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【SS+イラスト】憧れのクラスメイトのXXに憑依する話⑦(挿絵:切世さん)

憧れのクラスメイトの妹に憑依する話⑦(完結)


 あたしは、ショーウィンドウに飾られた可愛らしいランジェリーを眺めて、思わずため息をついた。ピンクやラベンダーなど、パステルカラーのブラやショーツが並んでいて、どれもふわふわとしたレースやリボンで彩られている。

 「これ、どうかな? あたしが着るにはちょっと甘すぎるかな……」

 そう呟くと、隣にいたお姉ちゃんがくすっと笑って、軽くあたしの腕を叩いた。


「茉莉、そういうのこそ絶対似合うって。恥ずかしがらずに試着してみなよ。ほら、レースも可愛いじゃん。」


 お姉ちゃんはさらっと店員さんに声をかけると、あたしが気にしていたピンクのブラセットを持ってきてくれた。店員さんにも「妹さんにすごく合いそうですね」と言われ、顔が一気に赤くなる。

 「も、もう、からかわないでよ……でも、やっぱり可愛いかも」

 自分で言いながら、どこか胸がふわりと弾む気がした。女の子らしいデザインを手に取るたび、どれを選ぼうか迷ってしまう。


 「どれも茉莉に似合う気がするんだけどなあ。んー、じゃあさ、冒険してみるのもありじゃない?」


 お姉ちゃんはそう言いながら、あたしの手にクリーム色のブラセットをそっと重ねる。淡いリボンがあしらわれていて、ピンクよりは落ち着いた印象だ。けれど、よく見ると肩紐のあたりに小さな花柄レースがきらめいていて、可憐なイメージがある。

 「それもいいな……うわ、どうしよう……」

 あたしはブラをじっと見つめ、気づけば選択肢が増えすぎて困っていた。ピンクもクリーム色も魅力的だし、他にもラベンダーや淡いブルーも並んでいる。


 「茉莉、そんなに迷うなら両方買っちゃえば? どうせ使うんだし、着まわしできる方が楽でしょ。」


 からかうような声色をほんのりと混ぜて言うお姉ちゃんに、あたしは苦笑いしながら「それもアリかぁ」とうなずいた。特にお姉ちゃんはレースやフリルのあるデザインをこよなく愛していて、いつもファッションを楽しんでいる。

 「じゃあ、ちょっと試着してくる……」

 勇気を出して店員さんに声をかけると、お姉ちゃんは楽しそうに微笑んで、あたしの背をポンと押す。背中越しに「いってらっしゃい」と囁かれ、なんだか照れくさくなる。これが本当の「深谷萌」でないことなんて、忘れそうになる。


 しばらくして、試着室から出てきたあたしを見たお姉ちゃんは、まるで自分のことのように嬉しそうに手を叩いた。


 「ほら、やっぱり似合うじゃん! ほらほら、鏡も見て。茉莉の肌にぴったり合ってるよ。」


 鏡を見ると、いつもの自分よりちょっと可愛らしい雰囲気になったような気がして、心が弾む。

 「うん……ありがとう。お姉ちゃんのおかげで冒険できたかも」

 気恥ずかしさを押し隠しながら、あたしは少し上機嫌にそう呟く。お姉ちゃんは「ふふ」と笑って、あたしの肩に手を置いた。


 「買っちゃおうよ。それで、今度はおそろいのも探さなきゃね。ほら、あたしも——」


 そう言いながら、彼女は自分のお気に入りらしきブルーのランジェリーを手に取って見せる。その落ち着いた色味と繊細なデザインが、お姉ちゃんらしい清楚なイメージにぴったりで、見ているだけで綺麗だと思ってしまう。


