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土装番
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二人のアオイ 液体に寄生された金属人形 1

 汚れもホコリも何一つなく、美しいとさえ口から漏らしてしまいそうな程に純白な、何もない真っ白な部屋。  そこに立つ二体の全く同じ容姿のスレイブドール、水樹葵と水樹碧。  水樹葵は、かつてはただの人間だったが、何者かに連れ去られ、自身の意思に反して全身を機械化させられた存在である。  今の彼女にはもう、一片も生身は残されておらず、彼女を表現する人格や記憶も、電子データの塊でしかない。  にも関わらず、彼女自身は未だに自分のことを人間だと思い続けているが、これはそう思考、認識するように設定された物。  これは、彼女達の痴態を見たい物が自由に改竄できるお遊び要素とも言える要素である。  もう一体の水樹碧は、そんな機械化した彼女のコピーとして製造された、ある意味で純粋な機械人形。  葵が持っている記憶、人格を有しており、オリジナルが知っていることは彼女も知っている、いわば双子の妹のような存在。  だが、葵と大きく違うのは、自身が機械仕掛けだと自覚している点、そして、人格データに少々の改変が加えられている点にある。  自分をコピーだと自覚しつつ、外部への認識を持っている彼女は、常にオリジナルの主導権を握っている。  コピーがオリジナルを誘導し、時に愛し合い、時に壊してしまう。  そして碧は、葵の事を愛しているように設定されている。  完全な複製が、全く同じ人物に強い愛情を抱くのは、些かナルシズムな雰囲気を醸し出すが、彼女はそう設定されている。  99%同一の存在だが、その二点に1%が込められている。  そんな彼女達は、この日も外部の者を満足させる為に、自ら壊れ、エラーを起こし、快楽に浸っていく。  しかし今回は、これまでよりも雰囲気がどこか違っていたのだった。 * * * 「ねえ碧、今日はずっとじっとしているけど、どうしたの?」  二体同時に、一糸まとわぬ全裸の状態で起動した、葵と碧。  だが、今回の彼女達の様子は、それまでとは明らかに違っていた。  いつもであれば、これから行われる事の全容はほぼ全て葵が把握している。  同一の身体で絡みあい愛し合うことも、人工皮膚を剥ぎ、中身を曝け出してエラーと誤作動に乱れることも、与えられた物品を用いて、自らの身体を破壊し快楽に溺れることも。  起動した後のある程度定められた未来は知っているはずだった。  だが、この時の碧は、葵と同様にこれからのことがわからないという色に満ちていた。 「いえ、なんでもないわ。私にもこれからどうしたらいいのかわからないだけよ。だから、どうしようかなって。待ち続けてるのが正しいんでしょうけど」  今回外部から与えられた内容は、珍しく碧にもわからなかった。  正確には、内容の全容が理解できていないのだ。  これから何をするのかも、何をすればいいのかも無く、知らされた情報は、とある試作品をこの場にて提供するというもののみ。  それがおそらくパフォーマンスに繋がるのだろうか。  そう思考しながら待機し続けて五分以上経っても、未だ室内には変化が訪れない。  何か道具が出てきてくれれば、その場で葵に損傷を与えたり、自損して快楽信号を浴びるような自慰をすることも辞さないのに。  まるで放置プレイをくらっているかのような気分になる。  オリジナルは未だ、自分を人間だと思い込みながら、正しくモラルの元に動かないでいる。  全裸であることを受け入れているのに。 「そうね。ここがどこかもわからないけど、たぶん待っているのがいいのよね。碧がいるなら私も待てるから、一緒に時間でも潰しましょ」  いつもと違う点は他にもあった。  それは、行為に伴う設定の変更が行われていないことである。  提示されたシチュエーションを達成する為に、アオイ達は根本からの設定を改変されることが多い。  