XaiJu
Rei
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食い正月

私は田舎から上京し働いている唯(ゆい)。今日も今日とて残業の日々。毎日帰りが9時過ぎになることもザラだ。今日もクタクタになって帰宅した。 「あ〜〜〜〜……しんど……マジで仕事辞めよっかな…」 新卒で入社しもう5年目になるこの会社。仕事に慣れはしたが、いかんせんろくな待遇の企業ではない。 スーツ姿のまま部屋のベッドに大の字になり、ちらっと家のカレンダーを見た。気がつけばもうクリスマスの時期だ。 そういえば、年末年始は実家に帰ろうと思っていたのに、実家へ連絡をしていなかった。 「もしもし?お母さん?年末は実家帰ろうと思うからさ?…うん。よろしく。」 そう連絡し終えると、今日全ての疲労が身体を襲ってきて、そのまま眠りについた。もうすぐ休みとはいえ明日も仕事だ。 12月30日。待ちに待った年末。車で田舎の実家へと帰った。 「ただいまー!」 実家の家の扉を開いた。クソほど嫌いだった田舎の何の変哲もない家。 「お母さんあれあるよね?」 「うん。いくらでも食べていいからね?」 実家の居間にあるのはこたついっぱいの大皿に山のように盛られた唐揚げに、私用の炊飯器が二つ置いてあった。 厚手のコートを脱ぎ捨ててすぐさまこたつに腰掛け、まだ昼過ぎだったが、嬉々として唐揚げの山を頬張り始めた。一つ一つが手のひらに収まらないほど大きな唐揚げを大きな一口で白米と一緒に口に放り込んでいく。日々のブラック労働によって酷使されている身体にすごく染みるのだ。仕事の事など忘れて、目の前にある唐揚げの山に意識全てを委ねる…こんな事学生以来でとても懐かしい気持ちになる。 気がつけば一升炊きの炊飯器が一つ空になった。唐揚げの山は半分ほど消え去ってしまったが、鳴り止まぬ食欲に身を委ねながら白米を茶碗いっぱいによそい続ける。 ぐっと唐揚げに腕を伸ばした時、腹部に違和感が走った。ズボンのチャックを全開にして、休息がてらに置いてあった1リットルの水を一気に飲み干す。 後半戦も止まらぬ勢いのまま唐揚げを頬張っていく。 時刻は8時過ぎ、年末の寒さだというのに、膨らんだお腹を全開にして最後の唐揚げの山と向き合っていた。食べ始めたのは3時頃だったはず…気づけば5時間も食事をしていたようだ。 最後の唐揚げを平らげた頃には、一升炊きの炊飯器の二つ目も空に、机には唐揚げの山が盛ってあった空の大皿があった。 嚥下も終わり、ふうと一息ついてご馳走様の挨拶を済ませた。 「うう…うげぇ…ひっさびさにこんな食べたな……やば…ゲフゥ……マジで横になろ…」 米一升は炊飯後で3キロ程。それが二つに、それに伴って山のような唐揚げの山全部が私の胃の中に収まってしまっている。20キロは絶対食べているだろう…25キロ…は言い過ぎかも知れないがそれくらいだ。凄まじい腹部の膨張感と内容物の内圧でかなり苦しい。以前テレビで見た自分の身丈の何倍もの大きさのヘラジカを丸呑みしてしまった大蛇のお腹のように、元来のウエストからは想像できないほどに膨らんでいる。鎖骨から骨盤までのほぼ全てのスペースが胃に侵食され、胴体全部が胃なのではないかと思うくらいの感覚だ。 横になってテレビを見ながらお腹をさする。が、苦しくてテレビの内容があまり入ってこない。 米と唐揚げ。これしかないが、たったその二つの食材がここまで胃を膨らませているのだ。同時に自分の食欲をもう少し自重しなければならないなと感じた。 戸棚にしまってあるメジャーを取ろうと腕を伸ばす。お腹が重くてあまり動けないため、メジャーを取るのも命懸けだ。 