 「いいね、おそろい……」


 あたしは少し照れながらうなずいた。姉妹でおそろいの下着なんて考えたこともなかったけれど、こうして一緒に選んでいると、なんだか特別な絆があるようでワクワクする。


 お会計を済ませたあと、ふたりで買った下着を手に笑い合いながら店を出る。外はまだ明るい夕方の光が差していて、人通りも多い。


 「じゃあ、次は雑貨屋さんでも寄ってこうか」


 お姉ちゃんに誘われて、あたしは「いいね」と笑顔を返す。この何気ないお買い物が、あたしにはとても幸せな時間に思える。

 すれ違う人々が「仲のいい姉妹ね」とでも言いたげな目を向けるのをちょっとだけ意識しながら、あたしたちは腕を軽く組んで歩き出した。


 「ねえねえ、今度あたしとおそろいのルームウェアも着ようよ?」

 ふざけてそう言ったお姉ちゃんの声が、心地よい笑いに溶けていく。


 ああ、あたしがもし、「僕」じゃなくて、お姉ちゃんも「あいつ」じゃないなら。


 それは、仲睦まじい姉妹が楽しくおそろいの下着選びを終えて、ほほえましく帰宅する一シーンだったろうに。

 その中身には、とてもほのぐらい悪意を持った男二人が入っているだなんて。


***


 茉莉として暮らしてもう数か月経った。脱衣所に向かうたび、どこか不自然な違和感がざわつく。でも日常は穏やかに流れていて、家族や周りからは自然な姉妹の一幕にしか見えていない。

 「茉莉~、先に湯張りしといてくれた?ほら、行こ?」 

 そう声をかけてきたのは“お姉ちゃん”――外から見れば完璧に頼れる姉、「深谷萌」の姿。軽く髪を束ね、にこやかな表情を浮かべている彼女に、あたしは笑顔で「うん」と応じる。深いところで何かがきしむ音がした気がするが、気にしないふりをした。

 ちょうど廊下を通りがかったお母さんが、珍しく一緒に風呂へ向かうあたしたちを見て、ほほえましそうに言った。「あら、ふたりでお風呂? 本当にまた仲良くなって良かったわね。少し前までは微妙な雰囲気があったから、安心したわ。茉莉がなんだかお姉ちゃんを警戒してる感じだったし……」その言葉に、お姉ちゃんがすかさず笑って肩をすくめる。


 「もう大丈夫だよ。ちょっとケンカしてただけだから。ね、茉莉?」


 その問いに合わせてあたしの方へ軽く視線を送ってくる。あたしは何事もない笑みを取り繕いながら、「うん、今は仲良しだよ」と答える。

 お母さんも満足気に頷いて、「そっかそっか。ゆっくりしてきなさいね」と台所へ戻っていった。あたしはささやかな安堵と、言い知れぬむず痒さを同時に感じる。こいつはお姉ちゃんじゃない、ということは、茉莉の身体を奪って「あたし」の存在をも否定することになる。まるで表面的な優しい姉妹の姿に自分自身も納得させようとしているみたいだ――。

 浴室横の脱衣所へ入ると、お姉ちゃんは自然な仕草でバスタオルを取り、「先に服、脱いじゃおう?」と言いながらあたしを見つめる。

 あたしは「うん」とだけ返事して、シャツのボタンを外す。鏡に映る自分の姿をふと見つめると、胸や腰つきが以前よりも少し変わったような気がして、恥ずかしさを覚える。


 「あれ、茉莉、ちょっと胸大きくなったんじゃない?」

 「へ? そ、そんなこと……」


 服を脱ぎ捨てつつそう呟くあたしに、お姉ちゃんはくすっと笑いながら近寄ってきた。タオルをかけた上半身から覗く彼女の肌は白く柔らかそうで、一見するとどこにでもいる美人の姉にしか見えない。

 「見せてみろよ」


 突拍子もない男みたいな言い方にビクリとするあたしだが、お姉ちゃんは呼吸を荒くしながら、構わず胸元にそっと手を伸ばす。


 「…わ、やめてよ……」

 「んー? 別にいいじゃん。姉妹だろ? 茉莉、成長してるって証拠かもよ?」 


 そう言ってから、お姉ちゃんはあたしの胸を手のひらで軽く掴むような動きで揉んでくる。つい身体がこわばるが、外から見れば、ちょっとスキンシップが過ぎる仲のいい姉妹――そんな風に映るだけかもしれない。

 いつの間にか彼女はにやにやと唇を吊り上げるように笑っていたが、その表情はあたししか見ていない。とてもお母さんの前では見せないような笑みだと気づき、胸がざわつく。



 「…ん……や、めて……」


 ぼそっと抵抗する言葉を呑み込んで、あたしは背を向ける。


 湯船に入り、肩まで浸かると、あたしの身体は大きく息をつく。先ほどまでの小さな緊張が嘘のように、体は温まってほどけていく。

 一方、お姉ちゃんはあたしの隣に腰をおろして、「あー気持ちいい」と言いながらバスタブの縁に頭をもたれかける。

 日常の風景としては、ごく自然で穏やかだ。けれど、あたしはどこか遠くで歯車が擦れるような軋み音を感じていた。苦しさを隠すためか、あたしはいつの間にか口元に笑みを浮かべている。まるで本当の姉妹みたいに見えるのが切なくも感じる。