姉妹設定や赤の他人設定、葵側が自分を機械と認識している設定、最初から性欲が爆発的に発生している設定、身体の形すら変えられ、人外的な状態から壊れ合い気持ちよくなる設定。  どれだけ倒錯的でアブノーマルな設定でも、それが彼女達の事実であり現実として、プログラムに従い行動してきた。  今回はそれが無い。そもそもの設定こそ歪んでいるが、大きな改変が存在していない。  滅多にないパターンであり、碧にもどうすればいいのか全く読めない。  ともかく、その試作品が到着するまで待機すればいいのかと判断し、碧は己に組み込まれた好感度に従い、葵にいやらしく抱きついた。 「何もないから……こうして、葵を愛情を確かめ合うのもいいでしょ? 私ね、いつもいつも、葵のことを好きだって思い続けてるんだから……」 「あっ……碧……目が覚めたばっかりなのに……ん……あっ……碧の肌……綺麗……すべすべしてる……」  内側で沸き起こった人格データの反応に身を委ね、葵は誘われるがままに、立った状態で互いの身体を抱きあった。  同じ素材の人工皮膚が触れ合い、優しく潰れ、内部機構が作り上げた、まだ人間の平均体温に及ばない温かさを共有する。   「あっ……もう……何するのよ碧……いくら、私が碧のこと好きだからって……ん……」 「ならいいじゃない……まだ何をするかも……わからないんだから……こうして……触れ合うことぐらい……」  少し戸惑いながらも、葵は突如向けられた濃厚な愛情表現を受け入れ、自分からも軽く抱きしめ返す。  全く同じ素材の人工皮膚が潰れ合い、女体の形をした機械が絡み合う。  二体の情欲は、少しずつ高まっていく。  じっと見つめあい、胸が潰れ、思わずキスまでしそうになったその時、碧の電子頭脳に新たな外部からのメッセージが送信された。 「あっ…………試作品は……私達のデータを……」 「…………?? 何言ってるのよいきなり……」  碧に与えられた情報は、その試作品の僅かな詳細。  それは、製作されたばかりではあるが、葵と碧、両方の記憶データを参考としてインストールされていること。  そして、その試作品は液体金属タイプのアンドロイドであること。 「そうか……あれなのね……」 「ん……どうしたの碧……?」  碧の視界、赤らめた葵の顔の向こう側。  真っ白な床に僅かに生まれた隙間から、銀色の液体が染み出すように這い上がってきた。  到底液体が発するようなものではない、重金属の湾曲音が水に溶けたような音が小さく鳴りながら、銀色の水溜りは少しずつ増加していく。  背後で起きている異常現象に、葵は気づく様子は無い。  音としては聞こえているのかもしれないが、その脳内処理は、人格データが及ぼす好意のままに碧に向けられている。  その間にも、体積を次々と増やしていく液体金属。  そして、一瞬止まったかと思うと、ゆっくりと二体の方へ動き出した。 「ねえ碧……どうしたのよ……気分でも優れない? いつもは碧から私に絡んできてくれたじゃない……」  これから一体何が起こるのかも知らされていない碧。  葵からの誘うようなねだり声も、半分しかバッファ内に留められない。  葵の言葉に応えるように、きゅっと軽く抱きしめ返すと、液体金属は、まるで人間のような眼球を作り出し、ぎょろっと二体の方を見つめた。  その擬態ぶりは、まるで生物であるかの様に精巧であり、触れば肉々しさを感じるのではと思わせる程だった。 「…………ねえ葵」 「ん、どうしたの碧……今日は、私から誘ったほうがいいの……?」  そんな背後で起こっている現象に気づく気配のない、色に満たされたオリジナル。  すると、液体金属はぽこっと一部分が、布を下から箸でついたように膨れ上がった。  碧は、その様子をあえて気づかせようと、葵に反応を促す。 「違うわ……後ろを見てみて」 「えっ、わかったけど……後ろには何もな…………!?」  可愛い碧の言う事に従い、一旦身体を離して振り向く葵。  その時、膨れ上がった液体金属の一部分は、鋭利な鉄の針と化し、一瞬にして一直線に葵の額へと伸び、人工皮膚を貫いた。  