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メルヘンカフェ ~女子高文化祭~ Side Story ~ 愛利 Side ~ 【前編】

※誠に申し訳ありません!!!!!! 文字数オーバーで最後までアップ出来ていなかった事に、全く気が付いていませんでしたぁぁぁ!!!!! ある親切な方からのご意見で、気がつく事が出来ました・・・。 全くもって、詰めの甘い私をお許し下さい・・・。 本当に申し訳ありませんでした・・・。 という事で、前編、後編に分けさせていただきます。 グスッ…そんな自分が嫌だ… ・・・ 【ガチャ】 「失礼します」 扉を開け、私は美術室へと足を踏み入れた。 「待ってたわよ、【愛利(あいり)】」 そう言って私を迎え入れたのは、【桐野沙織(きりの さおり)】さん。 私が所属する美術部の部長であり先輩、そして、桐野財閥のお嬢様である。 私は、明日の文化祭の仕上げがあるという事で、沙織さんに呼ばれ、美術室へと来たのだった。 明日の文化祭で私たち美術部は【メルヘンカフェ】というものをする事になり、美術室内をとびきりメルヘンな様子へと装飾させていた。 「え!?…あっ…な…何!?…どういう事ですか!?」 自分達で装飾を施した美術室内、内装はもう知れたもの。 しかし、私はその美術室内の【ある】光景に面食らってしまったのである。 何故なら、内装は私たちが施した通りの物、しかし、内装とは別に理解に苦しむものが目に飛び込んで来たのだ。 そこには、1メートルくらいの大きなぬいぐるみが4つ。 それは、それ程不思議な光景ではない。 驚くべき所は、その横に、不思議な状態で拘束された、黒いタイツに包まれた人間がいるのだ。 その光景だけを見るに、一瞬それが人形かとも思われた。 しかし、【それ】は、僅かながら動いている…つまり、生きた人間なのだ。 その人間は、全身を黒タイツに包み、両手を曲げた状態で、手首と脇付近をベルトで固定されている。 足も折り曲げられ、足首と股間付近でベルトで拘束されているのだ。 黒タイツの顔は開いているものの、口の部分だけマスクのようなものを被せられ、鼻から上だけを露呈してる。 そして、そのまま、何の抵抗もせずにその場に座り込んでいる。 そして、その周りには沙織さんと、二人の大人の女性、こちらは私の知らない人だ。 何故、こんな状況が生まれているのか…。何が起こっているのか、理解がついていかない。 「え…!?…あ…あの…沙織さん…これは!?」 この状況に抱く疑問を投げる的確な言葉が思いつかない。 「これ?…明日の文化祭のための仕上げよ」 「文化祭の仕上げ??」 全くもって、沙織さんの言っている事が理解出来ない。 「そうよ、仕上げのために、順番に準備をしてもらっているのよ」 (じゅ…順番に??) その言葉を聞き、改めて拘束された人間に目を向けた。 そして、唯一露呈している、目と鼻をじっくりと見る。 「え!?…ま…【舞(まい)】なの!?」 その目をじっくりと見ると、親友であり、美術部の同級生である舞だという事が分かった。 「そうよ、舞には先に準備をしてもらったの」 (そ…そんな…なんで…舞がこんな格好を…) それが舞だという事実に動揺し、たじろいでしまう。 しかし、状況を理解するしかない。 私は動揺する気持ちを抑え、とにかく今の状況を考察する。 沙織さんがいう文化祭の【仕上げ】というもののために、舞はこんな恥ずかしい格好で拘束されている。 口を封じられ、言葉を発することは出来ないとしても、抵抗をする素振りは無い。 つまり、この状況を受け入れているという事だ。 私が想像するに、沙織さんに言われ、この状況を強いられた。 そしてやむを得ず、拘束されてこの場にいるという感じだろう。 沙織さんのいう事には、逆らえない。 美術部の部長として尊敬しているという事もあるが、何より、沙織さんのこの学校に対する影響力は大きすぎる。 