お餅を七輪で 後編
Added 2025-01-25 05:00:00 +0000 UTC変身薬。 最近どこかの科学者が作り出したとか、そういう話は聞いたことがあった。 だが、ここまで早く実用化して、一般人が手に入れられるようになったとは、まったく知らなかった。 いや、それよりも……! (ち、智咲! わ、私の声、聞こえるのよね⁈) 多少すがるような声で尋ねると、 「もちろん! ちょっぴりおろおろした智咲ちゃんの声、ちゃんと聞こえてるよ」 (そ、そりゃあそうでしょう! こんな目に合うなんて聞いてない!) ダイエットを手伝えと言ったのは事実だけど、何がどう変わって変身薬という答えに行きつくのか。 だが、これなら一番聞きたいことを素直に聞ける。 (わ、私はいったい、何に変身したのよ……) 「あ、それが聞きたかったこと?」 私が最も疑問に思っていたことを尋ねると、智咲は待ってましたとばかりに手鏡をこちらに向ける。 鏡に映っていたのは、七輪と、その上にちょこんと載っている白い物体。 こ、これは…… (わ、私が変身したのは……七輪?) 「んもう、違うよ、真理子ちゃん。わかってるんでしょう?」 にやにやと笑いながら、智咲は七輪の上にあるお餅を、ツン、とつつく。 すると、 (あひゃああああっ⁈) 「あ、かわいい声」 鏡の中のお餅がビクンと揺らぐと同時に、私に信じられないほど強烈な刺激が襲い掛かる。 な、なにこれ……っ。 (あっ、あ、智咲っ、な、なによこれっ、これって、もしかしてっ……) 「うんうん」 (や、もしかして……私が変身したのって……) 七輪の上。網の上にちょこんと載っている、白い物体。 正月の定番で、私も何個も平らげた、好物で。 にやにやと笑う智咲は、もう我慢できないといった表情で、高らかに。 「そうだよ! 智咲ちゃんには、お餅に変身してもらいました!」 (はあ⁈) 思わずすごい声を上げてしまう。 多分そうなんだろうなと予測していても、面と向かって言われると、頭が理解できない。 そして、理解の要領を完全に超えてしまえば、私の考え方は一つだ。 (こ、これは、流石に、夢よね?) 「え? 違うよ?」 目のまえの智咲が笑う。 だが、私は無視して、 (こ、これは夢、悪い夢よ、きっと……んああっ……な、何、これっ……) 「だから、ゆめじゃないってば。ほらほら、つんつんされると、気持ちイイでしょ?」 (はああんっ、やめっ、やめてえっ、ちさきっ、あっ、あああんっ!) 箸で体中をつつかれる。 全身をまさぐられるかのような快楽が、私に襲い掛かる。 「ほらほら、ゆめだとこんなにきょうれつなしげきにはならないでしょう? ほら、認めてよ、これが現実だって」 (ああんっ、み、みとめるからあっ、つんつんするのダメえっ、やめてえっ……) 「……真理子ちゃんの声、かわいい。もっと聞きたいから、ダメ♡」 (そんなっ、あっ、はああんっ、やめっ、あっ、あああんっ!) ビクンビクンと震えるたびに、体中が悶える。 というか、私の体がどんどん、熱くなってるような…… そんなことを考えていると、智咲が答えてくれた。 ふふ、お察しの通りだよ!徐々に智咲ちゃんの体は熱くなってきております! もちろん今の真理子ちゃんはお餅そのもの! やけどする心配はないから、しっかり美味しくなるんだよー」 (お、おいしくなる⁈) 「うん! 最後には私がちゃんと食べてあげるからねー?」 (な、何言って……むぎゅっ、んっ、な、なにこれっ、みゅぐううううっ⁈) 「あ、膨らんできたー」 ケラケラと笑いながら、つんつんと箸で私をつつく。 (あひっ、んあっ、ちょっ、あ、ああんっ! ち、智咲ぃっ!) 「ああ、今の声すごい可愛い! もっと聞かせて!」 (あっ、ああんっ、やめっ、やめてええええっ……!) そして、私が焼きあがるまでのわずかな時間、智咲は私の全身をつんつんとつつきながら、勝手に出てくる声を、うっとりした顔で見つめていたのだった。 食べ物で遊ぶな、なんて、突っ込む気力は全くなかった。 そして。 「じゃあ、いただきまーす」 (ま、待って! 食べないでっ!) 懇願する私。 食べられるって、食べられたらどうなるの⁈ 死ぬじゃん! 「大丈夫っ、死なないよっ、じゃあ……」 (わあっ、待って待って待って、食べないでっ、待って……あひいいいいいいっ!) しかし、最後まで懇願が終わることなく、私の一部がかじられる。 瞬間、箸でつつかれる以上の快楽が、私を襲った。 「……ふふ、気持ちイイねー」 (あああんっ、まって智咲、ダメ、あっ、ふぁああんッ……やああっ……) 「大丈夫、ちゃんと、私が食べて、あげるから……」 私の熱を帯びた声、声にならない声に対して、どういうわけか智咲のほうも、声に謎の湿り気が入っているかのように。 「ひとかけらも残さないで、平らげてあげるからね、真理子ちゃん」 (やだっ、そ、そんなところ食べちゃダメえええっ……ああっ、やあっ、はあああんっ!) びくびくっ、と、餅のかけらが震える。 智咲に甘噛みされるかのように震えて、痛みはなくとも異常なまでの快感が、私を苦しめ続けて。 (も、もう、ダメ……ああああああんっ……!) 「ふう、ごちそうさまでした」 智咲の満足そうな声が、ほんのりと聞こえた気がした。 「……はっ!」 「あ、おはよう。真理子ちゃん」 がバリと起き上がった私に、智咲がにこにこと手を振っている。 ここは……ベッドの上だ。 「夢……か」 いや、まあ。さすがにこんなことが現実に起きられても困るし? ……ちょっと気持ちよかったのもあるけど、まあ、そんなわけ…… 「……あれ?」 だが、ベッドから降りた途端、奇妙な違和感が私を襲う。 「……体が軽い……マジで?」 「ふふんっ!」 目のまえの智咲がにっこりと笑う。 ……マジで?