くノ一鮮血化粧――其の四
Added 2020-03-01 12:25:49 +0000 UTC血塗られた天女が、同じく返り血塗れになっている幸次郎に跨った。 天女はその美しく、淫らな裸体を惜しげもなく晒している。 何時付着したのだろう、点々とした血痕が、その艶めかしさを一層引き立てている。 まるでこの世ならざる美しさを映えさせる化粧のように。 「さあ、いくわよ。桃源郷を味わいなさい……」 幸次郎もまた着物を脱ぎ捨てていた。 同じ座敷では、大蔵重進の惨殺死体が転がっている。 その隣で、血の腥い臭いが立ち込める中、二人の男女は交わろうとしているのだ。 噎せるような血の臭いと、女の放つ芳香に、幸次郎の頭は眩々とする。 お瑶は見せつけるように、自らの指をねっとりと舐めると、それで幸次郎の陽物を握った。 「うっ――」 女の手の感触だけで、敏感な陰茎は反応してしまう。 「重進に匕首を刺したように、今度は貴男の腰の匕首をわたしに突き立てるのよ」 艶然と嗤い、お瑶は陰茎の先端を女陰の口に宛がう。鈴口からは既に先走りの液が漏れている。また、陰茎全体も、白濁がこびり付いていた。 「覚悟はいいわね。桃源郷に行った者で、戻ってきた者はいないわ」 お瑶がそのまま腰を落とす。 幸次郎の陰茎はするりとお瑶の膣内へと呑み込まれて行った。 「あ……くああっっ」 膣道を通る瞬間、陰茎全体が膣壁に擦り付けられて、それが強烈な刺激となって幸次郎を襲う。重進を刺す時に感じた感覚とは全く別の快感が全身に走り、射精欲求が一気に高まった。 「ああ、き、きもちいっ――」 感覚が快楽に支配されて、声にならない。今までに味わったことのない悦楽が、幸次郎を更なる欲求へと駆り立てる。 「あ、ああ、も、もっと、もっとぉおおっっ――」 下になりながらも、快楽を求める本能に逆らえず、幸次郎は突き上げるように腰を上下に動かしていた。 目の焦点は定まらず、半開きになった口元からは、唾液が垂れている。息は呻くようにその口から洩れ、時折獣のような嬌声を上げた。 「ふふ、自分から動くなんて、中々やるじゃない。いいわ、少しはわたしを愉しませてよ」 お瑶は自分から積極的に動くことなく、幸次郎の動きに合わせるように、小刻みに胴を上下させている。その顔は余裕のようで、汗一つ掻いていない。 白い肌に付着した鮮血が、毒々しくも華やかだった。 「うわっ、ああっ、うううっっ――」 我武者羅に幸次郎は腰を突き上げる。それは淫靡で吸い付くような女の花弁の内側に自身の陰茎を擦り付け、自慰をしているようだ。 「ふふ、そろそろかしら……」 お瑶の口元が妖しく綻ぶ。 「頭の中、桃色に染まりなさい――」 「ひっ、ひぃいいいっっ」 虚ろな目を見開いて、幸次郎は悲鳴にも似た声を洩らす。 それにつれで、びくん、びくんと身体が跳ね、背が反った。 強烈な快美感が全身を焼き。多幸感が脳内に溢れる。 膣内に閉じ込められ、破裂せんばかりに膨らんだ陰茎は、遂に限界を迎えたのだ。 蜜の滴る女の花の中に、白い溶岩は噴出する。 「う……うぅン……。熱いわ。重進を刺している最中あれだけ漏らしても、まだこんなに出るのね」 幸次郎の身体はのたうつように脈動し、その度に花弁に銜えられた陰茎から盛大に白濁が零れ出て来る。 それは、陰嚢が空になっても止まらないかと思われる程だ。 血の臭いに混じり、更に栗の花のような、牡の臭いが立ち上る。 「ふふ、良い調子よ。でも、こんなものじゃないでしょう」 「ああ、もっと、もっとぉおおっっ――」 貪婪に快楽を求めて、幸次郎は狂ったように腰を暴れさせた。 そして、何かを掴むように腕を伸ばして宙を掻きむしる。 「そうよ、もっと、もっと求めなさい。その先の先にこそ、真の桃源郷が待っているわ」 お瑶は膣襞を自在に蠢かせた。 「が、はぁあっ……」 陰茎全体が更なる淫靡な刺激を受け、幸次郎は乾いた息と共に白濁を更に吐き出した。 「どう、わたしの女陰。結構良い具合でしょう。ここが桃源郷への入り口よ。ここを無事潜り抜けた者がけが、そこへ行くことが出来るの。貴男はどうかしら……」 お瑶はまた指を唾液で濡らすと、幸次郎の乳首を抓んだ。 「ぁはっ」 「ふふ、情けない声。そんなにここが良いのかしら」 指の腹で男の小さな乳首を転がす。 びくびくと幸次郎の血糊に汚れた胸板が震えた。 「乳首を擦られただけで感じてしまって……。でも射精も止むことがない。もう身体も心も限界よねえ」 お瑶は唇を歪める。 鮮烈に紅い唇。それは、まるで血の紅を差したようだ。 「それじゃあ、いってしまいましょう。そこが桃源郷かどうかは、自分の目で確かめなさい。もしかしたら、愛しい許嫁とも会えるかもしれないわね」 許嫁――。 そうだ、私は彼女の為に――。 