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さつま
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淑女の悪癖

 緑豊かな丘の上に厳めしく聳える白亜の屋敷。白樺の林に囲まれた、いかにも殿上人好みの閑静な土地柄であるが、敷地の内はといえば至って賑やかなものだった。かつては公爵一家の住まいであったという土地を金満家の貿易商が買い上げ、家族と大勢の使用人を住まわせて華族ごっこと洒落込んでいるのだ。  千鶴子は屋敷で働く侍女である。髪結いの腕を買われて奥様に雇われた。ようやく十八年になろうかという歳だが、常に冷静で謹み深く、若い娘らしからぬ落ち着きがある。奉公人上がりの陽気な使用人が多くを占めるこの屋敷では少々浮いた存在だった。  一見すると雨が降ろうと槍が降ろうと取り乱すことなどないようにみえる彼女だが、それでも一日に幾度か、決定的に落ち着きを失う瞬間がある。  すなわち、便所に駆け込むときである。  千鶴子が便所に向かうとき、それはいつでも一刻を争う所まで追い込まれたときだ。自分でもバカバカしいようだが、一旦仕事に手をつけてしまうと切りが付くまで一秒たりとも手を止めたくない性分であるから、例え作業中に催したとしても、限界まで堪えてしまうのだ。  今日も今日とて千鶴子は便所を目指し長い廊下を足早に歩いていた。  奥様のワードローブを整理している最中に尿意を催し早一時。一滴一滴と溜まっていく小水が千鶴子の股に重く圧をかける。昼の休憩に飲んだ茶が今になって効いたのだろう。下腹の水風船は限界にまで膨れ上がり、足を踏み出すたびにチャプチャプと音が聞こえてきそうなほどだ。 (……、ぅ……、早く手洗いに行かないと……お小水が……)  人形じみた端正な面立ちに表情はなく、焦りは感じられない。しかし、忙しないその足取りは、彼女が今感じている尿意の強烈さを確かに物語っていた。許されるのであればスカートの上からでも股を押さえて歩きたいくらいだが、流石にそこまで品のない真似はできない。  千鶴子は急いで屋敷の裏手に回り、使用人のために設けられた便所に駆け込んだ。 (ここまで来れば大丈夫……、あと少し………あと少しで……)  重いスカートの裾をたくし上げ、尻を出して便壺に跨がったそのときだった。  背中に熱烈な視線を感じ、千鶴子は「またか」と心の中で溜め息を吐いた。  一家の一人息子である亀太郎お坊っちゃまは、齢十二にして何を好き好んでか、人が用を足す姿を扉の隙間から覗き見るという奇妙な性癖の持ち主だ。千鶴子が知るだけでも既に五度、こうして扉の外に立ち息を殺して中の様子を窺っている。  便所覗きなど未来の紳士にあるまじき悪癖である。ここは侍女として厳しく諫言すべきかとも考えたが、見たところ他の使用人が便所に入った際にはこれといって興味を示す様子はない。となればこれはお坊っちゃまと千鶴子、二人だけの問題だ。  そこで千鶴子は当面の間、覗きに気づいていないふりをして彼の出方を伺うことにした。叱るにしてもお坊っちゃまがどういった事情でこのような真似をするに至ったか見極めなければならない。 (それにしても……人に見られながらというのはどうも……)  気まずくはあったが、ここまで来て我慢などしていられない。消極的な心の呟きとは裏腹に、黒い毛に覆われた股の割れ目から、シャーッと景気よく小便が噴き出した。  夏の日の夕立を思わせる勢いだった。黄金色の水が太い筋を描いて便壺の底へと一直線に降り注ぐ。 「はぁ……」  無事に用を足すことのできた安心感から思わず息を吐き出す。と、同時に肛門が弛み、ブボッと音を立てて空気が噴き出した。 (あっ……。いやだわ……わたしったら、またお坊っちゃまが見ている前で放屁を……。しかも小用を足している最中に……)  流石の千鶴子もこれには顔を赤らめた。しかし、小用のついでに尻からガスを抜いておくのは彼女の日課だ。覗きに気づいたからといってやめる訳にはいかないが、何度見られたところで慣れるものではない。  千鶴子の堪え癖は何も小用に限った話ではなかった。小便を溜めて溜めて一気に出すのと同様に、屁も堪えて堪えて一息にこきまくる。もっともこちらは性分というよりそうせざるを得ないという方が正しい。  