」」 「「国語じゃない?宿題やらないとー」」 俺を取り囲む巨大女子高生たちは、雑談に花を咲かせながらそれぞれのお弁当の中身を次々に口の中に運んでいく。普段女子が食べている様子など気にもかけていなかったのに、小さいスプーンという立場から見ると、どこか恐ろしいような性的なような、変な感情が芽生え始めてしまう。 「「よっと」」 にちっ…がぼっ… (っ!!またっ…待ってくれ…!!) 心の整理がついていない俺を使って、瑞樹は次のチャーハンを持ち上げる。言葉すら喋れない俺の気持ちなど瑞樹に届くわけもなく。巨大な幼馴染は、昔から仲の良い男子の足先に向かって自分の大きな唇をためらいなく近づけていく。 「「はぁむっ…」」 むにゅぅ…♡ (ひぁんっ!!) ふかふかの上唇と、張りのある下唇が、俺の太ももあたりを一気に包み込む。キスするような優しい動きではなく、捕食するためだけに無意識に唇が動かされる。その何気ない唇の動きに翻弄されている状況に、異常な興奮が生まれてくる。 「「んんっ……」」 にゅるにゅるにゅるっ♡♡ (っっっっ……♡♡) 瑞樹がスプーンを唇の間から引き抜く瞬間が、一番刺激が強かった。むにむに柔らかい唇と俺の身体の間で唾液が潤滑油となり、ぬりぬりっ…♡とえっちな感触を強引に塗り込まれるのだ。引き抜かれる度に心の中で喘ぎ、快感に身をのけぞらせてしまう。 「「あむっ……んんー…」」 にゅるんっ…♡ぬりぬりっ…♡ (あああっっ!!♡ひぁぁっ!!♡) 何度も何度もチャーハンを口に運ぶ瑞樹。俺はなすすべもなく、幼馴染の唇の柔らかさを何度も何度も教え込まれる。少しづつ、下半身を包み込む巨大な唇の感触や温かさを受け入れ始めている自分がいる。 「「ねえ、瑞樹のチャーハン美味しそうだね」」 「「美味しいよ~お母さんが作ってくれたんだ♪」」 「「一口ちょーだい!」」 「「あ、えっと……」」 中野が身を乗り出し、あーんして、と言わんばかりに口を突き出す。瑞樹は一瞬スプーンである俺の方をちらと見て、戸惑った反応を返す。 「「………」」 少しだけ思案する様子の瑞樹。さすがに他の女子にスプーンを使わせることなんてしない、はずだ。確かにここで断ったら変な空気になりそうだけど、ここはしょうがないよな…。 そう思っていたのに。 「「はい、いいよ」」 にちっ…がぼっ…… 瑞樹はチャーハンを一口分すくうと…中野の巨大な唇の前に差し出したのだった。 「「やった♪あーん…♡」」 むあっ…♡ 中野の大きな唇が開かれ、俺の下半身に乗せられたチャーハンを迎え入れようとする。クラスメートの生暖かい吐息を全身に浴び、まじまじと見たこともない中野の口内の様子を大パノラマで見せつけられる。真っ赤な舌も巨大な歯も、おいそれと男子に見せつけていいようなものではないはずだ。それを見せつけられているという現実が、俺の自我を「人でないもの」として塗り替えていく。 「「あむっ…♡」」 むにゅうぅ…♡ (柔らかいっ、熱いっ、中野の、唇がっ……) 特にすごく仲が良いわけでもないクラスメートのデリケートな部分が、思い切り俺の身体を挟み込む。瑞樹とはまた違った唇の匂いがあたりに充満し、中野の唇に支配されていることを実感させられる。 むにゅんっ…♡ (ああっ!!!♡) 「「んぐ、もぐ……」」 知らないうちにクラスメートの男子に巨大なキスを浴びせた中野は、呑気にチャーハンを咀嚼し始める。その中野の巨大な顔を改めて目の当たりにした俺は、この中野の唇に挟まれたのかと実感してにわかに恥ずかしくなり、少しの屈辱感と性的な倒錯を感じていた。 「「瑞樹、私も欲しい~」」 「「分かった分かった、あげるよ」」 身を乗り出しておねだりする堀山に対して、もはや瑞樹は何の躊躇もなく、スプーンで次のチャーハンを掘り起こす。そしてそのスプーンを、堀山の口の前に差し出した。 「「~~♪」」 差し出された俺を、笑みを浮かべながら見下ろす巨大な堀山。