そのお陰で、得をしている事も多々あるが、もし逆らってしまったら、この学校における自分の居場所など消し去られてしまうくらいなのだ。 私は恐ろしいものを見る眼差しで、沙織さんに目を向けた。 「これから自分に起きる事が分かっていた方が、話が早いでしょ。だから先に舞の姿を見せておいたのよ」 沙織さんがさらっと、とんでもない事を言った。 今、確かに沙織さんは、【これから自分に起きる事】と言った。 つまり、それは私に対して、これから私がこうなるという事だ。 「え…あの…沙織さん…。わ…私も舞と同じように…なるんですか…?」 「ええ…もちろん…美術部の部員だから。文化祭に協力してもらわないと」 当たり前の事だと言う様に、沙織さんは冷静な表情で口を動かす。 もう一度、私は拘束された舞の方へと目を向けた。 【ゴクッ…】 唾を飲み込む。 今から、私もあの状態にさせられるというのだ。 もちろん、私に拒否権はない。 しかし、改めて見ると恥ずかしい事、この上ない格好である。 黒い全身タイツ…そんなもの、当たり前であるが着た事もない。 ピッチリとして、体のラインが浮き彫りになる。 よく見ると、舞の黒タイツの胸の部分には突起が確認出来る。 つまり、ブラとはつけずに裸で黒タイツを着させられているのだろう。 下腹部に関しては、なにやら少し膨らみがある…中に何かを穿いているのだろうか? それにしても、この状態、あまりにも恥ずかしい。 しかし、それから、私は逃れる事は出来ないのだ。 (うぅ…ほ…ホントに…こんな…ことを…) その事実に躊躇っていると、沙織さんが声を掛けてきた。 「さあ愛利、早く服を脱いでちょうだい」 「え…ふ…服を…!?」 「当たり前でしょ。あなたは今から、舞と同じ事をするのだから…。舞が服を着ているように見える??」 「い…いえ…」 「分かっているなら、早く脱いで」 「は…はい…」 もう言われた事を受け入れるしかない。 私は、言われたとおり、その場で着ていた服を脱ぎ始めた。 同姓しかいない部屋の中ではあるが、沙織さんと見知らぬ大人の女性二人に見つめられている状況で、服を脱ぐのは恥ずかしい。 (ぅぅ…は…恥ずかしい…) そう思いながらも、私は制服の上下を脱ぎ、靴下も脱ぎ去った。 下着だけの露な姿となり、恥ずかしさが一層と込み上げてくる。 「早く、下着も脱いで」 沙織さんが冷静に催促をする。 ブラのホックに手をかけ、私はブラジャーを外した。 その瞬間、拘束された舞のほうに目を向けると、舞は【観念するしかない】と言うように、目線を逸らし、目を瞑った。 そして、私はゆっくりとショーツも脱ぎ、生まれたままの姿へと曝された。 (は…恥ずかしい…よぉ…) あまりの恥ずかしさに、手で乳首と陰部を覆って隠す。 「さあ、ではまず、それを穿いてくれるかしら?」 沙織さんがそう言うと、傍にいた女性が、私に対して何かを差し出してきた。 「え!?こ…これ…は??」 手渡されたものを見て、理解に苦しむ。 それは、私の知るもので言うなら、赤ちゃんが穿く【紙オムツ】だったのだ。 「それは、紙オムツよ」 「オ…オムツ!?」 私の想像と、手渡されたものが一致する。 「と言っても、ただのオムツではないわ。大人用の超高性能なもので、薄型にも関わらず、二日間穿いていても、なんの支障も無い優れものよ」 薄っすらと微笑みを浮かべる沙織さんに恐怖を感じる。 「こ…これを…穿くんですか…??」 「何度も言わせないで。早く穿きなさい」 「は…はい…」 私は手に取ったオムツを見つめた。 もちろん成長してから、オムツなど穿いた事は無い。 赤ちゃんの時の記憶があるわけではないので、むしろ始めての経験だ。 高校生になってオムツを穿くという行為は、恐ろしく恥ずかしい事に感じられ、さすがに、少し躊躇してしまう。 「はやく」 「は…はい…」 しかし沙織さんは待ってくれない。 私は意を決し、手に取ったオムツに足を通して行った。 そして、下腹部まで、そのオムツを引きあげ、私の陰部を包み込んだ。 