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新感覚銭湯 ①

「おい、こら、どうして今日のお前たちはそんなに乗り気なんだ……あ、こら、引っ張るな」 「まあまあ、いいじゃないか。ほら、こっちだよこっち」 大学生の大紀は、友人の優斗に連れられ、最近流行りの温泉施設に来ていた。 最近流行りとはよく聞くが、大紀はその辺の流行には疎い。 「いったい何が最近流行りなんだよ」 そもそも、大紀は温泉にそこまで興味があるわけでもない。優斗に関しても、たぶん似たような感じだろう。 だから、どうして今日誘われたのか、大紀は少し真剣に考えて。 「……お前の性格的にナンパ目当てか? さっきあの眼鏡の子見てたろ。茶髪の女の子と一緒の。俺はそういうの間に合ってるっていうか、もう少しましな場所があるだろ」 「違うんだよなあ、それが。まあ、いいからいいから」 「……?」 何か嫌な予感が頭をめぐる。が、友人は何も気にした様子を見せず。 「こっちだよ、早く行こうぜ」 指さしたのは、赤い暖簾。 どう考えても、ダメだろう。 「馬鹿、そっちは女って書いてあるだろうが、警察に捕まりたくないって」 大紀の発言は、至極まっとうなものであったが、優斗は首を横に振って。 「こっちでいいんだよ。ほら、ほかの男性客も続々入っていくじゃないか」 「そんなわけ……あれ? マジか」 見ると、男性客は赤い暖簾。そして女性たちが青い暖簾に引き寄せられるように入っていく。 「男女逆のほうに入っていくのか……普通と逆だけど、まあ、みんなそうしてるなら」 明かにおかしいとは思うが、みんながこうしているのだから、間違ってはいないのだろう。 優斗が連れてくるのだから、おそらく混浴だとか、そういうエッチな銭湯なのだろうと、そういう予感はしていた。が、これを見ると、少々見た目が風変わりなだけの、普通のお風呂なのかもしれない。 「雰囲気は悪くなさそうだな。優斗にしてはいいところさそうじゃん」 「ふふん、そうだろうそうだろう」 大紀は小さな不安をあっという間に忘れ去り、赤い暖簾へと入っていく。やっぱり、なんてことはない、普通の更衣室だった。 心配して損したなあと内心笑いながら、当たり前のように服を脱いで、当たり前のように温泉の扉を開いて…… もにゅん。 「……ん? なんか違和感があるような」 「いいからいいから。んじゃあ、楽しもうぜ!」 一歩足を踏み入れた瞬間に謎の光に包まれて、たぷん、という感覚が、胸のあたりに伝わった。 脱衣所から先頭までは、締め切りの扉が一つあるだけ。 だから、一歩踏み出しただけで温度やら湿度やらが変わってしまうのは、今更驚くことでもないだろう。 だが、たった今大紀が覚えた違和感は、そのどちらとも異なっていて。 わずか一歩踏み出した途端に、体全体、骨格からして自分のものでなくなったような、そんな違和感が襲った。 ……目線も若干低くなったような気がする。 だが、 「うわっ!」 最初に頭に浮かんできたのは、間違えたという感情。 目の前にいるのは、あられない姿をした女性ばかり。 温泉につかる女性。体を洗っているのも女性。男の姿は一人もない。 「やばいやばい、やっぱり女湯じゃないか……っ、な、なんだこの声!」 明かに甲高い。自分の普段出している声とは明らかに違う。 これはまるで…… 恐る恐る、自分の体を見るために、視線を下に落とそうとして…… 「おーおー、かわいくなったじゃん。胸もおっきいし、ゆるふわの巨乳系かあ」 「うわっ」 突然話しかけられて、思わず声を上げてしまう大紀。やはり、声は甲高いままだ。 相手の女性は、金髪で、顔の作りも日本人のものとは少々違う。日本語は堪能だが、高身長で、ハーフか、もしくは外国人だろう。 なれなれしい気もするが、相手はお構いなしのようで、 「あの、えっと……」 「はい、鏡はこっち」 大紀がぽかんとしていると、西洋風の美女はその手を引き、引っ張る。 「んっ」 どうして先ほどから彼女はこれほどまでになれなれしいのか、思うところはたくさんある。 だが、それ以上に、体の感覚がおかしいのだ。何やら普段の自分と違うような、体の動かし方に、若干の違和感があった。 そして、やっと勇気を出して、恐る恐る顔を見下ろすと。 「うわっ、なんだこれ」 見下ろすと、胸が膨らんでいて、声も自分のものとは思えない。 隣で女性がにやにやとしていて、余計に何が何だか分からなくなる。 「あの、その、これはどういう……」 「まあまあいいから、ひとまず鏡見てみろって」 「ひゃんっ! ちょ、ちょっと」 思わず出てしまった声に恥ずかしさを覚えながらも、いいからいいからと腕を引っ張られる。屈託のない笑みに、逆らうことができない。 シャンプーやボディーソープの前に置かれた鏡。 するすると手を引かれ、緊張した面持ちのまま鏡の前に立つと…… 「……え⁈」 「驚いたろ。大紀。これが今のお前の姿。黒髪ロングとは王道だなあ。ちゃんとかわいい女の子になってる」 クスリと笑う外国人美女、否。優斗は、スキンシップとばかりに抱き着いた。


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