その顔はあまりに巨大で、少し前まで同じ教室で過ごしていた女子とは思えなかった。まるで大きな怪物に食べられようとしているような、そんな感情だった。 「「あー…♡」」 にちゃあっ…♡ 開かれた上唇と下唇の間で、透明な唾液の糸がいやらしく引いている。 「「んむぅ…♡」」 むにぃ…♡ (あ…ああ……) 普通の女子なら恥ずかしがるはずの唾液を、容赦なく唇で塗りたくられる。堀山に下半身ごと咥えられている異常な状況。…俺は巨大な女子たちの唇に次々に挟まれ、何か被虐的な興奮を感じ始めていた。抵抗できない俺を次々に柔らかな唇で押し挟み、キス以上にえっちな感触を流し込まれる。おっきな女子たちの唇で支配されることが、こんなにも刺激的なんて。俺はクラスメートとしての意識も忘れて、スプーンとして使われることに悦びを感じ始める。 「「これ美味しー♪」」 「「でしょでしょ~」」 中野と堀山の口内にチャーハンを届け終わった俺は、再びご主人様である瑞樹の口の中にチャーハンを運ぶ作業を強いられる。 「「あむっ…♡」」 にゅるんっ…♡ (ひゃんっ!!!) 昼食の時間が終わるまで、俺は瑞樹の唇の柔らかさをこれでもかというほど教え込まれたのだった。 ------ 「………」 「あはは、どうだった?」 意識が身体に戻って目が覚めた俺は、保健室のベッドの横で呑気に笑っている瑞樹を寝たまま見上げていた。…俺は瑞樹にスプーンとして散々使われた後、蓋が閉められた暗い弁当箱の中で退屈な時間をひたすら過ごした。そして、持続時間の4時間が経った夕方、ようやく保健室で寝かされていた俺の身体に意識が戻ったのだ。 「ど、どうだったって……」 俺は、散々勝手に意識を振り回されたことを怒ろうと思っていた。しかし、いざ目の前の瑞樹と相対すると。 (………) どうしても、その口元を見てしまう。数時間前、俺の下半身をえっちに包み込み続けた唇。あの大迫力の巨大唇を思い出してしまい、ドキドキと動悸が早くなる。 「あれ、以外と嬉しかった?」 「っ…そんなわけないだろ!」 ニヤニヤしながらこちらを覗き込んでくる瑞樹。本心を見透かされたような気がして、顔を赤くしながら言い返すしかなかった。 「そんなこと言って、芽衣ちゃんたちにスプーン代わりに使われて、ちょっとドキドキしたでしょ」 「いや……」 本当は、目の前の瑞樹の唇に一番ドキドキさせられていたのだが。瑞樹には俺がそういうことを考えているという発想は無いみたいだった。 「まあ、また退屈な時に使ってあげるよ」 「っ…なんで上から目線なんだよ…!」 "使ってあげる"という何気ない言葉に、ドキドキしている自分がいた。瑞樹に、物として使われる。それを想像すると、即座に拒否する言葉が出てこなかった。 瑞樹はそんな俺の気持ちに気づいていない様子で、けらけら笑いながら保健室を後にしたのだった。 ------ それからというもの。瑞樹はたまに、朝の教室で俺に声をかけてきた。 「ねえ、今日暇だしアプリで遊ばない?」 瑞樹が物体化アプリの画面を見せながら、囁くように提案する。その提案が耳に入ると、俺の心臓は途端にバクバクと跳ね上がり出す。今日は瑞樹に物として使ってもらえる日だ、と。全身が期待し始める。 「い、いいけど…」 「じゃ、いくよー♪」 おもちゃで無邪気に遊ぶ子どものようなテンションで、瑞樹はスマホを俺にかざすのだった。…何に意識を移そうとしているかは一切知らせずに。 ------ 意識の移し先の定番は、筆記用具のうちのどれかだった。瑞樹が使っている可愛いデザインの筆箱の中の、色んな筆記用具の中のどれか。消しゴム、色ペン、定規、スティックのり…。俺は色んな筆記用具となり、瑞樹の大きな手に包まれながら使われた。 …俺は瑞樹の筆記用具になることに気持ちが依存し始めていた。瑞樹の大きな柔らかい手に一方的に握られて使われることが、完全に私物として使われる屈辱感が、何故か興奮に変わってしまっていた。