今までにない、不思議な感覚に包まれる。 全裸にオムツ姿という、裸よりも恥ずかしいのではないかという格好となる。 (うぅ…私…私…オムツを…穿いちゃってる…) 恥ずかしさが込み上げ、全身をモジモジとさせてしまう。 しかし、そんな恥ずかしがる私などお構い無しに、沙織さんは話を進めていく。 「次はこのタイツを着て」 そうして、次に黒い全身タイツを手渡される。 舞の姿を見ている私は、手渡されたタイツがどいうものなのか?それを着るとどういう状況になるのかが理解できている。 しかし、裸にオムツのみの状態より、まだ全身タイツに包まれているほうが、幾分かはマシな気がする。 私は恥ずかしさを隠す為、急いでその全身タイツを着込み始めた。 背中のファスナーを開き、足を通す。 そして、急いで腕を通して、頭を被る。 生まれて初めて着るものではあるが、形状と舞の姿を見れば、着方など一目瞭然。 その初めての経験に対する困惑よりも、恥ずかしさの方が上回っていたのだ。 後はファスナーを閉めるだけという状況になり、背中のファスナーに手を伸ばす。 「ファスナーは閉めてあげるから、いいわ」 すると、沙織さんの傍にいる女性の一人が、私のタイツの背中のファスナーを閉めてくれた。 全身がピッチリとしたタイツに包まれる。 (うぅ…なんか…肌触りがよくて…ちょっと…気持ちいい…) 恥ずかしい格好ではあるものの、肌触りの良い生地に全身を包まれ、なんだか気持ちよさを感じてしまう。 しかし、そんな感覚を味わっていられるのは一瞬の事だった。 直ぐにそんなものは忘れてしまうような状況に陥っていく。 「さあ、じゃあ、手を折り曲げて、頭の後ろに添えて」 「は…はい…」 両手の拘束だ…。 今からどういう処置が施されるのか、それは舞を見れば分かる。 つまり私の腕は折りたたまれたまま、ベルトで拘束される。 自分の身に訪れる事が分かっていながら、それから逃れるすべは無い。 私はただ受け入れるしかないのだ。 ましてや、舞が受け入れている以上、私が受け入れないという事は有り得ない。 そんな事をしたらどうなるか分からないのだ。 二人の女性が私の方に近づいて来たかと思うと、女性達は手早く私の両腕を拘束し始めた。 それは一瞬の出来事。 恐ろしく慣れている手捌きで、私の両腕を拘束する。 あっという間に、私の両手の自由は奪われてしまった。 (うぅ…も…もう…手が…手が使えない…) 少し動かして見るが、肩の可動域以上の動きを見せる事が出来ない。 「次はそのまま仰向けに寝そべってちょうだい」 「は…はい…」 私は手が使えなくなったため、足の力だけでゆっくりと床に座り込み、そのまま仰向けに寝転がった。 すると、二人の女性が手早く作業に移ってきた。 足の拘束である。 足を折り曲げられ、足首と太腿で一まとめに拘束される。 これまた、手馴れた雰囲気で、あっという間に処置を施されてしまった。 これで私は歩く事は愚か、立ち上がる事すら出来なくなった。 両手、両足を折り曲げた状態で拘束され、仰向けの状態で寝転がる。 この拘束のされ方だと、この状態から起き上がるのすら困難である。 すると、そんな自由の利かない私を、女性達起き上がらせ、正座で座った様な状態にされた。 これで、舞との違いは、口に被せられたマスクのようなものだけ。 「後はマスクだけね」 すると背後から、マスクのような物で口を覆われた。 「うぐぅ…」 口を押さえつけるように覆うそのマスクのような物に圧迫され、少し呻き声が漏れる。 そのマスクは、後頭部できつく固定され、私の顎の自由を奪ったのだった。 (うぅ…こ…これじゃ…全く喋れない…) 鼻から呼吸は出来るものの、顎が全く動かす事が出来ず、言葉を発する事は出来なくなったのだ。 これで、私は舞と同じ状態へとされた。 何故、こんな拘束をされなければいけないのか…その疑問が頭を過ぎる。 すると、すぐにその疑問に対する答えは明かされたのだった。 「さて準備完了ね。愛利、自分の身に起きる事を、先に見ておくといいわ。