千鶴子は昔から人より多分に糞が出るたちだった。朝一番にどれだけどっさり糞をひり出そうとも日が暮れる頃には必ず便意を催して便所に駆け込むのが常だ。自然、屁も溜まりやすく、彼女が我慢をやめて尻の穴を弛めようものなら、朝から晩までひっきりなしに尻からガスを噴き出させる羽目になる。小用のついでにでもたっぷりと屁をこいておかなければ午後からの仕事に差し支えるのだ。  年頃の娘にとって屁をこき糞を垂れるということは恥ずべき行いである。どうしても屁をこかずにいられないというときは、人目のつかない場所に身を寄せ、辺りを気にしながらそっと尻の穴を緩め、それでもプッとかブッとか音が鳴ったら顔を赤らめるという娘も少なくないだろう。人に見られていると知りながら、肛門を露にして放屁するなど、およそ分別のある淑女のすべきことではない。 (とはいえ……今のわたしはお坊っちゃまに見られているとは知らずにいるということになっている訳だし……、ここはお手洗いなのだから、屁の一つや二つ、罰は当たらないはず……。いえ、むしろここで屁をこかずにどこで屁をこくというのです。淑女たるもの、便所でこそ放屁しておかねば)  千鶴子は自分に言い聞かせながら再び肛門を弛めて屁をこいた。ブボーッと大量のガスが尻の谷間から一気に噴き出し、腐った卵のような悪臭が辺りにむわっと立ち込める。 (あぁ……なんて下劣な匂い……。侍女が便所でこのような屁をこいているだなんて、お坊っちゃまも驚かれていることでしょう……。恥ずかしい限りですが……便所など覗いても良いことはないとわかって頂くためにも、ここは嫌というまでわたくしの屁をたっぷり嗅いで頂きましょうか)  長々と能書きを垂れてはいるが、要は屁を我慢できないというだけのことだった。千鶴子は軽く尻を持ち上げ、屁の出口をお坊っちゃまに向けて、思い切り噴射した。  ブババババババババーッ!  機関銃でも打ち放したかのような激しい放屁。「これなら扉の向こうにいるお坊っちゃまにもしっかりと届いたはず」と千鶴子は満足げに頬を緩めた。  股の穴から噴き出す黄色い水が勢いを失う一方で、尻の穴から噴き出す生温い風はますます激しさを増している。  ブバッ、ボフッ、ブフォブフォッ、と、若い娘の尻から放たれているとは思えぬ下卑た音が便所じゅうに鳴り響く。 (あぁ……おケツから空気を抜くだけでどうしてこうも気持ちいいのかしら……)  小水を溜めて膨らんだ水風船は今やすっかり小さく萎み、下腹を被う黒々とした繁みから黄色い雫が滴るのみとなった。いつの間にやら念願だったはずの小便よりも、放屁の快感に心を奪われる千鶴子であった。  濃厚な腐卵臭が漂う薄暗い便所の中で、千鶴子の肛門だけが激しく震え続ける。  娘の腹の糞壺に溜まったガスが、尻の穴から噴き出して外の空気とが混じり合う。扉の向こうにまで匂いが漏れ出ている。 (我ながら物凄い匂い……。今日も朝一番でどっさり出したはずなのに、もううんこが溜まっているみたい……。夕刻まで堪え抜くためにも、しっかりガスを抜いておかなくては)  背後に視線を感じながらも、千鶴子はあえて尻たぶを両手でかき分け、見せつけるように肛門を開いて激しく屁を放った。  とはいえいつまでもこうして便所に籠っている訳にもいかない。仕事はまだまだ残っている。 (せっかくだから最後に一発大きいのをお見舞いして差し上げましょうか。お坊っちゃまが二度と便所を覗きたくなくなるような、くっさい屁を……)  鼻が曲がるような強烈な屁を浴びて顔を歪ませるお坊っちゃまを想像し、千鶴子は思わず頬を緩ませた。 (覗きなどするからですよ……。恨むならご自分をお恨みなさいませ)  千鶴子は便器を跨いだ両足を強く踏み締め思い切り気張った。 「ふゥうゥんッ!」  そのときだった。  千鶴子の下腹で確かな質量を持った塊がもぞりと蠢いた。  ぐうぅ、と微かな腹鳴と共に腹の底が鈍く痛む。痛みは程なくずっしりと重い圧迫感に変わり、腸の奥で眠っていた大物がガスを噴くはずだった肛門に押し寄せた。 (や、やだ、これ……屁じゃ……なくて……!)  気づいたときにはもう遅かった。  メリメリと音を立てて糞の塊が肛門の輪を押し拡げる。 「う、うんこォ……ッ!」  堪らず唇から溢した野太い声。  もっとも、口に出して言わずとも、尻を見れば彼女の肛門から何が出るかは一目瞭然であった。  