自分よりも背が低くて力が弱いはずの女の子の手の匂いに包まれて、指紋を押し付けられて、使い終わったら雑に机の上に転がされる。そうなれば、次に使ってもらえる時までご主人様の巨大な顔を下から見上げるしかなかった。 決して、大変じゃないわけではない。 「「~~♪」」 ぎゅっ、ぎゅっ… (痛いっ!熱いっ!!) 消しゴムに意識を移された時は、地獄だった。強引に掴まれたかと思えば、俺の後頭部をノートの紙にぐっ…と押し付け、そのままぎゅっ!!ぎゅっ!!と思い切り擦り付けられるのだ。後頭部がゴリゴリ削られる痛みは尋常でなく、瑞樹が字を間違えてこちらに手を伸ばすたびに絶望感を与えられた。 人の後頭部を地面に擦り付けるなんて、ものすごい拷問だ。なのに、絶対他人にそんなことをしないはずの瑞樹は、消しゴムである俺に平気でそれを行ってしまうのだ。何故なら、俺は瑞樹の私物でしかないから。…そんな理不尽な状況にも関わらず、俺はどこかで、瑞樹に一方的に痛めつけられることを望んでいるような気さえし始めていた。 しばらく俺を色んな筆記用具として使った瑞樹は、やがて他の私物にも意識を移して遊び始めた。 ある時は、小さなヘアゴムとして瑞樹の太く長い髪を束ねさせられた。 「「………」」 ズンッ…!!ズンッ…!! (ひっ、ああっ、くっ……) ブラウン色の綺麗な髪は、人間のものとは思えない程太くて大きい。それを全身で何とか束ねている俺は、持ち主が歩行する度に髪と一緒にぶんっ、ぶんっ、と容赦なく振り回された。 (良い匂いがする…) 幼馴染の髪は丁寧に手入れされていて、シャンプーのさわやかな香りがヘアゴムである俺に染み込んできた。午後あたりからは少しだけ甘酸っぱい汗の香りが混じり始め、活発な女子高生としての生々しい匂いを嗅がされることとなった。 そして、本当の地獄は部活が始まってからだった。 「「こっち、パスっ!!」」 ドンッ!!ドンッ!!…キュッ!! (っっ!!??ちぎれるっ!!死ぬっ!!) うだるような暑さの体育館の中で、瑞樹がコート上を激しく駆け回る。恐ろしい足音が爆音で鳴り響くと共に、ヘアゴムで束ねた瑞樹の髪は右へ左へ、激しく振り回される。あまりの揺れの激しさに一瞬で吐き気を催すも、吐いて楽になることすらできない。細いゴムの身体の俺は、瑞樹の揺れに付いていけず千切れ飛んでしまうのではないかとすら思ってしまう。…普通に考えればそんなわけが無いのだが。激しく動く巨人の身に付けられた私物がいかに地獄のような思いをしているか、俺は思い知ることとなった。 また別の日は、お気に入りのワイヤレスイヤホンに意識を移された。 「「んしょ…」」 ぐいっ… (み、耳が…こんなにデカく…!) 休み時間中に音楽を聴くため、イヤホンを自分の耳に近づけていく瑞樹。俺の身体より二回りも大きな巨人の耳が視界を埋め尽くす。今まで人の耳をこんなに至近距離で見たことが無かっただけに、本当に見ても良いのかとこちらが恥ずかしくなってしまうほど。しかし耳の中は綺麗に掃除されていて、柔らかいような固いような耳の表面に俺の全身が埋め込まれる。 「「~~♪」」 俺の身体から流れる音楽に、ご主人様は鼻歌を歌いながら上機嫌になっていた。…こちらからは、ご主人様の耳の穴しか見えないのだが。あくまで瑞樹の身体の一部としか相対せない自分の矮小さを身に染みて感じた。 そんな風に、定期的に瑞樹の私物として使われる日々。たださすがの瑞樹も、ややデリケートな接触があるような私物には俺の意識を移さなかった。…あの時のスプーンのように。あの時は事故的に意識が移ってしまったために仕方なく使ったという感じだったが、瑞樹だって恥ずかしかったはずだ。当日は何でもないような素振りで俺をからかっていたが、それ以降はそこそこ無難な私物への転移が多くなっていた。 そんな日々の中で、俺はスプーンとして使われたあの時のことを度々思い出しては、興奮に耐えきれず自慰を行ってしまっていた。