それじゃあ、舞の方の仕上げを…」 沙織さんがそう言うと、取り巻きの女性達が、拘束された舞のほうへと近づいて行った。 すると、僅かに覗き見える舞の目に動揺している様子が見て取れる。 抵抗する素振りはないものの、何やら酷く動揺しているようだった。 その様子から、舞には、自分がこれからされる事が分かっているようだ。 (な…何が…起こるの…) 動揺をする舞を、二人の女性がいとも簡単に持ち上げ、運び始めた。 そして、その舞を置いた先…それは、四つ並んだ大きなぬいぐるみの前であった。 そして、一人の女性が、そこに置いてある大きな猫のぬいぐるみを反転させ、ぬいぐるみの背中側をこちらに見せた。 (え!?…何?…ファ…ファスナー!?) そう、その背中を向けられた猫のぬいぐるみは、ファスナーにより、大きく背中が開いているのだった。 (ど…どういう事!?…普通のぬいぐるみじゃ…ないって事??) その様子に驚く私を他所に、作業は進められていく。 すると、女性たちは、再び舞を持ち上げ、そのぬいぐるみの方へと運び始めたのだった。 (え…そ…そんな…) すると予想だにしない光景がそこに繰り広げられた。 手足を拘束された舞を、その猫のぬいぐるみの【中に】押し込み始めたのである。 「むぅぅぅぅっ!!」 言葉にならない、舞の呻き声が聞こえて来る。 しかし、手足を拘束された状態で、抵抗など出来るはずも無い。 足をぬいぐるみの中に滑り込ませたかと思うと、頭を押さえつけられ、頭と上半身もぬいぐるみの中へと押し込まれてしまった。 僅かではあるが、ファスナーの開き口から見える舞の背中。 裏を返せば、もう舞という存在は、その少しだけ見える背中部分のみとなった。 「閉めてしまって」 沙織さんの指示で、背中のファスナーが閉められて行く。 【ジーーーーーーー】 ファスナーは上まで上げられ、完全に背中の口は閉じらてしまった。 それにより、もう舞という存在は、影も形も無くなってしまったのだ。 (か…完全に…閉じ込め…られた…) 手足を拘束され、完全にぬいぐるみに閉じ込められてしまった舞。 そこで起きている事実に頭がついていかない。 すると、猫のぬいぐるみは持ち上げられ、再び、熊とウサギのぬいぐるみの横に並べられた。 手足が微妙に動き続ける、猫のぬいぐるみ。 そのぬいぐるみが動いている事から、中身に舞が入っているという事実を実感させられる。 (あ…あの中に…舞が…入ってるん…だよね…) 今、一部始終を見ていて、舞が閉じ込められる姿も目視した。 それにも関わらず、そこに置かれた愛らしい猫のぬいぐるみに舞が入っているというのが、素直に受け止められないでいた。 「さて…愛利で最後だから…早速始めましょうか」 沙織さんが、今、【最後】と言った。 (え!?私が…最後!?) 私は咄嗟に、そこに並べられたぬいぐるみに目を向けた。 そう思って見ないと気が付かなかったが、なんと、熊とウサギのぬいぐるみも、手足が微妙に動いているのだった。 (く…熊と…ウサギの中にも誰かが…入ってる…) 沙織さんが言っていた、【順番に】というのはそういう事だったのだ。 先の誰かがぬいぐるみに入れられる様子を、次の人に見せ、そして順番に自らに起きる事を認識させていったという事。 舞は誰かが、ぬいぐるみに閉じ込められる様を見て、自分に起きる事を知っていたのだ。 (熊と…ウサギには…だ…誰が…?) その疑問が私の頭の中に浮かんだ瞬間、沙織さんが見透かすように答える。 「悠美と理佳よ」 (く…熊とウサギの中に…悠美さんと理佳さんが…) 先輩である二人が、先にあの中に閉じ込められているというのだ。 そして、私が最後…。 そこに並べられたぬいぐるみは四つ。 熊、ウサギ、猫…そして最後のひとつは犬。 つまり、私はその犬のぬいぐるみに閉じ込められるという事だった。 「さて、仕上げをお願い」 すると、私は女性達に持ち上げられ、犬のぬいぐるみの前へと運ばれて行った。 