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ネ◯ウヨ妻、韓堕ち④

キムくんは、「サランヘヨ」の言葉とともに雰囲気が変わった。 韓国語の持つ響きってなんだかとっても不思議だ。日本語で「愛してる」と言ってもキザで浮いたセリフに聞こえるけど、韓国語の「サランヘヨ」は、ロマンチックなのにすっと耳に入ってくる気がする。というのもあるし、夫も含めて、日本の男性は「好きだよ」とか「愛してる」とか愛の言葉をパートナーに言うのに躊躇している気がする。その点、韓国人のキムくんはこんなふうにすんなり言ってくれてとっても嬉し……嬉しくはないけどすごいなと思う。 キムくんはなんの香水を使ってるんだろう。近くにいるととても落ち着く。植物のような香りだ。韓国人は男性も美容やおしゃれに気を使うと言うけれど、キムくんもそうなんだろう。そういうところだけはうちの夫にも見習ってほしい。自分の見た目にはほとんど無頓着で、新しい服を買ってきてあげてもほとんど着ない。 って、なんで夫とキムくんを比較してるんだろう。キムくんにサランヘヨなんて言われて自分のペースを乱してしまったみたいだ。私は年上の女性として、キムくんの好意をきっぱり断らなきゃいけない。好意っていうより、私のことを弄びたいだけだと思うけど……でも、もし本当に一目惚れで私のことを好きになっていたりしたら、あんまり強い口調で断るのも失礼かな…… 「キムくん、ちょっと一回離れて」 私は毅然とした態度で言う。吉村さんはキムくんにメロメロになってしまったかもしれないが、私は違う。日本人の女性が簡単になびくなんて思わないでほしい。大体、吉村さんも立派な旦那さんがいながら、キムくんに乗せられて良い気になるのがいけないのだ。こうやって、独立した女性として、日本人女性は韓国人男性の思い通りにはならないという事実をきちんと突きつけてやらないといけな……んっ!?♡ えっ? 一瞬何が起こったのかわからなかった。 キムくんのあの甘い爽やかな匂いが急に近づいてきたかと思うと、私の視界は肌色で塞がれた。キムくんのまつげが私のまつげに当たる。え?何?私、もしかしてキスされてる? 自分自身に問いただすまでもなく、私の唇にはキムくんの唇が当たっていた。ぼってりとした厚みのある唇。寒い国ではこんなに厚い唇でなければ寒さに耐えることができないのだろうか。だめだ、この唇、吸い付いてくる。こんなこと思いたくないけど、こんなキス初めてと思ってしまっている自分がいた。 「吸い付いて」 「えっ?」 キムくんは今、唇を離して確かに「吸い付いて」と言った。 なんで私がそんなことしなきゃいけないの? 「吸い付いて」 キムくんはまたもや言ってくる。どうして私が自分からそんなことをしなきゃいけないんだろう。私とキスしたかったらキムくんの方からしてくれば良いじゃない。 「早く、吸い付いて」 今までの日本人の女の子だったらこれでキムくんに自分からキスしに行っていたのだろうか。でも、残念でした。私は自立した精神を持った大和撫子だからそんなふうにいくら強情に言われたって絶対に自分からすることはないです。絶対に、そう言い切れる。 確かにキムくんのキスはすごかった。こんなキス初めてと思ってしまったのは事実だし、もしキムくんの方から2回目をしていたら、もしかしたら受け入れてしまっていたかもしれない。まあ、もちろんそれはキムくんとか韓国人を受け入れたってわけじゃなくて、単純にちょっと不思議な感覚だったからもう一度体験してみたいってくらいの感覚に過ぎないけど。 「ダメ?」 キムくんは急に子犬のような情けない顔になると、顔の高さを私よりも下にして上目遣いで見上げてきた。どうしても、この綺麗な顔に見つめられるのには慣れない。キムくんの瞳を直視するのも憚られてしまう。この目を見ていると私はダメなのだ。キムくんのお願いを聞いてあげてしまいそうになる。 「ダメだよ。私は結婚してるし、夫以外の男の人とキスなんてできません。それに、今日は韓国語のレッスンをしてくれるんでしょ?」 そう言うとキムくんはハッとしたように言った。 「そうでした。佳奈さんがあまりにも綺麗だったからついキスしてしまいました。佳奈さんも僕のキスに満足してくれたと思ったからもっとしたくなったのですが……。僕の勘違いでした。気持ち悪かったですよね。ごめんなさい」 途端に純粋になったキムくんの瞳でそう言われるとこちらも悪いような気がしてくる。 「別に気持ち悪くはないけど……キムくんのキスは上手いと思うよ。だけどこういうのはカップルとか夫婦でやることだから。私たちまだ会って30分も経ってないじゃんw」 気を持たせてはいけないとは思うけど、どうしてもバッサリとはいけない。これでキムくんもわかってくれると思うけど。 「そうですね。じゃあ僕たちがカップルになったらしましょう!」 キムくんが冗談を言ったので思わず笑ってしまった。 イケメンで、真剣で、お世辞も言えて、ユーモアもあるキムくん。確かにこれはモテるな。私のような人妻に行かなくても、大学の若い子を口説けばいいのに。吉村さんみたいなふわふわした女性だったら簡単に落とせるだろう、と私は思った。 その後、約1時間の韓国語レッスンはキムくんの教え方の工夫もあって予想外に楽しく、これなら毎週来てもらいたいと思った。キムくんに会いたいからではない。ただ、韓国ドラマやKPOPを現地の言葉で見てみるのも良いかなと思っただけだ。 次のレッスンの約束をするとキムくんは帰っていった。 次回は来週の日曜日だ。早く来ないかな。それまでに今日勉強した範囲をきちんと復習しておかないと……。


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