魔力変換
Added 2024-01-26 15:12:51 +0000 UTC冒険者ひしめく酒場の扉をドンと開けて、一人の女魔導士が来店した。ヒラヒラのミニスカートに魔導士の帽子をつけ、服は腹部の部分を筆頭に、肩や脇、絶対領域も大胆に露出させた男受けプンプンの服装をしていた。髪は金髪で歳は若く、二十歳は超えていなそうな感じだ。だが童顔で幼さの残る可愛らしい顔立ち。俗にいう美少女だ。 そんな女の子が一人で入って来てカウンター席についたのだから、酒場の冒険者達はざわつき始めた。彼女の身体から発せられている魔力は一般的に見ても強く、強力な魔法使いであることは見てわかった。戦力的にも、美貌的にも、こんな人材が一人でフリーなのはいかがなものだろうか。早速少し柄の悪そうな冒険者数人が彼女をナンパしにいった 「お嬢ちゃん一人?っていうか、今フリーなの?うち魔導士いないからさ…」 男達の方をちらっとだけ横目で確認した彼女は、興味なさそうに出されたお酒を飲み始めた。 これ程の美少女だ。良い匂いもする。逃すまいとしつこく誘おうとした冒険者もいたが、すぐ相方にやめとけと肩を叩かれ、元の席に戻っていった。 結構度数の強いお酒を2杯程飲み終わったら、女の子は少し顔が火照ってきた。酒場を颯爽と出ていってしまった。結局、酒場のどの男とも行動を共にせず、お酒だけ飲んで帰っていってしまった。 そんな事の顛末を端で眺めていただけの冴えない冒険者の僕だったが、彼女が帰り際に少しだけ僕に視線を向けていた気がした。気のせいだとも思ったが、どうしても気になってしまい、パーティメンバーに僕の分の代金を任せて彼女の後を追ってしまった。 そこまで遠くにはいっていないはずだ。酒場を出て周りを見渡すと、街で1番大きな建物…巨人やオーク族に向けた食堂の前で腰に手をやり険しい目を見てメニュー表を見ていた。 意を決したのか、彼女は身丈の5倍はある門の中に入っていった。 (パーティーメンバーとの待ち合わせ…?フリーじゃないって事なのかな。まあ、あんなに強力な魔力をしてるんだし…無理もないか…っていうかあの子…まだお酒ダメだよね…?) やめておけば良いものの、僕は女の子の入っていったオーク食堂にこっそり潜入してしまった。 店内の様子は衝撃だった。身体の大きなオーク用のご飯をあの女の子一人が食べているのだ。人間用に直すと…という考え方をした事がないレベルで、とても人一人が食べられる量だなんて思えない…だが女の子はばくばくと食堂のご飯を頬張り、みるみるとご飯は減っていった。それに伴い女の子のお腹はどんどん膨らんでいき、妊婦顔負けのお腹になったと思っても女の子は一向に食べるのをやめない。 女の子は完食してしまった。抜群のスタイルを誇って引き締まっていたはずのお腹は、巨大スイカ丸々一つ入っているのではないかと思う程に大きく膨らんでいた。思えば腹部が全開のこの服はこのためのものだったのかと急に合点がいった。下のミニスカートなど鼠蹊部からのお腹の膨らみによって辛うじて履けているくらいだ。 女の子は両手いっぱいでお腹を支えながらよちよちと店を出た。そこで僕と目が合ってしまった。あまりも驚愕して隠れるのを忘れていたからだ。 数秒見合った後、恥ずかしそうに言い出した。 「み、見られちゃった…」 「い、色々と聞きたい事はあるけれども…とりあえず、落ち着いて話さない?」 町から外れた木陰に彼女を連れ、切り株に彼女を座らせて一息つく。 「ゴゲェェェェップ!!」 女の子のげっぷと共に、木に止まっていた鳥達が空へ羽ばたいた。 「うお、すごいげっぷ」 女の子は膨らんだお腹をポンポン叩きながら、 「まず…何から話そうかしら…」 「えと…凄く…食べるんだね?」 「私、食べたものをそのまま魔力に変換する体質なの」 普通、魔導士の魔力は魔法を使う度に増えていくものだ。だが彼女は魔法を使うことによってではなく、食べることによって魔力が増え、食べた量に応じて魔力量も増えるという特殊な体質なようだ。 「なるほど…で、お酒は…?まだダメだよね?」 