ブボボッ! ブリブリブリィッ!  大きな尻の割れ目から黄褐色の塊が勢いよく飛び出した。 「おォおぉッ……」  身の締まった根菜のような糞の延べ棒で、尻の粘膜を容赦なく擦り上げられ千鶴子は堪らず仰け反り喘いだ。  思い切り屁をひるつもりで力いっぱい踏ん張ったものだから、いつにも増して勢いが良い。ぶりぶりと弾けるような音を立て、太ましい一本糞が便壺へと飲み込まれていく。 (あぁああぁッ……わ、わたし……お坊っちゃまの前で……うんこを……! 屁と間違えて、うんこを……! 屁と思って気張ったのに、溜めてたうんこが一気にぃ……っ!)  羞恥で体がぶるっと震えた。  排泄と一口にいっても小便や屁とは違う。女として、決して人に覚られてはいけない便意という名の下劣な欲望を、最も恥ずべき形でさらけ出しているのだ。 (うんこ見られてる……! 太いうんこをぶりぶり垂れるケツを……お坊っちゃまに……! 屁どころか……糞を堪えながらお勤めをしていたと、お坊っちゃまに知られてしまう……っ……!)  淑女にあるまじき失態を心から恥じる千鶴子だったが、一方で彼女の体は糞便の排泄を歓んでいた。 (あぁ……わたくしとしたことが何たる失態……。お坊っちゃまの目の前で脱糞してしまうなんて……。だけど……、放屁よりも気持ちいい……)  しっかりと身の詰まった便塊を尻から放出する快感はガスとは比べ物にならない。みっともないとは思いながらも、ウゥン、ムゥンと息み続けてもりもり糞をひねり出す。  体が排便の心地よさに傾倒するにつれて、次第に羞恥心が鈍っていく。むろん人前で糞を垂れるのは恥ずかしいが、だからといってこんなに気持ちいいことを今すぐ止める気にはなれない。どうせこれまでにもさんざん放屁を見られているのだから、脱糞くらい見せてやっても──と、暢気なことを思い始めたそのときだった。  ブリブリという己の尻から鳴り響く音に交じって、背後から微かな布擦れの音が聞こえてきた。  ごそごそと、何かをまさぐり擦る音。  扉の向こうにいる少年が何をしているか気づいた瞬間、彼女の胸の内に、再び羞恥の炎が燃え上がった。 (お、お坊っちゃま……、まさか……、そんな……!)  薄々勘づいていたことではあった。しかしながら、まだ初等教育も修了していない、千鶴子からすればほんの小さな子供が、己の性欲のためだけに便所覗きという卑しい真似をするなどとは、にわかには受け入れ難く、敢えてその可能性から目を背けていたのだ。  しかし、こうして知ってしまったからには認めざるを得ない。お坊っちゃまは今、自涜に耽っている。千鶴子が脱糞する姿を見ながら、幼いながらに欲情し、自らを慰めているのだ。  衝撃のあまりか、一度糞が途切れて屁がボォオッと噴き出した。 「は……うぅうンッ……」  肛門が閉じ切る間もなく次の波が押し寄せて来る。続けざまにもう一本、先程と同程度の長糞が千鶴子の尻から産み落とされた。しかし、それでもなお千鶴子の便意は収まらない。 (くうぅっ……ま、まだ出そう……! ここらで何とか切り上げなければ……! これ以上、糞ひり姿をお坊っちゃまの前に晒す訳にはいけません……! し、しかし、うんこが、ケツの穴のすぐそこまで降りて来て……っ!)  必死で括約筋を引き締め抵抗したが、直腸に降りて来た糞の圧にあえなく屈し、締まりの悪い肛門からぶりっと身がはみ出した。 (あぁあぁ……今日に限って糞の出が良過ぎる……! ……このように長々と糞を垂れては……、お坊っちゃまが、本当に、女の糞便に心を奪われてしまう……っ……!)  千鶴子にとってはそれこそが何よりの懸念であった。  女の股や尻が見たいだけならまだいい。その程度の助平心を認める寛容さは千鶴子にもある。  しかし、だとすれば彼の覗きの対象が千鶴子の入る便所に限ることの説明がつかない。若い女の使用人の裸が見たいだけなら(むろん推奨はしないにせよ)風呂場や更衣部屋という手もあるはずだ。  だが亀太郎はそうはしなかった。彼はわざわざ千鶴子が便所にこもっている時間を狙って覗きを働いている。明らかに、彼女が便所で繰り返し放屁をするのを知った上でのことだった。 (これ以上見てはいけません、お坊っちゃま……! 下賤な侍女の……汚ならしい、糞ひり穴など……、ぉ……!)  