巨大な瑞樹の身体との濃い接触。人間としての一線を越えた使われ方。もう一度、瑞樹にあんな使われ方をしたい。歪んだ期待が、心の中で育ち始める。 …教室では、瑞樹の私物にしか目がいかなくなっていた。瑞樹の唇に押し付けられるリップクリーム。むっちりと健康的な脚に履かれた紺色のハイソックス。大きな指で常時撫で回されるスマホ。時折口を拭いたり鼻をかんだりするティッシュ。唇の間から放出される吐息や唾液を受け止めるマスク。…あの私物たちは、どんな気持ちで瑞樹に使われているんだろう。苦しいだろうか。大きな身体で無意識に使われて大変だろうか。ご主人様の身体に密着出来て嬉しいだろうか。 おかしな感情が屈折に屈折を重ねて。 俺は、自分のスマホに物体化アプリをダウンロードしていた。 (こ、ここに…確か……) ある日の朝の、まだ誰もいない教室。瑞樹の机の上に置かれたカバンを、俺はこっそり物色していた。本人は授業用のカバンだけ教室におき、バスケ部の朝練に行っていた。 (これ…マスク……だよな……) 今日使う用であろう未使用マスクが、カバンのポケットから出てくる。にわかに動悸が激しくなる。 ピッ…… 瑞樹のマスクにスマホをかざした俺は、すぐに下駄箱に向かい、学校を早退した。近くにある廃墟の中で人知れず、意識を失うために。 ------ ガヤガヤ…… (…みんなが登校し始めた……) 俺は瑞樹のカバンの中の暗闇で、ご主人様を待ち続けた。朝の教室にクラスメートたちが到着し始めている。恐らく、バスケ部の朝練も終わっているはずだ。 ズンッ!!ズンッ!! 巨人たちの歩行で断続的に揺れるカバン。 ズンッ!!ズンッ!!ズンッ…!! 一つ大きな足音が近づいてきたと思ったら、かなり近い所で音が止まる。 ジーーーッ…… 「「………」」 (き、きたっ……!!) 天が切り裂かれ、暗闇だったカバンの中に光が差し込んでくる。その先に、瑞樹の大きな顔が見えていた。 「「よっと……」」 ガサガサッ!! 大きな手がカバンの中に侵入し、がさごそと私物をかき回し始める。何を探しているのか、そう思っていた瞬間に。 ぎゅっ…… 「「ん、あったあった」」 平らな白い布となっていた俺の身体を巨人の手が無造作に掴み、外の世界に引っ張り上げた。 (み、瑞樹……!) 巨大な瑞樹の顔が視界いっぱいに広がる。大きな目がこちらを見ているが、無感情なその目は明らかに人間を見る目ではなかった。…今までとは違う。瑞樹はこのマスクに俺が入っていることに気づいていないのだ。本当に、自分の私物として俺を扱っている。その感覚に背筋がゾクリとする。 そして。 ぐいっ…… 「「ふぅー……」」 (あ…ああ……) 瑞樹がマスクのゴムを左右いっぱいに広げる。俺は両手を思い切り引き伸ばされたような感覚に少し顔をゆがめる。そのまま、瑞樹の口元が近づいてくる。 ぱつんっ…… 「「~~♪」」 (っっ……ああっ…) 俺の両手は瑞樹の両耳にそれぞれかけられて。大きな瑞樹の鼻と唇が、異常なほど至近距離まで接近する。俺の顔側がマスクの裏側に来るような形で、俺の視界は瑞樹の口元のみで埋め尽くされていた。 「「はあーっ…♪」」 むわあっ……♡ (あああっっ……!!) 無意識に放たれた蒸れ蒸れの吐息が、俺の顔面に容赦なく降りかかる。女の子の唾液の濃い匂いと、わずかにリップクリームの清涼感のある匂いが混じっている。普通なら男子に絶対に嗅がせないであろう口内の匂いが、ただのマスクである俺にためらいもなく吹きかけられる。 瑞樹の唇や唾液の匂いや存在感を、スプーンとして使われた時ぶりに感じる。俺は深層意識の中で、この圧倒的なご主人様の口元の存在感をずっと浴びたかったのだ。吐息が吐きかけられる度に身体をビクつかせる自分を俯瞰して、そう思う。 「「おはよー♪今日も暑いね~」」 ビリビリビリッッ!!! (うるさいっ!!耳が、壊れるっ!!) 