 「さっきお母さんも言ってたけど、あたしたちほんとに ‘仲がいい姉妹’ に見えるんだろうね、ふふふ」

 「う、うん……だろうね……」

 あたしは笑顔を作りつつ、心のどこかでは一抹の疑問を抱えている。どうしてこんなに穏やかな光景なのに、自分の奥に暗い影があるような感覚が消えないんだろう?――いまは考えないようにしよう。

 お姉ちゃんは満足げにタオルを絞って、あたしの背中にお湯をかけてくれる。外から見れば、微笑ましい姉妹の姿。その事実だけが、あたしの心のきしみをさらに増幅させているような気がして……だけど、あたしは黙って目を閉じる。


 「大丈夫だよ、茉莉。あなたは茉莉、私は萌。仲良しの姉妹にしか見えないでしょう?ほら、背中洗ってあげる。」


 優しい口調に誘われるように、あたしは小さく頷く。何もかも受け入れるような態度をとってしまう自分が、どこか他人事のようだ。


***


 湯船から上がり、あたしと“お姉ちゃん”は軽く髪を拭きながら脱衣所を出る。ホッと一息つくはずのこの瞬間も、あたしはどこか落ち着かない。体を拭くタオルの端をぎゅっと掴んでいると、お姉ちゃんが横に寄り添うように立った。

 まるで本物の深谷萌みたいな優しい顔で、だけど瞳の奥はどこか冷ややかにきらめいている。


 「ねえ、茉莉。今日も部屋に戻ったら、“あたしたち” で、えっちしようね?」


 首筋に柔らかな吐息を落としながら、その言葉を囁かれると、背筋が粟立ちそうになる。周りに誰もいないはずなのに、ドキリとしてあたしは慌てて口を開こうとするが、彼女がさらに耳元へ唇を近づけて畳みかける。


「……わかってるよな?オレとお前は、共犯者なんだぞ。オレ達はこのまま女同士、姉妹同士として生きていくんだ」


 思わず湯上がりの体が硬直する。でも、お姉ちゃんの視線は優しい姉そのもの――外から見れば、ごく自然な笑みを浮かべているだけだろう。あたしは奥歯を噛みしめつつ、何も言えないままタオルを握り込んでいた。

 罪悪感と倒錯した欲望――その波に追い詰められているのはあたし自身。数ヶ月前、自分勝手に“茉莉”を奪ってしまった罪滅ぼしのつもりか、こうやって偽りの妹を演じ続けている。


 「…わかった…お姉ちゃん……」


 かすれた声でそう返事すると、お姉ちゃんの唇が薄く歪み、満足げな色を帯びる。視線だけがちらりとあたしを射すように見つめ、髪を梳くフリをしながら耳元に最後のひとことを残した。


「いい子だね、茉莉ちゃん。部屋、ちゃんと片付けて待っててね。」


 そう言って先に廊下を進む彼女の背中を見送りながら、あたしはそっと息を吐いた。表情を崩さずに、ただ心のなかで繰り返す。

 “逃げられない”――そう自覚している。「本当の茉莉」への罪悪感が重石のように胸に沈み、身動きできないのだ。それでも……いまのあたしには、これが唯一の選択肢かもしれない。


 鏡に映るあたしの姿は、高校生の妹・茉莉そのもの。男だった自分など、表面には痕跡一つない。

 あたしはこくりと喉を鳴らして、ふわりとタオルを羽織りなおす。これがあたしの、あるいは“僕”の運命なのだろう――。

 細く震える息を吐き出して、あたし――いや、僕は小さく呟いた。


「……あたしは、深谷茉莉……」


 これまでも、そしてこれからも。


 奥歯がきしむ音を呑み込みつつ、静かに廊下へ踏み出す。まるで何事もないかのように。姉と妹として、歪んだ日常をこれからも続けるために。


(END)

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Comments

(‿!‿) ԅ(≖‿≖ԅ)

Kawaii Tsun'aho

表面上は姉妹を演じないと家族や同級生に知られてしまう、でもお姉ちゃんの中身はあの男、でもやはり姉妹でのエッチは気持ちいい! でも好きな身体で居られるのは良いな。 もうお話完結なんですね(⁠。⁠•́⁠︿⁠•̀⁠。⁠) ありがとうございました!

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