舞の時と同じように、犬のぬいぐるみが反転させられ、背中側のパックリと開いた口を、こちらに向けられた。 【ゴクッ…】 (わ…私…今から…この中に…閉じ込められるの…) そう思うと、少し恐怖じみた感覚が襲ってきた。 しかし、抵抗は出来ない。抵抗をしてはいけない。されるがままに受け入れるしかないのだ。 そして、再び持ち上げられた私は、犬のぬいぐるみの中へと滑り込ませられる。 足を入れ込んだかと思うと、直ぐに頭と体を押され、ぬいぐるみの内部へと押し込まれた。 (うぅ…もう…中にいれられた…) 頭部をぬいぐるみの頭部の中へと押し込められる。 すると頭部の中は少し空洞が出来ており、内部に空気もある。 ぬいぐるみの目がクリアーパーツになっており、その手前に斜幕のようなものが張られている。 視界がとてもクリアーという訳ではないが、外の状況は確認出来る。 中で首を動かしても、体と一体になっっているぬいぐるみの頭部は、ほとんど動かない。 両手両足は、ぬいぐるみの四足に入れられており、ただでさえ動かしにくく拘束されている所、それを覆う、厚いぬいぐるみによって、著しく動きが制限されている。 【ジーーーーー】 すると、私が唯一外界と繋がっていた背中の口を閉じられた。 (うぁっ…か…完全に…閉じ込められた…) 背中のファスナーを閉められた事により、体の圧迫感が強まる。 見た目のぬいぐるみの太さの割りに、体を包む感じに余裕はない。 つまり、ぬいぐるみがかなり分厚く出来ており、中のスポンジのようなものが、私の全身を圧迫しているのだった。 手足を折り曲げられ拘束されているのに加え、体を圧迫するように包み込むぬいぐるみ。 体全体を拘束され、かなりの自由を奪われた感が漂う。 出来る限りの動きをしてみようと、手足を動かすも、もぞもぞと少しもがく程度の動きしか出来なかった。 (うぅ…ほとんど…動けない…) 自力で移動する事は、ほぼ出来ないに等しい。 つまり、どんな状況に置かれたとしても、逃げる事すら出来ないのだ。 (あっ!!) すると、突然体が持ち上げられた。 すぐに床に降ろされ、視界には沙織さんが映りこんだ。 どうやら、他の3人と同じ状態にされ、一列に並べられたのだろう。 「うん…可愛らしいわ。あなたたちは、明日のための予行演習ってとこかしら…」 そう言って、沙織さんは熊のぬいぐるみの顔を覗きこんだ。 「ぬいぐるみオブジェのルールを話しておくわね。意図的に動く事はだめよ。でも、反応して動いてしまうのはいいわ。中には特殊な【芯】を入れている事にするから、その芯が反動で動くという事で…。声を出すのはNGね…と言っても出せるのは呻き声くらいだけど。声を出して中身が人間ってばれれば、背中を開けて出すしかなくなるわ。人がいる前で出されて困るのは自分自身だしね…。いかにばれないように頑張るか…それがオブジェとしての仕事よ…」 沙織さんの考える事は理解に苦しむが、とにかく、言われた事を飲み込むしかない。 「今日、あなたたちは予行演習だから、時間が来たらぬいぐるみから出してあげる。それまで頑張ってみなさい」 沙織さんはそう言ったが、声を出さないくらい、それ程難しい事とも感じなかった。 「さてと、最後のメインオブジェの仕上げをしないとね…。ぬいぐるみさん達を準備室へ運んでちょうだい」 すると、先程の女性達が私たちを台車に乗せ、準備室の方へと運んで行った。 私たち四人…いや四体のぬいぐるみは、されるがまま、ただ運ばれて行った。 準備室に到着し、その場に放置される。 そう、まるで【物】を置くかのごとく、そこにただ置き去りにされた。 準備室は狭く、もちろん空調などもついてはいない。 先程は、声を出さないくらい、たわいも無い事と感じていた。 しかし、問題はそこではなかったのだ。 私たちの体を包み込む分厚いぬいぐるみ。それは内部に私たちの体温を閉じ込める。 そして、その逃げどころの無い熱は、内部の温度を上昇させ続けるのだった。 (うぅ…暑い…めちゃくちゃ…暑い…よぉ…) 何もしていない…動いてもいない…なのに、ぬいぐるみの内部はかなりの暑さになり始めた。 額から汗が流れ落ちるのが分かる。 頭部の汗は、全身タイツの方に染み込んで行くが、額付近の汗はそのまま流れ落ち、目に入ってくる。 その汗が目にしみ、不快感を覚えるが、それを拭う【手】は私たちにはない。 実際には手が無いのではなく、その汗に到達できる手は存在しないのだ。 手は折り曲げて拘束されている。 といっても、仮に伸びていたとしても、ぬいぐるみに覆われた頭部。 額に流れ落ちる汗に、届くものは存在しないのだ。 ただそこに座り、その暑さに耐えるしかないのだ。 (うぅ…暑い…暑い…暑い…よぉ…) 暑さで呼吸が荒くなり、肩で息をしてしまう。 ふと、横にいる他のぬいぐるみ達に目を向けると、彼女たちも、体が上下しているのが分かる。 同じように、皆、この暑さに苦しんでいるのだ。 しかし、逃げる事も、この暑さを緩和する事も、何も出来ないのである。 私達はただただ、耐えるしかないのだった。 「んぅ…うぅ…ぅ…」 暑さに耐えかねて、呻き声が少し漏れてしまう。 (!?し…しまった…こ…声が…出ちゃった…) 自然と漏れ出た呻き声に、ハッとする。 (あ…危ない…しっかり意識を持たないと…声が出ちゃう…) 暑さのあまり、呻き声が出てしまうという事は予想外の事だった。 この時点で、それに気がつけてよかった。 実際に周りに人がいたら、気がつかれてしまっていたかもしれない。 とにかく必死に耐えるしかない…。 ぬいぐるみに閉じ込められて、どれくらい時間が経ったかも分からない。 どの位で、予行演習が終わるのかも分からない。 先の見えない状態で、私たちは必死にその暑さに耐え忍ぶのだった。 【ガチャ】 暫らくして、扉の開く音が聞こえた。 (だ…誰か…来た…。終わり…なの…) 近付く足音が聞こえる。 そしてその足音が、私たちの傍までやって来た。 恐らく先程の沙織さんの傍にいた女性二人組みだろうと推測した。 (え!?だ…誰…!?) しかし、私の視界に映り込んだ人間は別人であった。 それは別人という表現が正しいのだろうか…。 私の視界に映り込んだのは、人形のような存在…しかし、その人形は動いている。 見た目は作り物ではあるが、あからさまに生きた人間の動き。 その状況から考えるに、それは着ぐるみを着た人間という事。 (だ…誰…??さっきの女性なの…??) 予想だにしない光景に驚きを隠せない。 すると、その美少女の着ぐるみが声を発した。 「今から、美術室の方に運びます。人がいるので、声を出さないようにお願いします」 (こ…この声…あ…【亜美(あみ)】なの??) 亜美は私と同級生の美術部員。私とかなり仲がいい。 この声を聞き間違えるはずはなかった。 「んんぅっ!んぅぅ!」 (亜美!これはどういう事!?) 私は呻き声をあげ、亜美に疑問を投げかけた。 すると、中身が亜美であろうと思われる着ぐるみが私の方へと近づいて来た。 「犬のぬいぐるみは…愛利ね。沙織さんから聞いてるわ。愛利…言われた通り、声を出しちゃだめ。それが沙織さんが決めたルールなんだから…」 そっと犬のぬいぐるみの頭に自らのマスクを近づけて、こちらに語りかける。 (うぅ…そうか…そうだよね…) 決して疑問を抱いてもしょうがない…そう、これは沙織さんが決めた事だから、守るしかないし、やり遂げるしかないのだ。 「では、台車で運びます…。私たちも、準備室を出たら喋れませんので…」 そう言って、私たちを二人掛かりで、運び始めた。 「じゃあ、私は熊から行くから、【千尋(ちひろ)】はウサギをお願い」 「分かった」 今の亜美の話からするに、もう一人の着ぐるみ少女の中身は千尋という事。 千尋も私と同級生の部員。 どうやら彼女たちも、沙織さんに言われ、あの着ぐるみを着させらているようだ。 すると、二人はぬいぐるみが倒れないよう注意しながら、熊とウサギのぬいぐるみを美術室に運んでいった。 暫らくして、二人は帰ってくると、今度は猫のぬいぐるみと私を運び始めた。 