メジャーを伸ばしてウエストを測ったところ、140?一人なのとお腹が大きいせいできちんと測れているか怪しいが、そんな数字を指していた。 食べ終わったのを察して母が空皿を下げに来た。 「相変わらずねえ。そろそろ控えたらどう?お医者さんの世話になってからじゃ遅いわよ」 「うるさいなあ…ケプゥ…つか、実家帰った時しかやってないし、そんなお金ないし」 「ほんで、良い人見つかりそうなの?」 「あー、うるさい」 「つかお母さん見てよ。今日めっちゃ食べたよ。お腹ヤバくない?マジで…苦しいw」 勢いで一度横になってしまったが、お腹の内圧と重さで起き上がれない。 「成人式の時の方が大きかったわよ」 「ええ!?そうだっけ?全然覚えてないや」 「飲み過ぎで家帰ってきたらすぐ寝ちゃったじゃない」 「えー…全く記憶がない」 「明日の分は入りそうなの?あれやらないと年越せないでしょ?」 「大丈夫…じゃない?一晩あるしなんとかなるよ」 日々の仕事の疲れもあってか、夜はすぐに眠りについた。というか起き上がれなかったのでその場で寝てしまった。 翌朝 腹の音で目が覚めた。お腹はもう消化が進み、苦しいという感覚ではなかったが、俄然妊婦のように大きくどうしたと言われてしまうお腹である。 実家なので寝癖も治さないまま起床。時計を見るともう10時過ぎだ。 「おはよー」 「おはよう。ご飯は出来てるから」 一升炊きの炊飯器一つと山盛りの餃子が目の前の机にあった。 昨晩あれだけ食べたが、食欲は湧いてくる。お腹はまだ消化音でギュルギュル鳴っていたが、再び食事の時間といこう。 初めの餃子と白米を頬張って口に入れる。今まで消化活動に専念していた胃袋だったが、胃に入ってくる食べ物を感知して胃を広げる体制に戻っていった。その際胃はギュポギュポと音を鳴りながらも、降ってくる食べ物を受け入れていった。 昨晩の大食いがあったとはいえ既に半分ほど消化は済んでしまい、胃の中には全然余裕で食べ物は入る。なんなら昨晩は胃のストレッチになったため、昨晩よりも沢山食べれそうな予感すらある。だが半分とはいえ20キロ以上を昨晩は平らげている。まだ10キロほど胃の中に残っているだろう。この世界で10キロなんてフードファイターでも中々食べる事が難しい量だ。 まあ平然と食欲は湧いてくるので、どんどん餃子と白米を口に入れていく。 昨晩から唐揚げと餃子という不摂生な食べ物しか口にしていないがそれもまた最高な要素である。日々の仕事の疲れに不摂生は最高に響くのだ。 1時間もしないうちに餃子と炊いてある白米を完食。 「ふう…ご馳走様。」 昨晩の食事が消化しきっていない中、約7キロもの食事 を平らげてしまった。 「う…お腹の張り凄いな…」 半分程消化してお腹は落ち着いたとはいえ昨日と含めると既に30キロ。叩くとドンドンと太鼓のような音が鳴ってしまう。 年末特番の番組を見ながらスナック菓子を次々と開けていく。スナック菓子の間食のせいで完全にお腹が消化に専念できず、お腹は夕方になってもあまり小さくならなかった。途中、げっぷをしたり屁をしたり、実家だからやりたい放題だったが、その度にお腹は楽になるので、他人の目を気にしなくていい状況なら最強の戦法なのだ。獅子落としとかいうジャンプするやつは私レベルだとそこまで効果的ではない。 家の菓子類がまるで無くなった頃、年末のメインディッシュを母が持ってきた。それはとても人が食べる量とは到底思えない山のざるそばだった。年越しそばというやつだ。毎年これをお腹に詰めないと年を越したとは言わない。 「うっはー、相変わらず凄い量」 「何言ってんのさ。こんなのすぐ食っちゃうじゃない」 「なに?それとも流石に食べすぎたって?」 