「ふう」 港にて。船に積荷を運び一息付く。日に焼けた肌、異国の衣服。少年の名はメルド。最近船乗りになったばかりの新人である。慣れない環境だが、荒っぽいが気の良い先輩に恵まれていた。今日は仕事は午前まで。そこで街まで降りて来て、買い物がてら散策をしているところだった。 (さすが港町だな。いてて、荷物重かったからな。腰に効くマッサージとかないかな) 交易の拠点だけあり品揃えが豊富だ。特に魔道具と呼ばれる代物は目を惹いた。魔法の力で動く便利な物らしいのだが、値段が高いためあまり購入できないと聞く。しかし、魔法の使えない自分には関係ない話だと自嘲する。 「お兄さん!これなんてどうだい?買っていかないかい?」 露天商から声がかかる。見ると綺麗な宝石箱のようなものを売っているようだ。手にとって見る。装飾の施された蓋を開けると、小さな炎が灯るようになっているようだった。炎は時折色を変える。 「砂粒程度の魔石があれば、数日は持つよ。アンティーク品さ」 魔道具をお土産にすれば、故郷のみんなに自慢できそうだ。 「いくらですか?」 「金貨5枚だよ!」 高すぎる……日雇いで銀貨15枚のメルドには縁が遠すぎた。食費や家賃を考えると無理は出来ない。 「もう少し安くならないか?」 「うーん……じゃあ3枚なら売ろうかなぁ……」 それでも高い……。諦めようとしたその時。 「こらっ!オヤジ!!何やってんだい!!」 女性の怒号が響き渡る。そちらを見ると大柄な女性が露天商の男の首根っこを捕まえている所であった。 「お、お前……商売の邪魔を」 「あんたねぇ!この前も同じ事言ってボッタクリやろうとしていただろう!?いい加減にしときな!!ほれ行くよ!」 女性に引きずられていく露天商を見送っていると、ふとその視線がこちらに向けられる。 「ん?ああ、すまないね。うちのバカ亭主が迷惑かけたみたいで。見た所船乗りさんかい?」 その女性は申し訳なさそうにしている。メルドは苦笑いを浮かべる。 「はい、最近船でこの街に。あの、これホントは幾らですか?」 「銀貨10枚さ」 「えぇ!?憲兵に通報レベルじゃないですか……」 「うん、それはそうなんだけどね。それだけは勘弁してくれるかい?普段はそうでもないんだけど、賭け事で負けてね。困ったもんだよまったく」 溜息を吐く女亭主に、メルドも頭を掻いて困った顔をする。ひと棚に写真が飾ってあるのが見える。修道服を着た女性の写真だ。 「これは?」 「ああ、それかい?教会のシスター様さ。この街の南小さな村なんだけどね。そこに教会があるんだけどね。そこの司祭様のお嬢様なんだそうだ。立派な方だよ。美人だし、タダで怪我を治してくれるしね。あたしらにとっては神様のような存在」 「へぇ~こんな人もいるんですね。でも胡散臭くないですか?無理矢理入信させられて、高い壺買わされたりとかしてませんかね?」 「はっはっは!確かにそういう噂もあるかもしれないけどね。あたしらは信じてるよ。だって、無償で治療してくれている人が嘘つく理由なんか無いじゃないかい。もし何かあったとしても、きっと誰かが助けてくれるはずさ。あたしゃそう思ってるよ」 (無償の治療……か) 「そうだ。今日いらっしゃる筈だよ。すこーし驚くかもしれないが」 「どういう意味ですか?」 「行けばわかるよ。ほら、もうすぐ来る時間だよ」 よくわからないまま、メルドは荷物を持ち直す。 ずしん! 「うわ!?地震!?」 揺れたのは地面ではなく自分の足下だった。見ると先程まで無かった大きな影が出来ていた。見上げると巨大な黒い陰が迫ってくるのが見えた。地鳴りが近づいてくる。 「ひっ!巨人だ!?」 あれは足音だった。衛兵はなにをしてるんだ!と思いながら逃げようとする。しかし遅かった。 ズシンッ! 「ひぃっ!」 目の前に大きな足があった。巨大なブーツが目の前に。まさに踏み潰される寸前でその足が止まった。 「あら?あなたはどちらさまですか?」 「…………はい?」 可愛らしい声が頭上からしてくる。顔を上げると見覚えのある少女の顔があった。 それは先程の写真で見た美しくあどけない顔だ。30メートルはあろうか、巨大な女の子はにこやかに微笑む。 