俺からすれば数十メートルの巨人である瑞樹が、その巨大な喉から発声すれば、その音はとんでもない爆音となって俺を襲う。瑞樹にしてみれば普通の大きさの声でも、至近距離で口元を覆うマスクからすれば、鼓膜が破れるのではないかと思えるほど強烈な音量で。さらに、大音量と共にむあっ…♡と吐息も吹きかけられ、時折唾液の水滴が飛んできては俺の顔にびしゃっ…!と付着する。普通にご主人様が喋るだけで、この大惨事。マスクの仕事というのは、なんて過酷なのだろうか。 「「今日部活終わったら、遊びに行かない??」」 ビリビリビリッ!! むわっ…♡びしゃっ…!! クラスメートとの何気ない会話が、マスクの中の世界を過酷な環境に塗り替えていく。俺は既に瑞樹の吐息の水分で顔面がびしゃびしゃになっていた。吐息の水分、すなわち純度100%の瑞樹のよだれ。それを真正面から受け止め続け、俺の頭はふらふらと混濁し始める。 それでも。目の前で蠢く、数メートルサイズの巨大な瑞樹の唇から目が離せない。いや、離そうと思っても離れられないのだが。いつしか俺の下半身を優しく包み込んだ唇のきめ細かな表面や、その奥に見え隠れする濡れ濡れの舌、歯、唾液の海。自分のご主人様が子どもの頃から遊んできた幼馴染であることも忘れ、女子高生のデリケートな口元の光景に目も心も奪われる。 「「んふー…♪」」 もわんっ…♡ 人が吐息の量とは、こんなにも多いものなのか。会話が一息つくたび、無意識に唇の隙間から漏れる唾液交じりの空気。それが数秒おきに吹き付けられるのだから、俺は心を休める暇もなかった。 そのまま、俺はマスクとして一日中、瑞樹の大きな口元を覆う任務を負い続けた。 (はあっ…はあっ……) 夕方になると、俺はグロッキー状態となって意識が朦朧としていた。一切休むことなく瑞樹の吐く息を浴び続け、爆音で放たれる声に耐え続けた。さらに辛かったのは、目の前に大きな唇があるのに一度も接触することが無かったことだった。なんて、生殺しなんだろう。むちむちの巨大リップの前に磔にされているようなものなのに、その甘美な感触が押し当てられることはなかった。マスクは常に口元に空間を作るもの。そのため、唇と俺の距離はずっと一定に保たれたままだったのだ。 (……?…なんで、俺は瑞樹の唇に、触れたいなんて……) 一瞬、自分の思考が分からなくなって混乱する。瑞樹って、あの、瑞樹だよな。俺は瑞樹のことを男友達のように思って遊んできて、そういう相手とは見ていなくて、向こうも多分そうで…。なのに、何故俺は目の前の唇に虜になっているんだろう。 ぐるぐると渦巻く思考に頭を傾けていた俺は、自分の意識が少しづつ遠くなっていることに気づいた。ああ、もう時間だ。俺の意識はマスクから脱出し、今頃近くの廃墟で横たわっている自分の身体に戻っていく。 その、はずだった。 ------ 「「今日の練習、Bメニューだって」」 「「本当?きっついな~」」 ズンッ!!ズンッ!!するするっ…ガタンッ…… (………?) 意識が覚めると共に、女子の巨大な声や激しい足音、布擦れの音が上の方から鳴り響いてきているのが分かった。…俺の身体は、廃墟にいたんじゃないのか…? 身体を起こそうとするも、全く動かない。というより、手足の感覚が無い。…前にもあった感覚だ。今の俺は、人の身体を持っていない。明らかに、何か別の物体に意識が入っている。 (ここは……) 横たわって動けないまま、周囲を見渡す。周囲は高い壁で囲まれていた。その上空には、白い天井が遥か高いところで存在しているのが見える。自分が横たわっている場所は縦に細長く、ちょうど自分がすっぽりと入ってしまえている。棺桶のような感覚だった。棺桶の中でも、途中まで蓋のようなものがされていて。その蓋の裏側に書いてある文字が、はっきりと見えた。 "23.5cm"。 (こ、これって……靴、なのか……?) 俺は、巨大な靴の底に横たわっていることにようやく気付いた。明らかに俺は、運動シューズらしき靴の、中敷きになっていた。