台車に揺られ、美術室へと運ばれる。 (動かないように…声を出さないように…) 美術室に入ると、そこにはテーブルで話をする二人の姿が見えてきた。 一人は、沙織さん、そしてもう一人は【麗(れい)】さんであった。 麗さんは一つ上の先輩で、沙織さんと仲が良い。 そして何より、容姿端麗で、顔も整い、さらにはスタイルも抜群にいい。 男子にも、もてまくりで、私たちの憧れ的存在でもあった。 「いや!かわいい!」 その麗さんが熊のぬいぐるみに抱きついた。 「う~ん。ふかふかして、触り心地も申し分ないわね……ふ…ふあぁぁ…このまま、抱きついたまま寝ちゃいそう…」 非の打ち所の無い麗さんが、無邪気にぬいぐるみに抱きつく。 そんな一面もまた、彼女を引き立たせる。 しかし、その光景とは裏腹に、中身である悠美さんか理佳さんはドキドキだろう。 恐らく、先程、亜美たちが言っていた、【人がいる】というのは麗さんの事。 つまり、麗さんに中身に人が入っているというのを、ばれないようにしなければならないという事だ。 周りの私達は、動かず、ただ様子を見守るしかない。 「いいでしょ…でもそれはアクセント。メインではないわ」 その光景を見ながら、落ち着いた口調で話す沙織さん。 「…まだ…メインがあるの?」 「ええ…」 「…ふ~ん…それは楽しみ…♪」 そう言いながら、ぬいぐるみと戯れる麗さんを、沙織さんは微笑みを浮かべながら眺めていた。 しばらくしたところで、麗さんが疑問を口にした。 「…ところでさ…他の部員は?…遅くない?…私…もう眠くなってきたよ…」 (…他の部員…) そう、他の部員…。悠美さん、理佳さん、舞、私はこの4体のぬいぐるみの【中】にいる。 亜美と千尋は、少女型の着ぐるみに包まれそこにいる。 そして、沙織さん、麗さん。 つまり、部員は全員ここに揃っているのだ。 「何を言っているの?部員は全員集合しているわ」 「…は…?だって…沙織と私…亜美、千尋の四人しかいないでしょ…」 「いるわよ…そこに」 すると沙織さんが、私たち動物達のぬいぐるみを指差した。 「…?…何を…言ってるの?」 「いるでしょ、他の四人がそこに」 「…四人?…」 麗さんは眠たそうにしながらも、沙織さんの言葉に動揺を隠せない。 「ど…どういう…こと?」 抱きついていた熊から離れる麗さん。 「そのぬいぐるみの中身は、悠美、理佳、舞、愛利よ」 (ば…ばらしちゃった…) 沙織さんがばらしたという事は、もうぬいぐるみとして振舞う必要は無い。 「な…何を…そんな…嘘…でしょ…」 「本当よ。口のところに耳を当ててみたら?」 そう言われて麗さんは熊の口の部分に耳を当てた。 「…え!?…」 熊のぬいぐるみの口の部分から何かを察知した麗さんが驚きを見せる。 「そ…そんな…ホントに…?」 「言ったでしょ、本当だって…まだ信じられないなら…悠美、いいわよ声を出してあげなさい」 その沙織さんの言葉に熊が反応した。 「ぅうぅ…うぅぅぅう…」 厳密に言えば、その悠美さんの呻き声は、同じように分厚いぬいぐるみに包まれた私には聞こえてこない。 しかし、沙織さんの指示、そして麗さんの反応を見れば、手に取るようにそれが感じられた。 「…ホントに…この中に…悠美達が…沙織…あなた何を…?」 「言ったでしょ、最後の仕上げをするって…メルヘンな芸術のね。そして、麗…あなたはメインのオブジェになってもらうわ…」 うっすらと笑みを浮かべた沙織さんが意味深げな発言をする。 「な…なにを…」 麗さんは体をふらふらとさせながら、沙織さんに問いかける。 「あなたの飲み物には薬を入れさせてもらったわ…次に目を覚ます時には、あなたは最高の作品になっている…あなたほどのスタイルを、こんなぬいぐるみにするのはもったいないわ…最高の作品にしてあげる…安心して眠りなさい」 「…な…なに…を…い…」 そうして麗さんは眠りについた。 すると、沙織さんはようやく椅子から立ち上がり、麗さんを見下ろす。 