その巨人は黒地の修道服を纏い、十字架がデザインされたベールを被っていた。ベールからは煌めく黄金のような金髪が垂れ下がる。 「こんにちは!私はリリアナと言います。よろしくお願いしますね!」 「あ……はい……どうも……」 呆気に取られながらも挨拶をする。すると彼女は笑顔のまま更に口を開く。 「少し顔を見せて下さい、覚えなくてはなりません」 「へ?うわあああ!?」 巨大な手がメルドに向かって伸ばされる。浮遊感を感じて、地面が柔らかくなる。恐る恐る目を開ける。 「すんすん。汐の香りに、日に焼けた肌。船乗りさんですね」 「ひっ!?」 可愛らしいが、巨大な顔がメルドを覗く。思わず悲鳴を上げてしまう。しかし次の瞬間には、彼女の手の上に乗っていた。 「あ……あ……あ……」 瞳は巨大な宝石のようで、肌はとても白く滑らかで柔らかかった。鼻筋は高く、唇もぷっくらとしている。まるで精巧に作られた人形のようであった。 黒地の生地を盛り上げて主張する胸が、目の前で揺れる。 しかし巨人族は人間を丸呑みにして食べると聞く。様々な絵本や伝記にそう乗っており、巨人の恐ろしさは語られている。 そんな巨人の彼女の掌に載せられているのだ。恐怖で体が震えだす。 「大丈夫ですよ。取って食べたりなんてしませんから。ちょっとだけお顔を拝借するだけですからねー」 リリアナはメルドの頬に手を当て、じっくりと見る。そして赤子をあやすように優しく撫でる。メルドはその手に安心したのか、体の力が抜けていく。 「それではそろそろお祈りの時間です。中央広場にてミサを行いますから、宜しければ」「あ……うん」 「では」 ズシン!ズシン!リリアナは大きな一歩を踏み出し、港から去っていく。 「なんなんだ一体」 メルドは呟き、そして気づく。いつの間にか、腰の痛みが無くなっていることに。 「え!?うわ!?治ってる!?」 さっきのは夢ではないようだ。 「ははは、びっくりしたかい?あの子はリリアナ様と言ってね。この辺りじゃ有名な巨人のシスターなのさ。それにとても優しい子なんだよ。本当にありがたい話だよ」 「そうなのか……。でもどうして俺の腰を治してくれたんだ?」 「そりゃあんた、怪我してる人がいたら治すのが当たり前だろう?」 「いや、それはそうなんだけど……」 「あの子が治してくれるとね、不思議と元気になるんだよ。疲れが取れるというか、まぁ、あたしもよくわかってないんだけどね」 「ふーん……」 メルドは首を傾げる。確かにあの子の手は暖かく、優しさを感じた。伝承では身体をひきちぎり、むしゃむしゃ食べてしまうと言うが。 「さて、あたしゃ仕事に戻るよ。あんたはゆっくり休んでいきな。あたしはフクロウのパン屋って店やってる」 「ああ、ありがとう」 「いいさね。また来ておくれよ。ほら!アンタも仕事なさい!新入りにぼったくりなんてしないでさ!」 女亭主はそう言って、手を振って去っていった。 「さて、と。俺はどうしようかな」 まだ昼過ぎ。時間はある。さっきの巨人は確か中央広場でミサをやるとか…… 「行ってみるかな」 軽くなった腰、こころなしか足取りも軽くなっていた。 「中央広場はこっちだったな。うわ、もう見える……巨人だけあるな」 街の中心部にある大きな公園のような場所。噴水があり、ベンチが並んでいる。昨日その周りを囲むように出店が並んでいた。しかし今は全て撤去されていた。 「あれかな?」 人混みをかき分け、中心へと進む。そこには白い修道服を着た女性が立っていた。 「皆さん、本日は教会主催の『慈母神様のお告げ』にご参加いただき誠に有難うございます。これより『聖女』による神託がありますので、どうか静かに聞いてください」 ざわついていた人々が静まり返る。皆、この場に居ることが誇らしく、期待に胸を膨らませている。 「それでは『聖女』様、こちらへ」 「はい」 ズシン!!ズシン! 人々の視線の先には、先程の巨大な少女が歩いてくる。ゆっくりと膝をつき、彼女は祈りを捧げ始めた。黒の修道服が風に靡く。その光景に誰もが息を飲む。神々しいとはこういうことを言うのではないか。 メルドはそんなことを思いながら、ただ見つめることしか出来なかった。 「慈母神様はおっしゃいます。