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ある【ひとコマ】 ~炎天下の二頭身~ Main Story

これはある【ひとコマ】。 そんな事があるかもしれない…いや…あったかもしれない…。 そんなキャラクタショーのあるひとコマ。 ・・・ 「暑い…」 私は今日、キャラクターショーの現場に来ている。 今日のショーは、アニメものの二頭身キャラが主役のショー。 キャラクターはカエルのようなデザインで、メインの緑色のキャラ、そしてサブの赤色、青色の三体のキャラ。 その三体がメインでストーリーが展開していく。 私こと、【茉優(まゆ)】が担当するのは、サブの赤色のキャラ。 メインの緑色のキャラは、先輩である【美帆(みほ)さん】、もう一体のサブの青色キャラは、ほぼ同期の【佳澄(かすみ)】が担当する。 このショーのキャラクターの衣装。 パーツは二つしかなく、頭と胴体のみ。 体のへそから下を胴体に入れ込み、そして、上半身はキャラクターの【頭】である、丸く大きなパーツでごっそり包まれる。 胴体から延びるキャラクターの手は、中に棒が入っており、衣装を着たら、体の側面でその棒を掴み、操作するような造りだ。 頭部分は、あまりにも大きいため、他の人に手伝ってもらって、上半身に被せてもらい、中で自分で胴体と固定する。 普通の着ぐるみと違い、ドレッシングが完成しても、自らの上半身の周りには、かなりの空間がある。 へそから上が、いわゆるマスクの中一緒に入っているくらいの大きさだからだ。 普段の着ぐるみのマスクは、頭だけが包まれる。 それ故、顔の周りには比較的、広い空間は無い。 ある意味では、着ぐるみの割りに開放的といえば開放的である。 しかし、逆説に、この衣装の問題はそこにもあるのだ。 上半身を包み込む大きなマスク。 その中には、自らの頭だけだなく、へそから上の上半身が、一緒に入っているのだ。 なので、マスク内は、自らの【体温】も溜め込んで行く。 内部空間が広いのはいいが、本人の頭が入った空間を自らの体温で温めていくのだ。 なので、頭部周りを包み込む熱気がかなりのものとなる。 下半身も分厚い造りになっていて、恐ろしい程に熱気を籠らせる。 つまり、全身、熱気の逃げ場のない、見た目のかわいらしさの割りの過酷な衣装。 まぁ…楽な衣装ではない…。 そして、問題なのは今日の現場の状況。 この真夏の炎天下。 屋根もないステージ。 そして、あろうことか、この祭りは商店街の大通りで開かれているため、アスファルトの上にカーペットを敷いただけのステージスペースなのだ。 照りつける太陽光がアスファルトを熱し、その熱がステージ上を地獄と化す。 ステージ上の暑さは、普通の服装をしている人でもまいってしまいそうな暑さだが、私たち三人は、着ぐるみを着て、その上でショーをしようとしているのだ。 控えのテント内は、一応、スポットクーラーが設置されているものの、やはり、下はアスファルト。 直射日光が当たった近くの地面から熱が伝わってきている。 もう、私はキャラクターの頭部を被り、スタンバイオッケーの状態。 後はショーが始まるのを待っている状況だ。 まだショーが始まっていないというのに、額から汗が流れ落ちていくのが分かる。 衣装の下に着ている全身タイツが、汗で、所々、色が変わり始めているだろう。 (ふぅぅ…暑い…これは…きついかも…) そして、その状態で待っていると、MCのお姉さんがショーのストーリーが始まるコールをした。 すると、緑色のキャラの中から美帆さんの声が聞こえた。 「茉優、佳澄!かなり暑いけど、がんばって行こう!!」 「はい!!」 お互い衣装を着こんでいるため、かなりくぐもった声だが、姉後肌の美帆さんの言葉はしっかりと私たちに届いていた。 そして、ショーが始まった。 炎天下の中、この衣装を着込んで動き回る。 ただ着て控えテントにいるだけで暑かった所、加えて演技をしながら動き回る。 この衣装、足を動かせるというのと、手は棒状のものを動かせるだけ。 それ故、演技をしようとすると、全身で大きく動いて表現するしかない。 なので、演技をするという事は、恐ろしい程の全身運動になるのだ。 当然のように、着ぐるみ内は灼熱の温度になっていく。 (…暑い…これ…やばい…な…) ショー中盤で、既に体中から噴き出した汗が、着ている全身タイツをグショグショになっている。 