愛人になったのは、面倒ごとを最小限で抑えた結果だった気がする。 よろしくない筋からの関係が断ち切れない男との恋愛に疲れ。 求められるなら、もう誰でもいい。 そんな気分の時に『ご主人様』に出会った。 昭和の写真から切り取ってきたような、その男の誘いに乗ったのは。 ただの気まぐれだったのかもしれない。 「私なら、お前を上手く飼いならせるのに。」 高級車の後部座席、隣に座りながらイヤらしい行為をするわけでもなく、そっと指先だけ絡めながら、濡れた唇で囁き。 ガラス球でもハメたような、月を浴びる湖面の様に光っている、その瞳に見つめられると。 伽藍堂な心の自分を見透かされ、蛇のように纏わりつく視線は身を熱く火照らされたからだろう。 気が付けば、その白磁のような指先に絡め撮られるように。従順な僕になることを受け入れていた。 「ははぁ、本当にスキモノですねぇ。」 ふと、気絶をしていたのか、イって飛んでいたのか。 眼前の口臭のキツイ男のギラつく性欲を隠しきれない顔が至近距離にあることに気づく。 「んっ……んんっ」 お触り禁止の、紳士協定通り、眺められているだけだが。 着飾る男たちに対し、蝶胡は一糸まとわぬ全裸で。片足を小便でもする犬のように高く上げた状態で赤い麻縄で縛り吊るされている。 口には、簡易的な余った縄で作られた。タマ結びを轡がわりにした口枷も施され、少しで動いたり、反応すれば、自然と押し広げられた唇からは。 唾液が垂れ、胸を濡らす。 明かりは、より扇情的に、けれど陰部は、見えるように薄暗くされている部屋の中で、小さな行灯をいくつか設置されている。 「おや?苦しいのかな?」 「どうれ、我々が縄を緩めてやろうか。」 そういいながら、肉体に触らないという協定は守りながらも。 わざと緩急をつけ、やれどうすべきかとギシギシと梁から吊るされた縄を無邪気な子供のように弄ぶ男たち。 股関節が、ギチリと限界まで押し広げられ。悲鳴が漏れるが。 ソレも唾液同様口枷に吸い取られ。 くぐもった呻きとして外に漏れ出す。 ハァハァと色めきたった男たちと、全裸で敏感な突起や割れ目をゴシゴシと、縄目で刺激される蝶胡の荒い呼吸や、上気する頬のように高まる熱は、てらてらとメスのソコから溢れ、垂れる愛液と。 熟成した官能の香りとなり、部屋へと充満する。 「よかったね、皆さんに遊んでもらえて。」 まるで愛玩動物を褒められたような笑みで、酷薄な主は、蝶胡へと笑いかける。 「んっぅ」 気配の無い主の接近に気づき、はしゃぎすぎた男たちの手に一瞬力が入り。 引かれた縄の結び目が、ぐっと壊れた蛇口のようになった。 蜜口へと食い込む。 肉棒を与えられないもどかしさと。 ようやく欲しいところに少しだけ与えられたアメに。 ビクビクと身体が震え、ざわりと全身が撫でられ、背筋を内側から愛撫されるような感覚の中。 思考が閉じ、一面の白へと変わる。 ヘンタイ行為で、パブロフの犬のように。 絶頂を迎える肉体や、普通の恋愛をしようという努力を考えもしない。 ただの、呼吸する置物として。 今日も彼女は身を任せる。 堕落にも終わりは無い、希望が青天井であるように、地獄もまた底抜けだということを。 彼女はこれからも、残酷な主と共に。 人としての尊厳を奪われる道へと歩を進めていく。