「こんな体質だから…魔力のために沢山ご飯食べてたけど…食べてくうちにどんどんお腹すいてどんどんご飯食べれるようになって、3人前、5人前って食べる量が増えていって…」 「それで、お腹いっぱい食べると人間の食堂だとビックリされちゃうようになってから、オーク用の食堂に行こうと思ったの」 「でも勇気が出なくて…お酒の力があれば、入れるかなって…」 「なるほどね…」 グルルルルルル!グギュルウウウウウウウウ!!! 女の子のお腹の消化音が鳴り響き始めた。 「パーティーメンバーは?一人なの?」 「うん。一人。」 「今時ソロだと危ないよ?それに、うち実家が食堂だし、食べるものには困らないよ?うちのパーティ入らない?一人空いてるんだ!」 「え…」 少し考え込んでいた。 「一つ条件がある。」 「なに?」 「もっとご飯持ってきて?」 「え!」 「私!次の店に行こうと思って店出ただけなんだけど!全然まだお腹いっぱいじゃないんだけど!」 かなり怒っているようで、激しく自分のお腹を叩いてみせた。 「どうしてくれんの!?変にお腹空いちゃったんだけど!」 「私をパーティーに欲しいって言うなら、私を満足させられるって証明してからにして!それが今この瞬間でできないっていうなら、これから先も無理でしょ!?」 「おらとっとと飯持ってこいよお!!」 鬼のように血相を変えて言ってきた。 グルグルグル……グギュルウウウウウウウウ!!! 「おらおら腹グルグルなってんぞ?これじゃお腹空いちゃうなあ〜!?」 「分かった!どこのお店行きたかったの?そこ行こう」 この数分で別人のように豹変した彼女を連れて、はたまた冒険者用の超デカ盛りで有名なヘビーなお店にいった。 「大将!ウルトラマッスル盛りのメラゾーマ焼き5丁!」 さっきまでの鬼のような人格を変えて表のブリブリの声で入店。行きつけのようで大将はすぐに注文を作り始めた。ドシンとカウンター席に座った。 「ソニアちゃん彼氏?」 「え〜?どうだろ〜?」 「…奢れよ?カスが。」 大将の冷やかしに対し、はたまた鬼のような腕力で僕の腕を掴み、小声でカス呼ばわりされてしまった。 注文を待っている間、ソニアは料理の匂いだけで舌で口元を舐め回したり、既に大きなお腹を撫でてまだかまだかとソワソワしていた。 ウルトラマッスル盛りメラゾーマ焼きという、丼だけでソニアの肩幅よりも大きな超巨大な丼がソニアの前に置かれるやいなや、ソニアはレンゲを持ち、ガツガツと物凄い勢いで食事を始めた。 こんな速度で飯が減るものなのか?というレベルで丼が減っていく。お腹は滝のように傾れ込んでくる丼によってミシミシギチギチと音を立てて大きくなっていった。 残り少なくなった丼を持ち上げ、レンゲで口元にかき込む。最後の一口を終わるとズドンと丼を卓上に置いた。 「おかわり!」 その声と同時に丼は片付けられ、5丁と注文を受けた2つ目の丼がすぐに目の前に置かれた。前の丼と同じペースで食べすすめていた。 「ごめん、あと5丁追加!」 3杯目を食べ終わり、おかわりを言った時に大将に言い放った。ムキになっているようで、僕の事なんて気にも留めず、ガツガツと丼を貪るように食べていた。 結局元の5丁もこれで最後。ずっと店内にはソニアが丼を貪る音と咀嚼音、そしてお腹が膨らむ際のギチギチと重量感のある異様な音が鳴り響いていた。一応、店内の冒険者が他にもいたが、ソニアの異様な様に食事どころではなく、箸を止めて驚愕したまま静止していた。 ソニアが最後の丼を置いて追加の5丁に入る時、 「5丁…いや10丁追加ああ!!」 片腕を勢いよく挙げて今日一番の大声を店内に轟かせた。もう裏とか表とか取り繕える状態ではなく、バリバリに裏…いや本性と言うべき鬼のような形相だった。 「うおーまじか。今日めっちゃ食いますねえ。」 「彼氏の前だから張り切ってるんじゃない?」 「ふ、普通逆じゃないすか?」 「小言は終わってから。さっさと米炊いて作らんと、ソニアちゃんすぐ食っちまうぞ」 厨房が既に大忙しの中放たれたこの驚愕の発言。大将は慣れていたようだが、バイトであろう新人は目が回っていた。 ゴゲェェェェェェェェェッッッッッップ!!! ブビビビビビビビビビビビ!!!! 丼が追加されるまでの小休止の間にげっぷと屁をしてお腹の中の空気を取り除く。