「おやすみ…麗」 (メ…メインの…オブジェ…。れ…麗さんに…一体…何を…) 二人の会話を聞きながら、そこに疑問を抱いてはいるものの、麗さんに起こる事に気を回している余裕がないのも事実。 私の体を包み込む熱気は、他人事よりも重大なものになっているのだ。 そこで起きていた出来事が一段落した事により、自らの緊張感が抜け、再び壮絶な暑さに包まれている事に気が付く。 (うぅ…ゴメンなさい…麗さんの事より…とにかく…暑い…暑い…早く…出して欲しい…) このぬいぐるみに閉じ込められてから、どのくらいの時間が経過したかは分からない。 しかし、明日の文化祭の一日に比べれば、明確に短い時間である。 この時間で、この暑さ、明日の一日、体がもつとは到底考えにくいレベルであった。 「さてと、ぬいぐるみ達は…一旦休憩としましょう…。亜美、千尋、出してあげて」 すると、人形の着ぐるみたちは順番に私たちの背中のファスナーを下ろし、一人ずつ、ぬいぐるみから引っ張り出し始めた。 熊のぬいぐるみからは悠美さん、ウサギから理佳さん、猫から舞が現れた。 そして最後に私の順番が回ってきた。 【ジーーーーー】 背中のファスナーが下ろされていく。 すると、体中に篭った熱気が失われていく感覚が伝わる。 (あぁ…た…助かった…だ…だいぶ…楽に…) 内部の熱気が減ったかと思うと、体を掴まれ、ぬいぐるみを剥がすように、ぬいぐるみの外へと引きずり出された。 一気に体中の熱気が薄くなり、呼吸も新鮮な空気が訪れる。 (あぁ…と…とても…楽…に…なった…) その開放感に安堵してしまい、気持ちの糸が切れてしまった。 どちらにせよ、暑さで蝕まれた体は力が入らず、さらには手足の拘束はまだされたまま。 ぬいぐるみの中からは解放されたにせよ、私はそこに寝そべっているしか出来なかった。 「水分補給をしてあげて」 沙織さんがそう言うと、着ぐるみ少女達が私たちのもとにドリンクを持ってきた。 口を覆うマスクが外される。 「んはぁっ…」 久しぶりに出来る口からの呼吸…大きな溜息とともに、荒れた呼吸を取り戻そうとした。 すると、ストローのついたドリンクを差し出された。 そしてそのストローは口の中に、半ば無理矢理差し込まれる。 とはいうものの、力の入らない私にとって、無理矢理の方がありがたいくらい。 そして、大量の汗により流れ出た水分を取り戻すかのごとく、私はそのドリンクを一気に飲み干した。 「ぷはぁぁ…」 (い…生き返る…こんなに…こんなに…水分が嬉しいと感じるなんて…) 水分を補給した事により、体が幾分か楽になる。 しかし、未だ拘束された体、暑さに蝕まれた体は、動こうとはしなかった。 「さてと、メインオブジェの準備があるから、ぬいぐるみ達は、しばらく休んでいるといいわ」 そう言って、沙織さんと着ぐるみ少女たちは、そそくさと何かの準備をし始めたのだった。 (はぁ…はぁ…暑かった…ぬいぐるみの中が…あんなに暑くなるなんて…明日…一日は無理かもしれない…。でも…沙織さんの命令だから…出来るとこまでは…がんばらなきゃ…) 先程まで、私を蝕んでいた暑さを思い出し、明日の想像を膨らめてしまう。 そんな事を考えながら、ただボーっとしていた。 すると暫らくして、突然の眠気に襲われてきた。 (ん…な…なんだか…急に…ね…眠くなってきた…) 先程まで、暑さにより体が活性化していた割にの、急激な眠気。 一気に来たその眠気は、とても耐えられるようなものではなかった。 (ね…眠い…あ…暑さで…疲れたの…かな…ね…眠い…) 瞼を開けようとしても、すぐに閉じてくる。 なんとか起きようとする抵抗も、全く無意味なものであった。 (も…もう…ダメ…だ…ね…ねむ…た…い………) そうして、私はそのまま眠りに落ちてしまった。

メルヘンカフェ ~女子高文化祭~ Side Story ~ 愛利 Side ~ 【前編】

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