上半身の空間が広い分、自分の上半身が見え、タイツの濡れ具合が確認出来る。 マスク部の中の空気がかなり籠って、恐ろしい程の熱気となっている。 つまり、私の体を包み込んでいる空気が熱気なのだ。 呼吸の為に吸い込む空気が、この熱気を帯びた空気。 その熱気感から、息苦しさも感じ始めた。 通気口がマスクのキャラクターの口の部分しかない。 その口の部分は、私の頭からはかなり離れた位置にある。 魔法少女系のマスクなら、マスク内の空間は狭いものの、口の部分が近いため、空気を吸い込めば、そこから空気が入ってくるが、この衣装の場合、私が大きく息をした所で、外から直ぐに新鮮な空気が入ってくる訳ではない。 なので、中の空気が簡単に入れ替わるものでもなく、澱んでいる感さえ感じられるほどだった。 真夏の灼熱の外気。 そして、アスファルトから放たれた、下から来る熱。 それらは容赦なく、私たちを窮地に追い込んでいくのだった。 (暑い…暑い…苦しい…これ…ほんとに…やばい…暑い…よぉ…) それでも、ショーは止まることなく、流れ通りに進んでいく。 途中で逃げる事は出来ない。 どれだけ苦しくても、とにかく最後までやり抜くしか、私たちにはないのだった。 (はぁ…はぁ…暑い…暑い…) 段々と体が重く感じ始めて来た。 頭が朦朧とし始め、倒れないのが精一杯という状態になりつつあった。 スピーカーから流れるショーの音声が遠くから流れているように感じる。 (…暑い…も…もう…無理…暑い…暑い…) しかし、その遠くから聞こえるショーの音声が聞こえている限り、私たちの体はそれに従い動こうとするのだ。 動けば動くほど、自らを苦しめるのだが、動かない訳には行かない。 そこにはスートリーが有り、最後まで、そのストーリーを終わらせなければいけない。 演者として…スーツアクターとしての根性とでもいうのだろうか…。 自らの脚がフラフラとしているのが分かる。 実際には、万全の演技は出来ていないだろう。 なんとか、セリフに合わせ、移動しているレベルかもしれない。 しかし、今の状態の私では最後までやり切るのだけでも、困難な状態だった。 ストーリーが進んでいき、ようやく終わりを迎えた。 「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」 暑さと運動量から、かなり息が上がっている。 大きなマスクの中に隠されているので、周りからは気が付かれないと思うが、その着ぐるみの中で、私は大きく肩で息をしているのだった。 体中の熱さが凄い事になっているのが分かる。 自らの体が熱いと感じられるほどに体温が上昇している。 足がフラフラとして、視界も焦点が定まらないくらいになっていた。 もう既に、思考すら朧に成り始めていた。 (…あぁ…終わった…か…帰れる…は…はやく…テントに…) MCのお姉さんの見送りの言葉と共に、私はフラフラとしながらも、必死に控えテントへ戻って行った。 (ぁぁ…早く…早く…脱がして…死んじゃう…死んじゃう…) ステージ中央から、控えのテント。 それ程長い距離ではない。 しかし、ストーリーが終わったという事で、少し糸の切れた私には、恐ろしく長く感じる道のりだった。 (早く…早く…死んじゃう…) そして、何とかフラフラしながらも、控えのテントに辿り着いた。 【ドサッ】 控えのテントに入るやいなや、そこに置いてあった椅子に、青色キャラの佳澄がいきなり腰を 降ろした。 むしろ、腰を降ろすというより、そこに崩れ落ちたというのが正解かもしれない。 (わ…私も…もう…むり…) 【ドサッ】 そして、追うように私も隣の椅子へと崩れ落ちて行った。 すると、緑色のメインキャラの中から、美帆さんの声が響いた。 「早く!佳澄と茉優の頭を外してあげて!!」 「分かった!!」 スタッフとしてついて来ていた男性が、直ぐに佳澄の頭部を外しにかかる。 「佳澄!早く、中の固定を外せ!!」 「は…はい…」 かなり弱々しい佳澄の返事。 着ぐるみの中で、佳澄は残った力をふり絞り、頭部の固定を外していった。 【カポッ】 そして、青色キャラの頭部が持ち上げられ、中の佳澄が露になった。 佳澄の顔は真っ赤に火照り、目が半開きになっている。 暑さにやられ、かなりまずい状況だ。 そして、私は、佳澄が外されている間に、自らの頭部の固定を外していた。 