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壁の中に立っているだけの簡単なお仕事です

 壁の中で立っているだけの簡単なお仕事です。すべての装具支給。未経験者歓迎。ベテランスタッフが徹底的にサポートいたします。時給――  きっかけは、そんな求人広告だった。  壁の中。そのワードは、壁の前の誤植だろうと勝手に考えていた。  装具支給。それは制服などのことだと思い込んでいた。  未経験者歓迎。ほんとうに簡単なお仕事だからだろうと早合点していた。  ベテランスタッフのサポート。先輩がお仕事の指導をしてくれるのだと信じていた。  簡単なお仕事で高額のお給料が支払われることに、疑いを抱くべきだった。 「採用いたします。さっそく、研修生として、お仕事に入っていただきます」  面接で私の顔と身体を見、いくつかの質問をしただけで、担当のお姉さんがそう告げた直後、首のあたりにチクリと軽い痛みを感じた。 「えっ……!?」  首に手を当てて振り向くと、制服姿の女性が、携行式注射器の容器を手にしていた。 「大丈夫ですよ。私は医師、彼女は看護師の資格を持っておりますから」  担当お姉さんの言葉を聞き、そうじゃないと思った直後、私は意識を失った。 「ん……」  低くうめいて、私は目覚めた。  目の前には、お姉さんの顔。 「うふふ……目が覚めたようね」  薄く嗤って言われた直後、わが身に起きている異変に気づいた。 「ぅむぅん(私に)、んぅう(なにを)……ッ!?」  あげた声は、言葉にならなかった。 「んうんむむッ!」  どれほどの力を込めても、身体は揺する程度にしか動かせない。  そのうえ、全身をギッチリと締めあげられている感触。  さらに、お股に食い込むなにかが、そこをいやらしく責めている。 「……ッ!?」  首も動かせないので、視線だけを下ろしてハッとした。  視界の下端で、曝け出された乳房が、黒い革のベルトで絞り出されている。  そこで、お姉さんが口を開いた。 「閉じ込める前に、自分の姿を見せてあげるわ」  直後、作業服姿の女性が、キャスターつきの姿見を押してきた。 「……ッ!?」  その鏡に映る自分の姿を見て、もう一度息を飲んだ。  顔の下半分を覆い、縦横にベルトがかけられた口枷。  首を動かせないのは、その頭頂部にかかるベルトを、天井から下りるベルトに留められているからだ。  身体には、軟らかい肉をくびれさせるほどきつく締めあげられた、ハーネス式の拘束具。  その縦ベルトは、お股の割れめに半分埋まって食い込んでいる。  腕を拘束するのは、二等辺三角形の革袋、アームバインダー。  脚は太もものつけ根から足の甲まで、幾本ものベルトで縛られている。  自分の身体に隠れて見えないが、口枷の頭頂部ベルト同様、身体のハーネス式拘束具も天井から吊られ、押し込められた壁の窪みから出ることはできない。  そうと理解させられたところで、お姉さんが再び口を開いた。 「それじゃ、壁の中に閉じ込めていくわね」  その言葉の直後、胸のあたりまでを覆うパネルが、私がいる窪みに嵌め込まれた。 「んっむ(待って)ッ!」  中止を求める声も虚しく、作業服姿の女性が、パネルをビスで留めていく。 「んむぅう(お願い)ッ!」  懇願するあいだに、作業服姿の女性はもう1枚のパネルを取りに行った。 「今日は研修なので、閉じ込めは短時間にしておきます。準備にかかった時間も合わせて給料は出ますので安心してください」  そう言われても、安心できるものではない。 「天井に換気口がありますから、酸欠に陥る心配もありません」  心配なのは、それだけではない。  だが、口枷のせいでそうと訴えることは叶わず、上側のパネルを嵌め込まれた。  視界が闇に包まれるなか、聞こえてくるビスを留める音。 「んむむ(出して)ッ!」  懇願する声は、おそらく外に届いていない。 「うむんん(許して)ッ!」  貼られたパネルの上にもう1枚、周囲の壁と同じ板を嵌め込まれたら、私が壁の中にいるとは誰も気づかないだろう。  そしてその作業も、もう終了している頃だ。  壁の中。そのワードは、誤植などではなかった。  装具支給。それは、各種拘束具のことだった。  未経験者歓迎。壁の中に閉じ込められる仕事を経験している人など、そうはいないだろう。  ベテランスタッフのサポート。眠らされているあいだにお姉さんたちの手で裸に剥かれ、きつく厳しく拘束されることだった。  特殊かつ変態的な仕事なのだから、高給なのはあたりまえだ。  そうと気づいても、あとの祭り。  どれほどの叫んでも声は言葉にならず、いかに力を込めて身体は揺らす程度にしか動けない状態で、私は狭くて暗い壁の中に閉じ込められてしまった。 「んむむ(誰か)ッ、うむんん(助けて)ッ!」  その声は言葉にならず、誰からも聞き届けられない。  全身を締めあげられながら、真っ暗な狭い空間でじっとしているしかない。  そんな悲惨な状況で、私は肉の火照りを覚え始めていた。  それは、私の一番感じる女の子の場所に、ハーネス拘束具の縦ベルトが食い込んでいるからである。  丁寧に舐めされているうえ、縁の角が丸く面取りされた上質な革が、陰核を押しつぶしつつ、媚肉に埋まるほど食い込んで――。  いや、違う。  それだけじゃない。  ふつうの女の子は、陰核と媚肉をいやらしく刺激されていても、こんな悲惨な状況で肉を昂ぶらせたりしない。  言葉を完全に封じられ、身じろぎすらできなほどきつく厳しく拘束され、狭く暗い壁の中に閉じ込められて官能を高めているのは、私が生来の同性愛者のマゾだからだ。  とはいえ私の希望は、ふつうのSMではない。鞭や蝋燭で痛めつけられるのは好きではない。  私の望みは、美しい女性に囚われ、きつく厳しく拘束され、自力では出られない場所に閉じ込められることだ。  とはいえ、これまでの人生で、私の夢を叶えてくれる女性《ひと》には出会えなかった。私の知るかぎり、女性向け風俗でも、そんなサービスを提供してくれるところはなかった。  そんな私にとって、今の状態は長年夢見てきたもの。  夢が叶ったと言える状況で、拘束マゾの私が昂ぶらないわけがない。 (たぶん……いえ、きっと……)  私はあの求人広告に、求めていた危険な香りを感じ取っていたのだ。 (そして、おそらく……)  あのお姉さんは、私に対応する性指向――女性をきつく厳しく拘束して閉じ込めることに悦びを覚える――を持っている。  ひと目で私の本性を見抜いたからこそ、彼女はいくつか質問をしただけで、採用を決めたのだ。  そう確信したところで、顔の前のパネルが外された。 「ん(う)ッ!?」  まばゆい光に目を刺され、反射的に目を閉じる。  やがて光に慣れてきて、ゆっくり目を開ける。  すると、私を拘束して閉じ込めたお姉さんが、妖しい光を宿した目を細めて口を開いた。 「思ったとおりだわ。あなた、素質があるわね……このまま、閉じ込めを継続する?」  その質問に、私は迷う演技をしたあと、小さくうなずいた。

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