鳴り響く金属同士の衝突音。  中枢部を貫かれた葵の動作は一時停止し、振り向く途中の、まだ淫欲を残した笑みのまま固まった。  碧は巻き込まれないようにと、一旦オリジナルの側から離れる。  液体金属の針は後頭部まで貫き、髪を退かして存在を主張した。  すると、マネキンのように動かなくなった葵の身体が、かくん、かくんと痙攣し始める。 「う、うしし、うしろろ、ろろ、ふふ不明な不明なユニットからのああアクセスを確認しし、し、し、セキュリティ設定が設定が不十分ででで、ですです、ただちち、ち、に、あ、あ、プログラムのへへ変更が変更が変更がおお行われましししたしした」  人格データからの発言が止まり、笑みを浮かべたまま無茶苦茶なシステムメッセージを発する葵。  発言と同様に、痙攣から大きな胸を揺らしながら、眼球から人工涙液を、口から人工唾液を、乳首からは乳液を撒き散らし、女性器ユニットからは人工愛液がだらだらと垂れ流された。  誤作動によって、非人間的な姿が露わになるオリジナル。  そして、ゆっくりと鉄の針が頭から引き抜かれると、葵の身体はぴくん、ぴくん、と震え続けるが、次第にゆっくりと落ち着きを取り戻した。  液体金属は、再び動き出したかと思えば、彼女が撒き散らした体液を回収し始める。   「いきなり派手にやってくれたわね……大丈夫かしら、葵?」  いきなり脳天を貫かれた葵は、声に反応してゆっくりと後ろを向く。  まるで意思のない操り人形のような、どこか人間らしさの失われたやや緩慢な動作で、額には血の一滴も流れていない人工皮膚の穴が露出している。 「な、なに? 碧? 私は、は、大丈夫よ。なに、か、あった?」  気づかないどころか、先程の出来事を丸々認識できないようになっている様子の葵。  頭部を横に傾け、どこか据わっていない雰囲気で、ゆっくり近づいてくる。 「葵、頭貫かれて異常はないの? それに、そこの液体金属にも」 「え? なな、な、なにそ、れ? ………………頭はつ、貫かれて、な、いわ? そんなここ、ことあったら、死んじゃう、もの。液体金属……? 見当たらないわ、ね」  葵は、小刻みに震える右手を額に持っていき、ぺたぺたと触れる。  指は明確に、穴の空いた皮膚と、その、奥の内部機構にも当たっているが、自身の損傷が認識できていない様子。  さらには、目の前で地面を這っている液体金属にも、存在しないかのような言葉を吐いている。  どうやら彼女自身の認識が、その液体金属によって改竄されたらしい。 「あの一瞬で直接ハッキングしたのね。これがMA01……すごいわ」  碧の電子頭脳に追加送付された新たな情報に記された、液体金属の名称。それがMA01。  名前を呼んだ直後、それはゆっくりとスライムの如く、新たな形を形成し始めた。  床に潰れるように広がっていたそれが収縮し、上に引っ張られるようにして変形する。  まるで女性のような頭部と長髪から始まり、首、鎖骨、肩、胸部、両腕、腹部、下半身、両脚と、次々と人間的な形状に変わっていく。  そして、変形が終了すると、体表面がアオイ達と同じ肌の色に染まり、人間らしい姿に生まれ変わった。  その容姿は、まるでアオイ達の容姿から多少の年齢が加わったような雰囲気であり、元から大きな胸も、より大きく柔らかくなっているように見えた。 「水樹葵、及び水樹碧を確認しました。私はMA01。今回のテストより、二体の性行為及び破壊行為をサポートする機材の一つとして加わりました」  だが、そんな容姿とはうってかわって、彼女の声はネット上に溢れているような、作り物らしい電子音声。  抑揚がはっきりしていながら、人間としてはやや不自然な言葉の切れ目が、彼女の非人間性を強調する。  丁寧な口調と態度でありながら、二体をはっきりと機材扱いしている。  MA01は、どこか虚空を見つめたまま動かなくなっている葵の身体に触れ、額の穴を撫で回した。 「私の性能をアピールするため、水樹葵の頭部を損傷させた上で、身体の一部を使用して電子頭脳を仮修復。