「茉優も頭部とるぞ!!」 「お…お願い…します…」 【カポッ】 私の上半身を覆っていたマスク部が取り除かれた。 自らの周りに籠っていた熱気を帯びた空気が拡散されていく。 そして、私の上半身は、ようやく解放された。 (ぁ…し…新鮮な…空気が…た…助かった…) 決してテント内の空気が新鮮という訳ではないが、今まで私の周りにあった空気とは次元が違うくらいに感じられる。 「大丈夫か!?」 「は…はい…なんとか…」 スタッフの男性の問いになんとか返答をした。 しかし、佳澄に至っては、軽く首を縦に振っただけで、声も出ていないようだった。 大丈夫と言ったものの、あまりの暑さにやられ、頭も体も限界を迎えていた。 椅子に座り込んだはいいが、もう立つ力さえ入らない。 するとスタッフの男性が言った。 「こりゃ…この後の握手会は無理だな…。クライアントに言って中止してもらうか…」 しかし、MCのお姉さんは、まだステージ上で、この後の握手会の準備のための列整を行っている。 チラシにも握手会がうたってあるので、なかなかこの状況での中止は難しいだろう。 すると、緑色のキャラの中から、美帆さんの声が聞こえて来た。 「握手会、私一人で行きます!そうすればなんとか形にはなりますよね?」 未だマスクを外していない美帆さんが、着ぐるみの中からそう言った。 「み…美帆…大丈夫なのか?」 スタッフの男性が心配そうに美帆さんに言った。 「大丈夫です!握手会の時間くらいならなんとか!」 「わ…分かった…。それで行こう。頼んだぞ…美帆」 「はい!!」 衣装の造りは皆同じ。 つまり、美帆さんも私たちと同じ状況だ。 私と佳澄は、もはや立つ力さえ無いというのに、美帆さんは一人で握手会に出ると言うのだ。 持っている体力が私たちとは違うのだろうか…。 しかし、その言葉を聞いた私たちには、美帆さんに頼る他なかった。 私と佳澄は限界を迎えていたので、とても握手会に行ける状態ではない。 「す…すいません…美帆さん…一人だけで…」 私は出来る限りの声を出して、美帆さんに謝った。 「大丈夫。茉優と佳澄は休んでて」 「ありがとう…ございます…」 私たちがこの状況だというのに、未だハキハキと答える美帆さんには頭が下がる。 そう私に声を掛けた美帆さんは、私たちに背を向け、控えテントの入り口の方を向いた。 私から見える美帆さんの背中。 実際には、巨大なマスクの後頭部と小さな下半身。 緑色の可愛らしいアニメキャラだが、私には、とても頼もしく大きな後ろ姿に映った。 「美帆、どうする?一回マスク取るか?」 「いや…もう時間が無いので、このまま行きます」 「分かった…。それじゃ…もう行けるか??」 「はいっ!!」 そして、美帆さんはショーの後、マスクも取らずに再び握手会のためにステージへと戻って行った。 あの灼熱のステージへ。 控えテントに残された私と佳澄。 少しでも体の熱を下げるため、何とかして下半身の着ぐるみ衣装を脱ぐ。 椅子に座りながら、もぞもぞと抜け出るように、下半身を脱ぎ去った。 (うぅ…た…助かった…) 着ぐるみを脱いだ事で、下半身を包み込んでいた熱気からは解放された。 しかし、インナーに着ている全身タイツも汗でグショグショになっている。 着ぐるみを脱いで座っている椅子がビショビショに濡れてしまいそうだ。 なんとか衣装を脱ぐことが出来た私は、佳澄の方に目を向けた。 すると、佳澄は未だ動きが無く、表情が怪しい。 (や…やばい…佳澄も脱がさないと…) なんとかして、動く気配のない佳澄の衣装を脱がそうと、椅子から立ち上がろうとした。 (だ…ダメだ…足に力が入らない…) しかし、暑さにやられた私の体の自由が利かない。 足に力が入らず、まともに立つ事が出来ない。 とはいえ、あの状態の佳澄をそのままにしておくわけにはいかない。 (な…なんとかしないと…) 佳澄の状態のやばさに危機感を感じた私は、椅子から崩れ落ちるように、這い出た。 (うぅ…なんとか…なんとか…) 床を這うように佳澄の元へと向かう。 たった、1~2mの距離だというのに、恐ろしく遠く感じた。 私が進んだ床は、もれなく私の汗でビショビショに濡れてしまっていた。 そして、私はなんとか佳澄のもとへと辿り着いた。 「佳澄!!佳澄!!衣装脱いで!!」 「う…うん…」 返事があやふやだ。 