XaiJu
栞

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エイプリルフールの告白

中学2年生になった時の話。

4月1日の新学期、幼馴染みの栞と一緒にいつもの通学路を歩いていた。


街路樹や公園にある桜の木は、あともう少しで見頃を迎えるような咲き具合だ。いつもとは違う、何だか新しいことが始まる気持ちになる日。


柔らかな日差しの横から、ほんの少しだけ冷たい風が頬を掠めていく。隣では、幼馴染みがどこかいつも以上にウキウキとしているような、時折思い出したかのようにニヤニヤとした笑みを浮かべていた。


「どうしたの?何か嬉しいことでもあったの?」


「うふふ~♪知りたい??」


立ち止まって、下から顔を覗き込むようにして見つめられる。何があったのか気になるので「知りたい」と答えると、「じゃあ耳貸して?」と言われて耳に唇を近づけられる。


またいつものようにイタズラで耳に息を吹きかけられるのかと思いきや、予想もしていなかった言葉を伝えられる。


(実は私、彼氏できたんだ♪)


「…ん…なっ!?え、ええっ!?」


幼馴染みが何を言っているのか、理解するまでに数秒かかった。あまりの衝撃に、思わず大きな声で反応してしまう。


「しーっ♪ほら、静かにして?今私が言ったこと、学校で誰にも言っちゃだめだからね?」


「え、あ…わか…った……」


いつもほぼ一緒にいる幼馴染みに、まさか彼氏ができたなんて…相手は誰なのだろう。同じ学校の人だろうか?


中学生という思春期の時期。

年頃の女の子である幼馴染みにも好きな人や彼氏がいてもおかしくないとはいえ…どうして今まで何も話してくれなかったのだろう…。


何だか切ない気持ちやショックで半ば放心状態となり、重い足取りで学校の校舎へと入っていった。


**

2年生の教室があるフロアまで階段で上がる。

基本的に3年間クラスのメンバーが変わることはなく、教室に入ってもいつもと同じような光景が広がっていた。


政府による方針に漏れず、この学校でも"ペアの女子が男子をくすぐって躾をする"。


そのため、ペアになった男女がそのまま恋愛関係になることも多いようで、このクラスでもそういった関係のペアは多い。


「新しい席はどこだろうね~…あ、窓際の後ろ!やったね~♪ほら、早く行こっ♪」


幼馴染みに手を引かれて自分の席へと向かう。

椅子に座ってから、やっぱりどうしても気になって小声で今朝の話を聞いてみることにした。


(ねぇ…さっき話してたことだけど…その…彼氏って…)


(学校でその話はしないって私言ったよね?)


(あっ…ごめん……)


真剣な表情で見返され、思わず謝ってしまった。


キーンコーンカーンコーン…キーンコーン…

次第に始業を告げるチャイムが流れ、みんな席について静かに担任の先生が来るのを待っていた。


しばらくしてガラガラと教室の前扉が開く。


「は~い皆さん♪おはようございます!みんな揃ってますね~♪今年度もよろしくお願いしますね」


担任の先生も、基本的には3年間変わらない。

明るく優しい雰囲気の女性の先生だけど、くすぐりや"調教"の腕前は確かであり他の先生達からも一目置かれているらしい。去年の家庭訪問の時期、拷問師である母ですら「あの先生は凄い…あゆみより調教の技術があるかも…」と関心したように呟いているのを聞いた。


見知った顔なので改めて自己紹介も無く、午前中は全校集会や教室に戻って今後の事務連絡などで終わり。


4時間目が終わり、一同解散となった。


「ん~終わったね~♪じゃあ帰ろっか!あ、今日の午後予定ある?無かったら一緒に遊ぼうよ!」


隣の席では幼馴染みが嬉しそうに手早く帰り支度を済ませながら話かけている。


「え…でも、彼氏は……」


「あ、もしかして本当に信じてたの!?今日はエイプリルフールだよ~♪午前中に嘘をついても良い日!午後にはネタバラシしないといけないみたいだからもう言っちゃうけど、彼氏の話は嘘ついちゃった♪ごめんね?」


「んなっ…!?えっ!?う、嘘だったの!?」


そう言えば今日はエイプリルフールだったことをすっかりと忘れていた。幼馴染みにまんまと騙され、拍子抜けしたような少し安心したような気持ちになりへなへなと身体の力が抜けてしまいそうになる。


「だ、大丈夫、?騙しちゃってごめんね?怒ってる…?」


「お、怒ってない!あぁ~そっか~今日はエイプリルフールだったか~アハハ…とりあえず…帰ろっか!」


気を取り直して気丈に振る舞うように、鞄を持って帰ろうと促す。教室に残っていた他のクラスメイト達はとうに帰ったようで、いつしか幼馴染みと2人きりになっていた。


「ねぇ、彼女になってあげよっか?」


「なっ!?えっ…あっ!またエイプリルフールの嘘?それとも…本気…?」


「もうエイプリルフールは終わってるんだよ?」


いつになく真剣な表情の幼馴染み。

血の抜けたような身体が、急にドクドクと心拍数が上がっていく。体温が上がり、緊張で手に汗を握る。


意を決してというより、反射的に口から言葉が溢れていた。


「こちらこそ…よろしくお願いします!」


深々と頭を下げるように伝える姿を見て、「ふふっ♪緊張しすぎだよ~♪ほらほら、頭上げて?じゃあ一緒に帰ろっか♪」と軽やかに話す幼馴染み。


教室の窓から吹き込む風に乗って、まるで祝福を贈るかのようにひとひらの桜が机の上にと舞い落ちるのであった。

エイプリルフールの告白

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