これをする事で少しでも胃の容量を増やしたり、膨らむ場所を確保したりしているようだ。 ずっと凄い勢いで食べ続けているのもあってか汗ばんで息も上がっていた。体温も上がっているようで身体から湯気のようなものが出ていた。 浅く荒い呼吸の中、お腹を叩きながら次の丼を待っていた。勿論追加されるやいなや、前よりもペースが上がっているのではないかと思うくらいに食べ進め始めた。 本当に、ほんっとうにそれからの10丁はあっという間だった。途中からレンゲを放ったらかして丼を持ち上げてスープみたいに経口摂取していたし、口から溢れて服やら机やらにこぼしてもお構いなし。酒場で受けた美少女像とはまるで結びつかない。きっと酒場の冒険者達がこの様を見るとドン引きするだろう。隣で見ている僕ですら事態が飲み込めず呆然としている。あんなに小綺麗な魔導士の布服も、今や食べこぼしでシミになるだろうし。 最後の丼を机に置いた時にはもう凄い状態になっていた。飲むように丼を喉に入れているため殆ど呼吸が出来ていないはずで、顔…いや全身が真っ赤で、前よりも浅く荒く、とても苦しそうだが何とか呼吸をしているような状態だった。 「お…おかわ…り…」 人差し指を突き立て一つのサイン。え?大丈夫なのと言いたいところだが、ソニアは食べたいようだ 追加までの待ち時間、ずっと苦しそうに天井を見ていたが、何かが下から上がってきたようで、両手で口を抑えた。吐くのは流石にまずい… 本人もそれは自覚しているようで、全力で抑え込んでいたが抵抗虚しくそれは口から出てしまった。 「ゴゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッップ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 爆音波のような轟音が店内に響き、机の上にあった水が入ったグラスが地震の時みたいに揺れ、隣にいた僕は失神寸前であった。 げっぷが終わりほっとしたソニアは、力を抜いてリラックスしていた。 「……ケプッ……ふう。楽になった…」 少しだけ理性を取り戻したようで、隣で白目を剥いて失神寸前の僕を見ていた。 「あんた…ほんと雑魚ね。」 「君がおかしいんだって…」 「あっつい…ほら、帽子脱ぐから持ってて」 帽子を渡された 「あっちゃー…服も机もぐちゃぐちゃね…買い替えなくちゃ。もうシミ落ちないし」 なんか凄く呑気な事を言っているが、ソニアのお腹は物凄い事になっていた。先程までの暴食も全て頷けてしまう程の巨大に膨らんだお腹。胸部装甲も一般的にみてかなりのサイズを誇っているが、そんなものの何倍と大きな大きさを誇り、これまで散々食べてきた食べ物でカチカチに膨らんでいるのが表面からでもよく分かった。 ウエスト全体を見回すと背中も膨らんでいるように見える。まるで肋骨から骨盤までの身体全部が胃袋なのではないかと思うくらいだ。 「へいおかわり。…ソニアちゃん今日凄いね。絶好調だね」 「ふふ…あと追加で2丁お願い。」 思わず僕はお腹に手が出てしまった。掌からは岩のような硬さとカイロのような熱さと、びちょびちょの汗を感じられた。ここからあの丼を3杯も食べるなんて到底考えられないが…それは店に入った時から同じである。 「ん…どした?お腹?」 レンゲを再び手に持ち、丼を食べようとしていたソニアだったが、不意にお腹の側面を触られたので手を止めてしまった。 「いや…その…頑張って?」 「…え?」 よく分からない発言に少し驚いたソニア。 「………あ!つか腹触ってんじゃねえよ!お前みたいな雑魚が触る権利ねえだろうがあ!」 「………あとさ……ごめん…ご飯口に運んでくれない?もうお腹大き過ぎて自分で持てないや」 言われた通り丼を持ち、それまでソニアが持っていたレンゲを使ってソニアの口元まで食べ物を運んでやった。比較的ゆっくり丼を食べ始めたソニア。ゆっくりだが確実に丼を食べ進めていき、嚥下の度にお腹がギチギチミシミシと音を立てて膨らんでいった。だが先ほどまでとは違い、明らかにお腹の音がおかしく、痛々しさを感じるものになっていた。当人は涼しい顔で丼を食べていたが、彼女の胃袋に底が見えてきたのではないかと感じられた。 