とにかく早く衣装を脱がせなければならない。 私は、佳澄の着ている衣装の下半身を掴んだ。 「佳澄!!引っ張るから!!自分でも脱いで!!」 「う…うん…」 そして私は力の入らない体で、出来る限りの力を振りしぼり、佳澄の着ている衣装を引っ張った。 【ガタン!】 すると、椅子に座っていた佳澄が、そのまま椅子から転げ落ちてしまった。 「か…佳澄!!大丈夫!!」 「う…うん…」 派手に転げ落ちたようにも見えたが、それ程のダメージはないようだ。 そして寝転んだ佳澄から、私は下半身の衣装を引っぺがした。 全身タイツに身を包んだ佳澄が床へと横たわる。 (ふぅ~~~…も…もう…無理……) 残る力を全て使い、佳澄の衣装を引き剥がした私も、動く力と気力が無くなり、その場に横たわってしまった。 そして、私達二人は灼熱の着ぐるみから解放され、横になりながら体力の回復を待つのだった。 (良かった…握手会…絶対無理だった…) 今の自らの体の状況を考えると、握手会に行っていたら、本当に死んでしまったのではないかと思えて来た。 そんな中、美帆さんは一人、握手会をしている。 未だ、あの灼熱のステージで、着ぐるみに身を包まれながら、キャラクターを演じている。 同じ衣装の造りで、同じようにショーを、ひとステージこなしたというのに、私たちとの差はなんなのだろうか…。 私たちより、格段に体力があるという事なのだろう。 そして、私たちが無理だと思って、自ら一人で全てを背負おうという、あの心。 なんとも頼りがいがあり、尊敬に値する人だ。 彼女のおかげで、私たちはまだ無事でいられるのだ。 そんな事を考えながら、私たちは握手会の終わりを待った。 着替える気力も体力もなく、汗だくの全身タイツのまま。 暫く休憩した事で、体の熱も収まり、なんとか立てるようにはなっていた。 すると、ステージの方からMCのお姉さんの声が聞こえてきて、握手会が終わった事が分かった。 この灼熱のステージで握手会を終えた美帆さんが、ようやく帰ってくるのだ。 そして、MCのお姉さんの退場の合図で、美帆さんが控えテントへとハケてきた。 【バサッ】 控えテントの幕が空き、美帆さんの着た緑色のキャラが入って来た。 テントに入るなり、足取りがふら付き始める緑色のキャラクター。 「はやくここに座れ!!」 スタッフの男性が、椅子を用意し、緑色のキャラに腰かけるように促す。 【ドサッ】 その椅子に力なく座り込む緑色のキャラ。 「美帆!早く、中の中の固定を外せ!」 「は…はい…」 頭部の中から、美帆さんの弱々しい返事が聞こえて来た。 恐らく、今、必死に美帆さんは中のマスクと胴体の固定を外しているのだろう。 その椅子に座り込んだキャラクターの姿。 胴体と足の付け根の所から下に向かって、大変なくらいに変色している。 それはいわゆる汗染み。 下半身は分厚く出来た衣装だというのに、それを通り越して、かなりの汗染みが出来ている。 それは美帆さんから流れ出た汗。 その汗染みの凄さから、いかに中が暑く、かなり苦しかった事を物語る。 ここまでの汗染みが出来るまで、美帆さんは一人で、その暑さと戦っていたのだ。 (美帆さん…すいません…) 先にテントの中で休憩させて貰っていたことに罪悪感を感じる。 しかし、そうさせて貰っていなかったら、私たちは倒れていただろう。 美帆さんへの敬意しか浮かんでこない。 「お…オッケー…です…」 美帆さんの弱々しい声がマスクの中から聞こえて来た。 「よし、頭部、外すぞ!」 【カポッ】 そして、男性スタッフにより、緑色のキャラの頭部が取り外された。 すると、全身タイツに身を包んだ美帆さんの姿が露となった。 ようやく頭部を取り外され、着ぐるみから解放された美帆さんの顔。 丸くくり抜かれた面下から覗く、美帆さんの顔は、真っ赤に染まっており、シャワーを掛けた後かと思うくらいに、汗が滴っている。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 目は少し虚ろで、呼吸は乱れ、大きく肩で息をしていた。 その様子から、美帆さんも極限の状態に陥っていたことは明白だ。 しかし、私たちを着ぐるみから解放させ、その状態で、握手会を乗り切ったのだ。 (美帆さん…) 「美帆、下半身、脱がせるぞ!茉優、美帆を支えてやってくれ」 「はいっ!」 男性スタッフが着ぐるみの下半身に手を掛けた。 