…さらに。この中敷きの黄色い色。この主張の強い色に、見覚えがあった。瑞樹が部活のときに履いている、バスケットシューズ。お気に入りだと言って見せてもらったときに、中敷きの色が珍しいことを話題にしたのを覚えている。 (なんでっ…俺、瑞樹の…シューズの中敷きに……!) 頭が混乱する。確かに俺は、マスクとしての意識を失った。そうしたら、近所の廃墟で横たわっているはずの元の身体に意識が戻るはずだ。 …ここで、昨日読んだアプリの説明書を思い出す。何か、気になることが書いてあった。そう、不具合が起こった時の対処について。確か…「稀に、持続時間が終わっても元の肉体に戻らず、近くの物体にランダムで意識が飛ばされる場合がある」…と。そうだ。その時の対処法として、「その際は、近くの方が元の肉体に向けてスマホをかざしてください。そうすることで、強制的に意識が肉体に戻ります」と書いてあったのだ。 昨日の俺は瑞樹の私物になることに夢中で、よく考えず読み飛ばしていた。しかし、説明書の端々に「必ず他の人が見ている場所でアプリを使ってください」という旨の記述が確かにあった。すなわち、不具合が起きたときに対処する必要があるからだ。 (そんな……) 今の俺には、明らかに不具合が起きている。瑞樹のマスクから、その近くにあったバスケットシューズの中敷きにランダムで意識が移ったのだ。 俺の身体が近所の廃墟にあることは、誰も知らない。誰も、助けにこれない。 心の中で、冷や汗が流れ出す。 (もし誰にも気づかれなかったら…俺はずっと……物体の中に……!?) ズンッ!!ズンッ!!ズンッ!! 「「…………」」 (ひぃっ!!!) 突然、これまでに感じた振動を遥かに超える激しい足音が、大きなシューズと中敷きとなった俺をぐらっ、ぐらっ、と揺らす。かと思ったら、上空にビルのように巨大な人間が、シューズを跨ぐようにそびえ立っていた。 遥か上空にわずかに見えるその顔は、俺の幼馴染のものだった。 「「んしょ……」」 ぐわっ……!! (っ!!???やめっ……!!) ビルのように巨大な瑞樹が、紺色のソックスに包まれた左足を持ち上げる。その足裏の広さたるや、俺の身体をちょうど覆い隠せてしまうほどの大きさだった。女の子の靴下の裏をこんなに間近で見たのは初めてだった。少し汚れた靴下の裏を見せつけられて感じたのは、ただただその大きさに対する恐怖だった。 そのまま、凶悪なプレス機のような右足が振り下ろされる。 ズンッ…!!!! ぎゅっ……ぎゅっ……♡ (いやだっ…いやだっ…) 振り下ろされたのは、俺が入っているシューズの隣にある、左足の方のシューズだった。計り知れない重量感の左足がシューズの中敷きに対して振り下ろされ、さらに狭いシューズの空間に大きな足をねじこむように、強引にぎゅっ…!ぎゅっ…!と押し込む恐ろしい音が聞こえてくる。 絶望的に大きな瑞樹の身体を支える足に、直接容赦なく踏みにじられる恐怖。瑞樹は当然、右足のシューズの中敷きに俺が入っているとは分かっていない。あくまでいつも通り、ただの自分の持ち物として、シューズを無感情で履いていくだけ。 「「よっと」」 ぐらっ…… (あ………ああ………) 真上にかざされた、ご主人様の右足の裏。少しだけ汚れている靴下の裏が、外界からの光を全てシャットアウトする。足の裏に、世界の全てを閉ざされていく。ご主人様の巨大なおみ足に、存在を意識されることもなく圧し潰される。恐怖と絶望感で、呆然と足の裏を見上げるしかなかった。 そして、 ズンッ!!!! めりめりめりっ…♡ ご主人様の巨大な足が、ただの私物の一つでしかない俺に向かって、無慈悲に振り下ろされたのだった。 ---続く---

【無料小説】意識転移アプリ②~スプーンとして使われ、魅了される~

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