健やかに生きで家族を愛せよと。隣人を信じよと。そして、己が道を歩めと。さすれば道は開かれましょう」 リリアナがゆっくりの目を開ける。眼下の小人達を慈悲深い眼差しで、見つめて再び手を胸の前に置く。 「我が名『リリアナ』の名において宣言します。ここに『慈母神の祝福』を与えます。治癒〘ヒーリング〙」 リリアナが両手を天に掲げる。すると空に光の玉が浮かぶ。それはやがて光の柱となり、人々に降り注ぐ。 傷が癒えて活力が漲る。街全体を光で包み人々は歓喜の声を上げる。 「さて、これで私の役目は終わりました。常々言っていますがわたしは医者ではありません。病魔は癒やすことが出来ません。なので皆様どうか健やかに。お悩みがあれば」 「はい!シスター様!私、結婚するんです!それで、相手の方に贈り物をしたいのですが、何が良いでしょうか!?」 「それは素敵ですね。でしたら、花など如何でしょう?花は良いものです。心が落ち着き、安らぎをもたらしてくれます。きっと喜んで頂けると思いますよ」 「わかりました!頑張って選びます!」 「では、良き人生を」 人々の悩みを一人一人聞いていくリリアナ。その様子にメルドも感嘆していた。 (巨人なのに、あんな良い人も居るんだなぁ) そう思っていると、リリアナが自分の方を見て微笑んでいることに気づく。 「あ、目が合った」 メルドは慌てて目を逸らす。するとずしんと地鳴りを鳴らしながら、リリアナが近づいてきた。 「こんにちは!船乗りさん!先程は失礼しました」 「あ、ああ、こんにちは」 「腰はもう大丈夫ですか?」 「あ、ああ!もうすっかり良くなったみたいだ」 「良かったです!でも無理はしないで下さいね!それでは!」 「あ、あの!ちょっと待ってくれないか!?」 メルドは思わず呼び止めてしまった。 「はい?なんですか?」 「その……聞きたいことがあるんだ!」 「はい、なんですか?」 「その……君は巨人族なのかい?」 「はい、そうですよ?」 「やっぱりそうだったのか!」 「あれ?言いませんでしたっけ?」 「いや、聞いたけど、その……信じられなくて」 「あはは、そうですよね。こんな大きな人間なんて居ませんもんね」 「その……巨人族は人間を食べたりするのかな……なんて……」 「ああ、そういうことですか。安心して下さい。私は食べませんから」 「そっか……。よかった」 「はい!私は他の種族の方々と仲良くなりたいと願っていますから」 「え?そうなのかい!?」 メルドにとって意外な言葉であった。 「はい、だって同じ世界に生きる仲間じゃないですか。争う必要なんか無いんですよ」 「……そうだね」 メルドは思う。この世界は広い。まだまだ知らない事だらけだ。だからもっと知りたい。 「あの、リリアナ様?」 「リリアナです。リリアナで大丈夫ですよ」 「俺はメルド。よろしく。リリアナ」 「はい、よろしくお願いしますね。メルドくん。そうだ海のお話聞かせてください」 「え?俺の話?別に構わないけど……」 「私はこの大きさだから、船には乗れないんです。だから海の向こうの景色を知りたくて……」 「お安い御用だよ」 それから二人は色々な話をした。リリアナは嬉しそうに、楽しそうに話を聞いてくれた。 「へぇー、凄いんですね。そんなことがあったのですね」 「ああ。海賊に襲われたときもあったな ぁ」 「まぁ、怖いですね。大丈夫でしたか?」 「大丈夫も何も、あっという間に返り討ちにしてやったよ」 勿論話をかなり盛っている。たまたま投げつけた石が命中し、落下させたのが敵の船長だっただけだ。 「まぁ!流石です!メルド君はとても強いんですね」 「はは、それほどでもないよ」 「いえ、そんなことはありませんよ。メルド君のお陰で救われた命があるはずですから」 「そ、そんな大げさな」 「そんな事はありませんよ。メルド君は立派な人です」 「……ありがとう」 メルドは照れくさくなり顔を背けた。 「あ、そろそろ行かないと。子供達と遊ぶ約束があるんです」 ふと後ろを向くリリアナ。メルドは胸に劣らず、主張する尻に目を奪われる。ヒップラインを強調するローブから、ほんのりと湯気が漂っていた。座りっぱなしで蒸れたのだろう。 