とはいえ1杯目の丼を完食。すぐさま2杯目を食べ始めた。2杯目を食べている途中でソニアは僕に話しかけてきた。 「……あのさ、お腹、内側に強く押し込んでくれない?どこからでもいい。雑魚でもそれくらいはできるでしょ?……あ間違えた。出来んだろおらあ…はあ…」 もしかして強がっているだけか…?あるいは、鬼のような形相をする余裕すらないということか。まあ現に、食べるペースは落ちているし。 お腹を言われた通りぐっと押し込んでを色んな角度から、また背中からもやって欲しいと言われたので背中も押してみたりした。 お腹を押すたびにケプケプと小さなげっぷを小刻みにしていた。 ブビ!ブビイイイイイ!!! 今度は絞り出すようにおならを出した。…やはりもしかしなくても、かなり本人の限界は近いのだろうか。 「…ふう…よし…」 小声でそう言うと再び丼を食べ始めた。 そこからは凄く長く感じた。2杯目を食べ終わった時に思わず声かけてしまった。 「あのさ。もうお腹いっぱいなんでしょ?無理しなくても…」 そんな心配もガン無視され、3杯目の丼を見つめていた。一応、ソニアが注文したご飯はこれで最後だ。 やはりソニアは既に相当無茶をしているという推測は当たったようで、食べ物を口元にやっても食べるまで少しラグが生じて、冷や汗のようなものをかき始めて瞳孔も見開いて丼を一点凝視していた。 自分で頼んだのだし、そもそも僕はこんな量の丼を一杯すら食べることはできないので、ソニアに食べてもらわないと困るのだ。 反応の鈍くなったソニアに食べさせ続ける事数刻、やっと最後の丼が折り返し地点に到達した。 「あ…あの…」 「ん?なに?」 「も…いい…わたし…持つ…」 両腕で丼を持ち上げ、早く食べていた時のように経口摂取を始めた。 グビグビとゆっくりではあるが確実に飲み込んでいった。 店内は静かにソニアを応援するように見守っているのが分かった。 何とか完食し、器を机に置いた時のソニアの死にそうな顔といったら生涯忘れる事はないだろう。大将ら店の人達は歓声を上げて、プロレスで勝った人のようにソニアの片腕を掴んで上げた。 店に居座るのも迷惑なので帰りたいのだが、いかんせんソニアは今にも死にそうで、少しでも動かしたら絶対に大変な事が起こると確信していた。そのため、しばらくお店で休ませてもらった。 口が聞けるくらいまでソニアが回復した。二人で肩を支え合ってようやく歩けるくらいの極限状態の身体の中、会計で衝撃の値段を言い渡される。 「えーっと………35万…Zです。」 「え?」 「さ、35万Zです。お会計。」 35万なんて会計の金額を街中で見かけない。よほど都会の高級な店ならあるのかも知れないが…まあそんな事よりも、そんなに持ち合わせがあるはずもない。 「え、待ち合わせ…無いんですけど」 「雑魚なんだから奢れよー」 「まあ今日はいいもん見せてもらったし、カップル割引で10万にしといてあげるよ」 それでも中々の大金。なんとか持ち合わせはあったのでそれで払った。 「あーもう!雑魚が私に触らないで!」 「今更?じゃあ一人で歩けるの?無理でしょ?」 この期に及んでまだ生意気な事を言う奴だ。 気が付けばもう日が暮れていた。街中では目立ってしまうので、店の前で休ませる事にした。 グルグルグルグルグルグルグル!!!グギュルウウウウウウウウ!!!!!! あれだけの食事が終わり、食べ物の消化を開始したソニアの胃袋。辺りはもう日が暮れて静かなため、消化音が鳴り響いていた。 「…で?結局僕のパーティーには入ってくれるの?」 「うるさい」 「え!?自分で言ったのに?」 「うる…さい…」 気がつくとソニアは気絶したように眠りについてしまっていた。 ソニアが寝ている間もギュルギュルと胃袋は消化活動に勤しんでいた。 「……はあ。お金全部使っちゃったの、皆んなにはなんで言おう…」 もう日が暮れている。パーティーの皆んなに心配される前に、落ち合う約束の宿に帰る事にした。 さて、高いスカウト料を払わされたソニアには意地でもパーティーメンバーになってもらわなくてはならない。翌朝ソニアが目覚めた際、何て問い詰めてやろうか。明日が楽しみだ。