認識設定に変更を加え、私を認識できないようにしました。このように、私は水樹葵、並びに水樹碧、両機体に対して様々な機能を発揮することが可能です」 「へぇ、そういうのなのね……私は今から何をしようとかは演算結果が出てないのよね。何ができるか……というより、見てると色んな事が出来そうだもの」 「構いません。私は現在、水樹碧の命令に従うように設定されています。指針の決定が成された場合に、順次命令を私に与えてください」  これまでに、自分達のコピー以外で対話可能な相手は存在していなかった。  それも、機能も同一ではなく、特殊かつ汎用性の高い機能を持ったそれは、記憶データ上には存在しない。  自身の命令に従うならば、葵を使って色々と試してみるのも悪くない。それどころか新しい扉が見えてくるかもしれない。  元々どのような機能を持っているのかも通知されていないので、手探りで確かめてみるしかない、というのも事実ではある。  碧は、葵に絡みつくMA01の肩に触れ、期待に満ちた細い眼差しで口を開く。 「そういうことなら、是非とも使わせて頂くわ。それじゃあ……葵の中に入ることはできる? まずは中から一体化してみてほしいの」 「かしこまりました。水樹葵の内部へ侵入します」  命令を受諾したMA01は、人間の形を崩して溶けていった。  銀色の水溜りに戻り、ずるずると床を這いずると、今度は葵の足からくっつき、二つに分裂して下半身を上る。  そして、それぞれ女性器ユニットとアナルから体内に侵入し、葵の中へと入り込んでいった。 「あ、あ、あ、ああああ、な、な、なにがおおおきておきてるの? なななんだかとと、と、とて、とても気持ちいい気持ちいいのがぜぜ全身にににに、あああっ!!」  センサーが密集する肉壁が刺激され、葵の電子頭脳へ快楽信号が溢れ出す。  ただ喘ぎ声を上げるだけでなく、全身をかたかたと揺らしながら、人工の体液を再び垂れ流す。  液体金属が全て体内に入り込むと、葵はその場で膝をつき、上半身を軽く仰け反らせた状態で、ぴくっ、ぴくっと身体を震わせた。  生気のない虚ろな瞳は白い天井を向き、されるがままに存在を弄られている。  体表面の人工皮膚に、体液の跡が作られた直後、その皮膚の下が小さくうねうねと蠢き始めた。  どうやら葵の全身に、MA01が完全に侵食しきったらしい。  すると、まるで糸で操られる操り人形のように、覚束ない足取りで立ち上がった。  ゆらりと上半身が前に傾いたまま、大きな両乳は真下を向いている。  ふらっと身体を軽く後方に反らせ、姿勢を補正するように上下左右に揺れると、葵はようやく直立の姿勢となった。 「碧、い、い、私な、なんだかとと、とてもきもちちいいの、あ、あ、水樹葵への侵食が完了しました。どうぞ、ご命令を全身が、ななななんだが浮いてるみみみたたたたいい……」  女性器ユニットとアナルから、わずかに液体金属の一部が見え隠れし、葵本人の声とリップシンクしている口から、それとは関係ないMA01の声が聞こえてくる。  寄生先と違い、明瞭かつはっきりと発される液体金属の個性の無い声。  眼球がぐりぐりと別々の方向を向き、何度か奇妙な動きを見せたところで、一度白目を剥いてから正面に直された。  額の穴からも、ほんの少しだけ  まるで映画内のクリーチャーに身体を奪われたヒロインのよう。  碧は、今までとはまた違う趣の、葵の壊れ始める姿に、思わず人工愛液をじわっと分泌していた。 「へえ、こうなるのね……情報が無い時はどうなることかと思ったけど、これは新しい扉が開けそうじゃない……ふふ、存分に楽しませてよね」 「かしこまりました。ご自由に指示をお伝え下さい」  己の自覚がないままに壊れていこうとする葵をよそに、碧は彼女の非人間的な快感に満たされる姿に興奮していた。  外側から与えられた新しい玩具。どんな風にして遊ぼうか。  そして、碧はまず最初の命令を決定した。


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