XaiJu
ドーン
ドーン

fanbox


【小説】催眠プール



「ねえ、ミドリ~。今日はアンタも終いでしょ?これからちょっと付き合ってよ~」


 今日は午後に1本だけだった大学の講義が終わった途端、友人であるアズサから声を掛けられた。


「別にいいけど、どこにいくの?」


「会員になっているフィットネスクラブがあって、そこのプールが『凄くイイ』のよ!是非ミドリにも体験して欲しいの!」


「でもアタシ、水着持ち歩いてないし……」


「大丈夫、大丈夫。水着の貸し出しもやっているわ。さあ、行こう!」


 半ば強引に連れ出されることになったが、彼女が言う『凄いプール』というのにも興味があった。



 アズサに連れられて目的のフィットネスクラブに到着すると、早速受付を済ませ、水着を借りて更衣室で着替え始める。


(う~ん、やっぱりこの娘、綺麗だわ~。それに胸の大きさは完全に負けてるしなぁ~……)


 隣で着替える友人の整った顔立ちや体つきを覗き見て、アタシはこっそり考える。


(……だけどアタシだって、脚のラインの綺麗さとか負けていないはず!)


 努力して何とかなるところは頑張って磨いてるつもりだ。

 実際、大学のミスコンに一緒に腕試しに出場した時は、2人とも上位に入賞したのだから、客観的な評価も悪くないはずだ。



 水着に着替えた私たちは、2つあるらしいプールのうち、女性会員限定だという方に向かった。

 地下にあるそのプールは、照明が控え目で薄暗く、更に時間帯のせいか、今は貸し切り状態だ。


「なんか雰囲気あるなぁ~。それに、なんだろう?香水のような凄くイイ匂いがするけど?」


「高級な香料を使ってるそうよ?」


 水面に近づくと心地よい香りが一面に漂っていて、とても落ち着く。


「とりあえず向かい側まで泳いで来たら?アタシ、あっちで待ってるから」


「そうね、折角だからひと泳ぎしてくるわ」


 そう勧められて、アタシは一足先にプールに飛び込むと友人の待つ向かい岸に向かって泳ぎ始める。

 程良いレベルの温水は、ほのかに良い香りがして嫌な事を全て忘れさせるかのように心地よい。

 肌にも染み込んでくるような感覚があり、それがアタシをこれまで経験したことがないほどリラックスさせてくれる。

 照明が控え目なおかげで、落ち着いた気持ちで周りのモノを受け入れられるようになっているのかもしれない。


 少しぼーっとしながら泳いでいると、マッサージ器についているバイブレーション機能のような振動がプールの水全体を揺らしていることに気付く。

 その振動は何かの『ささやき』のようで、そこに含まれる言葉がアタシの心の奥底に染み渡るように書き込まれ、更なる夢見心地へと導かれていく。

 対岸に辿り着いた時には、アタシの自我は幸福の時に酔いしれ、蕩け切っていた。


 そんなアタシに頭上から手が差し伸べられた。

 アタシはゆっくりと顔を上げ、その人物を蕩けた視線で見上げる。

 それは見知らぬ男の人だった。

 アタシがうっとりとしながら手を差し出すと、彼はニヤニヤと笑いながら、その手を掴み、アタシを水中から引き上げる。


「くっくっく、こいつは上玉だ!よくやったぞ、アズサ!」


 アタシの顔やカラダをジロジロと眺めながら、その男性は隣に立つ女性に話しかけた。


「ご主人様の喜んで頂けて、私も嬉しいです!」


 横に立つアズサも満面の笑みを浮かべて応える。


「おい、お前!名前は?」


「……はい……わたしはミドリ……です……」


 彼に問われてアタシはぼんやりしながらも正直に答える。


「よし、ミドリ!お前は俺様の忠実なドレイだ!これからは俺様のどんな命令も喜んで従い、その美味しそうなカラダも心も全て捧げて、俺様に奉仕するんだ!分かったな?」


 今のアタシはどんな言葉にも素直に耳を傾け、その全てを心にしっかりと刻んでいかなければならない。

 そうすればずっと幸せな気持ちでいられると、プールの中で『ささやき』に教えられたのだ。


「……はい、わかりました……私はご主人様の忠実なドレイです。これからはこの身も心も捧げて奉仕致します。それがアタシの悦びであり全てです!」


 最初はぼんやりしながら呟いていたが、終いの方は自分の意思でしっかりと自分の胸の内を言い表すことができて、アタシは満足感に浸る。


「ああ、期待しているぞ!」


 ご主人様はアタシの胸やお尻を遠慮なく弄りまわしながら、心底楽しそうな笑みを浮かべる。


「それにしてもクスリと洗脳装置付きのプールの相乗効果は相変わらず『凄い』な!お前のような上玉が手に入って俺は嬉しいし、お前は俺様の奴隷になれて幸せ。こんなに『凄くイイ』ことはなかなかないぞ!」


 その愉快そうな表情を見て、アタシもとても幸せな気持ちになるのだった。


More Creators