この手を血に染めて――。 しかし幸次郎の思考も、そこで消し飛んだ。 桃色の多幸感が脳内で激しく炸裂する。 「あ、あがっ、く、くるし、くるしいいいいっっ――」 お瑶がゆっくりと、しかし大きく腰を動かしたのだ。 上下に、また左右に捻りを加え、更に膣襞によって陰茎に直接刺激を送り込む。それによって、幸次郎の心身は瞬く間に暴発する快美感に支配された。 「ふふふ、いいわその顔。快楽に狂い、よがり苦しむその顔、男としての本能に抗えず、惨めな牡に堕ちるしかない顔よ。とても許嫁の仇を取った者の表情ではないわね」 嘲弄しながら、お瑶は美しく淫らな身体を捻る。 膣内がざわめくように陰茎を愛撫する。 「はがぁっ、ああっ、ぐ、ぐぅううっっ」 肉と肉をぶつけ合う音、体液と体液が混じり合う水音――それらが血塗られた座敷に響き渡っている。 「ほらほら、どんどん出ているわ。一体どれくらい精を吐き出せるのかしらね」 お瑶が動く度、その豊満な乳房も大胆に揺れた。その様子が、幸次郎の視界を犯す。 陰茎と乳首へ直接的な刺激と、豊乳による視覚的な刺激が相俟って、幸次郎はお瑶の性の技に溺れ、堕ちていく。 「ああっ、い、いやだ、ぐ、ぐるぢ……」 その顔面は次第に蒼白になっていくが、下半身の律動は留まることがなく、膣内に捉われた陰茎からは大量の白濁が噴出している。 膣内に収まりきらない分は、その結合部の隙間から洩れ出て、床を汚していた。 「ふふ、許嫁の仇討ちなんてお笑い種ね。実はわたしが欲しかったんでしょう。わたしとこうして目交う為に、重進を殺したのでしょう。わたしとの交わりを期待して、重進を刺しながら射精したのよ。お前は許嫁のことなんてもう心にない。あるのは本能に支配されたわたしへの欲情だけなの」 「ああ、お、お瑶、お瑶っっ――」 「みんな消して上げるわ。殺しの罪悪感も、許嫁を失った悲しみも、重進への怒りや憎しみも。全てわたしの与える快楽に塗り潰して上げる」 お瑶は両手を重進の腹の上に置き、自身の股間、女陰に意識を集中させる。 瞳は淫乱に妖しく光り、首から胸元に血の痕が走っている。 唇は鮮血のように紅い。 血塗られた天女は、その蔑むような視線で牡に堕ちた男を見下ろす。 「最後よ、存分に感じ、そして逝きなさい――」 きゅっ、と膣内が窄まり、陰茎が圧迫された。 と同時に、お瑶は両手を支点として、更に大きく複雑に、腰を動かす。 「あうううっ、あううううっっっ――」 獣の断末魔だった。 「媚術・淫獣法悦――」 お瑶の呟きと共に、幸次郎の身体は激しく痙攣した。 それと同時に、収まり切らない白濁が、まるで結合部の隙間から噴き出すように零れ出て来る。 ばたばたと不自然な動きで暫く幸次郎は身体を震わせていたが、白濁の流れが緩やかになると共に、水から上げられ、暫く経った魚のように、ひくひくと身体を小刻みに痙攣させるようになる。 その間、上に跨り、幸次郎を支配していたお瑶は、腰の動きを止めることはなかった。 「ふふ、随分簡単にいってしまったわね」 幸次郎の動きが弱まると、お瑶は女陰から陰茎を抜く。 どろどろと滝のように白濁が流れ落ちた。 「まあ、堅気の男なんてこんなものよ。……まあ、裏の男や忍び連中がわたしに敵う訳もないけれどね。相手が男である限り」 そうして、仄かな行燈の灯りを見事なまでに美しく淫靡な裸体に受け、血塗られた天女は妖しく嗤った。 ☆ 翌朝、店の者によって大蔵重進の刺殺体と、幸次郎の変死体が発見された。 その状況から、幸次郎が重進を刺殺したことは明らかだったが、異様だったのは、現場である座敷が大量の精で汚れていたことだ。 奉行所の取り調べ官は、二人は男色の関係にあったのではと推察し、また重進の身辺を洗うことで、彼が権威に託けて阿漕な真似を繰り返していたことを突き止めた。しかし、死人に口なしであり、それ以上の追究がされることはなかった。 隣で死んでいた幸次郎の身元も割れたが、一点、外傷もなくその死因だけは分からなかった。奉行所は男色同士の痴情の縺れによって、幸次郎が重進を殺し、何らかの形――例えば殺しの心理的衝撃など――によって死亡したと結論付けた。 そこに血塗られた天女の思惑があったことなど、誰も知らない。 (終わり)
Comments
コメント、どうもありがとうございます。 楽しんでいただけたようで嬉しいです。 週に一編くらい投稿していけたらと思います。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
楓山金木犀
2020-03-02 22:08:19 +0000 UTCすごくおもしろかったです。 くノ一の次回作とても楽しみです。
薊
2020-03-02 11:28:32 +0000 UTC