「は?別に…そんなんじゃないよ。」 確かに昨日から今日に至るまで30キロを超える量を食べている。が、私が言いたいのは毎年そばの量が増えている事だ。私の机の上に置かれたざるそばの容器は私の肩幅をゆうに超え、そばの山も腰掛けている私の頭よりも高く積み上がっている。記憶に残っている限りでは、我が家が年末にざるそばを食べ始めた時、私の首元までしかなかった気がするのだが…今や20キロは絶対にある。 (そういえば、中学校に入るまではこのざるそば食べるのに二日間断食してやっとだったっけ。……それが今やプラスで30キロか…) 「いただきます!」 山を見上げながらざるそばを取りつつ、大きな一口に入るいっぱいに啜っていった。前友人にこの様を見てもらったところ、掃除機みたいと言われてしまい一乙女として相当なショックを受けた事があるのだが、気にせずそばを啜り続ける。 そばを啜り続ける事2時間。やっと半分ほど面の山が無くなってきた。時計に目をやると時刻は21時。年明けまであと3時間。このペースでいくと充分年越しには間に合う。 膨らんだお腹で呼吸が浅くなってしまって苦しいが、一呼吸置く暇もなくひたすらに啜り続ける。 1時間ほど経過し、時刻は22時頃。お腹がどうしようもなく苦しくなってしまい、箸を置いてしまった。 (う…苦し……) お腹をドンドン叩き、少しでもお腹の中の空気を外に出して楽にしようと試みた。流石の私の胃袋も流石に限界なのだろう。消化時間が空いたとはいえ、既に昨晩と同じくらいは食べている。苦しくて当たり前であろう。お腹も昨晩の食後よりもずっと大きく膨らみ、机に突っかかってしまう程大きくなっている。 結局1時間ほど休憩をし、なんとか食事を再開。人のものとは思えない程の重低音の消化音がお腹からは響いていた。それは私がこれまで平らげてきた人間離れした食事量を示唆するようだった。 前よりもずっと食べる速度は落ちてしまったが、ざるそばの残りは4分の一程の約5キロだ。なんとか年明けまでには食べ切れると信じたい。 「ゴゲェェェェップ!!」 「ゴゲェェェェップ!!!」 「グゴゲエエエエエエエエッッップ!!!!」 食べ進めるたびにげっぷの音が重苦しくなってくる。もうお腹が苦しいし、膨れ上がったお腹に対応しきれずにお腹の皮が赤く腫れ上がっている。あまりこんな状態で食事を続けるなんて阿呆そのものなのだが、半分意地でそばを啜り続けた。 最後の一口を食べる頃にはもう本当に食べる速度が落ちていたが、なんとか完食し解放された。時刻は11時55分。年越しギリギリだ。年末番組が年越しのカウントを始めた。 グギュルウウウウウウウウ!!!!グゴ!グギュルウウウウウウウウ!!!! 消化音と共に朦朧とする意識の中で年末番組の年越しカウントが過ぎるのを見ていた。 (え…やば…マジで…お腹いっぱいとかじゃないよ…お腹破裂しそう…苦しい…声…出せな…い…) 人生最大に膨らんだお腹を前に呼吸するだけで精一杯であった。 年越しのカウントが終わり、アナウンサーがあけましておめでとうの挨拶をするのを見届けた途端、ふっと気絶したように眠りに入ってしまった。 二日間で食べた総食事量 約55キロ 翌日の正月は目覚めた際、消化が進んで少し余裕があったので一般的な量のおせちを食べた後、帰宅するためにお腹を何とかして凹ませなければいけないので一日中食休みを取って寝ていたそう。3日には歩ける程にはお腹は凹んだので一人暮らししている家に帰宅し、業務復帰した。俄然仕事は辞めたいままではあるが。


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