「あれ、私のお尻になにか付いてますか?」 「い、いや、なんでも…… 「お尻がおっきいのは気にしてるんです。あんまり見ないで頂けると……」 「ご、ごめん……ま、また今度!」 「はい、楽しみにしてますね!」 リリアナは手を振りながら去っていった。その後ろ姿を見ながら、メルドは呟く。 「また話せるといいな」 いつも通りの日常に花が咲いた気がした。とてもとても大きい花だが。 「さて、今日はどうしようかな」 あれから数日が経ち、街にも慣れてきた。リリアナとも何度か会ったが、彼女はいつも忙しそうにしていて、なかなか話す機会が無かった。 「そうだ、お金が溜まったし」 リリアナと始めて会った日。あの露店に行ってみよう。そう思い路地に足を運んだ。「ここか」 あの日と同じ場所に、あの日と同じように小柄か亭主が座っていた。 「いらっしゃい。あーアンタは確か……すまんかったね。お詫びにサービスしとくよ」 「どうも」 「今日は何をお求めだい?」 「こないだの奴ありますか?箱から火が出る奴」 「ああーアレね。大サービスだ。銀貨9枚だ」 サービスでも一枚しか安くならない。なかなか良い商売だ。 「はいこれ」 「毎度あり。ほら、これが商品だ」 「それじゃまた来ておくれ」 「はい、また来ます」 「家内ん所にも寄ってくれよな」 「はい」 あまり高いモノではないが、メルドはこれをリリアナにプレゼントしようとしていた。「喜んでくれるかなぁ」 内心ウキウキしながら、パン屋である女亭主の所に向かう。 「あら、あんたはこの間の船乗りさんじゃないか。ウチに何か用かい?」 「ああ、この前のお礼にと思いまして」 「おや、それは嬉しいねぇ。それならお茶でも飲んでいきなさい」 「いいんですか?それじゃお邪魔しようかな」 「はいはい、狭いところだけどゆっくりしていきな」 そう言って彼女は奥へと消えていった。しばらくすると、良い香りが漂ってきた。女亭主が戻ってくる。 「お待たせ。さぁ、召し上がれ。これは特別サービスのサンドイッチ。おっと売れ残りじゃないよ」 「いただきます」 出された紅茶を一口飲む。甘い茶葉の香りは落ち着く。サンドイッチの具はハムとレタスだ。パンも焼きたてでふわっとしているし、野菜にもしっかり味がついている。 「美味しいです。」 「そうかい?それは良かった」 「それでリリアナにお礼を渡したくて、いつも何処にいるんですか? 「聖女さまは、街外れの広場によく居るよ。子供達とよく遊んであげてるんだ」 「広場はどこにあるんですか?」 「ここから南門の近くさね」 「ありがとうございます!あとこのクリームパンとメロンパンをください」 「はい、焼きたてだよ。行ってきな」 「はい!」 メルドは急いで広場に向かった。しばらく歩く。馬車には金が無い為、乗らずに町並みを眺めながら歩く。 広場は遊具は無いが広々としている。巨人である彼女からすると、物を壊す心配もないだろう。 そこには数人の子供に囲まれ、笑顔で遊ぶ彼女の姿が見えた。膝や肩に乗せて楽しそうに遊ぶ姿にほっこりとする。 「やあ、リリアナ」 「こんにちは、メルドくん。どうかしましたか?私に会いに来てくださったとか?」 冗談めいた口調で言ってくる。意外といたずらっぽい一面があるのだ。 「あ、いや、その……」 からかわれているようで、メルドは少し恥ずかしくなった。 「ふふ、わかってますよ。それでご要件はなんでしょうか?」 「ああ、その……コレを受け取ってくれないかな」 「申し訳ありません、戒律で奇跡に対する対価は求めてはいけないんです。受け取るわけには……でも、気持ちは受け取りますね。有難う御座います」 「いや、その……これはただの贈り物なんだ。キミがその……素敵だから」 照れながらもなんとかそう伝える。リリアナもはにかむように笑う。 「ふふふ。まぁお上手ですね。贈り物……ですか。それなら神もお許しになるかしら」 「魔法の火箱で、色んな色に炎が変わるんだ。きっと面白いと思ってね」 「まぁ!それは素敵ですね!是非見てみたいです!」 目をキラキラさせながら言うリリアナに思わず笑ってしまう。 (喜んでくれて良かった) 小さな箱を爪で慎重に開けるリリアナ。壊さないよう力加減も。 