そして、私は美帆さんが倒れないように後ろから手を回し、両脇を支えるように掴んだ。 (あっ…) 私の手が美帆さんの全身タイツに触れる。 その瞬間、絞れるくらい、その全身タイツがグショグショに濡れているのが感じられた。 【ズルッ】 すると、男性スタッフが下半身を引き抜き、ようやく美帆さんは着ぐるみから解放されたのだった。 そのまま椅子に力なく座り込む美帆さん。 体を包む全身タイツが恐ろしくビショビショなのが見て取れる。 座っている椅子のお尻の部分も濡れているが、足先に至っては、美帆さんの足がついた辺りに薄っすらと水溜りができそうな程だった。 「美帆さん…大丈夫ですか?」 「…うん…なんとかね…」 私の問いに力なく答える美帆さん。 「とにかく、これを飲め!!」 そう言って、男性スタッフが美帆さんにドリンクを手渡した。 【ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ…】 美帆さんは直ぐに、そのドリンクを飲み干してしまった。 「…ふぅ………」 そして、そのまま一息ついた美帆さん。 少し落ち着いたようにも見えた。 すると、次の瞬間、美帆さんが椅子から立ち上がろうとしたのだ。 「あっ!」 その瞬間である、椅子から立ち上がろうとした美帆さんが、クラっとよろけたのだ。 まるで自らが大丈夫だと言わんばかりに立ち上がろうとした美帆さん。 しかし、その足は暑さにやられ、自らが思っているより力が入らなかったのだろう。 (危ない!!) 【バッ!!】 私は咄嗟に、倒れそうになった美帆さんを抱えるように抱きしめた。 私が抱きかかえた事で、美帆さんは倒れずに済んだ。 倒れないようにしっかりと美帆さんを抱きしめる。 お互いが全身タイツ一枚の状態。 タイツ越しでも、美帆さんの体温がかなり上がっているのが感じられた。 そして、その全身タイツも恐ろしい程に汗でビショビショに濡れている。 その濡れている感じも、私のタイツのほうに伝わってくるのが分かる。 抱きしめてみると感じられる。 体型は私と変わらないくらいの華奢な感じ。 抱きしめた体の柔らかさから感じられる女の子の感触。 背丈も私と変わらない。 そう…私と同じ普通の女の子なのだ。 その普通の女の子だというのに、何故、あの暑さに耐えられるのだろうか…。 私たちは倒れてしまうと思った状況を、乗り切ったのだ。 私たちとの違いはなんだというのだろう…。 その答えは分からない…。 しかし、とにかくそこには尊敬の念と敬意しか生まれない。 (美帆さん…) 私は、ビショビショに濡れた全身タイツの美帆さんを抱きしめながら、美帆さんに敬意を示した。 それと共に、美帆さんを抱きしめている事に悦を感じてしまっていた。 美帆さんの体温、そしてビショビショの汗、彼女の柔らかさ…その全てが、私の心の奥底をキュっとさせる。 なんの感覚かは分からないが、私の心を締め付けるのだった。 「ありがと…茉優…」 「美帆さん…こちらこそ…助かりました…」 体を支えた事にお礼を行ってくる美帆さん。 しかし、お礼を言うのはこちらのほうで、その感謝は計り知れない。 「も…もう…大丈夫だから…。っていうか…全身タイツで抱き合う二人って…はずかしくない??」 「え!?あ…あぁ…そ…そうです…ね…」 そう言われ、私は動揺しながらスッと美帆さんを抱きかかえた手を引いた。 「もう…大丈夫…一人で立てるから」 「わ…分かりました…」 美帆さんを抱きしめた手の平に視線を落とした。 そこには美帆さんの汗でビショビショになった、私の手の平があった。 そこに残る、美帆さんの感触…。 その体温の熱さ…。 しっとりと濡れた感じ…。 それは、恐ろしい程の灼熱の中、灼熱の着ぐるみの中で、美帆さんが耐え抜いた証。 この灼熱の中、私たちを気遣って、一人で耐え抜いた美帆さんの証。 その美帆さんに私は…尊敬と敬意…そして……。 そして私は、ビショビショに濡れた全身タイツに身を包んだ美帆さんの背中に視線を向けるのだった。 (…美帆さん…) 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ある【ひとコマ】 ~炎天下の二頭身~ Main Story

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