侍女として、一家の大事な跡取り息子を、女の糞便にばかり執着する倒錯した覗き魔にする訳にはいかない。  一刻も早く排便を終わらせねばなるまいと心に決め、千鶴子は両足を強く踏み締め、力の限り糞を気張った。 「ふんぬぅううぅううゥううゥンンンッ!」  若い娘にあるまじき野太い声と共に、肛門を目一杯拡げる。と、次の瞬間、  ブリブリブリブリブリィ────ッ!! ボリュリュリュリュリュリュゥ────ッ!!!  けたたましい音が肛門から鳴り響き、大蛇のように巨大な便塊が、怒濤の勢いで便壺に吸い込まれていった。 (おおォぉッ……! 糞穴……っ……擦れるゥ……!)  太い糞とそれを放り出す肛門の狭間で起きる摩擦で生まれた刺激を受けて、千鶴子は仰け反って喘いだ。  排泄の解放感とはまた別の甘い痺れが彼女の背筋を這い上る。  華奢な体が小刻みに痙攣し、股の間から温かな水が滝のように滴り落ちた。 (あぁっ……、いけない……、これでは、わたくしまで……!)  自身の肉体に表れた淫らな反応を恥じる千鶴子だったが、罪悪感も羞恥心も、激しい便意とそれを解消する快楽を抑えるには至らなかった。 「ふうぅうゥうんッ! うぅううンッ! むぅううぅんッ!」  時折息を継ぎながら、それでも休むことなく糞を息み続ける。それは、色欲に取り付かれた女が男の前で腰を振るのとまるで同じ衝動から来る行為だった。  ブリュリュリュリュゥウゥゥ──ッ!! ボリュリュリュゥゥッ!!! ボリュブリブリブリュウゥウウウゥ────ッ!!!   若い娘の腹に棲み付いていた大蛇は、巣穴の出口で散々のたうち回った後、不意に尻尾を現して糞壺へと飛び込んで行った。  ブボリュウゥゥッッ!!! ブッボォオォォオオォォ───ッ!!!  ひときわ下劣な放出音と、厠じゅうに響き渡る号的のような屁を放ち、千鶴子の排泄はようやく終わりを告げた。 「は……、ふぅうぅ……」  千鶴子が大きく息を吐き出すと同時に、背後からも微かな溜め息が聴こえてきた。どうやら彼の方でも一段落ついたらしい。  もしこれが与えられた職務の最中でさえなければ、そして幼い少年の目がなかったとしたら、千鶴子は迷わず自らの股に手を伸ばし、燃えるように疼く蜜壺を激しく慰めていたことだろう。しかし千鶴子の良識と侍女としての矜持がそれを許さなかった。  塵紙を手にとって、未だ痺れを訴える菊門とぬらぬら光る女陰とをそっと拭う。硬い紙が穴をなぞる度に「あぁん」と思わず声が漏れた。ついでにブッブッと短い屁も。しかし千鶴子はもはや狼狽えはしなかった。これをみっともないと思うには、彼女は醜態を晒し過ぎた。  尻を拭き終え下着をはき直した頃、思い出したかのように子供の足音が扉の向こうから遠ざかっていった。 (まったく……、困った坊っちゃまだこと……)  千鶴子は溜め息を吐いて厠を出た。  初夏の爽やかな風が頬に触れた。そこで初めて千鶴子は、自分のいた厠が梅雨時の温室のように蒸し暑くなっていたことを知った。彼女の肛門から吐き出された熱く湿ったガスが狭い空間にこもったせいだった。今何の用意もなく厠に入ろうものなら、その蒸し暑さと噎せ返るような悪臭で、誰もが絶句し踵を返さずにはいられないだろう。  しかし今の千鶴子にそのことを後ろめたく思う余裕はなかった。何故なら彼女は今、亀太郎の悪癖を自らの手で矯正するという使命感に燃えている。 (取り返しのつかないことにならない内に、何か手を打たねば……。女の糞などお坊っちゃまが夢中になるほど良いものではないと身を以て理解して頂く必要がありそうですね……)  道徳的な説教やご機嫌取りの説得が意味をなさないことは明らかだ。かといって、このまま黙って覗きを続けさせても幼い亀太郎は図に乗るだけだろう。  彼には、もっと近くで、もっと具体的な体験によって、女の糞便の醜悪さを叩き込む必要がある。 (近い内に暇を頂いてお坊ちゃまと二人きりでじっくりとお話を致しましょう……。もっともわたくしがものをいうのは、口ではなくて、尻で、ということになるでしょうが────)  旦那様にも奥様にも決して明かすことのできない密かな企てを胸に、千鶴子は薄く笑みを浮かべて仕事に戻った。むろん、そのとき彼女がスカートの内側で密かに股を疼かせていたのはいうまでもない。


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