「小さな火がゆらゆらと。不思議な色に。素敵な贈り物ですね。大切にします」 「喜んで貰えて良かった」 ぐううううう!!きゅるるるる〜!! 「あ……」 リリアナは顔を赤くする。まるでケモノの唸るような轟音。それはリリアナの腹部から聴こえていた。 「あ、あの、これは……」 ぐううう!!きゅるるるう♡ 「あ、えと……」 「あ……その……良かったら一緒に食べない?」 「はい……お願いします……」 子供達もお昼を食べに各々帰宅し、リリアナとメルドが二人きりになる。 「今日も私達に糧を授けた神に感謝を。また糧となる物に感謝を」 巨大なバスケットから、これまた巨大なさつま芋を取り出すリリアナ。蒸してあるようで、ぎっしりと中身が入っている。メルドの身体より遥かに巨大である。 それを次々とおいしそうに頬張るリリアナ。もし、自分があのお芋に乗っていたら…… 「ごっくん!……?どうかされましたか? 私の顔になにかついてますか?」 「え?あ、いやその……大きいなぁって思って」 「ああ、確かに私は巨人族ですから」 次々とさつま芋も、おいしそうに咀嚼しては呑み込んでいく。あっという間に巨大なさつま芋はリリアナのお腹に消えた。 「はぁ♡おいしかったです」 リリアナの黒い修道服に包まれた腹部が膨らみ始める。お腹がぎゅるるるぅ♡と鳴りリリアナは恥ずかしそうにする。そして、 「げぷ!」 ゲエェェゥプ!!彼女は口を抑えて可愛らしい仕草でゲップをする。しかし人間にとってはかなりの轟音で、メルドは耳を塞ぐ。 「わ!?」 「あ……すみません……げっぷが出てしまいました……はしたなくて。その抑えたつもりなのですが……」 「い、いや大丈夫だ!それより……お昼まだだったのかい?」 「はい……子供達と遊ぶのに夢中になってしまっていて……つい……」 「そうなんだ……えと、パン食べる?」 「え、良いのですか?では……」 うつ伏せになるように横たわる。そして、巨大な顔を寄せる。巨大な宝石のような瞳、ぷるんとした唇。メルドはドキリとする。 「はい、どうぞ……あーん」 くばあああああ♡リリアナの唇が開き、口内が露わとなる。マゼンタ色の綺麗な口腔、真っ白な歯。舌が大量の唾液に濡れて光る。 メルドはリリアナの口にパンを差し出す。リリアナは舌で浚いくわえこむ。 「んむ」 ゆっくり咀噛し、飲み込むリリアナ。小さなパンはあっという間に唾液に溶けて消え、呑み下された。 「美味しかったです!」 「そ、そうか。良かった」 メルドはドキドキしていた。こんなに大きな人が自分の手から食べ物を食べている。巨大な口は簡単にメルドを飲み込めてしまうのだ。 「メルド君?」 「あ、いやなんでもないよ」 メルドは我に帰る。自分は何を考えているのだろうか。リリアナがそんなことする筈がないのに。 誤魔化すようにクリームパンを齧るメルド。奇妙な興奮と、恐怖から味がしない。 「あ、メルドくんクリーム付いてますよ」 「え?本当?どこ?」 「動かないで下さいね」 リリアナがメルドに顔を近づけてくる。メルドは緊張して動けなくなる。 れろぉん♡ リリアナが舌を伸ばしてメルドの顔を舐める。 「ひゃ!?」 顔がぬるぬるの舌に包まれる。唾液が顔がぐっちょりと濡れた。一回、二回。もうクリームは取れている筈。でも舌をは止まらない。メルドは耳にした、小さく熱っぽい、清廉さから程遠い淫靡な声を。 「あっ!ご、ごめんなさい」 慌てたように舌を引っ込めるリリアナ。 「い、いやいいよ。うん」 「本当にごめんなさい!あの、今日はさよならしましょう。早くシャワー浴びてくださいね」 リリアナが慌てて立ち去ろうとする。 「あ、待って!」 メルドは思わず呼び止めてしまった。 「は、はい?」 「あ、いや……その……今日は楽しかったよ。また会えるかな?」 「はい、もちろんですよ。それじゃあ」 リリアナはそのまま走り去っていった。 「……」 自宅に付く頃にはリリアナの唾液の臭いがキツくなる。しかしメルドは自慰を始める。あの言葉は恐怖心しか浮かばない筈だ。だが、興奮が何故か止まらない。 「メルドくん……おいしい」 リリアナは確かにそう言った。聖女らしからぬ、淫靡な笑みを浮かべて。